16 / 134
16 ベッティーナさん
しおりを挟む
「スクロールして大丈夫」
マリアちゃんに言われ、
「では、お言葉に甘えて」
一番上から、スクロールしていく。
『あの人の名前は?』
『Alessio Pulvirenti アレッシオ・プルヴィレンティ。今がどうだかは知らない』
『何歳?』
『20歳になるはず』
『プルヴィレンティさんの家族とも、仲良かったの?』
『そう。家族ぐるみで』
『えー……元カレ?』
『私のではない』
『誰のって聞いて良い?』
『姉』
『家族に連絡って、お姉さん?』
『そう』
『え、何、追いかけてきたわけ?』
『厳密には違う。けど、その辺は話せない。ストーカーとかではない』
『みつみんに何話したの?』
『伝言頼んだ。姉が来るけど待てるかって。で、待つって』
『お姉さん、いつ来るの?』
『早くて3時間って、本人からは言われた。今日、大学のサークルの関係で、少し遠くにいるんだ』
そこで、終わっていた。
「うん。ちょっと待ってね」
私はメモにサラサラと、私が知っていることを書き、切り取り、テーブルに置いた。
『私が聞いた名前も同じ。アレッシオさんが初めて来店したのは今週の日曜。最初からイタリア語で話してきた。話せる店員のことを誰かから聞いたのかも。で、その日の最後に、流暢な日本語でごちそうさまって。で、その後も、知ってる限り、今日含めて3回ご来店。以上』
そこで、ラファエルさんに呼ばれた。
「ごめん、行くね」
で、明宏さんたちに料理を持っていき、引っ込もうとしたところで、桜ちゃんに呼ばれた。
「お昼注文しようって。いい?」
「もちろん」
桜ちゃんが頼んだのは、ガレットとディアボロ・マント。ディアボロ・マントは、ミントシロップの炭酸割りだ。マリアちゃんはピッカータとディアボロ・フレーズ。フレーズは、いちごのシロップ。ユキさんはキッシュとカフェオレ。アズサさんはラタトゥイユで、飲み物無し。三人の飲み物は先に持ってくる。
「かしこまりました。少々お待ち下さい」
で、厨房へ伝達。飲み物を作る。持って行く。
「おまたせしました」
3つ置いて、
「あと、何かありますか?」
4人とも無いとのことで、引っ込む。アレッシオさんをちらりと見れば、ラタトゥイユを食べ終えているらしく、頬杖をついて目を閉じている。
「(あの、アレッシオさん)」
控えめに声を掛けると、パチ、と目を開けた。
「(もしよろしければ、ですが。食器を片づけましょうか? あと、お水のおかわりも)」
そしたら、アレッシオさんは、苦笑して。
「(じゃあ、お願いするよ。あと、水も欲しいけど、コーヒーの追加も良いかな)」
「(かしこまりました)」
食器を片付け、伝達、メモ、水とコーヒーを準備する。で、アレッシオさんの所へ持っていく。
「(ありがとう)」
「(いえ、こちらこそ。あと何か、ありますか?)」
アレッシオさんは少し考えてから、
「(いや、大丈夫。ありがとう)」
「(では、御用の際はお声がけください)」
引っ込み、隅に寄り、時計を見る。午後の1時を過ぎたところだ。
早くて3時間。たぶん、まだ、30分くらいしか経ってない。それと、マリアちゃんたちへ料理を持っていった辺りで、昼休憩になりそうだ。
そんなことを思っていたら、予想通りにラファエルさんに呼ばれる。料理を4人の所へ。今は、あとは大丈夫、と言われたので、引っ込む。昼休憩の時間になった。
ここの昼は賄いだ。ラファエルさんが作ってくれたラタトゥイユを、いただきますと食べ、水を飲みつつ、ホールへ耳をそばだてる。私が出れない時はラファエルさんが対応することになってるけど、やっぱり、気になる。
アデルさんの悪阻は、どんどん重くなっているらしい。安定期に入れば落ち着くらしいけど、その安定期まで、まだ1ヶ月はある。なので、今日は、というか、今日も、ほぼ一人で接客だ。
ごちそうさまと食べ終え、食器を流しに置き、顔や服が汚れていないことや、髪の乱れを確認して。
ホールに出る。幸い、聴こえていた通りにお客さんは来ていないらしい。待たせることがなくて良かった。
ぽつぽつ来る常連さんへ接客して、会計して、テーブルを片付けて。そうしてるうちに、いつもの感じを取り戻してきた。
いやぁまぁ、私もまだまだだ。あれくらいで取り乱してどうする。いや、最悪を考えないといけない立場でもあるけれど。
