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第十九章 心に封じられた記憶の闇
やっと還すことが出来る
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「姉上!!? もう起きても平気なのですか??」
体調も良くなったので散歩しようと思って庭に出ると、ノエルが心配そうに駆け寄ってきた。
ノエルは肩で息をしていて、右手には剣が握られている。若干汗もかいている。
「心配かけちゃったよね、ごめんなさい。汗、拭いてあげる」
「い、いえ。良いんです」
親切心で汗を拭こうとしてハンカチーフをノエルの頬に当てようとしたらノエルは顔を赤くして一歩後退りして、拒否した。
「もう少し寝ててください。倒れられたら心配です。まだ顔色も悪いですし」
「平気よ。それに、部屋に籠ってると憂鬱な気持ちになって気が滅入るのよ」
最近色々な事があったから。じっとしていると色々な事を思い出して、目的を忘れそうな気がする。
鬱になりそうな気がする。動ける時にはなるべく動いていきたいのよね。
ーー……まぁ、それだけじゃないんだけど。
「ノア先生に話したいことあるんだけど、知らない?」
「……それなら噴水と近くにいるのを見かけましたよ」
「分かった。行ってみるわ」
微笑むと、ノエルは苦笑した。きっと心配してるんだろうけど、強めに休んでとは言えないという顔だなと内心思いながらも気付かないふりをした。
薔薇が咲き誇る庭の奥に進むと、噴水が見えてきた。
「ノア先生!!」
私はノア先生の姿を見掛けると駆け寄った。
「ソフィア様。出歩いて大丈夫なのですか? もう少しお休みになっていた方がいいと思いますが」
「そうも言ってられないんじゃないのでしょうか。シーアさんのことです。私がシーアさんを連れてきちゃったのが原因で弱ってますよね」
「これ以上は無理させる訳にはいきません」
「自分の限界は分かってるつもりです。私のせいでシーアさんは弱ってるんです。私が何とかしないといけないんです。そうじゃないと、自分が許せません」
シーアさんは弱ることを知っていたと思う。それなのに、私に色々と教えてくれたし、修行にも付き合ってくれた。
そんな私を気にかけて守ってくれたりもしていた。気に入ったと言ってくれた。
感謝してもしきれないほどに。
「ノア先生……今、シーアさんは」
ノア先生の顔を見ると、困ったようにため息をして肩にグダっとしている手のひらサイズのドラゴンを手に乗せて見せてきた。
顔が赤く、痩せているようにも見える。肩で息をしていてとても苦しそうだ。
「もう限界のようです」
焦る素振りを見せないノア先生に違和感を覚えた。
シーアさんはノア先生の師匠だよね。なんでこんなにも冷静なの??
ノア先生が冷酷な人間じゃないのを私は知っているから余計に違和感がある。
「なんでそんなに冷静なのですか?」
「決めた事です。状況が悪すぎるのです」
「諦めるなんて、そんなこと……」
ノア先生らしくない。と言いかけたが、私はノア先生の事をよく知らない。
私はその先の言葉を飲み込んだ。
「諦めたくないです……私は約束しました。絶対に元の場所に還すと。だから」
「仕方ないですね」
ノア先生は深く息をつき、シーアさんを噴水の中に入れた。
「今のソフィア様なら大丈夫だとは思いますが、油断しないでくださいね。綺麗な水は浄化する力を持っています……気休めにしかなりませんが」
この世界での綺麗な水は浄化する力があると言われている。
回復薬とかあるぐらいだしね。なんでも魔力が溜まりやすい場所なんだとか。綺麗な水に自分の魔力を注ぎ込むと回復が早くなると伝えられている。それは傷口に、なんだけど。
衰弱しているならば……多分効かないと思うんだけど、それでもやらないよりはマシということなのだろう。
「私はどうすれば」
「目を閉じて、触れていてください。還したいと強く念じてください」
「それだけ? 魔法や……魔力とか」
「それだけですよ。魔法は使わなくて良いのです。還すには、互いの信頼関係が大切なんです。だからこそ、早めに還す事が出来なかったんですが……今なら大丈夫」
「わ、わかりました」
魔法を使うものだと思っていたから意外だった。そういえば想いの力はすごいって聞いた事があったな。
私は目を閉じて、強く念じた。
とあるイメージが浮かんだ。それは、シーアさんが宙に浮き、光に包まれて水がシーアさんを囲んでいる。
囲んでいる中でシーアさんが人型の姿になる。
宙に浮いたままで、水だけが噴水の中に戻る。バシャンっと水飛沫が飛ぶ。
シーアさんは光の中には入るように光の粒子となって消えていく。
消える間際にシーアさんが「ありがとう」と言っていた気がするけども……曖昧過ぎるので、気のせいかもしれない。
ゆっくりと目を開けると、噴水の中にいたシーアさんは消えていた。
