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10.イケメンも地位も望んでません!
しおりを挟む自分の行動が空振りに終わり、ムッとするレイフォードに構わず、エリザベスは一枚の紙を差し出した。
「私が持っているドレスを絵に描いてきました。お茶会に着ていけそうか見ていただけますか?」
男爵家から与えられた数少ないドレスはどれも個性的なものばかりで、エリザベスの感覚だとお茶会には向かないと思っている。
けれど、もしかしたら貴族の中ではこれが一般的なのかもしれない。
最近の流行である可能性もある。
貴族の流行りは図書室の本では分からないため、自分一人では判断できなかった。
レイフォードが紙を見る。
すると、綺麗なラインを描く眉が分かりやすく寄せられた。
「これは……キミの絵心が壊滅的にないか、贈り主のセンスが壊滅的に悪いか、どっちなんだ?」
「恐らく後者かと……」
レイフォードの言葉にエリザベスは居た堪れない気持ちになる。
自分が持っているドレスは、そんな顔をされる程のものだったのか……
「このゲテモノのようなドレスはなんだ!? まさか、本当にこんなたくさんフリルが付いているわけじゃないだろう? そうじゃなきゃ仮装でしかない」
「ありがとうございます! とてもよく分かりました!」
レイフォードから紙を奪う。
エリザベスの持っているドレスでは、お茶会どころか外に出てはいけないことが分かった。
けれど、そうなるとエリザベスには着ていくものがなくなってしまう。
「いくらマナーを身に付けても、着ていく服がなければ意味がないわね……」
自嘲気味に呟くと、それを聞いたレイフォードがエリザベスに尋ねた。
「お茶会に行くあてがあるのか?」
「ええ、エスターラ侯爵令嬢に以前お誘いいただきました。ただ、その時は私が行ってもご迷惑になってしまうからとお断りしたのですが」
「それなら、ハートレイ男爵に今の話をそのまま伝えればいい。ティーガウンがなくて行けなかったと言えばすぐに用意してくれるよ」
「ですが、私は……」
悔しいけれど、男爵家でのエリザベスの立場は弱い。
あれが欲しいこれが欲しいと言える状況にない。
レイフォードはエリザベスのことを調べたと言っていたけれど、さすがに自分の口から『金づるとしか思われていないから高価なものは買ってもらえない』と言うのは抵抗があった。
エリザベスが言葉を選びながら伝えようとすると、それを遮るようにレイフォードが続けて言う。
「数ある貴族の中でもエスターラ侯爵家は有名だ。そして、下位貴族が高位貴族と繋がりを持つことはとても難しい。そもそも機会がないからね。それをよく分かっているハートレイ男爵なら、キミをお茶会に行かせるために喜んで用意すると思うよ」
「なるほど……」
確かに、エリザベスがリリーシアと親しくさせていただいているのは奇跡のようなことだ。
たまたまリリーシアから話しかけられて交流を持ったけれど、基本的に高位貴族がエリザベスのような身分の低い者に話しかけることなどほぼない。
「確かに、そうですね」
レイフォードの言葉に可能性を見出して、エリザベスは期待に胸を膨らませる。
確かにそれならあのタヌキ親父もお金を出してくれるかもしれない。
「ありがとうございます。レイフォード様に相談してよかったわ! 殿下が貴方のことを頼りになる方だとおっしゃっていたけれど、本当ですね」
「アンソワが? そ、そうか」
エリザベスが王太子殿下の名前を出すと、レイフォードは急にそわそわとし出す。
表面上は何事もないように装っていたものの、嬉しさを隠し切れていなかった。
だからエリザベスは、アンソワ殿下が言った後半の部分……『レイは頼りになるけど、ちょっと思い込みが激しいところがあるんだよねぇ』……は伝えないことに決めた。
その日の夜――
リリーシアからお茶会に誘われたことをハートレイ男爵に告げると、男爵は面白いくらい過剰な反応を示した。
「え、え、エスターラ侯爵家のお茶会!?」
家名を言う男爵の声が裏返っている。
いつも澄ました顔のいけすかない男爵が目を丸くして驚いているのを見て、エリザベスは少し胸がスッとした。
男爵はエリザベスから話を聞くと、すぐに手配してくれた。
採寸のうえ新しいティーガウンに帽子と手袋が用意され、エリザベスは改めてレイフォードに感謝の気持ちを抱いたのだった。
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