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前編
しおりを挟む大金持ちの娘バランス・バランシザー・バランシカは婚約者ロックから突如告げられる。
「きみとの婚約だけど破棄することにしたから」
ロックの実家はかつて事業の失敗により借金まみれになっていた。しかし、二人の婚約にあたりバランスの実家が支援するという話になり、それによってロックもその両親も現在の日常を手に入れたのだ。
しかし彼はもう恩を忘れていて。
裏でこっそり付き合っている女にそそのかされ、バランスとの婚約を破棄しようと考えるに至ったのである。
バランスの家からの支援のおかげで手に入れた今の日常、平穏。
それを彼は当たり前に在るものだと勘違いしてしまっている。
いやもちろん最初は分かっていたのだ。しかし穏やかな空間で生きているうちに段々そのことは薄れていってしまったのである。それにより、彼はいつしか、今の生活が誰の力によって作られたものなのかを忘れてしまったのだ。
「婚約破棄……?」
いきなりの宣言に困惑するバランス。
「ああ、実はきみより愛おしい女性に出会ったんだ。だからもうきみとはやっていけない――いや、やっていかない」
「本気で仰っているのですか?」
「もちろんだよ、こんなこと冗談では言わない」
「そうですか……しかし、良いのでしょうか? 婚約破棄となった場合、支援は打ち切りとなるのですが……」
「いいさ、そのくらいちっぽけなことだ」
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