「光海、いいか?」
「うん」
マリアちゃんに呼ばれ、テーブルへ。因みに、マリアちゃんたちはもう食べ終わっており、食器は片付け、飲み物を追加注文され、出してきた。
「(また、伝言、頼む)」
と、スマホを見せられた。
『あと30分くらいでそこに着くらしいから、彼に伝えて。タクシーに乗ってるって』
タクシー、結構飛ばしたんだろうか。まだ、2時半だけど。
「(了解)」
それを、アレッシオさんに伝える。
「(ありがとう。……彼女たちにも、感謝を伝えてくれるかな)」
「(かしこまりました)」
笑顔で応えた。
で、マリアちゃんへ、伝える。
「(分かった。伝えとく)」
マリアちゃんは、苦笑して、言った。
することが無くなり、隅に寄る。今までの情報を整理して、アレッシオさんとマリアちゃんのことについて、考える。
マリアちゃんのお姉さんだから、ベッティーナさんだよね? 2人姉妹って聞いたし、ベッティーナさんにも何度か会ったことあるし。さっきメッセージを見せてもらったその相手も、姉、とあった。
私がベッティーナさんに最後に会ったのは、今年の2月。マリアちゃん家族全員が、お店に来てくれた時だ。
その時のベッティーナさんは、マリアちゃんより濃い金髪を緩く三つ編みにしていて、それでも腰に届きそうだった。で、マリアちゃんの瞳は黒だけど、ベッティーナさんは薄い茶色。マリアちゃんは切れ長タイプの目だけど、ベッティーナさんはアーモンド型だ。ベッティーナさんの背の高さは、マリアちゃんと同じくらい。
などと考え思い出しつつ、アレッシオさんをチラ見する。アレッシオさんはコーヒーを飲みながら、本を読んでいた。テーブルには、四つ葉のクローバーの栞が置いてある。いつも、帰る頃になると、アレッシオさんは本を読んでいた、な、と、思い出して。
ベッティーナさんについても、もう一つ、思い出した。
『これね、お守りなの』
ベッティーナさんも、四つ葉のクローバーの栞を持っていた。
……こ、これは、これは確定なのでは?
時計を見る。あれから15分経っている。けど、15分しか、経っていない。
あと15分、そう思っていたら、店の前に、車が止まった。タクシーだ。え、来た? いや早計だ。別の人かも知れないし、関係ないタクシーかも知れないし。
冷静さを保とうと、色々考えて。降りてきた人がドア越しに見え、その、見覚えしかない女性は、カラン、とドアを開けた。
「いらっしゃいませ」
店員として、声を掛ける。ベッティーナさんが、アレッシオさんを見て固まっていようとも。そのアレッシオさんも、ベッティーナさんを見て、固まっているけれど。
ベッティーナさんは、ハッとしたように、近くまで来ていた私へ顔を向けた。
「……あ、ごめんね。久しぶり、光海」
「お久しぶりです。お席、どうしますか?」
「(姉さん)」
そこに、マリアちゃんがやってきた。
「(姉さん、アレッシオ。カウンターじゃなくてテーブルで。光海もいい?)」
「(マリアちゃんたちがそれで良いなら)」
「(僕も、それで頼みたい。良いかな、ベティ)」
カウンターの席から降り、安心させるように微笑みながら、アレッシオさんが言う。
ベッティーナさんは無言で、こくりと頷いた。
「(では、どこの席にしますか? ご案内しましょうか?)」
3人の顔を見つつ、聞く。
「(光海、悪い。私が連れてく。2人にカフェオレ頼む)」
「(了解)」
マリアちゃんへ頷いて、アレッシオさんの食器を片付け、伝達、メモ、二人分の水とカフェオレ。
ホールへ戻れば、ベッティーナさんとアレッシオさんは、壁際の席に、横並びで座っていた。マリアちゃんは、元の席だ。
「(おまたせしました)」
水とカフェオレを置く。
「(何か御用の際は、お声がけください)」
と、引っ込み、食器を片付けただけのアレッシオさんのカウンターを、綺麗にする。ベッティーナさんとアレッシオさんが話しているのが聞こえるけど、なるべくスルー。
で、終わり、店内を見回し──二人が手を繋いでいるのが見えたけど、気にしない──することはなさそうだな、と隅に寄る。
「(本当に、来てくれたんだ)」
「(それは僕の言葉だよ。来てくれて、会おうとしてくれて、会えて、嬉しい)」
「(栞、クローバー……持っててくれたんだね)」
