学年一の不良が図書館で勉強してた。

山法師

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59 二学期

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 今日から二学期だ。始業式が終わり、教室で先生からの諸注意を受け、これで解散。……だけど。
 文化祭準備のため、涼たちスイーツ担当と、ポスター・チラシデザイン組は、それらを完成させるために、また家庭科室を借りてスイーツを作り、写真を撮り、という作業がある。
 私はまた、食材調達担当の一人に。けど、午後からはバイトなので、最後まで一緒には居られない。
 最後まで見てたかったな、と思いながら、すぐそばのコンビニに寄って、食材を調達。家庭科室へ。

「あんみつ用の缶詰め類、買ってきました」

 と、食材が乗っている調理台にそれらを置く。
 涼は周りと連携しながら、抹茶プリンを作っているらしかった。
 撮影担当組は、少し遠くで、緑のシートを大きめの枠にかけ、複数の照明や反射板のようなものを用意している。シートも何色か用意されている。気合いがすごい。
 私も、残れるクラスメイトたちと一緒に、ちょこちょこと手伝いながら、時間を見極める。
 そろそろ、バイト先へ向かい、あっちで賄いを食べさせてもらってから仕事へ、と、考えていたら。

「光海」
「はい?」

 涼の声に、振り返る。

「お前、これからバイトだろ。これ」

 これ、と差し出されたのは、ラッピングされたバナナカップケーキ。

「他のが間に合えば、とか思ったけど。間に合いそうにないし、これだけ」
「ほ、ほあぁ……! ありがとうございます!」

 まさか、バナナカップケーキを食べられるとは!

「涼、本当にありがとう! それでは、そろそろ時間なので、失礼します! 頑張って!」

 私はバナナカップケーキを受け取り、カバンに仕舞い、家庭科室をあとへ。
 るんるん気分の私は、バイト先で賄いを食べ、バイトを終え、家に帰ってからゆっくりと、バナナカップケーキを味わった。

  ◇

「はい。そろそろ時間なので、終了です」
「どうもでした」

 私の部屋にて。勉強会を終えた私は、涼に言った。

「涼。もうほぼ、一年の範囲は終えました。あとは復習して、脳と体に染み込ませるだけです。あと、課題のほうも、つっかえることがぐんと減りました。このままを維持できれば、次は赤点回避どころか、良い点数を狙える可能性も見えてきます。頑張りましょう」
「マジか。良い点数か。頑張る。……1個、聞いても良いか?」
「なんですか?」
「……もう、勉強見なくていいと思っても、一緒に、やってくれるか?」

 うつむきながら、涼が言う。首から下げたドッグタグが揺れる。

「もちろんです。涼と一緒に勉強するのは楽しいです。勉強じゃなくても、一緒に居られたら、嬉しいです」
「……いいか?」

 手のひらをこちらに向けられる。

「はい。あ、うん」

 言い直しつつ、手のひらを合わせた。そして、指が絡まり、握られる。握り返す。

「文化祭さ、一般公開されるんだよな」
「そうです。あの、仮のポスターとチラシ。とても良い出来だと思いますよ。集客に一役も二役も買うと思います」

 スイーツ類とメイド服、執事服が配置されたそれら。何パターンかあったけど、スイーツが一番美味しそうに見えるものに、投票した。

「ああ、一眼レフとか、フォトショってすげぇんだな。それを使える周りも。……光海のとこは、誰が来る?」
「そうですね……まだ1ヶ月半くらい先なので、なんとも言えませんが……大樹と愛流は、来るんじゃないですかね。放課後とかに。……涼のほうは? どなたかいらっしゃいますか?」
「……分かんねぇ」

 気落ちした声で言われる。

「三人とも、忙しいし。……昼間なら、誰か、来れるかもしんねぇけど」
「……私、お願いしても、良いですか? 文化祭、少しでも良いから、見に来て、涼たちが作ったスイーツを食べてほしいって」

