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7章(終章) 美しいホシ
99.ホシ(2/9)
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神社の境内は、参道の両わきにお店がびっしり並んでいて、どこも混雑していた。
定番の焼きそばとかタコ焼きとかかき氷とか、他にも射的やら輪投げやら勢ぞろいしている。
銀太郎はさすがにびっくりしているみたいだ。いつにも増して目がキラキラになっている。
キラキラだから、当然ながら注目されちゃっている。
「目立つのは、私じゃなくて銀太郎だよ。すれちがう人みーんなが銀太郎を見ているもの。うわあ、私も見られている。こんなのがツレ? って絶対思われているから」
自慢のカレシだとか言って見せびらかせる人って、自分にも自信があるのだろうな……。
「あたっ。ごめん、ぶつかった。ちょっと銀太郎、近いよ?」
私のナナメ前を銀太郎が歩く。これだと銀太郎の背中しか見えない。
「みんなアオイ様勝手に見て失礼なのでし。ワタシに許可取ってほしいのでし」
ひゃっ⁉︎ 今、さらっと恥ずかしいこと言った!
「なにそれっ。これじゃあまるで私が銀太郎の……」
カノジョみたい。
あ、金魚すくい。
「金魚」
「キンギョ? それ、アオイ様がワタシにくっついているから? 日本コトワザに……」
「へっ? ああっ、そんなお下品なことわざ使わないでよっ! ちがうの、そこで金魚すくいをやっているのが見えたのっ」
「キンギョスクイ? ワタシ、人が多いところ慣れていなくて、どこ見ていいか迷いまし」
ああ、そうだよね。お店の幕に書いてあるデコデコの字は読めなさそうだし、完全に外国人だものね。
「銀太郎、下見て。ちっちゃいプールがあるでしょう?」
「ほお」
おっ、新鮮な反応。
金魚すくいのお店の前には人だかりができていた。プールの前にしゃがんで金魚をすくっている人たちの後ろから、泳ぐ金魚をのぞいた。
「わあ、いっぱいいまし。小さいでしね。取ったら家で大きく育てて食べましか?」
「え……と。鑑賞用……ペットかな」
「フム、鑑賞でしか。……アオイ様、取って連れて帰りまし?」
「ううん、いい。お世話できそうにないもの。それに、持って帰っても、あんまり生きられないみたいだよ。ちょっとかわいそうかな」
「アオイ様は明日のこと考えてかわいそう思いまし。金魚、今日も生きて元気だったな思っていまし。ワタシも今日まで元気でよかったな思いまし」
「あ……ごめん」
「ああ、ちがいまし。アオイ様の考え否定したのではないでしよ」
銀太郎は私の指先をそっとつかむと、そのまま軽く手をふった。きっとそれは、大丈夫だという合図なのだ。
「キンギョかわいそう思ってアオイ様が悲しくなるの、ワタシ悲しい。ほら、キンギョ楽しそうに泳いでいまし。敵の飽和攻撃にも屈せず、ワナをすり抜けスイスイ前進あるのみでしよ」
「うわっ、やだ、みんな強そうに見えてきちゃった。あはは。あれ? なんだかこっちに寄っていない? 銀太郎の近くだけ金魚がうじゃうじゃいるよ?」
「総攻撃でしかね? おいしいか思ってのぞいたのバレまし。キンギョ怒りましね」
私が笑っているのを見てから、銀太郎は金魚すくいのプールを離れた。金魚たちもスッと向きを変えて思い思いに泳ぎ出す。
やっぱり銀太郎が金魚を呼び寄せてくれたのかな?
「金魚、バイバイ」
銀太郎は私の指先をつまむようにふれたまま歩き出した。
これ、一応手をつないでいるんだよね?
