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6章 幼年期のオワリ
91.オワリ(37/43)
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「あの、でもなんで僕がここにいるってわかったんですか?」
藤井君が不思議そうにたずねてきた。察しの良い藤井君でも、そこはナゾらしい。
パパは当然だという顔をしている。
「先月号の『月刊ウー』。あのUFO特集記事はよかったよね。『万貫の森』の目撃情報もしっかり更新されていて、さすが日本が誇るスーパーミステリー雑誌だね。だから、出かけるなら絶対ここでしょう。ちがうかい?」
藤井君の顔がぱあっと明るくなるのを見て、パパはうれしそうにうなずいた。
銀太郎は何も言わず無表情で二人を見ていた。それから目の前にぶら下がっているUFOに視線を移して、ほんの少しだけ笑顔になって、私が見ているのに気づくとまた無表情になった。
あ、照れかくしだ。
銀太郎だって藤井君のことを心配していたんだよね? 素直じゃないなあ、もう。
あれっ?
背中を向けられてしまった。
みんなで一緒に展示を見て回っている間、藤井君は本当に楽しそうだった。かなり怖い宇宙人模型に囲まれながら、場ちがいなほどキラキラしていた。
展示内容にも詳しくて、パパとずっと話し続けている。
「フジークン本当に詳しいですでし。あ、です。なのでし。あれ……でしまし?」
銀太郎は藤井君の前では意識的に標準語をがんばっているけれど、どうも難しいみたいだ。藤井君の家に行った時も、帰りにぐったりしていたっけ。
「銀太郎、大丈夫だよ。銀太郎は帰国子女設定だから、語尾があやふやなくらい全然気にならないよ」
「そうでしか?」
こそこそと話す私たちを見た藤井君は、うれしそうに近づいてきた。
「川上さん、会いに来てくれてありがとう。迎えに来てくれてありがとう」
わああ、また王子様のほほえみ……。
私がぽおっとなっている間に、藤井君はパパのところに戻ってまた難しい話を始めた。
「ケイちゃんを連れてきてくれてありがとうの意味でしね」
銀太郎がボソッとつぶやく。
「もうっ! 言われなくてもわかってるよ」
「そうでしか」
「もうっ!! いいのっ! 藤井君が楽しいなら、それでいいの!」
本当にそれでいいんだってば。私を見てとか、そういうのじゃないんだから誤解しないでよねっ。
私をからかう銀太郎に背を向けると、銀太郎は真面目な声で言った。
「来てよかったでしね」
「……うん」
銀太郎は藤井君を見ながら、また少しだけ笑顔になった。
来てよかった。
銀太郎にそう言ってもらえてよかった。
ほっとしたのかうれしかったのか、なぜだか胸の奥がチクっとして、涙が出そうになった。
気持ちがゆらゆらする。
どこか、苦しい。
「あれ、葵ちゃん? 大丈夫? 疲れた?」
パパが飛んで来て顔をのぞいた。
「もうっ!」
変なところだけ気づかないでよ! ほんとデリカシーないんだからっ。
「ケイちゃん。アオイ様は今、牛なのでし。近寄るのキケンなのでし」
「う? し?」
銀太郎がパパと藤井君を奥の展示に引き連れて行く。
銀太郎も!
察しが良くて、気づかいができて、でも、気づき過ぎでしょう⁉︎ 少しくらいは見ないフリをしてよっ。
だいたい、牛ってなんなのよもうっ!
