学年一の不良が図書館で勉強してた。

山法師

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95 修学旅行のグループとコース

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「はい。では、決めていきましょう」

 学年主任の先生が言って、ソワソワしていた第一体育館内が、ざわざわに変わる。
 第一体育館には2年の3クラス全員が集められていて、先生が言った、決めること、は、修学旅行についてだ。
 河南の修学旅行は、3年の6月に行われる。
 グループを作り、最初の2日は国内で、そこから、アジアコース、アメリカコース、ヨーロッパコースの3つに別れて行動する。それぞれの場所での課題をこなし、帰ってきてからレポートを作成して提出して、終了。
 そして、今日決めるのは、グループとコース決め。3クラス合同で、大体5、6人のグループを作り、コースを決めるのである。
 生徒たちが動き出し、私はまず、涼を探しに行こうとして。

「光海」
「あ、涼」

 先に、涼が見つけてくれた。

「光海、……グループ、いいか」
「勿論です。というか、この前、話し合ったじゃないですか。グループとコース」

 3クラス合同でグループを決めること、コースが3種類あること。それにより、修学旅行は毎年、生徒たちでグループとコースを事前に決めていることが多い。

「そうだけど……こう、行けっかなって…………上がれっかなって…………」

 マシュマロになってる。留年しかけたのが相当なトラウマになってるみたいだ。

「行けます。行きましょう。私、涼と行けるの、とっても楽しみにしてるんですよ? 一緒に頑張りましょう?」

 手を握って、笑顔で言えば、

「…………頑張る」

 マシュマロのままだったけど、頷いてくれた。

「ヘイ! お二人さん! 仲が良さそうで何よりだよ!」
「桜ちゃん」

 そこに、桜ちゃんがやって来て。

「あとは、マリアちゃんと高峰さんだけだね」
「Bのほうに行く?」

 桜ちゃんの提案で、Bクラスが集まっていた場所へ、移動。
 そしたら、マリアちゃんと高峰さんを囲むように、ちょっとした揉めごと……という言葉で合ってるのか、そんなのが起きているようだった。
 聞こえてくる内容は、さまざまだけど。ひっくるめて言えば、同じグループってことは、やっぱ付き合ってんの? だ。
 高峰さんとマリアちゃんは、冷静に否定しているけど、その冷静さが、周りには逆に、信憑性を高める要素になってしまっているようで。

「……みぃんな、脳みその構造が単純なのかな?」

 桜ちゃんが呆れたように言い、

「光海、悪い、引っ剥がしてくる」

 涼はそう言って、二人を囲む輪を、かき分けていった。

「リアルとフィクションを混同させないで欲しいよねー」
「ホントにね……」

 発端は、桜ちゃんの言った『リアルとフィクションの混同』──文化祭での映画だろうと思う。そのあと、涼の関係で、マリアちゃんと高峰さんの関わりが増え、マリアちゃんは高峰さんの配信の手解きをすることになり、更に関わりが増えた。
 そこに、この、グループ決めだ。
 毎年、私や涼のように、お付き合いしてる同士で、グループが組まれることは、結構あるらしくて。付き合ってなくても、同じグループに誘い誘われして、お付き合いコースに進む人たちも多いのだとか。
 加えて、文化祭の映画での、もう一人の女子生徒には、大学生の恋人がいるらしく。
 フリーの高峰さんとマリアちゃんは、『見た目にもお似合い』だとかで、こうなってしまっている。
 ……これ、ウェルナーさんが見たら、どう思うかな。そんなことを考えていたら、涼が高峰さんの腕を掴んで引っ張って、マリアちゃんはそれについて来る形で、合流することが出来た。

「今更だけど僕、抜けたほうが良いかな?」

 苦笑する高峰さんに、

「今抜けると、逆に疑われそうだからやめといたほうが良いと思うよ? 高峰っち」

 桜ちゃんは諭すように言い、

「私もそう思う。気にするな。周りが勝手に言っているだけだ。自分の意志で抜けたいなら、止めないが」

 マリアちゃんも、少し苛ついてる感じがするけど、冷静な声で言い、

「高峰が嫌なら止めない。けどお前が遠慮して抜けるなら、抜けさせねぇぞ」

 高峰さんの腕を離し、二人に集まっていた人たちへ厳しい視線を向ける涼も、そう言って。

「私もそう思います。こういうのは無視が一番です」

 最後に私が言って、高峰さんは私たちを見て、

「ありがとう。なら、このままでお願い」

 苦笑しながらも、安心したように、そう言ってくれた。
 グループが決まれば、次はコース決めだ。
 私たちは事前に話し合っていた通りに、アジアコースを選択。
 アジアコースは──というか、全てのコースに言えるけど──毎年、行く国が違う。今年の行き先は、韓国、中国、ベトナムで、他のコースと同じように、各場所での半分は自由時間だ。
 私たちは体育館内に居る先生の一人に声をかけ、グループの人数、氏名、そして選択したコースを伝え、登録してもらう。
 あとは自由時間だけど、大抵そのまま事前にレポート内容を決めたり、自由時間で何をするかの話し合いが行われる。
 私たちもそうすることにして、図書室へ。
 修学旅行は半年先なので、レポートの内容はざっくり決め、自由時間に何をするかを話し合い、時間が来たので、そのまま解散となった。

 ◇

 付き合っているのかと言われ、ムカついた。
 前なら受け流せる程度の余裕は持てていたのに、ムカついた。そして、ムカついた理由に、更にムカついて、橋本が強引に自分たちをあの場から引き剥がしてくれなければ、ムカつきのままに、何か言ってしまっていたかも知れない。
 マリアは、カジュアルジュエリーのモデルの仕事をしながら、そう思う。

『お似合いの二人じゃん』

 一人に言われ、瞬間、ウェルナーの顔が頭に浮かんだ。それに、ムカついた。浮かばせてしまった自分にムカついた。
 自分から、友人と言っておいて。だというのに、なぜ、あの顔を浮かべてしまったのか。
 気持ちを押し殺すようにして、友人として接しながら、自分への想いを零し、慌てて謝罪し、身を引く、彼の顔を。
 前のほうがまだマシだ。どこからどう見ても分かりやすく、誰が見ても一目瞭然に、自分に惚れていると分かる態度。自分に興味を持ってもらおうと、そして自分のことを知りたいと、その勢いと、配慮になっていない配慮への対応が面倒で、鬱陶しく思え、『気持ちには応えられない』と伝えた。

『ごめん、マリア。今までありがとう。気を遣わせてしまってて、ごめん。もう、迷惑をかけないようにする。本当にごめん』

 その、今までと違う、後悔の滲む文章に呆気に取られて、こういう一面があったのかと、思ってしまった。
 なるべく通常時を保ってモデルの仕事を終え、スマホを見れば、ウェルナーから何かが来ていた。

『やあ、マリア。企業との共同研究が正式に決まったよ。予算が確保できて、教授たちも安心してる。そっちは色々大変だろうね。体調に気を付けて』
「……」

 最近のウェルナーは、自分に問いかけてこない。それに苛つく自分に、苛つく。
 マリアは深呼吸してから、

『おめでとうございます、ウェルナーさん。共同研究、頑張って下さい。気遣ってくれてありがとうございます。モデルも映画撮影もインフルエンサーの仕事も、楽しくやれています。そちらこそ、無理をせず、体調にお気をつけて』

 おめでとうございます! というスタンプと共に、それを送ってから。

『それと、来年度の修学旅行先がアジア圏に決まりました。今回は、韓国と中国とベトナムだそうです。半年先ですが、今から楽しみに思ってます』

 その文と、チャイナ服のネコのスタンプを送って、スマホを閉じた。


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