190 / 240
第十八章 アイリスの願いと叶わないと思っていた恋
アイリスは今、幸せ?
しおりを挟む
急いで部屋に入ると、侍女に食器を投げ付けたのであろう。食器が侍女の足元に散乱してある。
侍女もそうだけどアイリスの頬も切れていて血がツーっと流れ落ちていた。
これはどういう状況なのだろうか。
お互いに威嚇し合ってるようにも見える。
誰か悪いかなんて……。アイリスのことを何も知らない人からすればアイリスが悪く見えるだろうが、私は良く知っている。
アイリスは理由も無しに人を傷付けることはしない。だからといって、理由があっても傷付けないのだけど。
侍女が私に気付くと私の方に駆け寄った。
「ちょっとあんた、いい所に来たわね。これは立派な暴力よ。あんまりだわ。私はただ、軽食を準備しただけなのに、不満があるからって私に食器ごと投げ付けたのよ。今から旦那様に報告に行くから、見張っててくれないかしら」
「……良いですよ」
私は必死に怒りを堪え、苦笑した。侍女が私の後ろにいるノア先生に気付くと気まずそうにした。
「傷……大丈夫ですか?」
「あっ、はい。お気遣い感謝します。それでは……失礼します」
ノア先生が侍女を心配する言葉をかけると、侍女の表情は強ばった。
ノア先生に軽くお辞儀をした後、そそくさと部屋から出ていってしまった。
ノア先生は貴族じゃないから、きっと誰かの付き人だと思ってるのかも。
……だったら尚更、告げ口されるかもしれないというのを気にした方がいいんじゃないのかなと思ったけど、目の前にいるアイリスが心配な為、出かかった言葉を呑み込んだ。
バタンっと扉が完全に閉まってから私はアイリスに駆け寄った。
「あの……大丈……」
「触らないで!!」
アイリスの頬に触れようとした私の手を弾く。その瞳は憎しみが込められていた。一体、何があったのだろう……。
「同情してるフリ? あなた達がソフィア様の何を知ってるというのよ。なんで……何も知らないくせに令嬢の恥だなんて……言えるのよ。私の悪口なら耐えられた。でも……ソフィア様の悪口は、許せない」
アイリスに弾かれた手を擦っていた私は胸が痛んだ。
アイリスは私の為に怒ってくれてたんだ。こんな風に感情を露わにしているアイリスを始めてみた。
部屋に入ってきてから、アイリスは私の顔を見ようとしていない。私が誰なのか理解していないだろうな。
ーー本当に、この人は。
私はアイリスの頬に触れる。キッと睨んできたアイリスは私の顔を見る。驚いたような表情になって次の瞬間にはみるみるうちに青ざめる。
「ソ、ソフィア様!? なんでこのような場所に」
私は泣きそうになるのを堪え、微笑む。動揺をして慌てふためくアイリスに優しく声をかける。
「聞きたいことがあるの。アイリスは本当に……今、幸せ??」
私の問いにビクッと肩を震わせるが、アイリスは困ったように笑う。
「勿論ですよ。私は……」
「うそつき……。知ってるんだからね。アイリスが家族から、そして侍女からも疎まれていることを。そんな中で幸せだなんて、冗談でも笑えないよ」
アイリスは私の手に自身の手を重ねて目を閉じる。手にアイリスの髪の毛がかかり、少しくすぐったい。若干濡れてるし……。
「出来ることなら、知られたくありませんでした。軽蔑しましたでしょう? 私は子を産めず、捨てられた挙句に傍若無人なことをしていたのです」
「アイリスはそんなことしないよ」
「デメトリアス邸にお世話になる前の私なんて知らないでしょう。私は、最低な人間で卑怯なんですよ」
アイリスはなんでそこまで頑なに……。
とりあえず、ソファーに座るように促す。
アイリスは渋々座る。その横に私も座る。ノア先生は気を利かせてなのか、そっと部屋から出ていく。多分、扉の前に居るんだろう。
