乙女ゲームの悪役令嬢に転生してしまった私は、全力で死亡フラグを回避したいのに、なぜか空回りしてしまうんです(涙)

藤原 柚月

文字の大きさ
157 / 236
第十五章 それぞれの思考が交差する新たなルート

沢山迷惑かけてるのに、アレン様は優しい

しおりを挟む
「婚約……を……?   ですが、私は」
「またあの時みたいに好きな人がいるという偽りは無しだよ」

 私の言葉を遮ってアレン様に言われてしまった。

「私とアレン様は友人です……友人なんです」
「友人だから恋愛対象にならないと?」
「違っ!!」

 アレン様の言葉に困惑し、動揺をして反射的に否定してしまった。

 ついつい否定した言葉を言ってしまい、恥ずかしくて赤面してしまう。

 アレン様は満足そうに微笑んでいる。これは、誘導尋問か何かなのかな。と、思ってしまった。

 とりあえず落ち着け。冷静に、アレン様の気持ちをちゃんと聞こう。

「どうして私なのですか?」
「そうだね。俺はキミを好きになったから、かな。一緒に居て面白い。ただ危なっかしくて目を放せないけどーー……それにキミは俺の事を怖がってるのに助けようと必死だった。自分の問題も抱えてるだろうに」
「そんなの、当たり前じゃないですか。アレン様は王族ですし」
「……王族だろうと、自分の命がかかってる時に相手のことを心配なんてしないだろう。そういう時ほど人は本性を表に出す。それにね、当たり前が出来ない人は沢山いるんだよ。当たり前が出来るソフィア嬢はとても輝かしいと思う」
「~~っ!?!?」

 めちゃくちゃ褒められてる。恥ずかしい……。

 でも、沢山迷惑をかけてるのに、アレン様は優しい。

「沢山迷惑をおかけしたり、大変失礼なことをしてしまったり……してたのですが」

 私は口篭りながらも言うと、アレン様は優しく微笑む。

「確かにそうだね。忠告を無視して敵に捕まったり、自分は顔色悪くて体調が優れないだろうに俺の心配したり……ああ、こんなこともあったね。悪夢で夜がまともに寝れない日々を送ってる時にソフィア嬢が俺のクマに気付いて近付いてきたと思ったらキスされちゃって」

 思い出したかのようにクスクス笑いながらも過去に私の失敗談とかなり恥ずかしいドジをした時のことを掘り起こされてしまった。

「あっ……あああ……あれは!!!? じ、事故と言いましょうか」

 私は自分の火照っている頬に両手を添える。必死に抗議したが、アレン様は動じない。むしろ、この状況を楽しんでいるように思える。

「今思えば、俺はあの時から既にソフィア嬢に好意を寄せてたのかもね。ソフィア嬢とキスをして心地良いと思ってしまったんだから」

 こ、この人は!!?

 流石は攻略対象者だけある。口説き文句が……、とにかく凄い。

 胸の高鳴りが凄い。こんなの、おかしくなりそう。

「顔が赤いね。その顔が赤い理由が俺のせいだったら嬉しい」

 アレン様は私の両頬を触り、優しくアレン様と目が合うように角度を変えさせられた。

「……あ、あの。正直、好きってよく分からなくて……」

 ガタッと馬車が揺れた。反動で椅子から落ちそうになる私を咄嗟に支えてくれた。

「着いたみたいだね」
「えっ……」
「この馬車は特殊な魔法がかけられててね、空を飛べるんだ。かなり距離がある場所でもそこそこ短縮出来る」

 な、なるほど……。アレン様との会話に夢中になってて気付かなかった。

 それなら、ミットライト王国の街並みなんて見れるはずはない。魔法って凄いな。改めて実感する。

「早く着いてしまったことが不服かい? それならもう少し馬車を走らせても」
「あっ、あの、違います!! 大丈夫ですから」
「……そっか、それは残念だ」

 馬車の扉がゆっくりと開いた。アレン様は先に降りていく。私も馬車から降りようとすると、アレン様が手を差し伸べてきた。

 私は戸惑いながらも手を出すと、アレン様はその手を攫う。

 誘導されながらも馬車を降りる。

「返事はいつでもいいけど、いつまでも待ってはあげられないからね。覚えといて」

 紳士的なエスコートをされ、戸惑っているとアレン様が私の耳元で囁く。

 そ、それって……、返事は待つつもりだけど、長くは待てないという意味!?

