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4章 コンタクト
32.コンタクト(8/10)
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「アオイちゃん、怖がらせてしまったね。ごめんね。大丈夫だよ。ボクはアオイちゃんが一番大事だから、とても大切にしたい。怖くないから、安心して」
銀太郎は私に体を寄せると、静かに頭をなでてきた。
私をなだめているの?
優しく、優しく。もういっぱい過ぎてどうしていいのかわからないくらい優しい気持ちを私に向けてくる。
キュッと胸が痛くなった。
心臓の音がトクトク耳の奥から聞こえる。
「アオイちゃん」
「……」
呼ばれてそっと顔を上げると、息がつまって声も出せない私を銀太郎はうれしそうに見ていた。
ポロポロといつのまにかこぼれた私の涙を手でぬぐい取って、ほほえみかけてくる。
銀太郎が怖い。
怖い! 怖い! 怖い!
「怖がらないで。もっと優しくするから、きらいにならないで」
「ちがう! もう優しくしないで。いっぱい過ぎて怖い!」
「え? ダメなの?」
銀太郎は不思議そうに、困ったように首をかしげた。
全然感覚がちがうんだ。よくわからないけれど、根本的に何かがちがう。
一方的に優しくして、かわいがって……。
「銀太郎は、地球人と宇宙人が対等ではないと言ったけれど、地球人が犬とかネコとか……ペットみたいに見えているの?」
「ペット? ……ああ、そうか。そんなふうに感じたのか」
銀太郎は考えこんでしまった。私にどう説明しようか、悩んでいるみたいだった。
目だけ動かして右上を見たり、左上を見たり、視線が定まらない。
ずっと見つめられ続けていた私は、ようやくドキドキが落ち着いてきた。
蓮君の顔は心臓に悪い。
「アオイちゃん、ボクにとって地球人はペットなんかじゃないよ?」
ようやく銀太郎は答えた。
「だって、ペットだったらしつけたり何か芸を教えたりするのでしょう? そんなことしないし、ペットみたいになついてくれることを期待もしない。アオイちゃんの感覚で言うなら、地球人はペットではなくて花とか観葉植物かな」
「かんようしょくぶつ⁉︎」
……それって、ペット以下だよね?
宇宙人にとって、地球人は観葉植物なのか。文明の差があり過ぎて全然相手にならないっていうことなんだ……。
「ほら、バラとかアサガオとかサボテンとか、地球人は好きでお世話するでしょう? 見て楽しむためにやっていて、ただキレイに育ってくれたらうれしいし自分が満足できる。思ったように花が咲かなくても植物に怒ったりしないよね? それと一緒だよ。地球人はここにいて楽しそうに生きてくれたらうれしい。その中でも、自分だけのバラとかアサガオを持ったら、特別大事にするよね? 毎日ていねいにお世話して様子を見て、いっぱい愛情をそそいで。一方的に優しくしていると言われたら確かにそうだけれど、それじゃあダメなの? 地球人を守ろうとするのは、絶滅危惧種を保護しようとするのと同じだよ?」
そうか。きっと地球防衛隊の人たちは、感謝されたいなんて最初から考えていないんだ。私たちは勝手に守られているんだ。
「私は……アサガオ?」
「うん。ボクにとって、たったひとつの、とてもとても大切なアサガオ。だから、アオイちゃんのパパを連れて行った地球人は許さない」
銀太郎がとても怖い顔をしたような気がした。でも、本当に一瞬のことで、私にはわからない。
私は、銀太郎が見せてくれるほんのわずか一部分しか銀太郎を知らない。
全然対等じゃないんだ。
「……私は、パパが無事に帰って来てくれたらそれでいいの。それに、パパがこうなったのは銀太郎のせいでしょう?」
「ははは、そうだったね。ごめんね。どうか怒らないで。ボクはアオイちゃんが一番だから、アオイちゃんのために何でもしてあげたいんだ。それに、ボクのことをいっぱい知ってほしい。あ、日の出だ」
東の空がオレンジ色になる。見たこともないくらい大きな太陽が、半熟玉子みたいにゆらゆらくずれながら昇ってくる。
銀太郎は私に体を寄せると、静かに頭をなでてきた。
私をなだめているの?
優しく、優しく。もういっぱい過ぎてどうしていいのかわからないくらい優しい気持ちを私に向けてくる。
キュッと胸が痛くなった。
心臓の音がトクトク耳の奥から聞こえる。
「アオイちゃん」
「……」
呼ばれてそっと顔を上げると、息がつまって声も出せない私を銀太郎はうれしそうに見ていた。
ポロポロといつのまにかこぼれた私の涙を手でぬぐい取って、ほほえみかけてくる。
銀太郎が怖い。
怖い! 怖い! 怖い!
「怖がらないで。もっと優しくするから、きらいにならないで」
「ちがう! もう優しくしないで。いっぱい過ぎて怖い!」
「え? ダメなの?」
銀太郎は不思議そうに、困ったように首をかしげた。
全然感覚がちがうんだ。よくわからないけれど、根本的に何かがちがう。
一方的に優しくして、かわいがって……。
「銀太郎は、地球人と宇宙人が対等ではないと言ったけれど、地球人が犬とかネコとか……ペットみたいに見えているの?」
「ペット? ……ああ、そうか。そんなふうに感じたのか」
銀太郎は考えこんでしまった。私にどう説明しようか、悩んでいるみたいだった。
目だけ動かして右上を見たり、左上を見たり、視線が定まらない。
ずっと見つめられ続けていた私は、ようやくドキドキが落ち着いてきた。
蓮君の顔は心臓に悪い。
「アオイちゃん、ボクにとって地球人はペットなんかじゃないよ?」
ようやく銀太郎は答えた。
「だって、ペットだったらしつけたり何か芸を教えたりするのでしょう? そんなことしないし、ペットみたいになついてくれることを期待もしない。アオイちゃんの感覚で言うなら、地球人はペットではなくて花とか観葉植物かな」
「かんようしょくぶつ⁉︎」
……それって、ペット以下だよね?
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「ほら、バラとかアサガオとかサボテンとか、地球人は好きでお世話するでしょう? 見て楽しむためにやっていて、ただキレイに育ってくれたらうれしいし自分が満足できる。思ったように花が咲かなくても植物に怒ったりしないよね? それと一緒だよ。地球人はここにいて楽しそうに生きてくれたらうれしい。その中でも、自分だけのバラとかアサガオを持ったら、特別大事にするよね? 毎日ていねいにお世話して様子を見て、いっぱい愛情をそそいで。一方的に優しくしていると言われたら確かにそうだけれど、それじゃあダメなの? 地球人を守ろうとするのは、絶滅危惧種を保護しようとするのと同じだよ?」
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全然対等じゃないんだ。
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「ははは、そうだったね。ごめんね。どうか怒らないで。ボクはアオイちゃんが一番だから、アオイちゃんのために何でもしてあげたいんだ。それに、ボクのことをいっぱい知ってほしい。あ、日の出だ」
東の空がオレンジ色になる。見たこともないくらい大きな太陽が、半熟玉子みたいにゆらゆらくずれながら昇ってくる。
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