26 / 106
4章 コンタクト
26.コンタクト(2/10)
しおりを挟む
停まっていた車がみんないなくなってから家に帰ると、お母さんは電話中だった。
家の中はきれいに片づいている。
パパの荷物だけがすっかり消えて、本だなの「月刊ウー」も全てなくなっていた。きっとダンボール箱の中身は、ほとんどが「月刊ウー」だ。
「ああ、葵! お帰り。大丈夫だった? パパが警察に連れて行かれちゃったの!」
「下で見た」
「いきなり警察の人が来てもう、びっくり。でも、大丈夫。きっとすぐに帰って来るから」
「うん……」
パパもすぐに戻ると言った。
でもそんなの、私を心配させたくなくて言ってくれただけでしょう?
「今、パパの職場の人から連絡があって、パパが取り調べでしばらく仕事に行けないって警察から報告されたんですって」
「そんなことをわざわざ職場に伝えてくれるの?」
「警察が、パパの職場も捜索しに行ったみたいよ」
「そんなに大ごとなの? パパ、本当になにをやっちゃったの⁉︎」
「……きっとワタシのせいでし」
銀太郎が、消えそうな声で言った。
「ワタシ今、行方不明アツカイでし。この場所でUFO降りて消えたから、パパ様きっと誘拐疑われました」
ええええーーーー?
「パパが、誘拐犯?」
「ホカ、理由ないでし」
……確かに。実は国際テロ組織とか、ヒミツのエージェントとか、ウチのパパに限ってありえない。
銀太郎は申し訳なさそうに頭を下げた。
パパを心配してくれているんだ。
でも、銀太郎はまだ怒っている。
私たちには頭を下げたけれど、パパを連れて行った人たちに対してものすごく怒っている。
「銀太郎君、今日お出かけして疲れたでしょう? とりあえず、ご飯にしようか。あ、今日ねえ、ちょーっとお高いベルギーチョコアイス買ってあるんだよ? ね?」
「ハイ。うれしいでし……」
お母さんも銀太郎が怒っているのを感じたのだと思う。
三人が、緊張しているのにいつもと同じフリをする。
こういうのは、他人行儀でちょっとイヤだな。
銀太郎は、超高級プレミアベルギーチョコアイスを食べてご機嫌な顔をした。
キンキンに冷えて固まったアイスは、お母さんが銀太郎のためだけに買ってストックしておいたものだ。
それがわかっているから、こんな非常事態でも銀太郎はお母さんへの感謝を最高の笑顔で伝える。
いつもより笑い方がぎこちなくて、少し照れたようにも見える。
それちょっと、破壊力あり過ぎなんだけど!
ああ、蓮君がアイスのコマーシャルをやったらこんな感じかな。いきなりテレビで流れたら、私もすぐにそのアイスを買いに行くかな。でも、蓮君のアイスをほしいと思ったら、きっともうお母さんかパパが買ってきてくれていて、ジャジャーンって出して……。
「アオイ様、おハシ落ちそうでし。手、止まってまし」
「あ……」
ご飯がにじんでぼやけている。
目をこすろうとしたら、いきなり横から銀太郎の手がのびてきた。
手の甲で優しく目の下にふれてから、私の顔をのぞき込む。
「雨でしか? 天気予報、晴れでし。ちゃんと、晴れでし。大丈夫」
「そう、だよね。大丈夫、だよね?」
「ハイでし」
『銀太郎、葵を頼む』
パパの言葉を思い出した。
銀太郎はちゃんと頼まれているよ、パパ。
あと、蓮君に見とれて一瞬パパのことを忘れてごめんなさい。
家の中はきれいに片づいている。
パパの荷物だけがすっかり消えて、本だなの「月刊ウー」も全てなくなっていた。きっとダンボール箱の中身は、ほとんどが「月刊ウー」だ。
「ああ、葵! お帰り。大丈夫だった? パパが警察に連れて行かれちゃったの!」
「下で見た」
「いきなり警察の人が来てもう、びっくり。でも、大丈夫。きっとすぐに帰って来るから」
「うん……」
パパもすぐに戻ると言った。
でもそんなの、私を心配させたくなくて言ってくれただけでしょう?
