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1話「見てしまった」
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明日婚約者オードレインと結婚式を挙げる、という日、私は見てしまった――彼が知らない女性と二人きりになり密着して愛を深め合っているところを。
「ねぇ、本当にいいの? いるんでしょ、婚約者。怒られないかしら?」
「怒られないよ」
「本当?」
「ああ。あいつ、気づいていないからな。だから大丈夫。……でもごめんな、結婚してしばらくは色々あるからお前に会えなくなるけど」
いきなり見てしまったものだから衝撃が大きくて。
さすがにすぐそこへ出ていくことはできなかった。
壁の陰に隠れて様子を窺う。
「いいのよ、べつに」
「だけど、だけど……これだけは信じて。俺が愛しているのはお前一人だけだから。婚約者だって、妻だって、あいつは俺の愛する人じゃない」
口づけして見つめ合う二人。
「ここで言っていいの?」
「いいんだよ」
「……ありがとうオードレイン、あたしも愛しているわ」
どうしよう、どうしよう――そんなことを思うが、こういう時どんな風に対処するべきなのか分からなくて。
取り敢えず映像記録魔法を使って以上に距離が近い二人の様子を残しておいた。
その時、女性に勘付かれる。
「ちょっと! そこにいるの誰!?」
叫ばれてしまった。
どうやら私の存在がばれてしまったようだ。
「どうした?」
「人がいる!」
「え。おいおい、怖いこと言うなよな~」
「本当よ! 見てきてちょうだい」
こうなってしまった以上仕方ない――心を決め、私は二人の視界に入る位置へと移動する。
「なっ!? リリア!?」
驚いた顔をするのはオードレイン。
「ど、どうして……ここに……?」
「すみません。実は、たまたま通りかかりまして」
「か、勘違いするなよ!? これは浮気とかではない! 彼女とは仕事の話をしていただけだ!」
「あの……私、何も言っていませんけど」
「ヴッ――」
オードレインは自滅しているような形だ。
こちらはまだ何も動き出していないというのに。
「ねぇ、本当にいいの? いるんでしょ、婚約者。怒られないかしら?」
「怒られないよ」
「本当?」
「ああ。あいつ、気づいていないからな。だから大丈夫。……でもごめんな、結婚してしばらくは色々あるからお前に会えなくなるけど」
いきなり見てしまったものだから衝撃が大きくて。
さすがにすぐそこへ出ていくことはできなかった。
壁の陰に隠れて様子を窺う。
「いいのよ、べつに」
「だけど、だけど……これだけは信じて。俺が愛しているのはお前一人だけだから。婚約者だって、妻だって、あいつは俺の愛する人じゃない」
口づけして見つめ合う二人。
「ここで言っていいの?」
「いいんだよ」
「……ありがとうオードレイン、あたしも愛しているわ」
どうしよう、どうしよう――そんなことを思うが、こういう時どんな風に対処するべきなのか分からなくて。
取り敢えず映像記録魔法を使って以上に距離が近い二人の様子を残しておいた。
その時、女性に勘付かれる。
「ちょっと! そこにいるの誰!?」
叫ばれてしまった。
どうやら私の存在がばれてしまったようだ。
「どうした?」
「人がいる!」
「え。おいおい、怖いこと言うなよな~」
「本当よ! 見てきてちょうだい」
こうなってしまった以上仕方ない――心を決め、私は二人の視界に入る位置へと移動する。
「なっ!? リリア!?」
驚いた顔をするのはオードレイン。
「ど、どうして……ここに……?」
「すみません。実は、たまたま通りかかりまして」
「か、勘違いするなよ!? これは浮気とかではない! 彼女とは仕事の話をしていただけだ!」
「あの……私、何も言っていませんけど」
「ヴッ――」
オードレインは自滅しているような形だ。
こちらはまだ何も動き出していないというのに。
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