イケメンも地位も望んでません!~でもお金は欲しいのでちょうどいい男を求めます~

高瀬ゆみ

文字の大きさ
20 / 30

19.イケメンも地位も望んでません!

しおりを挟む

お茶会から三日後、エリザベスは授業が終わり人気のない教室で男子生徒に声をかけていた。

お相手は、エリザベスが作成したアプローチリスト第三位の人物。
子爵家の次男で、もちろん婚約者はいない。
エリザベスとは違うクラスの同い年。

リリーシアの友人令嬢からの情報で、今日は委員会に参加するため一人きりになる可能性が高いと教えてもらっていた。
放課後の教室で意中の男子生徒に声をかけるというのは、恋愛では欠かすことのできないシチュエーションなのだという。

お茶会に参加した全員がエリザベスの行動を見守りたいと申し出たものの、大人数でいると相手にバレる可能性が高くなる。
そのため皆を代表してリリーシアとミーシャの二人が、教室からは見えないところでこっそりとエリザベスの様子を窺っていた。


エリザベスは皆から教わった通り、もじもじと恥ずかしそうに、そして頬を赤らめながら男子生徒に話しかけた。

「あの……ちょっとお話よろしいでしょうか……?」

言いながら首を傾げることも忘れない。
完璧な第一声にエリザベスは幸先よく感じていると、男子生徒はニヤリと嫌な笑みを浮かべて言った。

「何? もしかして、ヤラせてくれるの?」


――エリザベスのアプローチは失敗に終わった。








……困った。

ものすごおおおく、困った。

エリザベスは図書室に向かいながら、自分の愛人キャラに絶望していた。
男子生徒の反応を見る限り、もしかしたら愛人どころか一夜限りの女感が滲み出ているのかもしれない。


……あの後は大変だった。
男子生徒の言葉に固まって何も言えなくなったエリザベスの代わりに、憤ったリリーシアが教室に乗り込んできたのだ。

「貴方、エルザになんてことを言うの!?」

そう言って男子生徒に詰め寄るリリーシアは見たことのない顔をしていた。
急に現れた侯爵家のリリーシアに子爵家の男子生徒はたじたじになり、エリザベスとミーシャはリリーシアを止めるのに必死だった。
男子生徒には「このことはくれぐれも他言するな」と脅し、涙目になりながらコクコクと必死に頷く彼を置いて、エリザベスたちはその場を離れたのだった。

エリザベスは、アプローチリストから早くも一人消えたことに肩を落とす。

アプローチリスト第三位の彼は、あまり目立たない……どちらかというと冴えない見た目をしていて、だからこそ目を付けたのに。
そんな男子生徒から見てもエリザベスは都合の良い女要員なのか……

アプローチする間もなく惨敗に終わり、エリザベスは内心頭を抱えた。


(これからどうしよう……)


こんな調子でやっていたら、数少ない候補者たちは全滅してしまう。
それに、折角教えてくれているリリーシアたちにも申し訳ない。

どうしたものかと思いながら図書室の扉を開く。
奥に進んだ先にある階段を上る。
顔を上げて前を見ると、彼はすでに席に着いていた。


ただ本を読んでいるだけなのに、その姿に思わず目を奪われる。
サラサラとした銀色の髪が頬にかかり、伏せられた目元はどこか色っぽい。
今は隠れている彼の瞳は、感情が表れやすくて実はとても分かりやすいことをエリザベスは知っている。

エリザベスの『仮の恋人』……

「……ん? なにボケッと突っ立ってるんだ?」

レイフォードが本から顔を上げてエリザベスに声をかける。
その場に立ち尽くすエリザベスを不思議そうに見つめた。

「……もしかして、僕に見惚れた?」

頬杖をついてフッと笑うレイフォードは、とても魅力的だ。
魅力的で、爵位が高くて、エリザベスではどうにもならない人。

だからこそ、エリザベスが男性と親しくする方法を身に付けるにはちょうどいい練習相手かもしれない。

「……本当に、大丈夫か?」

眉根を寄せて心配するレイフォードに、エリザベスは勢い良く駆け寄った。

「レイフォード様! 私たちは図書室内では恋人同士なのですよね?」

突然動いたかと思えば、机に手を乗せ前のめりになって話しかけてくるエリザベスに、レイフォードは少し引く。

「あ、ああ……」

「恋人同士であっても、もっと好きになってもらおうと相手を誘惑するのはおかしくないですよね!?」

「ん? んー……まあ、そうか……?」

レイフォードの言葉にエリザベスは笑みを浮かべる。

レイフォードが条件に出した『恋人』という立場。
今までは貴族としての知識を得るための条件に過ぎなかったけれど、これからはエリザベスもその立場を利用させてもらおう。

レイフォードにアプローチを仕掛けて、反応を見ながら男の人を知っていく。
親しくなる方法を実践で身に付けるのだ。


……これなら上手くいくかもしれない。
エリザベスは希望を胸に、笑みを深めた。




しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

田舎娘をバカにした令嬢の末路

冬吹せいら
恋愛
オーロラ・レンジ―は、小国の産まれでありながらも、名門バッテンデン学園に、首席で合格した。 それを不快に思った、令嬢のディアナ・カルホーンは、オーロラが試験官を買収したと嘘をつく。 ――あんな田舎娘に、私が負けるわけないじゃない。 田舎娘をバカにした令嬢の末路は……。