「卑怯なら私も同じ。血の繋がりがある両親を私が殺したというのに、こうして笑えてるんだもん」
「何故……それを。まさか、記憶が!? 違うんですよ。ソフィア様は何も悪くありません!!」
「私が力を暴走して殺しちゃったの。知ってたんだね」
「……っ。すみません。ソフィア様の専属侍女になった時に、ソフィア様は全然感情が読み取れない時期がありまして、少しでもソフィア様の事を知りたいと思って個人で色々と調べちゃいまして……」
「それで知っちゃったんだ。でもそれって結構難しいような気もするけど」
「奥様と旦那様が話してるのを……盗み聞きを。で、ですが、あれは本当にたまたまと言いましょうか」
あたふたしながらも訂正しようとして空回るアイリスが可笑しくて、つい笑ってしまった。
「必死すぎ。なんで私がここに来たのか、わかる?」
「い、いえ。分かりません」
「そっか」
私はアイリスの両頬に手を添えて、強引に視線を合わせる。
「アイリスが幸せなら何も言わなかった。けど、幸せそうに見えないから言わせてもらう。アイリスが私の幸せを願っているように、私もアイリスが幸せになることを願ってる。嫌なんじゃないの? 本当は結婚、したくないんだよね? 私がここに来たのは、アイリスの真意を確かめるため。それと私の気持ちも伝えるために来た」
私の声……届いたのかな?
不安になっていると、アイリスの目から一粒の涙が零れ落ちた。
侍女もそうだけどアイリスの頬も切れていて血がツーっと流れ落ちていた。
これはどういう状況なのだろうか。
お互いに威嚇し合ってるようにも見える。
誰か悪いかなんて……。アイリスのことを何も知らない人からすればアイリスが悪く見えるだろうが、私は良く知っている。
アイリスは理由も無しに人を傷付けることはしない。だからといって、理由があっても傷付けないのだけど。
侍女が私に気付くと私の方に駆け寄った。
「ちょっとあんた、いい所に来たわね。これは立派な暴力よ。あんまりだわ。私はただ、軽食を準備しただけなのに、不満があるからって私に食器ごと投げ付けたのよ。今から旦那様に報告に行くから、見張っててくれないかしら」
「……良いですよ」
私は必死に怒りを堪え、苦笑した。侍女が私の後ろにいるノア先生に気付くと気まずそうにした。
「傷……大丈夫ですか?」
「あっ、はい。お気遣い感謝します。それでは……失礼します」
ノア先生が侍女を心配する言葉をかけると、侍女の表情は強ばった。
ノア先生に軽くお辞儀をした後、そそくさと部屋から出ていってしまった。
ノア先生は貴族じゃないから、きっと誰かの付き人だと思ってるのかも。
……だったら尚更、告げ口されるかもしれないというのを気にした方がいいんじゃないのかなと思ったけど、目の前にいるアイリスが心配な為、出かかった言葉を呑み込んだ。
バタンっと扉が完全に閉まってから私はアイリスに駆け寄った。
「あの……大丈……」
「触らないで!!」
アイリスの頬に触れようとした私の手を弾く。その瞳は憎しみが込められていた。一体、何があったのだろう……。
「同情してるフリ? あなた達がソフィア様の何を知ってるというのよ。なんで……何も知らないくせに令嬢の恥だなんて……言えるのよ。私の悪口なら耐えられた。でも……ソフィア様の悪口は、許せない」
アイリスに弾かれた手を擦っていた私は胸が痛んだ。
アイリスは私の為に怒ってくれてたんだ。こんな風に感情を露わにしているアイリスを始めてみた。
部屋に入ってきてから、アイリスは私の顔を見ようとしていない。私が誰なのか理解していないだろうな。
ーー本当に、この人は。
私はアイリスの頬に触れる。キッと睨んできたアイリスは私の顔を見る。驚いたような表情になって次の瞬間にはみるみるうちに青ざめる。
