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第十五章 それぞれの思考が交差する新たなルート
どうか、このまま気付かずに【アイリス視点】
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「……はぁ」
ソフィア様が寮に戻ってくるまで私は部屋の掃除をしていた。
棚を拭きながら深いため息をつく。部屋には私一人しかいないのでそのため息はよく部屋全体に通る。
ソフィア様には実家に帰ると伝えたけども本当は帰りたくなんかない。
私の家庭は、女性は子を必ず孕まなければならないという方針がある。嫁いだ先も同じような方針があったようで私は子を孕めない体だとわかると、結婚してすぐに捨てられた。
「お前は女として生きる価値は無し」と、かなり酷い言葉を残されて。
行く場所なんて無かったから実家に帰ってみたら数々の言葉の暴力と体罰が待っていた。命の危機を感じた私は必死に逃げた。
そんなことがあったのに、どこかで勤め先を聞いたのか平然と手紙を送り付け「お前の婚約相手が見つかった。今すぐ帰ってこい」だなんて、呆れて笑ってしまう。
でも、帰らないといけない理由が出来てしまった。手紙の最後にそれが綴られていた。
ーー解放されたと思ったのに。
天はとことん私を嫌うんだね。
……でも、自分のことは自分で解決しないと、だよね。
「よし!」
両の手で自分の頬をパチンと叩き、気合いを入れ直す。
実家に行くのは、自分のためでもあり、ソフィア様を守るためでもある。
気合いを入れないと。
ふと時間を確認するともうそろそろ寮に戻ってくる頃だろう。私は急いで掃除を終わらし、出迎える準備をした。
ーーーーーーーーーーーーー
エンドランスに向かうと数名のご令嬢がエンドランスに入ってきていた。
私はソフィア様の姿を探して、見つけるとゆっくりとお辞儀をした。それは他の侍女も同じように仕えてるご令嬢の前でお辞儀をしている。
他のご令嬢は、そんな侍女を当たり前だと思ってスルーしているのにソフィア様は違う。
私がゆっくりと頭を上げるとソフィア様は優しく微笑んで「ありがとう」と感謝の言葉を告げる。
私はその言葉が毎回聞く度に嬉しくなって微笑み返してしまう。
……私の仕えるお方はとても優しい方なのだと誇りに思う。
当たり前なことを当たり前だと思わずに感謝や謝罪をしてくれる。それが例え下の者だろうと。
だからこそ、私はソフィア様を好きでいられる。
ソフィア様の鞄を持ち、ソフィア様と一緒に部屋へ向かう。
部屋につくなりソフィア様はソファーに座り、嬉しそうにしていた。
珍しく鼻歌交じりでご機嫌だ。こんな嬉しそうにしているソフィア様ははじめて見る。……なんだか可愛らしい。
「今日は良いことでもあったんですか?」
「え!? うん。そうなの……私の家に泊まりたいって言っていた人がいたんだよ」
「まぁ。それは良かったですね」
声を弾ませて、少しだけ恥ずかしそうにしているソフィア様を見ると一瞬で疲れが吹き飛ぶ。
私も嬉しくなって手を軽く叩く。
あまりご友人の話をしてこないから心配してたけど、どうやら杞憂だったようで少し安心した。
「あっ、アイリス」
「はい?」
「いつ頃実家に帰るのかな。いつまで一緒にいられるの?」
「……ソフィア様が長期休業に入る一日前ですかね。もう、退職届けは出してます」
「もうそろそろじゃない!! 急なんだね……、アイリスはそれでいいの?」
「もう決めたことですから」
「……そうじゃなくて、実家に帰ってアイリスは幸せになれるの?」
不意にソフィア様の鋭い言葉が突き刺さる。……きっと実家に帰っても幸せにはなれない。それでも……。
「はい、幸せになれます」
ニコッと作り笑顔で返す。『絶対』だとか『確実に』とかは言えなかった。
ソフィア様は不安げだったけどそれ以上は何も言わなかった。