「今、パパの職場の人から連絡があって、パパが取り調べでしばらく仕事に行けないって警察から報告されたんですって」
「そんなことをわざわざ職場に伝えてくれるの?」
「警察が、パパの職場も捜索しに行ったみたいよ」
「そんなに大ごとなの? パパ、本当になにをやっちゃったの⁉︎」
「……きっとワタシのせいでし」
銀太郎が、消えそうな声で言った。
「ワタシ今、行方不明アツカイでし。この場所でUFO降りて消えたから、パパ様きっと誘拐疑われました」
ええええーーーー?
「パパが、誘拐犯?」
「ホカ、理由ないでし」
……確かに。実は国際テロ組織とか、ヒミツのエージェントとか、ウチのパパに限ってありえない。
銀太郎は申し訳なさそうに頭を下げた。
パパを心配してくれているんだ。
でも、銀太郎はまだ怒っている。
私たちには頭を下げたけれど、パパを連れて行った人たちに対してものすごく怒っている。
「銀太郎君、今日お出かけして疲れたでしょう? とりあえず、ご飯にしようか。あ、今日ねえ、ちょーっとお高いベルギーチョコアイス買ってあるんだよ? ね?」
「ハイ。うれしいでし……」
お母さんも銀太郎が怒っているのを感じたのだと思う。
三人が、緊張しているのにいつもと同じフリをする。
こういうのは、他人行儀でちょっとイヤだな。
銀太郎は、超高級プレミアベルギーチョコアイスを食べてご機嫌な顔をした。
キンキンに冷えて固まったアイスは、お母さんが銀太郎のためだけに買ってストックしておいたものだ。
それがわかっているから、こんな非常事態でも銀太郎はお母さんへの感謝を最高の笑顔で伝える。
いつもより笑い方がぎこちなくて、少し照れたようにも見える。
それちょっと、破壊力あり過ぎなんだけど!
ああ、蓮君がアイスのコマーシャルをやったらこんな感じかな。いきなりテレビで流れたら、私もすぐにそのアイスを買いに行くかな。でも、蓮君のアイスをほしいと思ったら、きっともうお母さんかパパが買ってきてくれていて、ジャジャーンって出して……。
「アオイ様、おハシ落ちそうでし。手、止まってまし」
「あ……」
ご飯がにじんでぼやけている。
目をこすろうとしたら、いきなり横から銀太郎の手がのびてきた。
手の甲で優しく目の下にふれてから、私の顔をのぞき込む。
「雨でしか? 天気予報、晴れでし。ちゃんと、晴れでし。大丈夫」
「そう、だよね。大丈夫、だよね?」
「ハイでし」
『銀太郎、葵を頼む』
パパの言葉を思い出した。
銀太郎はちゃんと頼まれているよ、パパ。
あと、蓮君に見とれて一瞬パパのことを忘れてごめんなさい。
1
あなたにおすすめの小説
四尾がつむぐえにし、そこかしこ
月芝
児童書・童話
その日、小学校に激震が走った。
憧れのキラキラ王子さまが転校する。
女子たちの嘆きはひとしお。
彼に淡い想いを抱いていたユイもまた動揺を隠せない。
だからとてどうこうする勇気もない。
うつむき複雑な気持ちを抱えたままの帰り道。
家の近所に見覚えのない小路を見つけたユイは、少し寄り道してみることにする。
まさかそんな小さな冒険が、あんなに大ごとになるなんて……。
ひょんなことから石の祠に祀られた三尾の稲荷にコンコン見込まれて、
三つのお仕事を手伝うことになったユイ。
達成すれば、なんと一つだけ何でも願い事を叶えてくれるという。
もしかしたら、もしかしちゃうかも?
