お前は要らない、ですか。そうですか、分かりました。では私は去りますね。あ、私、こう見えても人気があるので、次の相手もすぐに見つかりますよ。

四季

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前編

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「お前は要らない」

 婚約者アーダンスは豪華な椅子に腰かけて腕組みをしながら告げる。

「婚約は破棄とする」

 彼との出会いは親の圧に負けて参加したお見合いのような場であった。
 親同士が気が合ったため、私たちは結ばれることとなったのである。

 お互いが選んだわけではないので、想い合い続けるのは難しいこと。それは分かる。が、婚約しておいて今さら「お前は要らない」は少し酷いなとは思う。

 とはいえ、結婚してから嫌い合うようになるというのも厳しいものがある。

 それなら早くに離れる方が良いのかもしれない。

「そうですか、分かりました」
「ふん。……やはり可愛くないな」
「そうですね。では、これで」

 笑みを崩さない。

「私は去りますね。さようなら」
「待て、何か言うことはないのか」
「はい?」
「少しくらい謝ってはどうだ」

 すみませんが意味が分かりません。

 ……謝るのはそちらでしょう? 約束を違えることを選んだのだから。

 ま、でも、彼に謝ってほしいとは思っていない。
 こちらが謝らなくてはならない意味が理解できないだけであって。
 謝罪を強要するようなことはしない。

「これにて失礼します」
「潔くていいのか?」
「もうお話することはありませんので」

 終わらせたのは向こうだ。

 こちらにはこれ以上関わる義務はない。

 さようなら。
 きっともう二度と話すことはないでしょう。
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