乙女ゲームの悪役令嬢に転生してしまった私は、全力で死亡フラグを回避したいのに、なぜか空回りしてしまうんです(涙)

藤原 柚月

文字の大きさ
76 / 236
第八章 世界樹の精霊

なんなんだろう、この空気

しおりを挟む
「……か、確認なのですが」

 シーアさんが目を覚まして、ソファにくつろいでから数分後。

 私の座っているソファの後ろに立っているオリヴァーさんが様子を伺いながらも口を開いた。

「『聖なる乙女』で良いんですよね? 姿が光だけしか見えてなくて」

 テーブルを挟んで向かい合わせに座っているシーアさんはクスッと笑った。

「なんじゃ。光だけとは、人生を損しとるぞ。ワシの姿が見えんとは。お主、それでも竜騎士なのか?」
「シーアさん!?」

 シーアさんはわざと挑発的な言葉を発する。

「……それは俺の実力不足です」

 オリヴァーさんは怒るというよりも若干、落ち込み気味だ。

 なんなんだろう、この空気。

 シーアさんも何もトゲのある言い方しなくても……。

 オリヴァーさんもストレートな指摘に落ち込んでるように見えるし。

「いじめるするのはこのぐらいにしとくかのぉ。大事なことを忘れとった、ワシは思念体に近いんじゃ。本体は別の場所に居る。そんな中、契約しようとすれば具合も悪くなる」
「別……?」

 シーアさんは足組みしながらいたずらっ子のような笑みを向けた。
 私は『別の場所』という言葉に首を傾げた。

「聖・域・じゃよ。お主がワシの魔力を消した時、ワシに触れたじゃろ。その時に肉体から離れ、精神だけが来てしまった。ということじゃ」
「それって……?」
「無意識で無の属性を使ったってことじゃ。まぁ、本体のところにはいつでも帰れるが……」

 シーアさんは私を指さした。

「また、このようなことが起こってしまったら敵わんからのぉ。ワシと契約を結び、魔力を安定させようと思ったんじゃが……」
「俺は反対です。契約は危険です」
「ワシを誰だと思っとる? 精霊じゃが、ドラゴンでもあるぞ」
「手のひらサイズだったと聞いています」
「思念体じゃからじゃよ。本体はもっと大きいわ。普段は人型じゃがな」
「……それに、世界樹が存在するだなんて」
「今は、おとぎ話のようになっとるようじゃが、世界樹は存在しておるぞ。そもそも世界樹が存在しなければ魔法は使えん」
「世界樹は悪夢を吸収し、魔力を排出する。ワシは、悪夢を吸収するための繋ぎみたいなもんじゃな。悪夢を吸収された者は夢を見たという記憶が無くなるがのぉ」

 悪夢。……もしかして、私がシーアさんと会っていた記憶が無かったのって夢を吸収されていたから?

 それなら私の悪夢は……?

 と、思うけど、考えてみれば、悪夢を見るのは私だけじゃないし、多くの人が見てるんだろうな。
 多分、ランダムに吸収しに行ってるのかも?

 私はオリヴァーさんを見ると、難しい顔をしていた。

「大体のことは何となくわかりましたが……、ソフィア様を危険なことには……」
「お主もわかっとるんじゃないのか? このままだと一生苦しむことになるぞ」
「…………、なら、どうしろと」
「ワシがなんとかしよう。少々荒っぽいが特訓に付き合うぞ」