指先からトクトクと心臓の音が伝わりそうで恥ずかしい。
それでも手を払うことはしなかった。
お互いに手を放そうと思えばすぐに離れてしまう状態で、わずかにふれたままつながっている。
そのままで、銀太郎は参道に並ぶお店を興味深そうにのぞいて回った。
定番の焼きそばとかタコ焼きとかかき氷とか、他にも射的やら輪投げやら勢ぞろいしている。
銀太郎はさすがにびっくりしているみたいだ。いつにも増して目がキラキラになっている。
キラキラだから、当然ながら注目されちゃっている。
「目立つのは、私じゃなくて銀太郎だよ。すれちがう人みーんなが銀太郎を見ているもの。うわあ、私も見られている。こんなのがツレ? って絶対思われているから」
自慢のカレシだとか言って見せびらかせる人って、自分にも自信があるのだろうな……。
「あたっ。ごめん、ぶつかった。ちょっと銀太郎、近いよ?」
私のナナメ前を銀太郎が歩く。これだと銀太郎の背中しか見えない。
「みんなアオイ様勝手に見て失礼なのでし。ワタシに許可取ってほしいのでし」
ひゃっ⁉︎ 今、さらっと恥ずかしいこと言った!
「なにそれっ。これじゃあまるで私が銀太郎の……」
カノジョみたい。
あ、金魚すくい。
「金魚」
「キンギョ? それ、アオイ様がワタシにくっついているから? 日本コトワザに……」
「へっ? ああっ、そんなお下品なことわざ使わないでよっ! ちがうの、そこで金魚すくいをやっているのが見えたのっ」
「キンギョスクイ? ワタシ、人が多いところ慣れていなくて、どこ見ていいか迷いまし」
ああ、そうだよね。お店の幕に書いてあるデコデコの字は読めなさそうだし、完全に外国人だものね。
「銀太郎、下見て。ちっちゃいプールがあるでしょう?」
「ほお」
おっ、新鮮な反応。
金魚すくいのお店の前には人だかりができていた。プールの前にしゃがんで金魚をすくっている人たちの後ろから、泳ぐ金魚をのぞいた。
「わあ、いっぱいいまし。小さいでしね。取ったら家で大きく育てて食べましか?」
「え……と。鑑賞用……ペットかな」
「フム、鑑賞でしか。……アオイ様、取って連れて帰りまし?」
「ううん、いい。お世話できそうにないもの。それに、持って帰っても、あんまり生きられないみたいだよ。ちょっとかわいそうかな」
「アオイ様は明日のこと考えてかわいそう思いまし。金魚、今日も生きて元気だったな思っていまし。ワタシも今日まで元気でよかったな思いまし」
「あ……ごめん」
「ああ、ちがいまし。アオイ様の考え否定したのではないでしよ」
銀太郎は私の指先をそっとつかむと、そのまま軽く手をふった。きっとそれは、大丈夫だという合図なのだ。
「キンギョかわいそう思ってアオイ様が悲しくなるの、ワタシ悲しい。ほら、キンギョ楽しそうに泳いでいまし。敵の飽和攻撃にも屈せず、ワナをすり抜けスイスイ前進あるのみでしよ」
「うわっ、やだ、みんな強そうに見えてきちゃった。あはは。あれ? なんだかこっちに寄っていない? 銀太郎の近くだけ金魚がうじゃうじゃいるよ?」
「総攻撃でしかね? おいしいか思ってのぞいたのバレまし。キンギョ怒りましね」
私が笑っているのを見てから、銀太郎は金魚すくいのプールを離れた。金魚たちもスッと向きを変えて思い思いに泳ぎ出す。
やっぱり銀太郎が金魚を呼び寄せてくれたのかな?
「金魚、バイバイ」
銀太郎は私の指先をつまむようにふれたまま歩き出した。
これ、一応手をつないでいるんだよね?
指先からトクトクと心臓の音が伝わりそうで恥ずかしい。
それでも手を払うことはしなかった。
お互いに手を放そうと思えばすぐに離れてしまう状態で、わずかにふれたままつながっている。
そのままで、銀太郎は参道に並ぶお店を興味深そうにのぞいて回った。
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