そこかしこにて泡沫のごとくあらわれては消えてゆく、えにしたち。
結んで、切って、ほどいて、繋いで、笑って、泣いて。
いろんな不思議を知り、数多のえにしを目にし、触れた先にて、
はたしてユイは何を求め願うのか。
少女のちょっと不思議な冒険譚。
ここに開幕。
パンダを演じたツキノワグマ:愛されたのは僕ではなく、塗りたくった小麦粉だった
tom_eny
児童書・童話
「なぜ、あいつばかりが愛される?」
山奥の孤独なツキノワグマ・ゴローは、人々に熱狂的に愛される「パンダ」に嫉妬した。
里で見つけた小麦粉を被り、彼は偽りのアイドルへと変貌を遂げる。
人々を熱狂させた「純白の毛並み」。
しかし、真夏の灼熱がその嘘を暴き出す。
脂汗と混じり合い、ドロドロの汚泥となって溶け落ちる自己肯定感。
承認欲求の果てに、孤独な獣が最後に見つけた「本当の自分」の姿とは。
SNS時代の生きづらさを一頭の獣に託して描く、切なくも鋭い現代の寓話。
#AI補助利用
未来スコープ ―キスした相手がわからないって、どういうこと!?―
米田悠由
児童書・童話
「あのね、すごいもの見つけちゃったの!」
平凡な女子高生・月島彩奈が偶然手にした謎の道具「未来スコープ」。
それは、未来を“見る”だけでなく、“課題を通して導く”装置だった。
恋の予感、見知らぬ男子とのキス、そして次々に提示される不可解な課題──
彩奈は、未来スコープを通して、自分の運命に深く関わる人物と出会っていく。
未来スコープが映し出すのは、甘いだけではない未来。
誰かを想う気持ち、誰かに選ばれない痛み、そしてそれでも誰かを支えたいという願い。
夢と現実が交錯する中で、彩奈は「自分の気持ちを信じること」の意味を知っていく。
この物語は、恋と選択、そしてすれ違う想いの中で、自分の軸を見つけていく少女たちの記録です。
感情の揺らぎと、未来への確信が交錯するSFラブストーリー、シリーズ第2作。
読後、きっと「誰かを想うとはどういうことか」を考えたくなる一冊です。
未来スコープ ―この学園、裏ありすぎなんですけど!? ―
米田悠由
児童書・童話
「やばっ!これ、やっぱ未来見れるんだ!」
平凡な女子高生・白石藍が偶然手にした謎の道具「未来スコープ」。
それは、未来を“見る”だけでなく、“触れたものの行く末を映す”装置だった。
好奇心旺盛な藍は、未来スコープを通して、学園に潜む都市伝説や不可解な出来事の真相に迫っていく。
旧校舎の謎、転校生・蓮の正体、そして学園の奥深くに潜む秘密。
見えた未来が、藍たちの運命を大きく揺るがしていく。
未来スコープが映し出すのは、甘く切ないだけではない未来。
誰かを信じる気持ち、誰かを疑う勇気、そして真実を暴く覚悟。
藍は「信じるとはどういうことか」を問われていく。
この物語は、好奇心と正義感、友情と疑念の狭間で揺れながら、自分の軸を見つけていく少女の記録です。
感情の揺らぎと、未来への探究心が交錯するSFラブストーリー、シリーズ第3作。
読後、きっと「誰かを信じるとはどういうことか」を考えたくなる一冊です。
生贄姫の末路 【完結】
松林ナオ
児童書・童話
水の豊かな国の王様と魔物は、はるか昔にある契約を交わしました。
それは、姫を生贄に捧げる代わりに国へ繁栄をもたらすというものです。
水の豊かな国には双子のお姫様がいます。
ひとりは金色の髪をもつ、活発で愛らしい金のお姫様。
もうひとりは銀色の髪をもつ、表情が乏しく物静かな銀のお姫様。
王様が生贄に選んだのは、銀のお姫様でした。
少年騎士
克全
児童書・童話
「第1回きずな児童書大賞参加作」ポーウィス王国という辺境の小国には、12歳になるとダンジョンか魔境で一定の強さになるまで自分を鍛えなければいけないと言う全国民に対する法律があった。周囲の小国群の中で生き残るため、小国を狙う大国から自国を守るために作られた法律、義務だった。領地持ち騎士家の嫡男ハリー・グリフィスも、その義務に従い1人王都にあるダンジョンに向かって村をでた。だが、両親祖父母の計らいで平民の幼馴染2人も一緒に12歳の義務に同行する事になった。将来救国の英雄となるハリーの物語が始まった。
【運命】と言われて困っています
桜 花音
児童書・童話
小6のはじまり。
遠山彩花のクラスである6年1組に転校生がやってきた。
男の子なのに、透き通るようにきれいな肌と、お人形さんみたいに、パッチリした茶色い瞳。
あまりにキレイすぎて、思わず教室のみんな、彼に視線が釘付けになった。
そんな彼が彩花にささやいた。
「やっと会えたね」
初めましてだと思うんだけど?
戸惑う彩花に彼はさらに秘密を教えてくれる。
彼は自らの中に“守護石”というものを宿していて、それがあると精霊と関われるようになるんだとか。
しかも、その彼の守護石の欠片を、なぜか彩花が持っているという。
どういうこと⁉
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる