執着はありません。婚約者の座、譲りますよ

四季

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5話

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 ◆


 一ヶ月後、私はルーネから相談を受けることとなる。

 想像していたより早くルーネは苦労し始めたみたいだ。

「お姉様! カイン様、酷いですの!」
「酷い?」
「んもーっ、本当に心ないんですの! 婚約前はあんなことなかったのに!」
「そう? 普通よ。彼はもとからそういう人だったわ」

 私の婚約者だったから欲しかったのよね? 自分のものにしたかったのよね? 私は、貴女が欲しがったから差し出しただけ。良かったじゃない、彼を私から奪い取れて。それで満足なのでしょう? 後のことなんて知らないわ。もう望みは叶ったのでしょう?

「お姉様、ご存知でしたの!?」
「酷い男よね。口を開けば愚痴ばっかり、ことあるごとに怒鳴り散らす」
「ご存知だったならなぜ教えてくださらなかったんですの!?」

 私は最高の笑みを向ける。

「私には関係のないことよ」

 その日、私とルーネの縁は切れた。


 ◆


 背負うもののなくなった私は自分の人生を歩み出すことに成功。
 やりたいことをして、いろんな人に出会って、最終的にそれなりに温かい家庭を築くこともできた。

 人の数ほど人生がある。私の人生が最高のものかどうかは、見る人の感性によるだろう。一人で生きることを重視する人だって世の中にはいるから。だから、私の人生がすべての人の理想の人生かと聞かれれば、簡単に頷くことはできない。

 ただ、私にとっては最高だった。

 この人生で良かったと心から思える。

 そして、この温もりを守るために、これからも生きていこうと思えている。

 一方、ルーネはというと、何とかカインと続いているようだ。だが心はボロボロ。お世辞でも健康とは言えないような精神状態の中、日々奴隷のように家事をさせられているらしい。夫であるカインから怒鳴られることは日常茶飯事だとか。


◆終わり◆
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