「(当たり前だよ。君が見つけてくれたんだから。僕が栞にしたんだから)」
やーっぱりかー。
「(私も、持ってる。今も、持ってる)」
「(じゃあ、僕のお願いは、叶った?)」
「(私のお願いも、叶った)」
おめでとうございます、と思ったところで、カラン、とドアが開いた。エマさんとレイさんだった。
「(いらっしゃいませ)」
「(やあ、光海。今日は最初から一緒だよ。適当に座っていいかい?)」
「(かしこまりました。お水をお持ちしますね)」
で、ルーティンをこなし、エマさんはディアボロ・グルナディン──ざくろシロップの炭酸割り──を、レイさんはディアボロ・シトロン──シトロンはレモンシロップだ──を、ご注文。かしこまりました、と引っ込み、飲み物を用意し、テーブルへ。
少しして、マリアちゃんたちに、会計で呼ばれた。
「ありがとう、色々と」
マリアちゃんに言われる。
「いやいや、こちらこそ」
個別会計を終え、4人は、ごちそうさまと言って店をあとにした。
さて、テーブルを片付けよ。
で、その後は、ほぼいつも通り。ベッティーナさんとアレッシオさんは、午後の5時頃まで話して、会計の時、ありがとう、と言ってくれた。こちらこそ、と返した。いつも通りの笑顔で。
そして、時間キッチリまで、仕事をして。帰ってから、スマホを見たら、マリアちゃんと桜ちゃんと橋本から、通知が来てた。
「……」
まず、マリアちゃんから。
『今日は本当、色々ありがとう。光海には何話してるか聞こえただろうけど、あとはあの二人の問題だし、決着付いてから話す。それと、ユキとアズサと桜と光海との、5人のグループ作らないかって。どうする?』
全部了解。グループ作ろう。と送って、今度は、桜ちゃん。
『マリアちゃんから話いくと思うけど、今日の5人でグループ作らない?』
マリアちゃんのを見たことと、OKを送る。
最後に、橋本だ。
『明日、勉強の後で、言うことがある』
……また、前みたいな文になったな。
『それは、勉強の時間内で、ということですか? それとも勉強の時間は確保した上で、ということでしょうか?』
送信。
さて、明日の支度をしましょうか。ノートのコピー、教材、返ってきたテスト、参考書、筆記用具、財布……こんなもんかな。
「で、水筒洗って……」
と、通知。
『後者』
……。はいはい後者ね。
『分かりました』
マリアちゃんに言われ、
「では、お言葉に甘えて」
一番上から、スクロールしていく。
『あの人の名前は?』
『Alessio Pulvirenti アレッシオ・プルヴィレンティ。今がどうだかは知らない』
『何歳?』
『20歳になるはず』
『プルヴィレンティさんの家族とも、仲良かったの?』
『そう。家族ぐるみで』
『えー……元カレ?』
『私のではない』
『誰のって聞いて良い?』
『姉』
『家族に連絡って、お姉さん?』
『そう』
『え、何、追いかけてきたわけ?』
『厳密には違う。けど、その辺は話せない。ストーカーとかではない』
『みつみんに何話したの?』
『伝言頼んだ。姉が来るけど待てるかって。で、待つって』
『お姉さん、いつ来るの?』
『早くて3時間って、本人からは言われた。今日、大学のサークルの関係で、少し遠くにいるんだ』
そこで、終わっていた。
「うん。ちょっと待ってね」
私はメモにサラサラと、私が知っていることを書き、切り取り、テーブルに置いた。
『私が聞いた名前も同じ。アレッシオさんが初めて来店したのは今週の日曜。最初からイタリア語で話してきた。話せる店員のことを誰かから聞いたのかも。で、その日の最後に、流暢な日本語でごちそうさまって。で、その後も、知ってる限り、今日含めて3回ご来店。以上』
そこで、ラファエルさんに呼ばれた。
「ごめん、行くね」
で、明宏さんたちに料理を持っていき、引っ込もうとしたところで、桜ちゃんに呼ばれた。
「お昼注文しようって。いい?」
「もちろん」
桜ちゃんが頼んだのは、ガレットとディアボロ・マント。ディアボロ・マントは、ミントシロップの炭酸割りだ。マリアちゃんはピッカータとディアボロ・フレーズ。フレーズは、いちごのシロップ。ユキさんはキッシュとカフェオレ。アズサさんはラタトゥイユで、飲み物無し。三人の飲み物は先に持ってくる。
「かしこまりました。少々お待ち下さい」
