隻腕のミーク ※近未来サイボーグ、SF技術を駆使し異世界のトラブルに立ち向かう

やまたけ

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ヴァルドー襲来、1人立ち向かうラミー

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※※※

「まあどんな奴か分かんないから何とも言えないけどね。でも私、魔族と戦った事あるけど、正直大した事無かったし、その程度なら大丈夫なんじゃない?」

 あっけらかんと答えるミークに、ギークだけでなくフェルマまでも「「は?」」と呆気にとられミークの顔を見る。

「魔族と……、戦った、だと?」

「魔族はここ暫く姿を見せていない筈じゃ……」

 とても信じられない、と困惑する2人に、ラミーが説明を付け加える。

「ところが本当なのよ。迷いの森にあったダンジョンが突如崩れ、その中から沢山の魔物が溢れ出て来てファリスを襲って来たのよ。それを主導したのは魔族だったのよ」

「「……」」

 ラミーの説明にギークとフェルマは再度呆気に取られる。だがギークがハッとなり「で、そ、その魔族は?」と質問すると、ミークは「それが逃げられちゃったんだよね」と悔しそうに返事する。

「別にもう1匹の魔族が急に転移の魔法? で、出てきて、私と戦ってた魔族を助けてどっか行っちゃったんだよね。咄嗟の事だったから追う事も出来なかった」

 ミークの説明に固まる2人。そして直ぐラミーの顔を見ると苦笑しながら「本当よ」と、ラミーは付け加えた。

「それを証拠に、今迷いの森には沢山の魔物が凍った状態で放置されているのよ。死体の劣化を防ぐ為に。その氷漬けもミークが全部やったのだけれど。だからファリスの冒険者は今、魔物と戦うより先に、氷漬けの魔物の回収作業をしているのよ。で、引き取った素材の換金の為の資金が尽きたファリスのギルド長ラルが、デムバックのギルド長に精霊魔法を送ったのだけれど中々返事が無い。だから調査してくれ、と、私達が依頼を受けたのよ」

 ラミーの説明に「そう言えば……」とフェルマが何か思い出す。

「ファリスから来た冒険2人組が、ランクに見合わない、キラータイガーの素材を持ち込んだ事がありましたけど、それってもしかして……」

「あ! あの2人にゃ! デムバックに来てたのにゃー!」

「あー! 私達を小馬鹿にしたあいつ等だ! 見つけ出してとっちめてやる!」

 フェルマの話にニャリルとエイリーが息巻くと、ミークが「もう居ないかも?」と付け加える。ニャリルは首を傾け「どうして知ってるにゃ?」とミークに聞く。

「さっき警備隊と入口前で戦ってた時、実はその2人組、物陰に隠れて見てたんだよ。けど、警備隊も門番も私達が倒しちゃったでしょ。その隙に逃げてると思う」

 淡々と説明するミークに、ラミーはジト目を送る。ミークはびっくりして「な、何?」と聞いてみる。

「……ミークはそれを知っていて、どうしてあの羽虫? で監視をつけなかったのかしら?」

「あ」

 しまった、という顔になるミーク。

「え、えーっと。ギルドに行く方に気が向いてて思いつかなかった」

 やっちゃったー、という顔でごめんなさい、と頭を下げるミークに、他の3人は揃って「「「はあ~」」」と溜息を吐いた。

「ミーク、そういうところにゃー」

「折角凄い能力持ってるのに、使い手がこれじゃあね~」

 ニャリルとエイリーに突っ込まれるミーク。珍しくシュンとする。その様子を見ていたフェルマとギークは揃って苦笑いをする。

「こうして見てると普通の綺麗な女の子にしか見えないですね」

「ああ。でもラミーによると、魔族と戦ったって話は本当らしい。……こう見てると単に見た目麗しい嬢ちゃんなのにな」

 そこで突如、AIがエマージェンシー、と脳内でミークに伝える。

 ーー膨大な魔素を保有した人族が近づいてきています。ここ向かってきている様です……。スピードを上げました。時速56,82km。到達まで約72秒ーー

 それと同時にラミーも突然バッと立ち上がった。

「この強大な魔素は!?」

「ラミーも気付いた? もう来るよ!」

「え?  な、何かにゃ?」

「ちょっと2人共どうしたの?」

 ミークとラミーがいきなり立ち上がって警戒するのを見て、ニャリルとエイリーが驚いて声を上げる。

「多分ヴァルドーとかって奴がこっち来る!」

 ミークの叫びに今度はギルド長とフェルマが驚く。

「な、何だと!?」

「え? ど、どうしてここに?」

「……多分警備隊長が報告に行って、それからこっちに向かって来て私の魔素を感知したのでしょうね。でもこれ程強大な魔素なのに、私がずっと気づかないなんて事あるのかしら?」

