乙女ゲームの悪役令嬢に転生してしまった私は、全力で死亡フラグを回避したいのに、なぜか空回りしてしまうんです(涙)

藤原 柚月

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第十四章 悪役令嬢

逢いたいと願うのは

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 お義母さまは薔薇園をゆっくりと歩いている。私もその後に続く。

 ふと、ガゼボ前で立ち止まる。

 お義母さまが立ち止まるので自然と私も立ち止まる。

 私がデメトリアス家に養女として迎え入れられる前までは、ガゼボでお茶したりしていたそうだけど、今ではテーブルや椅子はなく、ガゼボの屋根と支えてる柱には白薔薇と草がまとわりついていた。

 今では、景観(ランドスケープ)として装飾物になっていた。

 ただ懐かしむように見つめるお義母さま。
 きっと、私には分からない思い入れが深いのかもしれない。実の両親が関わってるという可能性もあるけど。

 お義母さまはゆっくりと話し出した。

「ジェシカ姉様は、あなたに賢い子になってほしいからではありません」
「……だっ、だったらどんな由来が」
「強く生きてほしい。例えモノゴトの本質を見抜けなくても……。誰よりも優しく……相手と向き合えるように」
「それなら、もっと相応しい名前があったんじゃ」
「ソフィアじゃないといけないんですわ。ジェシカ姉様は智慧の中に、知性、理性、理知、知恵が含まれているとお考えでしたの。それに、何かとは言わなくとも大変なものを抱えているでしょう? どんなことがあってもあなたの経験は必ず役に立つ。そう思ってソフィアにしたんですのよ」

 ……何度でも失敗してもいい。だけど前を向いて強く生きていてほしい。
 経験は智慧となり、役に立つはずだと。

 まるで、自分たちが居なくなっても生きていけるようにとも思ってしまう。

 いや、ソフィアが産まれた時点で死を覚悟していたのかもしれない。

 私は目を瞑る。

 風が吹き、庭の草一面、ささやくように揺れるのが音でわかる。
 幻聴まで聞こえ出した。

 ーーソフィア。

 と、優しく呼ぶ声は今は亡き母親に似ていた。目頭が熱くなり、涙が次から次へと流れ出した。

 願わくば……。

「逢い……たい……」

 込み上げてくる感情に我慢出来ずに吐き出してしまった。

 ずっと、抑えていた感情だった。それを一度口に出してしまえば感情には嘘をつけなくなる。

 顔を両手で覆い、その場に崩れ落ちた。

「逢いたいっ!! 逢いたいよぉ……。生きててほしかったのに、なんで私なんかを生かして……死んじゃうの!?」

 前世の記憶があろうとも、私がソフィアであって、ソフィアじゃないとしても……逢いたいものは逢いたい。

 ソフィアとしての小さい頃の記憶なんて、ぼんやりとしか覚えてない。

 その理由が今、わかった。

 ……この記憶は、私に残したものだ。

 呪われていても、心が闇に染まろうとも、思い入れのある記憶を……忘れたくないから。

 それか、誰かに助けを求めてるとか。

 私だったらそうするだろうと思ってしまったから。

 記憶がぼやけてても、逢いたい気持ちが強いのは、ソフィアが愛されていた証拠だろう。

 お義母さまはゆっくりとしゃがみ、私の肩を抱いて優しい口調で言う。

「……それはあなたという宝物を見つけてしまったからですわ。親は子の幸せを誰よりも願うものですもの」

 自分を犠牲にしてても子の命を守るだなんて、私には理解出来ない。

 ……前世での母親は、私を嫌っていたのに。この世界では、嫌う所か好意を抱いている。

 ずっと欲しいと思っていた温かさ。

 羨ましくて、とても憎い。

 ーーなんで私はこんなにも……、性格が悪いんだろう。

 自分が情けなくて失望する。

 私はお義母さまに抱きついて泣いた。

 ずっと辛くても、誰にも言えない孤独さ。甘えてはいけないと自分に言い聞かせていた悲しさ。

 その感情が涙となって溢れ出す。

 落ち着くまで、お義母さまは私を優しく抱き締め、背中を摩ってくれた。

 普段なら、はしたないと怒るのに、この日は何も言わなかった。


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