「ソ、ソフィア様!? なんでこのような場所に」
私は泣きそうになるのを堪え、微笑む。動揺をして慌てふためくアイリスに優しく声をかける。
「聞きたいことがあるの。アイリスは本当に……今、幸せ??」
私の問いにビクッと肩を震わせるが、アイリスは困ったように笑う。
「勿論ですよ。私は……」
「うそつき……。知ってるんだからね。アイリスが家族から、そして侍女からも疎まれていることを。そんな中で幸せだなんて、冗談でも笑えないよ」
アイリスは私の手に自身の手を重ねて目を閉じる。手にアイリスの髪の毛がかかり、少しくすぐったい。若干濡れてるし……。
「出来ることなら、知られたくありませんでした。軽蔑しましたでしょう? 私は子を産めず、捨てられた挙句に傍若無人なことをしていたのです」
「アイリスはそんなことしないよ」
「デメトリアス邸にお世話になる前の私なんて知らないでしょう。私は、最低な人間で卑怯なんですよ」
アイリスはなんでそこまで頑なに……。
とりあえず、ソファーに座るように促す。
アイリスは渋々座る。その横に私も座る。ノア先生は気を利かせてなのか、そっと部屋から出ていく。多分、扉の前に居るんだろう。
「卑怯なら私も同じ。血の繋がりがある両親を私が殺したというのに、こうして笑えてるんだもん」
「何故……それを。まさか、記憶が!? 違うんですよ。ソフィア様は何も悪くありません!!」
「私が力を暴走して殺しちゃったの。知ってたんだね」
「……っ。すみません。ソフィア様の専属侍女になった時に、ソフィア様は全然感情が読み取れない時期がありまして、少しでもソフィア様の事を知りたいと思って個人で色々と調べちゃいまして……」
「それで知っちゃったんだ。でもそれって結構難しいような気もするけど」
「奥様と旦那様が話してるのを……盗み聞きを。で、ですが、あれは本当にたまたまと言いましょうか」
あたふたしながらも訂正しようとして空回るアイリスが可笑しくて、つい笑ってしまった。
「必死すぎ。なんで私がここに来たのか、わかる?」
「い、いえ。分かりません」
「そっか」
私はアイリスの両頬に手を添えて、強引に視線を合わせる。
「アイリスが幸せなら何も言わなかった。けど、幸せそうに見えないから言わせてもらう。アイリスが私の幸せを願っているように、私もアイリスが幸せになることを願ってる。嫌なんじゃないの? 本当は結婚、したくないんだよね? 私がここに来たのは、アイリスの真意を確かめるため。それと私の気持ちも伝えるために来た」
私の声……届いたのかな?
不安になっていると、アイリスの目から一粒の涙が零れ落ちた。
1
あなたにおすすめの小説
悪役令息(冤罪)が婿に来た
花車莉咲
恋愛
前世の記憶を持つイヴァ・クレマー
結婚等そっちのけで仕事に明け暮れていると久しぶりに参加した王家主催のパーティーで王女が婚約破棄!?
王女が婚約破棄した相手は公爵令息?
王女と親しくしていた神の祝福を受けた平民に嫌がらせをした?
あれ?もしかして恋愛ゲームの悪役令嬢じゃなくて悪役令息って事!?しかも公爵家の元嫡男って…。
その時改めて婚約破棄されたヒューゴ・ガンダー令息を見た。
彼の顔を見た瞬間強い既視感を感じて前世の記憶を掘り起こし彼の事を思い出す。
そうオタク友達が話していた恋愛小説のキャラクターだった事を。
彼が嫌がらせしたなんて事実はないという事を。
その数日後王家から正式な手紙がくる。
ヒューゴ・ガンダー令息と婚約するようにと「こうなったらヒューゴ様は私が幸せする!!」
イヴァは彼を幸せにする為に奮闘する。
「君は…どうしてそこまでしてくれるんだ?」「貴方に幸せになってほしいからですわ!」
心に傷を負い悪役令息にされた男とそんな彼を幸せにしたい元オタク令嬢によるラブコメディ!