 手を、ぎゅう、と握られる。

「……や、言ってみる。言ってみて、駄目なら駄目で、そん時は、そん時」
「……分かりました。けど、どうだったか、教えて下さい」

 こっちからも、手に力を込める。

「……ああ、うん、分かった。……ありがとう、光海」

  ◇

 さて、今日は土曜で、一日バイトの日だ。
 そして、来月からのクリスマス仕様に向けての、準備などを始めていく時期でもある。まあ、大体は、アデルさんとラファエルさんがやるんだけども。
 私はいつもの仕事をしつつ、テーブルや椅子、カウンターや壁や床やその他諸々の状態を、入念にチェックしていく。いつもしているけれど、その5倍くらいの集中力で、見ていく。

 カラン、と、常連さんが来た。対応して、引っ込む。
 それで、なぜ、状態チェックが必要かと言えば。
 それを報告するのが、今出来る、私のクリスマスに向けての仕事だから。
 直せるものは直して、取り替えるものは替えて。店内を綺麗にしてから、クリスマス仕様にするのだ。
 で、クリスマス仕様にするため、その前日はお店は休業して、入念に掃除して、飾り付けを行う。
 今は、その下準備といったところ。
 また、カラン。弓崎さんだ。

「いらっしゃいませ、弓崎さん。一名様ですか?」
「ああ、はい。今日は僕だけです。席、座ってます」

 かしこまりました、と、ルーティン。弓崎さんもこの店を気に入ってくれたらしく、私がシフトに入っている時にも、ちょいちょい見かける。そして、甘いものが好きなのか、スイーツ系を最低一つは食べていく。何にしろ、有り難いことだ。
 隅に居ながら、周り確認。……やっぱり、天井の照明カバー、少しホコリ被ってるな。
 と、会計に呼ばれ、終え、片付けながら確認して、また隅に。

 今は、昼が一旦収束するあたりだから、比較的ゆっくり出来る。まあでも、お客さんは来るんだけど。
 で、カラン。ご新規さん。日本語だったので、日本語で対応。ルーティンを終えたところで、弓崎さんの頼んだスイーツ2種が出来上がり。持っていく。
 ご新規さんに呼ばれ、メニューの説明。からの、ご注文。厨房へ。飲み物を持っていく。確認して、引っ込む。しばらくして、料理が出来上がり、持っていく。
 今のところ、店内に、目立った傷はない、と思う。
 ゆったり、けれど真剣に仕事をしていると、また、カラン。

「(いらっしゃいませ、ヴァルターさん。ウェルナーさん)」

 対応しつつ、思う。ウェルナーさんが分かりやすくご機嫌で、ヴァルターさんが少し困ったように苦笑している、と。
 話を振られて、案の定。
 ウェルナーさんは勇気を振り絞り、文化祭に行ってもいいかと聞いたらしい。会わないようにする、見かけても近寄らないから、と。
 そしたらマリアちゃんが、

『そこまでは大丈夫です。挨拶くらいなら、返せますから』

 それに、ウェルナーさんは大喜びしたそうだ。
 そんなウェルナーさんが心配で、ヴァルターさんから、アドバイスを求められた。ウェルナーさんへのアドバイスを。

「(そうですね……嬉しい気持ちは、とても分かります。けど、これは私見ですが、あまりに気持ちを前に出しすぎると、相手はその気持ちを受け止めきれずに、引いてしまうことがあったりします。ですから、落ち着いての対応をしたほうが、好印象を持ってくれるかと)」
「(や、分かってる。分かってはいるんだけど、こう、……うん、本人を前にしたら、しっかりすると思う。しっかりしろって思うだろうから。ありがとう、光海)」

 ウェルナーさんは、少し、落ち着いてくれたようだ。良かった良かった。
 良かった、が。ウェルナーさんからも、ヴァルターさんからも、マリアちゃんのクラスの映画の話が出なかった。知らないのか、あえて言ってないのか。……まあ、無事に終わることを祈る。色々と。
 昼休憩になり、賄いを食べつつ、気になった部分を報告。休憩終わり。で、ホールに戻る。
 そのまま何事も無く仕事を終え、報告して、帰宅した。


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