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後編
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その後私は実家へ戻った。そして両親に事情を説明。婚約破棄したい、という意思も、その場で伝えた。母親が未練はないのかと尋ねてきたので、私は一度だけ強く頷く。それで本気であると伝わったらしく、両親は婚約破棄に向けて動き始めてくれた。
当然手続きには時間が必要。
手順というものがある。
そういったことに詳しい母親の父の知人が、協力してくれることとなった。その男性はこれまでも婚約破棄の手続きに関わったことがあるらしく慣れているようだったので、いろんな意味で頼りになった。
時間はかかったが、一年以内には婚約を破棄することができた。
いつかみた夢は叶わなかったけれど、その時の私は辛くはなかった。すべて自分が決めたことだからだ。この道を選んだのは私自身。だから悔やむ心などなかったし、むしろ爽やかさを感じているくらいであった。
私は再び道を歩き始める。けれどもそこに彼はいない。視界の中に彼の姿はない。彼の記憶は薄れてゆくばかり。それでもなお、私は進む。まだ見ぬ未来に、希望を見出しながら。
……さようなら、アセイン。
◆
十年後、私は結婚した。
その頃になって聞いた話だが、アセインはあの後あの時の女性と婚約し結婚したらしい。けれども幸せな暮らしが長く続くことはなくて。最初のうちは上手くいっているようだったが、そのうち夫婦喧嘩が絶えなくなってしまったそうだ。
そんな最中、夫婦喧嘩の果てに、アセインは女性を殴ってしまった。
それが原因となって、女性と離婚することになったそうだ。
アセインは暴行の罪で拘束された。計画的な行動ではなかったが、だからといって許されるわけもなく。一度の暴行によって、彼は犯罪者となってしまった。また、女性の両親がアセインを訴えたこともあって、お金ももぎ取られることとなってしまったそうだ。
アセインはまだ当分犯罪者として拘束され続けることになる。
美しい空を見上げることも、花と戯れることも、やりたいことをやることも、自由にはできない。許されたことしかできないという虚し過ぎる世界が、彼を迎え入れたのだ。
いつかは解放されるだろう。
けれどもそれは何年か先の話。
アセインを待つのは、泥と罪にまみれた地獄のような世界だけだ。
◆終わり◆
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