※ざまぁ要素はあると思います。
※何もかもファンタジーな世界観なのでふわっとしております。
気配消し令嬢の失敗
かな
恋愛
ユリアは公爵家の次女として生まれ、獣人国に攫われた長女エーリアの代わりに第1王子の婚約者候補の筆頭にされてしまう。王妃なんて面倒臭いと思ったユリアは、自分自身に認識阻害と気配消しの魔法を掛け、居るかいないかわからないと言われるほどの地味な令嬢を装った。
15才になり学園に入学すると、編入してきた男爵令嬢が第1王子と有力貴族令息を複数侍らかせることとなり、ユリア以外の婚約者候補と男爵令嬢の揉める事が日常茶飯事に。ユリアは遠くからボーッとそれを眺めながら〘 いつになったら婚約者候補から外してくれるのかな? 〙と思っていた。そんなユリアが失敗する話。
※王子は曾祖母コンです。
※ユリアは悪役令嬢ではありません。
※タグを少し修正しました。
初めての投稿なのでゆる〜く読んでください。ご都合主義はご愛嬌ということで見逃してください( *・ω・)*_ _))ペコリン
【完結】【35万pt感謝】転生したらお飾りにもならない王妃のようなので自由にやらせていただきます
宇水涼麻
恋愛
王妃レイジーナは出産を期に入れ替わった。現世の知識と前世の記憶を持ったレイジーナは王子を産む道具である現状の脱却に奮闘する。
さらには息子に殺される運命から逃れられるのか。
中世ヨーロッパ風異世界転生。
乙女ゲームで婚約破棄をリアルに体験するのはごめんだ
いつき
恋愛
身近に最上の推しがいたら、例え結ばれなくても人参をぶら下げた馬にでもなると言うものですよね?
両親を喪い平民から貴族になると同時に、前世で見た乙女ゲーム系アニメの最推しが義兄になったレンファラン
貴族の子女として家の為に婚姻?
前世の記憶で領の発展に貢献?
推しの役に立ちたいし、アニメ通りの婚約破棄だけは避けたいところだけれど…
【完結】悪役令嬢だったみたいなので婚約から回避してみた
22時完結
恋愛
春風に彩られた王国で、名門貴族ロゼリア家の娘ナタリアは、ある日見た悪夢によって人生が一変する。夢の中、彼女は「悪役令嬢」として婚約を破棄され、王国から追放される未来を目撃する。それを避けるため、彼女は最愛の王太子アレクサンダーから距離を置き、自らを守ろうとするが、彼の深い愛と執着が彼女の運命を変えていく。
ブスすぎて嫁の貰い手がないから閨勤侍女になれと言われたので縁を切ります、完全に!完全縁切りの先にあったのは孤独ではなくて…
ハートリオ
恋愛
ルフスは結婚が決まった従姉の閨勤侍女になるよう父親に命令されたのをきっかけに父に無視され冷遇されて来た日々を終わらせようとブラコン父と完全に縁を切る決意する。
一方、従姉の結婚相手はアルゲンテウス辺境伯とのことだが、実は手違いがあって辺境伯が結婚したいのはルフス。
そんなこんなの異世界ファンタジーラブです。
読んでいただけると嬉しいです。
悪役令嬢に転生したので地味令嬢に変装したら、婚約者が離れてくれないのですが。
槙村まき
恋愛
スマホ向け乙女ゲーム『時戻りの少女~ささやかな日々をあなたと共に~』の悪役令嬢、リシェリア・オゼリエに転生した主人公は、処刑される未来を変えるために地味に地味で地味な令嬢に変装して生きていくことを決意した。
それなのに学園に入学しても婚約者である王太子ルーカスは付きまとってくるし、ゲームのヒロインからはなぜか「私の代わりにヒロインになって!」とお願いされるし……。
挙句の果てには、ある日隠れていた図書室で、ルーカスに唇を奪われてしまう。
そんな感じで悪役令嬢がヤンデレ気味な王子から逃げようとしながらも、ヒロインと共に攻略対象者たちを助ける? 話になるはず……!
第二章以降は、11時と23時に更新予定です。
他サイトにも掲載しています。
よろしくお願いします。
25.4.25 HOTランキング(女性向け)四位、ありがとうございます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる