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番外編
転生令嬢、致命的なミスを犯す 1
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※色々と長くなりましたが、これから解決に向かって行きます。
今日話を聞いたことで、ミキちゃんの考えは分かった。
少なくとも今のミキちゃんは、元の世界に戻るよりもエドワード様との未来を選んだようだ。
エドワード様のことが大好きなミキちゃんは、まるで恋する乙女のよう。
(……まあ、高校生だもんね)
マンガの中では魔王を倒して世界を平和にするという使命があったけれど、今は何もない。
平和な世界でエドワード様と出会ったことで、恋に恋している状態になるのも仕方ない……のかもしれない。
少し疑問に思いつつ、私は自分を納得させた。
そんなミキちゃんなら早くエドワード様と婚約したいだろうと思ったら、まさか――
(まさか、初夜が怖いって理由で婚約を躊躇っているとは思わなかったよ……)
王家に嫁ぐことの責任の重さや覚悟とか、もっと深刻な悩みを抱えているのかと思ったら、想像以上に乙女な悩みでなんだか疲れてしまった。
肩を落とした私は、帰りの馬車の中で聞いたクリスティーナ様の話を思い出す。
婚約解消の時に耳にしたように、貴族の中には王家が『救国の聖女』を取り込むことに賛同する者がいるらしい。
ただ、国王陛下を味方につけて半ば強引に私との婚約を解消したエドワード様に対して、王太子殿下は不信感を抱いているのだという。
そしてクリスティーナ様は、聖女であるミキちゃんとエドワード様の子供が、自分の子供の地位を脅かすのではないかと恐れていた。
(クリスティーナ様も内心複雑だろうなぁ)
ミキちゃんは目に見える形での活躍はしていないものの、『救国の聖女』という肩書を持つ。
クリスティーナ様の長子はまだ三歳。
王太子殿下が王になれば、次の王はクリスティーナ様の長子がなるのが通例だけど、もし『救国の聖女』とエドワード様の子供と年が近ければ、その子を担ぎ上げる者が出てくるかもしれない。
世継ぎ問題は国が荒れる要因になりかねない。
そういった経緯もあり、早く婚約したいと訴えるエドワード様を止めているのだとクリスティーナ様は教えてくれた。
早く婚約したいエドワード様、エドワード様が大好きだけど婚約は躊躇うミキちゃん、二人の結婚を快く思っていない王太子夫妻。
様々な思惑がある中で、私が取るべき選択は何だろうか。
今日聞いた情報を整理するので頭がいっぱいだった私は、一番重要な人から話を聞くのをすっかり忘れていた。
いくら計画を立てたところで、この人の手にかかれば全てひっくり返されてしまうことを、私は身をもって知っていたはずなのに……
神殿から帰ってきた私は、着替えのために真っ直ぐ自分の部屋へ向かった。
そういえば、エドワード様から送られた姿絵をどうにかしないといけない。
彼らの婚約を認めるかどうかまだ決めてないけれど、とりあえず姿絵だけは先に送り返しておこう。
そんなことを考えながら私は自室のドアノブを掴んだ。
その時、指先にわずかな温かさを感じて、無意識の内に動きを止める。
「……」
どうしてだか分からないけれど、嫌な予感がする。
私は自分の直感に従って、ドアノブから手を離した。
そして踵を返そうとした次の瞬間、勢いよく扉が開いた。
「……どうして入らないのですか?」
見上げると、ルシフェル様が立っている。
部屋の光を背にしたルシフェル様は、私から見ると逆光になっていた。
顔が暗くて、怖い。
更に言えば、無表情で何を考えているのか分からないのも怖い。
(――む、むしろ何でルシフェル様が私の部屋にいるの……!?)
私の至極真っ当な疑問は、ルシフェル様に腕を引かれて部屋に引きずり込まれたことで、残念ながら言葉にならなかった。
今日話を聞いたことで、ミキちゃんの考えは分かった。
少なくとも今のミキちゃんは、元の世界に戻るよりもエドワード様との未来を選んだようだ。
エドワード様のことが大好きなミキちゃんは、まるで恋する乙女のよう。
(……まあ、高校生だもんね)
マンガの中では魔王を倒して世界を平和にするという使命があったけれど、今は何もない。
平和な世界でエドワード様と出会ったことで、恋に恋している状態になるのも仕方ない……のかもしれない。
少し疑問に思いつつ、私は自分を納得させた。
そんなミキちゃんなら早くエドワード様と婚約したいだろうと思ったら、まさか――
(まさか、初夜が怖いって理由で婚約を躊躇っているとは思わなかったよ……)
王家に嫁ぐことの責任の重さや覚悟とか、もっと深刻な悩みを抱えているのかと思ったら、想像以上に乙女な悩みでなんだか疲れてしまった。
肩を落とした私は、帰りの馬車の中で聞いたクリスティーナ様の話を思い出す。
婚約解消の時に耳にしたように、貴族の中には王家が『救国の聖女』を取り込むことに賛同する者がいるらしい。
ただ、国王陛下を味方につけて半ば強引に私との婚約を解消したエドワード様に対して、王太子殿下は不信感を抱いているのだという。
そしてクリスティーナ様は、聖女であるミキちゃんとエドワード様の子供が、自分の子供の地位を脅かすのではないかと恐れていた。
(クリスティーナ様も内心複雑だろうなぁ)
ミキちゃんは目に見える形での活躍はしていないものの、『救国の聖女』という肩書を持つ。
クリスティーナ様の長子はまだ三歳。
王太子殿下が王になれば、次の王はクリスティーナ様の長子がなるのが通例だけど、もし『救国の聖女』とエドワード様の子供と年が近ければ、その子を担ぎ上げる者が出てくるかもしれない。
世継ぎ問題は国が荒れる要因になりかねない。
そういった経緯もあり、早く婚約したいと訴えるエドワード様を止めているのだとクリスティーナ様は教えてくれた。
早く婚約したいエドワード様、エドワード様が大好きだけど婚約は躊躇うミキちゃん、二人の結婚を快く思っていない王太子夫妻。
様々な思惑がある中で、私が取るべき選択は何だろうか。
今日聞いた情報を整理するので頭がいっぱいだった私は、一番重要な人から話を聞くのをすっかり忘れていた。
いくら計画を立てたところで、この人の手にかかれば全てひっくり返されてしまうことを、私は身をもって知っていたはずなのに……
神殿から帰ってきた私は、着替えのために真っ直ぐ自分の部屋へ向かった。
そういえば、エドワード様から送られた姿絵をどうにかしないといけない。
彼らの婚約を認めるかどうかまだ決めてないけれど、とりあえず姿絵だけは先に送り返しておこう。
そんなことを考えながら私は自室のドアノブを掴んだ。
その時、指先にわずかな温かさを感じて、無意識の内に動きを止める。
「……」
どうしてだか分からないけれど、嫌な予感がする。
私は自分の直感に従って、ドアノブから手を離した。
そして踵を返そうとした次の瞬間、勢いよく扉が開いた。
「……どうして入らないのですか?」
見上げると、ルシフェル様が立っている。
部屋の光を背にしたルシフェル様は、私から見ると逆光になっていた。
顔が暗くて、怖い。
更に言えば、無表情で何を考えているのか分からないのも怖い。
(――む、むしろ何でルシフェル様が私の部屋にいるの……!?)
私の至極真っ当な疑問は、ルシフェル様に腕を引かれて部屋に引きずり込まれたことで、残念ながら言葉にならなかった。
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