隣にいるノア先生が私の肩に触れた。驚いたけどノア先生を見ると、ゆっくりと頷いていた。
還したんだ。還せたんだと、安堵する。
体調も良くなったので散歩しようと思って庭に出ると、ノエルが心配そうに駆け寄ってきた。
ノエルは肩で息をしていて、右手には剣が握られている。若干汗もかいている。
「心配かけちゃったよね、ごめんなさい。汗、拭いてあげる」
「い、いえ。良いんです」
親切心で汗を拭こうとしてハンカチーフをノエルの頬に当てようとしたらノエルは顔を赤くして一歩後退りして、拒否した。
「もう少し寝ててください。倒れられたら心配です。まだ顔色も悪いですし」
「平気よ。それに、部屋に籠ってると憂鬱な気持ちになって気が滅入るのよ」
最近色々な事があったから。じっとしていると色々な事を思い出して、目的を忘れそうな気がする。
鬱になりそうな気がする。動ける時にはなるべく動いていきたいのよね。
ーー……まぁ、それだけじゃないんだけど。
「ノア先生に話したいことあるんだけど、知らない?」
「……それなら噴水と近くにいるのを見かけましたよ」
「分かった。行ってみるわ」
微笑むと、ノエルは苦笑した。きっと心配してるんだろうけど、強めに休んでとは言えないという顔だなと内心思いながらも気付かないふりをした。
薔薇が咲き誇る庭の奥に進むと、噴水が見えてきた。
「ノア先生!!」
私はノア先生の姿を見掛けると駆け寄った。
「ソフィア様。出歩いて大丈夫なのですか? もう少しお休みになっていた方がいいと思いますが」
「そうも言ってられないんじゃないのでしょうか。シーアさんのことです。私がシーアさんを連れてきちゃったのが原因で弱ってますよね」
「これ以上は無理させる訳にはいきません」
「自分の限界は分かってるつもりです。私のせいでシーアさんは弱ってるんです。私が何とかしないといけないんです。そうじゃないと、自分が許せません」
シーアさんは弱ることを知っていたと思う。それなのに、私に色々と教えてくれたし、修行にも付き合ってくれた。
そんな私を気にかけて守ってくれたりもしていた。気に入ったと言ってくれた。
感謝してもしきれないほどに。
「ノア先生……今、シーアさんは」
ノア先生の顔を見ると、困ったようにため息をして肩にグダっとしている手のひらサイズのドラゴンを手に乗せて見せてきた。
顔が赤く、痩せているようにも見える。肩で息をしていてとても苦しそうだ。
「もう限界のようです」
焦る素振りを見せないノア先生に違和感を覚えた。
シーアさんはノア先生の師匠だよね。なんでこんなにも冷静なの??
ノア先生が冷酷な人間じゃないのを私は知っているから余計に違和感がある。
「なんでそんなに冷静なのですか?」
「決めた事です。状況が悪すぎるのです」
「諦めるなんて、そんなこと……」
ノア先生らしくない。と言いかけたが、私はノア先生の事をよく知らない。
私はその先の言葉を飲み込んだ。
「諦めたくないです……私は約束しました。絶対に元の場所に還すと。だから」
「仕方ないですね」
ノア先生は深く息をつき、シーアさんを噴水の中に入れた。
「今のソフィア様なら大丈夫だとは思いますが、油断しないでくださいね。綺麗な水は浄化する力を持っています……気休めにしかなりませんが」
この世界での綺麗な水は浄化する力があると言われている。
回復薬とかあるぐらいだしね。なんでも魔力が溜まりやすい場所なんだとか。綺麗な水に自分の魔力を注ぎ込むと回復が早くなると伝えられている。それは傷口に、なんだけど。
衰弱しているならば……多分効かないと思うんだけど、それでもやらないよりはマシということなのだろう。
「私はどうすれば」
「目を閉じて、触れていてください。還したいと強く念じてください」
「それだけ? 魔法や……魔力とか」
「それだけですよ。魔法は使わなくて良いのです。還すには、互いの信頼関係が大切なんです。だからこそ、早めに還す事が出来なかったんですが……今なら大丈夫」
「わ、わかりました」
魔法を使うものだと思っていたから意外だった。そういえば想いの力はすごいって聞いた事があったな。
私は目を閉じて、強く念じた。
とあるイメージが浮かんだ。それは、シーアさんが宙に浮き、光に包まれて水がシーアさんを囲んでいる。
囲んでいる中でシーアさんが人型の姿になる。
宙に浮いたままで、水だけが噴水の中に戻る。バシャンっと水飛沫が飛ぶ。
シーアさんは光の中には入るように光の粒子となって消えていく。
消える間際にシーアさんが「ありがとう」と言っていた気がするけども……曖昧過ぎるので、気のせいかもしれない。
ゆっくりと目を開けると、噴水の中にいたシーアさんは消えていた。
隣にいるノア先生が私の肩に触れた。驚いたけどノア先生を見ると、ゆっくりと頷いていた。
還したんだ。還せたんだと、安堵する。
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