乙女ゲームの悪役令嬢に転生してしまった私は、全力で死亡フラグを回避したいのに、なぜか空回りしてしまうんです(涙)

藤原 柚月

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第十章⠀深紅の魔術士

初めての感情

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 イアン様・イリア様(双子)と別れて空中庭園を目指す。

 目指してるはず……なのだが、迷ってる気がする。

 同じところをぐるぐる回ってる。

 誰かに付き添ってもらえば良かったかな。

「……中庭だ」

 迷子になりながらも辿り着いた場所は中庭だった。

 二体の妖精の彫刻が置かれていてその周りには花壇に植えられた色んな種類の花が華やかに咲いていた。

 ここ……、ヒロインと殿下が最初にキスした場所だ。

 プレイ中は胸きゅんになってたけど、なんだろう。今想像すると胸の奥が痛い。

 早く離れよう。

 急いでその場から離れると、ばったりと殿下と会った。

 えっ、あれ。

 殿下は空中庭園にいるはず……???

 何故ここに。もしかして私の記憶違い!?

 まだ空中庭園を行く時間じゃなかったとか!?

「もう大丈夫なのかい?」
「はい!⠀先程はありがとうございました」
「そうか。今から向かうところがあるんだけど、キミもどうかな」
「向かうところ?⠀ご一緒しても宜しいんです?」
「勿論」

 普通に誘われたことが嬉しすぎて思ってることをそのまま言葉にしてしまったけど、一緒に行ってもいいのかな。

 あんまり交流を持ったら死亡フラグに近付く……なんて、ことは。

 この先がとても怖い。でも、なんだかドキドキする。

 嬉しいという感情の他にもう一つ、なにか別の感情が……。

 こんな気持ちは初めてでとても怖い。私にとっては得体の知れない感情で戸惑う。

 そんな時に限ってある出来事を思い出してしまう。

 それは事故とはいえ、殿下とキスしてしまった日のことを。

 意識をしないように気をつけてたのに、一度意識してしまったら自然と恥ずかしくなる。

 殿下の顔が見れないし、顔が熱い。

 どうしちゃったんだろう。推しにドキドキするのは当たり前だけど、

 ドキドキ以上にとても苦しい。

 さっきまで意識してなかったのに!
 意識したらこれよ。

 キスだって……ただの事故だし。殿下も気にしてないみたいだし……。

「ソフィア嬢?⠀顔が赤いけど、どこか具合が……!?」

 私の両頬を殿下が両手で優しく掴み、強引に顔を向けられ自然と殿下と目が合ってしまった。

「~~~っ」

 辛すぎて泣きそう……。

 泣きたいのをグッと我慢した。

 ピリッと、電気が全身を駆け巡ったのと同時に悪寒がした。

 この場所で実際にあったかもしらない場面が走馬灯のように流れだした。

 二人の男女が仲睦まじく話していた。その光景をなんとも言えない気持ちで見ている。

 ただじーっと、二人の男女を目を逸らすことなく見つめている。

「どう……して……」

 ーーどうして、わたくしではダメなのですか。

 見ていたのは、悪役令嬢。

 ただ、殿下が愛おしくてたまらないという想いがヒシヒシと伝わってくる。

 息が出来ないぐらい悲しくて……、殿下と楽しそうに話してる女性が憎くて仕方ない。

 だけど、次の瞬間。

 ある光景は最初っからなにもなかったかのように消えていく……。

 残ったのは、悲しい気持ちと怒りだけ。

 これは、記憶?

 私の……?⠀いや、違う。これは悪役令嬢の記憶。

 だけどおかしい。今、悪役令嬢の私はここに居て、今日が入学式。

 だからあの女性……ヒロインと、こんな親密になるのはまだまだ先なんだ。

 もしかしたら……殿下の中にいる悪役令嬢(彼女)の……?

 いや、確信はない。それは私の仮説なんだから。

「あ、あの。やっぱり、具合が悪いみたいで……」
「そ、そうか。送っていくよ」
「いいえ、一人で平気です」

 私と目が合うと殿下は一瞬、固まったような気がした。

 触れられた頬がとても熱い。
 頭がくらくらしておかしくなりそう。

 だけどとても悲しい……。

 私は殿下にお辞儀したあと、早歩きでその場から離れた。

「……っ。なに、この気持ち」

 さっきまでは普通に話していた。それなのに、あることを意識した瞬間に頭が真っ白になってしまった。

 それにあの光景も気になる。

 嫌だ。怖い。

「……はぁ」

 息が苦しかったのが、段々と落ち着きを取り戻して、呼吸が楽になった。

 きっと殿下は、空中庭園に向かう途中だったんだろうな。
 そこでばったりと私と会った。ただ、それだけ。

 ……空中庭園に向かうのは諦めた方が良さそう。

 また、殿下の姿を見たら、得体の知れない感情が私の心を支配しそうで怖い。

「パーティの後、どうしよう」

 殿下と約束してしまったんだ。断るなんて失礼なことは出来ないし……。

 まだ少し、胸が苦しい。

 意識しないように別のことを考えよう。もう、これしかない気がする。

 胸を抑えながら歩いていると肩を掴まれた。

 いきなりのことで驚いたが、肩を掴んだ相手を見て胸を撫で下ろした。

「ああ、やっと見つけた……。迷子になってないかと心配で」
「ノ……エル」
「すみません。イアン様に聞いたのですけど……姉上は方向音痴ですから」

 ノエルは走ってきたかのように息を乱して、汗が出ていた。

 私は安心したのか、我慢していた涙が溢れてきた。

「姉上!?」

 急に泣くものだから、周りの貴族たちもヒソヒソと小声で話し出した。

 魔力測定して解散しただけで、まだ貴族たちは学園で楽しそうに話しているんだ。
 そんな中、いきなり泣く子がいれば周りは動揺するだろう。

 それが男女ならば尚更だ。

 ノエルは動揺しながら周りをキョロキョロしている。

 周りから見れば、男性が女性を泣かせたように見えるから、気が気じゃないだろう。

 それは誤解なのだから。

 だけど、誤解を解こうにも私にはそんな余裕が無い。

「なにかありました?⠀もしかして僕がなにかしちゃいました?」

 小さく息をついたノエルは優しく頭を撫でてくれた。

 私は首を横に振った。違う、そうじゃないと声に出して言いたいのになにも言えない。

 首を振るのが精一杯だった。

 泣いてる理由をそれ以上は聞かずに、私が落ち着くまで頭を撫でてくれた。



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