「確かに私も気付かなかった。何でだろ?」

「ミークもそうなのね」

 しかも王都に居た頃より魔素が大きい? ラミーがそう不思議に思っていたところで、

 ドガーン! とギルド前で大きな音が響き渡った。その音を聞いたラミーは窓の外を見る。

「……来たわね。相変わらずの醜い肥満体型ね」

 そしてラミーの呟きと同じタイミングで、外から大きな男の声が聞こえて来た。

「おぉ~い、ラミー。その中に居るんだろ~? 出ておいで~。他にもお仲間が居るんだろ~? 素直に出てきたら殺したりしないよ~」

 その声を聞いたフェルマとギークは、揃って顔を青くし震え出す。

「ああ……ヴァルドーが本当に来てしまった……。どうしましょう?」

「クッ! 俺がここに居るのが見つかるのも不味い! どうしたもんか……」

 焦る2人だがミークは気にする事もなく「ラミーどうする? ご指名だけど」と声を掛ける。だがラミーもフェルマ達同様顔が青くなり冷や汗をかいている。

「……あんな膨大な魔素を持った王族相手に、私が出て行ったところで何も出来ないわ。どうしてあんなに魔素を保有しているのかしら?」

「おお~い? 出て来ないの~? じゃあこっちから行くよ~!」

 間延びした声で再度大声をかけるヴァルドーと思しき男。それを聞いてラミーは「仕方無いわね」とやや声を震わせながら窓を開け下を覗きながら「ちょっと待ちなさい」と声を掛けた。

「おおー! 本当にラミーじゃないか! こんな田舎で再会出来るなんて運命じゃないか? 相変わらずの美貌で安心したよ! じゃあ下で待ってるよー!」

 何処かウキウキした声で答えるヴァルドーなる男。そしてラミーはミークに振り返る。

「とりあえず私1人だけで出ていくわ。……ミークお願い。私だけではきっとどうしようも出来ないだろうから、守って欲しいの」

「分かった」

 決意を込めたラミーの瞳をしっかり見ながら強く頷くミーク。そして先程警備隊長を追いかけていたドローンに、ラミーの元まで戻り防御する様指示をした。

「ドローンを呼び寄せたよ。私の方でも監視してるし、何かあったら助けるから」

「ありがとう」

 そう言ってラミーは1人、ギルド長室を出て行こうとするが、そこでニャリルとエイリーが声を掛けた。
「え? い、良いのかにゃ? 私達も行った方がいいんじゃないのかにゃ?」

「そうだよ! 皆で戦えば何とかなるんじゃ?」

「調子に乗らないで」

 強めの言葉2人を制し、そして振り返りざま2人を見据えるラミー。

「確かにあなた達は強くなったわ。きっとそこら辺の冒険者よりも。でも相手は王族なのよ。私でもどうにもならない相手。特にエイリーは精霊魔法を使う為の魔素が切れているわよね? それでどうやって戦うのかしら? はっきり言うけど2人は足手纏いしかならない。寧ろ邪魔なのよ」

「「……」」

 ラミーからきつい言葉をかけられシュンとして黙ってしまう2人。ミークは敢えてラミーが強い言い方をした事に気付き、慌ててフォローする。

「ええーっと。ラミーも悪意あってああ言ってる訳じゃなくて。2人に万が一があっちゃ駄目だって言う意味だから。とりあえず大人しくしてよっか? ね?」

「……分かったにゃ」

「はい……」

 猫耳ペタン、尖った耳へにゃんとさせ、落ち込みながら渋々従う2人。更にミークはドローンを異空間ポシェットから5機取り出し、ギルド長室の皆を守る様指示をした。

「ラミー。一応万全を期してこの部屋にもドローン配置しといたよ」

「分かったわ」

「まあラミーも皆も私が守るから」

 ミークがそう言うと、ラミーはフッと笑い、「誰に言われるよりも、ミークにそう言われるのが一番心強いわね」と答えながら、ラミーは1人下に降りていった。
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