 こ、困る……。何もこんな急に告白しなくても……。

 再び顔が赤くなる。その様子を見ている侍女たちの間では『お二人が相思相愛』なのだと、瞬く間に屋敷中に知れ渡ってしまった。

 別の馬車から降りたノエルが複雑な気持ちで私を見ていたことを知る術がなかった。



しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

【完結】家族に愛されなかった辺境伯の娘は、敵国の堅物公爵閣下に攫われ真実の愛を知る

水月音子
恋愛
辺境を守るティフマ城の城主の娘であるマリアーナは、戦の代償として隣国の敵将アルベルトにその身を差し出した。 婚約者である第四王子と、父親である城主が犯した国境侵犯という罪を、自分の命でもって償うためだ。 だが―― 「マリアーナ嬢を我が国に迎え入れ、現国王の甥である私、アルベルト・ルーベンソンの妻とする」 そう宣言されてマリアーナは隣国へと攫われる。 しかし、ルーベンソン公爵邸にて差し出された婚約契約書にある一文に疑念を覚える。 『婚約期間中あるいは婚姻後、子をもうけた場合、性別を問わず健康な子であれば、婚約もしくは結婚の継続の自由を委ねる』 さらには家庭教師から“精霊姫”の話を聞き、アルベルトの側近であるフランからも詳細を聞き出すと、自分の置かれた状況を理解する。 かつて自国が攫った“精霊姫”の血を継ぐマリアーナ。 そのマリアーナが子供を産めば、自分はもうこの国にとって必要ない存在のだ、と。 そうであれば、早く子を産んで身を引こう――。 そんなマリアーナの思いに気づかないアルベルトは、「婚約中に子を産み、自国へ戻りたい。結婚して公爵様の経歴に傷をつける必要はない」との彼女の言葉に激昂する。 アルベルトはアルベルトで、マリアーナの知らないところで実はずっと昔から、彼女を妻にすると決めていた。 ふたりは互いの立場からすれ違いつつも、少しずつ心を通わせていく。

聖女の力は使いたくありません!

三谷朱花
恋愛
目の前に並ぶ、婚約者と、気弱そうに隣に立つ義理の姉の姿に、私はめまいを覚えた。 ここは、私がヒロインの舞台じゃなかったの? 昨日までは、これまでの人生を逆転させて、ヒロインになりあがった自分を自分で褒めていたのに! どうしてこうなったのか、誰か教えて! ※アルファポリスのみの公開です。

村娘になった悪役令嬢

枝豆@敦騎
恋愛
父が連れてきた妹を名乗る少女に出会った時、公爵令嬢スザンナは自分の前世と妹がヒロインの乙女ゲームの存在を思い出す。 ゲームの知識を得たスザンナは自分が将来妹の殺害を企てる事や自分が父の実子でない事を知り、身分を捨て母の故郷で平民として暮らすことにした。 村娘になった少女が行き倒れを拾ったり、ヒロインに連れ戻されそうになったり、悪役として利用されそうになったりしながら最後には幸せになるお話です。 ※他サイトにも掲載しています。(他サイトに投稿したものと異なっている部分があります) アルファポリスのみ後日談投稿しております。

悪役令嬢?いま忙しいので後でやります

みおな
恋愛
転生したその世界は、かつて自分がゲームクリエーターとして作成した乙女ゲームの世界だった! しかも、すべての愛を詰め込んだヒロインではなく、悪役令嬢? 私はヒロイン推しなんです。悪役令嬢?忙しいので、後にしてください。

〘完結〛ずっと引きこもってた悪役令嬢が出てきた

桜井ことり
恋愛
そもそものはじまりは、 婚約破棄から逃げてきた悪役令嬢が 部屋に閉じこもってしまう話からです。 自分と向き合った悪役令嬢は聖女(優しさの理想)として生まれ変わります。 ※爽快恋愛コメディで、本来ならそうはならない描写もあります。

悪役令嬢が行方不明!?

mimiaizu
恋愛
乙女ゲームの設定では悪役令嬢だった公爵令嬢サエナリア・ヴァン・ソノーザ。そんな彼女が行方不明になるというゲームになかった事件(イベント)が起こる。彼女を見つけ出そうと捜索が始まる。そして、次々と明かされることになる真実に、妹が両親が、婚約者の王太子が、ヒロインの男爵令嬢が、皆が驚愕することになる。全てのカギを握るのは、一体誰なのだろう。 ※初めての悪役令嬢物です。

【完結】ヒロインに転生しましたが、モブのイケオジが好きなので、悪役令嬢の婚約破棄を回避させたつもりが、やっぱり婚約破棄されている。

樹結理(きゆり)
恋愛
「アイリーン、貴女との婚約は破棄させてもらう」 大勢が集まるパーティの場で、この国の第一王子セルディ殿下がそう宣言した。 はぁぁあ!? なんでどうしてそうなった!! 私の必死の努力を返してー!! 乙女ゲーム『ラベルシアの乙女』の世界に転生してしまった日本人のアラサー女子。 気付けば物語が始まる学園への入学式の日。 私ってヒロインなの!?攻略対象のイケメンたちに囲まれる日々。でも!私が好きなのは攻略対象たちじゃないのよー!! 私が好きなのは攻略対象でもなんでもない、物語にたった二回しか出てこないイケオジ! 所謂モブと言っても過言ではないほど、関わることが少ないイケオジ。 でもでも!せっかくこの世界に転生出来たのなら何度も見たイケメンたちよりも、レアなイケオジを!! 攻略対象たちや悪役令嬢と友好的な関係を築きつつ、悪役令嬢の婚約破棄を回避しつつ、イケオジを狙う十六歳、侯爵令嬢! 必死に悪役令嬢の婚約破棄イベントを回避してきたつもりが、なんでどうしてそうなった!! やっぱり婚約破棄されてるじゃないのー!! 必死に努力したのは無駄足だったのか!?ヒロインは一体誰と結ばれるのか……。 ※この物語は作者の世界観から成り立っております。正式な貴族社会をお望みの方はご遠慮ください。 ※この作品は小説家になろう、カクヨムで完結済み。

彼女が高級娼婦と呼ばれる理由~元悪役令嬢の戦慄の日々~

プラネットプラント
恋愛
婚約者である王子の恋人をいじめたと婚約破棄され、実家から縁を切られたライラは娼館で暮らすことになる。だが、訪れる人々のせいでライラは怯えていた。 ※完結済。

処理中です...