女子にモテる極上のイケメンな幼馴染(男)は、ずっと俺に片思いしてたらしいです。

山法師

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35 大好きだよ

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「体、大丈夫? そーちゃん」

 クリスマスが明けた26日の朝、圭介のベッドに座っている奏夜へ、床に膝立ちになっている圭介が、不安そうな、だというのに期待しているような表情で尋ねてきた。

「まあ、今のところは」

 大丈夫だと示すために立ち上がれば、「……大丈夫ならぁ、いいやぁ……」と微妙な雰囲気の言葉が返される。圭介の表情も、安心と不満が混ざったような、妙なカオだ。

「何が言いたいんだ、お前」

 わかるような、わかりたくないような。
 腕を組んだ奏夜がそんな気分で問いかけると、圭介は目を彷徨わせたあと、諦めたように息を吐いて立ち上がった。

「ちょっとね、お世話をね、したかったなぁ、と」
「そんなことだろうと思った」

 肩を竦めると、圭介は頭に手をやって苦笑する。

「バレてた?」
「バレるわ。お前の幼馴染かつ恋人の俺をナメるなよ」

 呆れながら言ったら、圭介は目を瞬かせ、照れたように目を逸らした。

(たぶん)

 自分が言った「恋人」というワードに照れたんだろうなと推測できるが、照れられるとこっちもなんだか恥ずかしい。
 どこかソワソワした雰囲気になった寝室で、その空気に引きずられたまま、圭介が口を開く。

「……えー……話は変わりますが……パジャマの着心地はどうだったでしょうか……」
「あ、あぁ、うん。えっと、よく寝れたので、良い、と思う」

 こちらも空気に引きずられてぎこちなくなってしまったが、奏夜は素直な感想を口にした。
 奏夜が今着ているパジャマは、昨夜、圭介からクリスマスプレゼントとして貰ったもの。奏夜から圭介へのクリスマスプレゼントとしては、マフラーを贈った。

『普段使いでも良いんだけどさ、ここに泊まる時にも着て欲しいなーって』

 圭介に言われて、そういうことならとパジャマを着てみた奏夜は、言った通りにぐっすり眠れた。
 薄手なのに暖かく、吸湿速乾性に優れているというパジャマの効果もあるのかも知れないが、思えば、圭介と寝ている時はいつもよく眠れている気がする。
 圭介がくっついてくるだとか、圭介に抱きしめられているだとか、そこまでいかない場合も、圭介の存在を感じながら眠ることが多かった。

(……それって)

 それってつまり、無意識下で圭介を『安心できる存在』だと──『自分の居場所』だと認識していた、ということなんだろうか。
 思い至った途端、何故だか恥ずかしくなってしまって、顔が赤くなる気がして。奏夜は目の前にいる圭介に抱きついた。

「そ、そーちゃん? どした? やっぱどっか変?」
「違う……」

 慌てたように聞いてくる圭介へ、恥ずかしさが抜け切らないまま、否定だけしておく。

「そう? 無理してない? 座っとく?」

 聞きながら腰を支えるように抱きしめ、頭を撫でてくれる圭介の声と手は、気遣いと優しさで構成されているように思えた。

(……圭介の)

 圭介の腕の中は、あったかくて、心地良い。
 恥ずかしさは次第に消えて、安心感が奏夜の心に生まれた。
 やっぱりここが、自分の居場所だ。

「圭介」
「うん?」
「好きだよ」

 言ったら、圭介の体が一瞬硬直した気がしたけど、次の瞬間には強く抱きしめられていた。

「……朝から……可愛い……」

 感情を抑え込むように言った圭介は、ふ、と息を吐いて腕の力を緩め、奏夜と顔を合わせる。
 見えた圭介は、慈しむように目を細めて、微笑んでいた。

「俺も好き。大好きだよ、そーちゃん」

 それを聞いた奏夜の顔にも、柔らかい笑みが浮かぶ。

「俺だって大好きだよ」
「そっか」
「そうだよ」
「うん」

 じゃれ合いのようなやり取りが終わると、奏夜の左頬に、圭介の右手が優しく当てられた。

「なぁ、そーちゃん」

 顔を引き寄せられて、

「キス、していい?」

 甘い声で問いかけられる。
 嫌だなんて気持ちは、やっぱり全くこれっぽっちもないから。

「いいよ」

 応えたら、圭介は嬉しそうに笑った。

「ありがと、そーちゃん。大好き」

 俺も、と言う前に、唇をふわりと塞がれたけど。

(まあ)

 さっきも言ったし、あとでまた言えばいいか。

 そんなことを思いながら、奏夜は瞼を閉じて、圭介からのキスを受け取った。

 最終的に奏夜の腰が抜けるほどのキスになって「朝からやり過ぎだお前」「ごめん、そーちゃんが可愛くって」なんてやり取りをするのは、これから数分後。


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