学年一の不良が図書館で勉強してた。

山法師

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 で、ホントに来たぜ。次の日だぜ?

「いらっしゃいませ」
「……ああ」

 橋本は、店内を見回し、キョロキョロとする。

「席は自由に選べますが、どうしますか? ご案内もできますが」
「じゃあ、頼む」
「かしこまりました。では、こちらへどうぞ」

 と、案内したのは、窓側の二人席。

「では、お水をお持ちしますね。少々お待ち下さい」

 言って、ルーティンをこなし、橋本のもとへ。

「おまたせしました。メニューはどうしますか? 説明もできますが」
「や、いい。考える」
「かしこまりました。では、御用の際はお声がけください」

 橋本への対応を終え、引っ込みつつ店内を軽く見回す。

「(光海、いいかい?)」
「(はい。なんでしょう、ヴァルターさん)」

 カウンターに座るヴァルターさんの所へ。

「(同じのを、もう一杯頼むよ)」

 ヴァルターさんが、空になったグラスを掲げて言う。私は素早くメモとペンを取り出し、書く。

「(かしこまりました。……ウェルナーさんのも空いてますが、どうしますか?)」

 ヴァルターさんの隣に座っている、薄めの金髪の男性。そのウェルナーさんは、ヴァルターさんの弟だ。

「(あ、じゃあ……俺も、兄さんのと同じのを)」
「(かしこまりました。少々お待ち下さい)」

 メモして、グラスを持って厨房へ。今日はアデルさんの調子が良いらしく、厨房に、だけど、ラファエルさんと一緒に二人で居る。で、伝達、飲み物、おまたせしました、と持っていく。からの、他にはないと言うことを確認して、引っ込む。

「……成川、いいか」
「はい。なんでしょう?」

 神妙な顔をしている橋本の所へ。

「なんか軽くは食べたいんだけど、どれがなんだ?」
「軽く、ですか。では」

 出したメモとペンを片手に持ち、開かれているメニューの、一つを示す。

「この、タブレ、というのは、どうですかね。クスクス、というパスタをご存知ですか?」
「名前は」
「それを使った料理です。写真にありますが、野菜とハーブを使っていて、さっぱりしたものです。いかかでしょう?」
「じゃ、それで」
「かしこまりました。お飲み物はどうしますか?」
「あー……ディアボロ・シトロン」
「かしこまりました。お飲み物は先にお持ちしますか?」
「あ、うん、頼む」
「かしこまりました。少々お待ち下さい」

 メモをとり、厨房へ。伝達、飲み物、テーブルへ。

「おまたせしました」

 と、ディアボロ・シトロンを置く。

「あとは何か、ありますか?」
「……お前、ここでは名前で呼ばれてんの?」

 恐る恐る、といった感じで聞いてくる。

「そうですね。下の名前で呼んでくださるかたも、名字で呼んでくださるかたも居ます」
「……そ。じゃ、それだけだから」
「では、御用の際はお声がけください」

 で、見回し、隅に。少しして、ラファエルさんに呼ばれた。橋本の料理だ。

「おまたせしました。カトラリー類はそこのカゴに。お箸もあります。セルヴィエット──紙ナプキンは、そちらに。では、どうぞ、ごゆっくり」

 引っ込み、隅に戻る。
 少しして、カラン、と鳴った。ベッティーナさんとアレッシオさんだった。

「(いらっしゃいませ。二名様、でよろしいですか?)」
「(ああ、うん。席に座ってるから、よろしく頼みたい。……いいよね?)」

 アレッシオさんが言い、ベッティーナさんへ顔を向ける。

「(そう決めたよね?)」

 ベッティーナさんはアレッシオさんへ、呆れるような、微笑ましいものを見るような顔を向け、言う。

「(うん。じゃあ、それで)」

 こちらへ向いたアレッシオさんたちへ、かしこまりましたと、厨房へ。ルーティンで、水を持っていく。二人は、あの席に座っていた。
 水を置き、二人ともスープ・ド・ポワソンで、飲み物は無し。かしこまりました、とメモって厨房へ。伝達して、ホールに出て、確認してから、隅に。

 5人グループに入ったあと。マリアちゃんから、ベッティーナさんたちがどうなったかと、ことの経緯を教えてもらった。二人には、了承を得ているそうだ。

 まあ、まず、ベッティーナさんとアレッシオさんは、恋人になった。なったというか、戻った。

 マリアちゃんたちがイタリアに居た頃、ベッティーナさんは、近所の遊び相手のアレッシオさんに告白された。で、付き合うことにした。そして相思相愛になって、けど、別れの時が来た。マリアちゃんたち家族が、日本に帰る──もともと、マリアちゃんたちのご両親は、片方が日本人、片方がイタリア人、なのは知ってたけど、その二人は日本で出会って日本で結ばれたらしい──ことになったのだ。

 離れてしまうことを、ベッティーナさんとアレッシオさんは悲しんで、でもどうにもできなくて。思い出に、と、幸運の印の四つ葉のクローバーを一緒に探して、アレッシオさんは見つけられなくて泣いたらしい、けど、ベッティーナさんは、なんとか2つ、見つけ出した。二人はそれを栞として身につけ、無理に探すのはやめよう。天罰が当たるから。けど、また出会えたら、その時、栞を持っていたら、また愛し合おう。と、別れたそうな。その時、アレッシオさんは6歳、ベッティーナさんは7歳。マリアちゃんは3歳だ。

 そしてアレッシオさんは、マリアちゃんのアカウントを見つけ、そこに投稿されている画像にベッティーナさんが写っていて。この店に辿り着き、二人は無事、恋人に戻れた、という話である。加えて、ベッティーナさんはゲン担ぎのため、伸ばせるだけ髪を伸ばしていたのだ、と、マリアちゃんは説明してくれた。

 ユキさんが『もしかしてだけどさ、そのためにインフルエンサーしてたとか、ある?』と聞いた。『それも少しあったけど、これは、やりたいからやってる』と、マリアちゃんは、答えた。
 と、そんなやり取りをした。

 あ、ラファエルさんに呼ばれた。ベッティーナさんたちの分である。テーブルに置き、他は今はいいということで、引っ込む。ベッティーナさんの髪に指を通していたアレッシオさんは、料理がもう来たからと、ベッティーナさんに窘められ、名残惜しそうに髪を一房取り、キスをした。

「成川」

 呼ばれたので、返事して向かう。

「お前、今日、シフト通り?」

 小声で聞かれる。

「はい。午後の8時まで居ますよ」
「そお……」
「何か、ありますか?」
「や、もうちょい、ここ、居ても大丈夫か」
「はい、もちろんです。それで……お水のおかわりはどうしますか?」

 料理も飲み物も、まだ残っている。けど、水のグラスは空だ。

「あ……いや、いい。またなんかあったら、聞く」
「かしこまりました」

 引っ込み、隅に。ヴァルターさんたちに、会計で呼ばれ、終わらせ。

「(あの子、友人かい?)」

 と、橋本をちらりと見たヴァルターさんに、聞かれた。

「(ああ、同じ高校のクラスメイトです)」
「(そうなんだ)」
「(はい)」
「(そんな感じには見えないけどな)」

 と、ウェルナーさん。

「(そうですか?)」
「(いや、光海じゃなくて。……ま、いいや。忘れて)」
「(そうですか。かしこまりました)」

 それじゃあ、と、二人は店をあとにした。


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