あっ……牛。
閉館時間になって外へ出ると、空はまだずいぶんと明るかった。
UFO観測に備えて、一度街の方まで戻って早目の晩ご飯にすることにした。
「あの、ちょっと待っていてもらっていいですか?」
駐車場に着いたところで藤井君が立ち止まった。
家に電話をして、帰りが遅くなることを伝えるという。
「そうだね。その方がいいね。あ、なんか叱られちゃったら葵も謝るから」
「へっ、私⁉︎」
「大丈夫です。怒られなきゃいけないのは僕だけですから」
先に車に入って、藤井君の後ろ姿を見守った。
「彼、大丈夫そうだね」
「そうでしね」
パパと銀太郎はそれだけ言った。
大丈夫。
二人が言うなら、大丈夫。
藤井君が不思議そうにたずねてきた。察しの良い藤井君でも、そこはナゾらしい。
パパは当然だという顔をしている。
「先月号の『月刊ウー』。あのUFO特集記事はよかったよね。『万貫の森』の目撃情報もしっかり更新されていて、さすが日本が誇るスーパーミステリー雑誌だね。だから、出かけるなら絶対ここでしょう。ちがうかい?」
藤井君の顔がぱあっと明るくなるのを見て、パパはうれしそうにうなずいた。
銀太郎は何も言わず無表情で二人を見ていた。それから目の前にぶら下がっているUFOに視線を移して、ほんの少しだけ笑顔になって、私が見ているのに気づくとまた無表情になった。
あ、照れかくしだ。
銀太郎だって藤井君のことを心配していたんだよね? 素直じゃないなあ、もう。
あれっ?
背中を向けられてしまった。
みんなで一緒に展示を見て回っている間、藤井君は本当に楽しそうだった。かなり怖い宇宙人模型に囲まれながら、場ちがいなほどキラキラしていた。
展示内容にも詳しくて、パパとずっと話し続けている。
「フジークン本当に詳しいですでし。あ、です。なのでし。あれ……でしまし?」
銀太郎は藤井君の前では意識的に標準語をがんばっているけれど、どうも難しいみたいだ。藤井君の家に行った時も、帰りにぐったりしていたっけ。
「銀太郎、大丈夫だよ。銀太郎は帰国子女設定だから、語尾があやふやなくらい全然気にならないよ」
「そうでしか?」
こそこそと話す私たちを見た藤井君は、うれしそうに近づいてきた。
「川上さん、会いに来てくれてありがとう。迎えに来てくれてありがとう」
わああ、また王子様のほほえみ……。
私がぽおっとなっている間に、藤井君はパパのところに戻ってまた難しい話を始めた。
「ケイちゃんを連れてきてくれてありがとうの意味でしね」
銀太郎がボソッとつぶやく。
「もうっ! 言われなくてもわかってるよ」
「そうでしか」
「もうっ!! いいのっ! 藤井君が楽しいなら、それでいいの!」
本当にそれでいいんだってば。私を見てとか、そういうのじゃないんだから誤解しないでよねっ。
私をからかう銀太郎に背を向けると、銀太郎は真面目な声で言った。
「来てよかったでしね」
「……うん」
銀太郎は藤井君を見ながら、また少しだけ笑顔になった。
来てよかった。
銀太郎にそう言ってもらえてよかった。
ほっとしたのかうれしかったのか、なぜだか胸の奥がチクっとして、涙が出そうになった。
気持ちがゆらゆらする。
どこか、苦しい。
「あれ、葵ちゃん? 大丈夫? 疲れた?」
パパが飛んで来て顔をのぞいた。
「もうっ!」
変なところだけ気づかないでよ! ほんとデリカシーないんだからっ。
「ケイちゃん。アオイ様は今、牛なのでし。近寄るのキケンなのでし」
「う? し?」
銀太郎がパパと藤井君を奥の展示に引き連れて行く。
銀太郎も!
察しが良くて、気づかいができて、でも、気づき過ぎでしょう⁉︎ 少しくらいは見ないフリをしてよっ。
だいたい、牛ってなんなのよもうっ!
あっ……牛。
閉館時間になって外へ出ると、空はまだずいぶんと明るかった。
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「あの、ちょっと待っていてもらっていいですか?」
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「そうだね。その方がいいね。あ、なんか叱られちゃったら葵も謝るから」
「へっ、私⁉︎」
「大丈夫です。怒られなきゃいけないのは僕だけですから」
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パパと銀太郎はそれだけ言った。
大丈夫。
二人が言うなら、大丈夫。
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