 契約が出来ないなら、特訓しか方法はないと思ってのことだろう。

 オリヴァーさんが心配してくれてるけど、私は自分の問題を解決させたい。

 守られる存在じゃなく、守る存在になりたいから。

 強くなりたいし、自分の未来を知っているからこそ、頑張れる。

 大丈夫……、フラグを折ってやる。

 私はそう決意した。

しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

【完結】家族に愛されなかった辺境伯の娘は、敵国の堅物公爵閣下に攫われ真実の愛を知る

水月音子
恋愛
辺境を守るティフマ城の城主の娘であるマリアーナは、戦の代償として隣国の敵将アルベルトにその身を差し出した。 婚約者である第四王子と、父親である城主が犯した国境侵犯という罪を、自分の命でもって償うためだ。 だが―― 「マリアーナ嬢を我が国に迎え入れ、現国王の甥である私、アルベルト・ルーベンソンの妻とする」 そう宣言されてマリアーナは隣国へと攫われる。 しかし、ルーベンソン公爵邸にて差し出された婚約契約書にある一文に疑念を覚える。 『婚約期間中あるいは婚姻後、子をもうけた場合、性別を問わず健康な子であれば、婚約もしくは結婚の継続の自由を委ねる』 さらには家庭教師から“精霊姫”の話を聞き、アルベルトの側近であるフランからも詳細を聞き出すと、自分の置かれた状況を理解する。 かつて自国が攫った“精霊姫”の血を継ぐマリアーナ。 そのマリアーナが子供を産めば、自分はもうこの国にとって必要ない存在のだ、と。 そうであれば、早く子を産んで身を引こう――。 そんなマリアーナの思いに気づかないアルベルトは、「婚約中に子を産み、自国へ戻りたい。結婚して公爵様の経歴に傷をつける必要はない」との彼女の言葉に激昂する。 アルベルトはアルベルトで、マリアーナの知らないところで実はずっと昔から、彼女を妻にすると決めていた。 ふたりは互いの立場からすれ違いつつも、少しずつ心を通わせていく。

聖女の力は使いたくありません!

三谷朱花
恋愛
目の前に並ぶ、婚約者と、気弱そうに隣に立つ義理の姉の姿に、私はめまいを覚えた。 ここは、私がヒロインの舞台じゃなかったの? 昨日までは、これまでの人生を逆転させて、ヒロインになりあがった自分を自分で褒めていたのに! どうしてこうなったのか、誰か教えて! ※アルファポリスのみの公開です。

悪役令嬢?いま忙しいので後でやります

みおな
恋愛
転生したその世界は、かつて自分がゲームクリエーターとして作成した乙女ゲームの世界だった! しかも、すべての愛を詰め込んだヒロインではなく、悪役令嬢? 私はヒロイン推しなんです。悪役令嬢?忙しいので、後にしてください。

〘完結〛ずっと引きこもってた悪役令嬢が出てきた

桜井ことり
恋愛
そもそものはじまりは、 婚約破棄から逃げてきた悪役令嬢が 部屋に閉じこもってしまう話からです。 自分と向き合った悪役令嬢は聖女(優しさの理想)として生まれ変わります。 ※爽快恋愛コメディで、本来ならそうはならない描写もあります。

悪役令嬢が行方不明!?

mimiaizu
恋愛
乙女ゲームの設定では悪役令嬢だった公爵令嬢サエナリア・ヴァン・ソノーザ。そんな彼女が行方不明になるというゲームになかった事件(イベント)が起こる。彼女を見つけ出そうと捜索が始まる。そして、次々と明かされることになる真実に、妹が両親が、婚約者の王太子が、ヒロインの男爵令嬢が、皆が驚愕することになる。全てのカギを握るのは、一体誰なのだろう。 ※初めての悪役令嬢物です。

【完結】前提が間違っています

蛇姫
恋愛
【転生悪役令嬢】は乙女ゲームをしたことがなかった 【転生ヒロイン】は乙女ゲームと同じ世界だと思っていた 【転生辺境伯爵令嬢】は乙女ゲームを熟知していた 彼女たちそれぞれの視点で紡ぐ物語 ※不定期更新です。長編になりそうな予感しかしないので念の為に変更いたしました。【完結】と明記されない限り気が付けば増えています。尚、話の内容が気に入らないと何度でも書き直す悪癖がございます。 ご注意ください 読んでくださって誠に有難うございます。

帰国した王子の受難

ユウキ
恋愛
庶子である第二王子は、立場や情勢やら諸々を鑑みて早々に隣国へと無期限遊学に出た。そうして年月が経ち、そろそろ兄(第一王子)が立太子する頃かと、感慨深く想っていた頃に突然届いた帰還命令。 取り急ぎ舞い戻った祖国で見たのは、修羅場であった。

生まれ変わりも楽じゃない ~生まれ変わっても私はわたし~

こひな
恋愛
市川みのり 31歳。 成り行きで、なぜかバリバリのキャリアウーマンをやっていた私。 彼氏なし・趣味は食べることと読書という仕事以外は引きこもり気味な私が、とばっちりで異世界転生。 貴族令嬢となり、四苦八苦しつつ異世界を生き抜くお話です。 ※いつも読んで頂きありがとうございます。誤字脱字のご指摘ありがとうございます。

処理中です...