で、厨房へ伝達。飲み物を作る。持って行く。
「おまたせしました」
3つ置いて、
「あと、何かありますか?」
4人とも無いとのことで、引っ込む。アレッシオさんをちらりと見れば、ラタトゥイユを食べ終えているらしく、頬杖をついて目を閉じている。
「(あの、アレッシオさん)」
控えめに声を掛けると、パチ、と目を開けた。
「(もしよろしければ、ですが。食器を片づけましょうか? あと、お水のおかわりも)」
そしたら、アレッシオさんは、苦笑して。
「(じゃあ、お願いするよ。あと、水も欲しいけど、コーヒーの追加も良いかな)」
「(かしこまりました)」
食器を片付け、伝達、メモ、水とコーヒーを準備する。で、アレッシオさんの所へ持っていく。
「(ありがとう)」
「(いえ、こちらこそ。あと何か、ありますか?)」
アレッシオさんは少し考えてから、
「(いや、大丈夫。ありがとう)」
「(では、御用の際はお声がけください)」
引っ込み、隅に寄り、時計を見る。午後の1時を過ぎたところだ。
早くて3時間。たぶん、まだ、30分くらいしか経ってない。それと、マリアちゃんたちへ料理を持っていった辺りで、昼休憩になりそうだ。
そんなことを思っていたら、予想通りにラファエルさんに呼ばれる。料理を4人の所へ。今は、あとは大丈夫、と言われたので、引っ込む。昼休憩の時間になった。
ここの昼は賄いだ。ラファエルさんが作ってくれたラタトゥイユを、いただきますと食べ、水を飲みつつ、ホールへ耳をそばだてる。私が出れない時はラファエルさんが対応することになってるけど、やっぱり、気になる。
アデルさんの悪阻は、どんどん重くなっているらしい。安定期に入れば落ち着くらしいけど、その安定期まで、まだ1ヶ月はある。なので、今日は、というか、今日も、ほぼ一人で接客だ。
ごちそうさまと食べ終え、食器を流しに置き、顔や服が汚れていないことや、髪の乱れを確認して。
ホールに出る。幸い、聴こえていた通りにお客さんは来ていないらしい。待たせることがなくて良かった。
ぽつぽつ来る常連さんへ接客して、会計して、テーブルを片付けて。そうしてるうちに、いつもの感じを取り戻してきた。
いやぁまぁ、私もまだまだだ。あれくらいで取り乱してどうする。いや、最悪を考えないといけない立場でもあるけれど。
「光海、いいか?」
「うん」
マリアちゃんに呼ばれ、テーブルへ。因みに、マリアちゃんたちはもう食べ終わっており、食器は片付け、飲み物を追加注文され、出してきた。
「(また、伝言、頼む)」
と、スマホを見せられた。
『あと30分くらいでそこに着くらしいから、彼に伝えて。タクシーに乗ってるって』
タクシー、結構飛ばしたんだろうか。まだ、2時半だけど。
「(了解)」
それを、アレッシオさんに伝える。
「(ありがとう。……彼女たちにも、感謝を伝えてくれるかな)」
「(かしこまりました)」
笑顔で応えた。
で、マリアちゃんへ、伝える。
「(分かった。伝えとく)」
マリアちゃんは、苦笑して、言った。
することが無くなり、隅に寄る。今までの情報を整理して、アレッシオさんとマリアちゃんのことについて、考える。
マリアちゃんのお姉さんだから、ベッティーナさんだよね? 2人姉妹って聞いたし、ベッティーナさんにも何度か会ったことあるし。さっきメッセージを見せてもらったその相手も、姉、とあった。
私がベッティーナさんに最後に会ったのは、今年の2月。マリアちゃん家族全員が、お店に来てくれた時だ。
その時のベッティーナさんは、マリアちゃんより濃い金髪を緩く三つ編みにしていて、それでも腰に届きそうだった。で、マリアちゃんの瞳は黒だけど、ベッティーナさんは薄い茶色。マリアちゃんは切れ長タイプの目だけど、ベッティーナさんはアーモンド型だ。ベッティーナさんの背の高さは、マリアちゃんと同じくらい。
などと考え思い出しつつ、アレッシオさんをチラ見する。アレッシオさんはコーヒーを飲みながら、本を読んでいた。テーブルには、四つ葉のクローバーの栞が置いてある。いつも、帰る頃になると、アレッシオさんは本を読んでいた、な、と、思い出して。
ベッティーナさんについても、もう一つ、思い出した。
『これね、お守りなの』
ベッティーナさんも、四つ葉のクローバーの栞を持っていた。
……こ、これは、これは確定なのでは?