婚約破棄された令嬢が記憶を消され、それを望んだ王子は後悔することになりました

kieiku
恋愛
「では、記憶消去の魔法を執行します」 王子に婚約破棄された公爵令嬢は、王子妃教育の知識を消し去るため、10歳以降の記憶を奪われることになった。そして記憶を失い、退行した令嬢の言葉が王子を後悔に突き落とす。

婚約破棄ですか???実家からちょうど帰ってこいと言われたので好都合です!!!これからは復讐をします!!!~どこにでもある普通の令嬢物語~

tartan321
恋愛
婚約破棄とはなかなか考えたものでございますね。しかしながら、私はもう帰って来いと言われてしまいました。ですから、帰ることにします。これで、あなた様の口うるさい両親や、その他の家族の皆様とも顔を合わせることがないのですね。ラッキーです!!! 壮大なストーリーで奏でる、感動的なファンタジーアドベンチャーです!!!!!最後の涙の理由とは??? 一度完結といたしました。続編は引き続き書きたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

死に物狂いで支えた公爵家から捨てられたので、回帰後は全財産を盗んで消えてあげます 〜今さら「戻れ」と言われても、私は隣国の皇太子妃ですので〜

しょくぱん
恋愛
「お前のような無能、我が公爵家の恥だ!」 公爵家の長女エルゼは、放蕩者の父や無能な弟に代わり、寝る間も惜しんで領地経営と外交を支えてきた。しかし家族は彼女の功績を奪った挙句、政治犯の濡れ衣を着せて彼女を処刑した。 死の間際、エルゼは誓う。 「もし次があるのなら――二度と、あいつらのために働かない」 目覚めると、そこは処刑の二年前。 再び「仕事」を押し付けようとする厚顔無恥な家族に対し、エルゼは優雅に微笑んだ。 「ええ、承知いたしました。ただし、これからは**『代金』**をいただきますわ」 隠し金庫の鍵、領地の権利書、優秀な人材、そして莫大な隠し資産――。 エルゼは公爵家のすべてを自分名義に書き換え、着々と「もぬけの殻」にしていく。 そんな彼女の前に、隣国の冷徹な皇太子シオンが現れ、驚くべき提案を持ちかけてきて……? 「君のような恐ろしい女性を、独り占めしたくなった」 資産を奪い尽くして亡命した令嬢と、彼女を溺愛する皇太子。 一方、すべてを失った公爵家が泣きついてくるが、もう遅い。 あなたの家の金庫も、土地も、働く人間も――すべて私のものですから。

婚約破棄された悪役令嬢の心の声が面白かったので求婚してみた

夕景あき
恋愛
人の心の声が聞こえるカイルは、孤独の闇に閉じこもっていた。唯一の救いは、心の声まで真摯で温かい異母兄、第一王子の存在だけだった。 そんなカイルが、外交(婚約者探し)という名目で三国交流会へ向かうと、目の前で隣国の第二王子による公開婚約破棄が発生する。 婚約破棄された令嬢グレースは、表情一つ変えない高潔な令嬢。しかし、カイルがその心の声を聞き取ると、思いも寄らない内容が聞こえてきたのだった。

記憶を失くして転生しました…転生先は悪役令嬢?

ねこママ
恋愛
「いいかげんにしないかっ!」 バシッ!! わたくしは咄嗟に、フリード様の腕に抱き付くメリンダ様を引き離さなければと手を伸ばしてしまい…頬を叩かれてバランスを崩し倒れこみ、壁に頭を強く打ち付け意識を失いました。 目が覚めると知らない部屋、豪華な寝台に…近付いてくるのはメイド? 何故髪が緑なの? 最後の記憶は私に向かって来る車のライト…交通事故? ここは何処? 家族? 友人? 誰も思い出せない…… 前世を思い出したセレンディアだが、事故の衝撃で記憶を失くしていた…… 前世の自分を含む人物の記憶だけが消えているようです。 転生した先の記憶すら全く無く、頭に浮かぶものと違い過ぎる世界観に戸惑っていると……?

笑う令嬢は毒の杯を傾ける

無色
恋愛
 その笑顔は、甘い毒の味がした。  父親に虐げられ、義妹によって婚約者を奪われた令嬢は復讐のために毒を喰む。

転生したら悪役令嬢だった婚約者様の溺愛に気づいたようですが、実は私も無関心でした

ハリネズミの肉球
恋愛
気づけば私は、“悪役令嬢”として断罪寸前――しかも、乙女ゲームのクライマックス目前!? 容赦ないヒロインと取り巻きたちに追いつめられ、開き直った私はこう言い放った。 「……まぁ、別に婚約者様にも未練ないし?」 ところが。 ずっと私に冷たかった“婚約者様”こと第一王子アレクシスが、まさかの豹変。 無関心だったはずの彼が、なぜか私にだけやたらと優しい。甘い。距離が近い……って、え、なにこれ、溺愛モード突入!?今さらどういうつもり!? でも、よく考えたら―― 私だって最初からアレクシスに興味なんてなかったんですけど?(ほんとに) お互いに「どうでもいい」と思っていたはずの関係が、“転生”という非常識な出来事をきっかけに、静かに、でも確実に動き始める。 これは、すれ違いと誤解の果てに生まれる、ちょっとズレたふたりの再恋(?)物語。 じれじれで不器用な“無自覚すれ違いラブ”、ここに開幕――! 本作は、アルファポリス様、小説家になろう様、カクヨム様にて掲載させていただいております。 アイデア提供者:ゆう(YuFidi) URL:https://note.com/yufidi88/n/n8caa44812464

処理中です...