……それでいい。私の気持ちを知ったら困らせるだけだもの。
ーーどうかこのまま気付かずに私の分まで幸せになってくださいね。
ソフィア様が寮に戻ってくるまで私は部屋の掃除をしていた。
棚を拭きながら深いため息をつく。部屋には私一人しかいないのでそのため息はよく部屋全体に通る。
ソフィア様には実家に帰ると伝えたけども本当は帰りたくなんかない。
私の家庭は、女性は子を必ず孕まなければならないという方針がある。嫁いだ先も同じような方針があったようで私は子を孕めない体だとわかると、結婚してすぐに捨てられた。
「お前は女として生きる価値は無し」と、かなり酷い言葉を残されて。
行く場所なんて無かったから実家に帰ってみたら数々の言葉の暴力と体罰が待っていた。命の危機を感じた私は必死に逃げた。
そんなことがあったのに、どこかで勤め先を聞いたのか平然と手紙を送り付け「お前の婚約相手が見つかった。今すぐ帰ってこい」だなんて、呆れて笑ってしまう。
でも、帰らないといけない理由が出来てしまった。手紙の最後にそれが綴られていた。
ーー解放されたと思ったのに。
天はとことん私を嫌うんだね。
……でも、自分のことは自分で解決しないと、だよね。
「よし!」
両の手で自分の頬をパチンと叩き、気合いを入れ直す。
実家に行くのは、自分のためでもあり、ソフィア様を守るためでもある。
気合いを入れないと。
ふと時間を確認するともうそろそろ寮に戻ってくる頃だろう。私は急いで掃除を終わらし、出迎える準備をした。
ーーーーーーーーーーーーー
エンドランスに向かうと数名のご令嬢がエンドランスに入ってきていた。
私はソフィア様の姿を探して、見つけるとゆっくりとお辞儀をした。それは他の侍女も同じように仕えてるご令嬢の前でお辞儀をしている。
他のご令嬢は、そんな侍女を当たり前だと思ってスルーしているのにソフィア様は違う。
私がゆっくりと頭を上げるとソフィア様は優しく微笑んで「ありがとう」と感謝の言葉を告げる。
私はその言葉が毎回聞く度に嬉しくなって微笑み返してしまう。
……私の仕えるお方はとても優しい方なのだと誇りに思う。
当たり前なことを当たり前だと思わずに感謝や謝罪をしてくれる。それが例え下の者だろうと。
だからこそ、私はソフィア様を好きでいられる。
ソフィア様の鞄を持ち、ソフィア様と一緒に部屋へ向かう。
部屋につくなりソフィア様はソファーに座り、嬉しそうにしていた。
珍しく鼻歌交じりでご機嫌だ。こんな嬉しそうにしているソフィア様ははじめて見る。……なんだか可愛らしい。
「今日は良いことでもあったんですか?」
「え!? うん。そうなの……私の家に泊まりたいって言っていた人がいたんだよ」
「まぁ。それは良かったですね」
声を弾ませて、少しだけ恥ずかしそうにしているソフィア様を見ると一瞬で疲れが吹き飛ぶ。
私も嬉しくなって手を軽く叩く。
あまりご友人の話をしてこないから心配してたけど、どうやら杞憂だったようで少し安心した。
「あっ、アイリス」
「はい?」
「いつ頃実家に帰るのかな。いつまで一緒にいられるの?」
「……ソフィア様が長期休業に入る一日前ですかね。もう、退職届けは出してます」
「もうそろそろじゃない!! 急なんだね……、アイリスはそれでいいの?」
「もう決めたことですから」
「……そうじゃなくて、実家に帰ってアイリスは幸せになれるの?」
不意にソフィア様の鋭い言葉が突き刺さる。……きっと実家に帰っても幸せにはなれない。それでも……。
「はい、幸せになれます」
ニコッと作り笑顔で返す。『絶対』だとか『確実に』とかは言えなかった。
ソフィア様は不安げだったけどそれ以上は何も言わなかった。
……それでいい。私の気持ちを知ったら困らせるだけだもの。
ーーどうかこのまま気付かずに私の分まで幸せになってくださいね。
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