時計を見る。あれから15分経っている。けど、15分しか、経っていない。
あと15分、そう思っていたら、店の前に、車が止まった。タクシーだ。え、来た? いや早計だ。別の人かも知れないし、関係ないタクシーかも知れないし。
冷静さを保とうと、色々考えて。降りてきた人がドア越しに見え、その、見覚えしかない女性は、カラン、とドアを開けた。
「いらっしゃいませ」
店員として、声を掛ける。ベッティーナさんが、アレッシオさんを見て固まっていようとも。そのアレッシオさんも、ベッティーナさんを見て、固まっているけれど。
ベッティーナさんは、ハッとしたように、近くまで来ていた私へ顔を向けた。
「……あ、ごめんね。久しぶり、光海」
「お久しぶりです。お席、どうしますか?」
「(姉さん)」
そこに、マリアちゃんがやってきた。
「(姉さん、アレッシオ。カウンターじゃなくてテーブルで。光海もいい?)」
「(マリアちゃんたちがそれで良いなら)」
「(僕も、それで頼みたい。良いかな、ベティ)」
カウンターの席から降り、安心させるように微笑みながら、アレッシオさんが言う。
ベッティーナさんは無言で、こくりと頷いた。
「(では、どこの席にしますか? ご案内しましょうか?)」
3人の顔を見つつ、聞く。
「(光海、悪い。私が連れてく。2人にカフェオレ頼む)」
「(了解)」
マリアちゃんへ頷いて、アレッシオさんの食器を片付け、伝達、メモ、二人分の水とカフェオレ。
ホールへ戻れば、ベッティーナさんとアレッシオさんは、壁際の席に、横並びで座っていた。マリアちゃんは、元の席だ。
「(おまたせしました)」
水とカフェオレを置く。
「(何か御用の際は、お声がけください)」
と、引っ込み、食器を片付けただけのアレッシオさんのカウンターを、綺麗にする。ベッティーナさんとアレッシオさんが話しているのが聞こえるけど、なるべくスルー。
で、終わり、店内を見回し──二人が手を繋いでいるのが見えたけど、気にしない──することはなさそうだな、と隅に寄る。
「(本当に、来てくれたんだ)」
「(それは僕の言葉だよ。来てくれて、会おうとしてくれて、会えて、嬉しい)」
「(栞、クローバー……持っててくれたんだね)」
「(当たり前だよ。君が見つけてくれたんだから。僕が栞にしたんだから)」
やーっぱりかー。
「(私も、持ってる。今も、持ってる)」
「(じゃあ、僕のお願いは、叶った?)」
「(私のお願いも、叶った)」
おめでとうございます、と思ったところで、カラン、とドアが開いた。エマさんとレイさんだった。
「(いらっしゃいませ)」
「(やあ、光海。今日は最初から一緒だよ。適当に座っていいかい?)」
「(かしこまりました。お水をお持ちしますね)」
で、ルーティンをこなし、エマさんはディアボロ・グルナディン──ざくろシロップの炭酸割り──を、レイさんはディアボロ・シトロン──シトロンはレモンシロップだ──を、ご注文。かしこまりました、と引っ込み、飲み物を用意し、テーブルへ。
少しして、マリアちゃんたちに、会計で呼ばれた。
「ありがとう、色々と」
マリアちゃんに言われる。
「いやいや、こちらこそ」
個別会計を終え、4人は、ごちそうさまと言って店をあとにした。
さて、テーブルを片付けよ。
で、その後は、ほぼいつも通り。ベッティーナさんとアレッシオさんは、午後の5時頃まで話して、会計の時、ありがとう、と言ってくれた。こちらこそ、と返した。いつも通りの笑顔で。
そして、時間キッチリまで、仕事をして。帰ってから、スマホを見たら、マリアちゃんと桜ちゃんと橋本から、通知が来てた。
「……」
まず、マリアちゃんから。
『今日は本当、色々ありがとう。光海には何話してるか聞こえただろうけど、あとはあの二人の問題だし、決着付いてから話す。それと、ユキとアズサと桜と光海との、5人のグループ作らないかって。どうする?』
全部了解。グループ作ろう。と送って、今度は、桜ちゃん。
『マリアちゃんから話いくと思うけど、今日の5人でグループ作らない?』
マリアちゃんのを見たことと、OKを送る。
最後に、橋本だ。
『明日、勉強の後で、言うことがある』
……また、前みたいな文になったな。
『それは、勉強の時間内で、ということですか? それとも勉強の時間は確保した上で、ということでしょうか?』
送信。
さて、明日の支度をしましょうか。ノートのコピー、教材、返ってきたテスト、参考書、筆記用具、財布……こんなもんかな。
「で、水筒洗って……」
と、通知。
『後者』
……。はいはい後者ね。
『分かりました』
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム
ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。
けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。
学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!?
大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。
真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。
至れり尽くせり!僕専用メイドの全員が溺愛してくる件
こうたろ
青春
普通の大学生・佐藤健太は目覚めると、自宅が豪華な洋館に変わり10人の美人メイドたちに「お目覚めですか、ご主人様?」と一斉に迎えられる。いつの間にか彼らの“専属主人”になっていた健太は戸惑う間もなく、朝から晩までメイドたちの超至れり尽くせりな奉仕を受け始める。
距離を置きたい女子たちを助けてしまった結果、正体バレして迫られる
歩く魚
恋愛
かつて、命を懸けて誰かを助けた日があった。
だがその記憶は、頭を打った衝撃とともに、綺麗さっぱり失われていた。
それは気にしてない。俺は深入りする気はない。
人間は好きだ。けれど、近づきすぎると嫌いになる。
だがそんな俺に、思いもよらぬ刺客が現れる。
――あの日、俺が助けたのは、できれば関わりたくなかった――距離を置きたい女子たちだったらしい。
隣の家の幼馴染と転校生が可愛すぎるんだが
akua034
恋愛
隣に住む幼馴染・水瀬美羽。
毎朝、元気いっぱいに晴を起こしに来るのは、もう当たり前の光景だった。
そんな彼女と同じ高校に進学した――はずだったのに。
数ヶ月後、晴のクラスに転校してきたのは、まさかの“全国で人気の高校生アイドル”黒瀬紗耶。
平凡な高校生活を過ごしたいだけの晴の願いとは裏腹に、
幼馴染とアイドル、二人の存在が彼の日常をどんどんかき回していく。
笑って、悩んで、ちょっとドキドキ。
気づけば心を奪われる――
幼馴染 vs 転校生、青春ラブコメの火蓋がいま切られる!
天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】
田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。
俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。
「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」
そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。
「あの...相手の人の名前は?」
「...汐崎真凛様...という方ですね」
その名前には心当たりがあった。
天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。
こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。
家から出ない女優の幼馴染を連れ出したら、いつの間にか伝説になっていた件。
Memu(メム)
恋愛
学校に行かない引きこもりの国民的女優――水宮小鞠。
女の子に間違われる地味男子――白雲凪。
俺に与えられた役目はひとつ。
彼女を、学校へ連れて行くこと。
騒動になれば退学。
体育祭までに通わせられなくても退学。
成功率ほぼゼロの無理ゲーだ。
距離は近い。
でも、心は遠い。
甘えてくるくせに、本音は隠す幼馴染。
それでも――
俺は彼女の手を引く。
退学リミット付き登校ミッションから始まる、
国民的スター幼馴染とのドタバタ青春ラブコメ、ここに開幕。
俺にだけツンツンする学園一の美少女が、最近ちょっとデレてきた件。
甘酢ニノ
恋愛
彼女いない歴=年齢の高校生・相沢蓮。
平凡な日々を送る彼の前に立ちはだかるのは──
学園一の美少女・黒瀬葵。
なぜか彼女は、俺にだけやたらとツンツンしてくる。
冷たくて、意地っ張りで、でも時々見せるその“素”が、どうしようもなく気になる。
最初はただの勘違いだったはずの関係。
けれど、小さな出来事の積み重ねが、少しずつ2人の距離を変えていく。
ツンデレな彼女と、不器用な俺がすれ違いながら少しずつ近づく、
焦れったくて甘酸っぱい、青春ラブコメディ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる