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2章 異国[羈旅( きりょ)]編
2-17 そんなあなたが好きだから
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「まず一頭目」
ランドは三人にそう言うと、先ほど狩った鹿に近づいていく。地面に転がった鹿にはわずかに息が残っていた。ランドを視界に捉えるとほんの数秒、鹿の黒い目がじっとその姿を見る。鹿の目にランドの姿が映り込んだ。
ランドは腰に下げた短い狩猟刀を引き抜くと、鹿の体の横に腰を下ろす。もう身動きする力もなく、鹿はぐったりと横たわったままだ。だが心臓が少しでも動いている状態なら、血抜きの一助になる。
ランドは鹿の角を掴んで押さえると、その喉に鋭い刃を当てがう。手に力を加えると何の抵抗もなく喉の肉に切っ先が沈んでいく。
切り開かれた喉から、脈打ちながら血が噴き出す。どろりと濃い血の色だ。ひとつ脈を打つごとに、噴き出す血の量は減り、やがて――滴り落ちるだけになる。
後ろ足が、痙攣しながらピンといっぱいまで伸ばされたのを最後に、鹿はそのまま事切れた。
ランドはそのまま後ろ足を掴むと、血抜きのために鹿の脚に紐を結びつけ、もう片方は灌木に固定して逆さ吊りにする。逆さまにされた首の切り口からはまだ血が流れ続けていた。
「手慣れてんな――」
その様子を遠目に眺めながら、半笑いが感心したように呟く。狩猟刀の血を拭って鞘に収めると、ランドがフェイバリットのそばに戻ってくる。頼んだわけでもないが、なぜかフェイバリットの背後には怖がりが付き添っていた。
フェイバリットの前に立つランドが、もの言いたげな顔をしていることに気づき、フェイバリットは外套から手を伸ばして、その手を取った。
「待ってる」
そう残りの二頭の鹿を仕留めるのに、フェイバリットは連れて行けない。そんなことはとうに分かっている。フェイバリットを残していくのはさぞ心配だろう。本音を言うと、彼女自身もとても不安だ。それでも自分に出来ることは彼を送り出すことだけ。
なんとか力づけようと、フェイバリットはランドの手をぎゅっと強く握り締めた。ランドはきつく眉根を寄せると「苦労をかけて、すまない」と苦し気な声を洩らす。
「だ大丈夫。オオオレ、弟くん、まも、守る…から!」
怖がりが力強く言った。同時に、後ろから怒りんぼのうんざりしたような声も届いた。
「安心しな。こんなわけだから、弟は安全だ。早く行ってこい」
「――。なるべく早く戻る」
ランドが動くよりも一瞬早く、怒りんぼの声がその背中に向かって飛んだ。
「おう――そうだ。無理して持って帰らなくてもいいからな」
怪訝そうな顔をして振り返るランドに、男はくっと顎で怖がりを示す。
「こいつが運ぶ」
『だが、場所はどうやって……?』
「こいつは鼻が利く。分かったらさっさと行け」
今度こそ、ランドが未練を振り切るように身を翻すと、あっという間に木立の中に姿を消した。フェイバリットは思わず身を乗り出して目を凝らしたが、すでに足音すら聞こえなかった。
「――珍しい。いやに奴に優しいじゃねえですか。お頭?」
「俺は、使える奴は嫌いじゃねえからな。手ぐらい貸すさ」
背後で半笑いと怒りんぼが好き勝手なことを言い合っている。フェイバリットが子供だからと気にも留めていないのだろう。二人は声をひそめることさえしない。
空を見上げると、太陽はまだ高い位置にある。
ランドは今日中に戻ってこられるのだろうか。不安は募るばかりだが、首を振っていったん考えるのを停止する。
まずはランドが無事に戻ってくることを願うばかりだ。外套の内側で、フェイバリットはやるせなく、握りこぶしをぎゅうと作る。
「大丈夫だ」
そこにひそりと声が降ってきた。怖がりだ。フェイバリットは背後を振り返り、外套の隙間から彼を見上げた。
「お、お前の兄は、強い――つ強いヤツの”匂い”す、する。だから安心して待ってると、いい」
フェイバリットがシュンと小さくなってどのくらい待った頃だろうか。怖がりは「水飲む?」「お腹空いた?」と、あれこれ声をかけてはこまごまと世話を焼く。子供好きなのは本当らしい。
フェイバリットは力なく首を振って断った。何も喉を通る気がしない。じっと座っているのも苦痛だったが、ここを離れるわけにもいかなかった。
「―――戻った」
「え?」
見ると怖がりが空をじっと見つめている。釣られて視線の先を見たが、重なり合う樹林があるばかり。先ほどとなんら変わった様子は見られない――だが。
ガサリと音が聞こえた。思わずフェイバリットは立ち上がって、音のする方に目を凝らす。耳を澄ますと、ガサリガサリとはっきりと音が近づいてくる。今か今かと待っていると、灌木の向こうに人の姿が見えた。たまらずフェイバリットは駆け出した。
足音軽く駆け寄ってくる音に人影が顔をあげる。それがフェイバリットだと気づくと、心持ち顔色を悪くしたランドが、ほっとしたように口もとを綻ばせた。肩に担いだ鹿をどさりと地面に下ろすと、怒りんぼが機嫌よさそうに出迎えた。
「おう。帰ったか。お疲れさん」
『二頭目だ。あと一頭は山の中に残してきた。任せてもいいのか?』
「いいって言ったろ?」
怒りんぼが「おい」と声をかけると、怖がりは小さく頷いて、のそりと立ち上がる。そのまま木立に向かってゆっくり歩き出した。大男の後ろ姿を見送りながら、怒りんぼは言った。
「三頭目を確認したら交渉成立だ。それまでまあゆっくり休んで待ってな」
怖がりの戻りを待つ間、ランドは二頭目の鹿を木に吊り下げ、そこから休みなく最初の鹿の解体作業に移る。
「少し休んだらいいのに……」
ランドのそばに張りつきながらフェイバリットが小さくぼやくと、それを聞いたランドが目元を和ませて、小さい子供相手に諭すように言った。
「山から分けていただいた命だからな。粗末に扱うことは出来ない」
そう言うと休むことなく手を動かす。獣の解体作業は、内蔵を取り出し、皮を剝ぎ、四肢をばらす、この三つの工程だ。慣れてしまえばそう難しいことではないとランドはいともたやすく言う。
鹿の体に刃を入れて、ランドは手際よく捌いていく。心臓を取り出すと、祈りの言葉を口にしながら刃先で十文字に切り込みを入れ、そこから丁寧に12等分に切り分ける。
木の枝で串を3本作ると、先ほどの肉片をそれぞれの串に分けて刺し、最後に改めて感謝の言葉を唱える――山の神への感謝の儀礼だとランドは言った。
それが済むと獣の皮を剥ぎ、肉を部位ごとにどんどん切り分けていく。ランドの手にかかると大きな獣の体が、見る見るうちに肉の塊になっていくのをフェイバリットは感心しながら見守った。
「すごいな――」と思わず口に出すと、ランドが嬉しそうに笑う。
「父さんから鍛えられた」
時に優しく、時に厳しく叱られながら、何度も解体のやり方を教わったのだと、珍しく饒舌にランドが語る。
昔は不器用で切り口が汚かったこと。胃の部分を誤って切ってしまい、肉を台無しにしてしまったことなど――話の中のランドはフェイバリットが初めて知る里の男の子だった。
それでも――どれほど疲れていても山の恩恵に感謝しながら、こうして獲物を捌いてきたのだろう。「粗末に扱うことはできない」と、きっとそう言って。
そんな姿が容易に想像できた。頑ななまでに真面目でまっすぐなランド。いつまでもそんなランドのまま、変わらずにいて欲しい。ふとフェイバリットはそんな風に思った――そんなランドが好きだから。
「好き…」
気がつくと、そんなことを口走っていた。
「―――――は?」
「え?」
我に返って今、自分が何を言ったのか改めて思い返す。ぶわりと顔が真っ赤になるのが分かった。目の前のランドも耳まで真っ赤になっている。これはしっかり聞こえたということだ。
どうしよう? 誤魔化そうかと考えかけて、いやとフェイバリットは思い直す――そう思った自分の気持ちを嘘だとは言いたくない。フェイバリットは唇を湿らせると、おずっと口を開いた。
「尾白鷲のそういうところ、好きだなって…っ、思ったら口に出ちゃってた」
口に出してみると、思った以上に恥ずかしい。こんなの告白みたいだ。フェイバリットの心は千々に乱れていた。恐ろしい速さで鼓動が打ち始める。頬が上気して熱い。
「……。……。…そういうところって…?」
顔を赤く染めながら、ランドがちらりと目だけこちらに向けて問いかける。
(そ、それ聞く―――??)
「え、えーと、真面目なところとか? まっすぐなところとか…男らしいとこ…とか…」
恥ずかしさのあまり、どんどん声が小さくなっていく。ちらりとランドを見ると、こちらも顔を押さえて息も絶え絶えに身悶えている。
(そんな恥ずかしがるくらいなら、なんで聞いたの?!)
そう問い質したいところだったが、これ以上この会話を続けるのは色々とまずい気がする。何より心臓がこれ以上もたない。なのでフェイバリットは撤退を試みることにした。
「ええと、お花摘みに? 行ってくるね?」
お花摘みに行く――つまり用を足しに行く。我ながらなんて恥じらいのない言い逃れだ。けれど正直これくらいしか思う浮かばない。
「遠くに行くなよ」というランドの声を背中に受けて、逃げるようにフェイバリットはその場を離れた。
ランドは三人にそう言うと、先ほど狩った鹿に近づいていく。地面に転がった鹿にはわずかに息が残っていた。ランドを視界に捉えるとほんの数秒、鹿の黒い目がじっとその姿を見る。鹿の目にランドの姿が映り込んだ。
ランドは腰に下げた短い狩猟刀を引き抜くと、鹿の体の横に腰を下ろす。もう身動きする力もなく、鹿はぐったりと横たわったままだ。だが心臓が少しでも動いている状態なら、血抜きの一助になる。
ランドは鹿の角を掴んで押さえると、その喉に鋭い刃を当てがう。手に力を加えると何の抵抗もなく喉の肉に切っ先が沈んでいく。
切り開かれた喉から、脈打ちながら血が噴き出す。どろりと濃い血の色だ。ひとつ脈を打つごとに、噴き出す血の量は減り、やがて――滴り落ちるだけになる。
後ろ足が、痙攣しながらピンといっぱいまで伸ばされたのを最後に、鹿はそのまま事切れた。
ランドはそのまま後ろ足を掴むと、血抜きのために鹿の脚に紐を結びつけ、もう片方は灌木に固定して逆さ吊りにする。逆さまにされた首の切り口からはまだ血が流れ続けていた。
「手慣れてんな――」
その様子を遠目に眺めながら、半笑いが感心したように呟く。狩猟刀の血を拭って鞘に収めると、ランドがフェイバリットのそばに戻ってくる。頼んだわけでもないが、なぜかフェイバリットの背後には怖がりが付き添っていた。
フェイバリットの前に立つランドが、もの言いたげな顔をしていることに気づき、フェイバリットは外套から手を伸ばして、その手を取った。
「待ってる」
そう残りの二頭の鹿を仕留めるのに、フェイバリットは連れて行けない。そんなことはとうに分かっている。フェイバリットを残していくのはさぞ心配だろう。本音を言うと、彼女自身もとても不安だ。それでも自分に出来ることは彼を送り出すことだけ。
なんとか力づけようと、フェイバリットはランドの手をぎゅっと強く握り締めた。ランドはきつく眉根を寄せると「苦労をかけて、すまない」と苦し気な声を洩らす。
「だ大丈夫。オオオレ、弟くん、まも、守る…から!」
怖がりが力強く言った。同時に、後ろから怒りんぼのうんざりしたような声も届いた。
「安心しな。こんなわけだから、弟は安全だ。早く行ってこい」
「――。なるべく早く戻る」
ランドが動くよりも一瞬早く、怒りんぼの声がその背中に向かって飛んだ。
「おう――そうだ。無理して持って帰らなくてもいいからな」
怪訝そうな顔をして振り返るランドに、男はくっと顎で怖がりを示す。
「こいつが運ぶ」
『だが、場所はどうやって……?』
「こいつは鼻が利く。分かったらさっさと行け」
今度こそ、ランドが未練を振り切るように身を翻すと、あっという間に木立の中に姿を消した。フェイバリットは思わず身を乗り出して目を凝らしたが、すでに足音すら聞こえなかった。
「――珍しい。いやに奴に優しいじゃねえですか。お頭?」
「俺は、使える奴は嫌いじゃねえからな。手ぐらい貸すさ」
背後で半笑いと怒りんぼが好き勝手なことを言い合っている。フェイバリットが子供だからと気にも留めていないのだろう。二人は声をひそめることさえしない。
空を見上げると、太陽はまだ高い位置にある。
ランドは今日中に戻ってこられるのだろうか。不安は募るばかりだが、首を振っていったん考えるのを停止する。
まずはランドが無事に戻ってくることを願うばかりだ。外套の内側で、フェイバリットはやるせなく、握りこぶしをぎゅうと作る。
「大丈夫だ」
そこにひそりと声が降ってきた。怖がりだ。フェイバリットは背後を振り返り、外套の隙間から彼を見上げた。
「お、お前の兄は、強い――つ強いヤツの”匂い”す、する。だから安心して待ってると、いい」
フェイバリットがシュンと小さくなってどのくらい待った頃だろうか。怖がりは「水飲む?」「お腹空いた?」と、あれこれ声をかけてはこまごまと世話を焼く。子供好きなのは本当らしい。
フェイバリットは力なく首を振って断った。何も喉を通る気がしない。じっと座っているのも苦痛だったが、ここを離れるわけにもいかなかった。
「―――戻った」
「え?」
見ると怖がりが空をじっと見つめている。釣られて視線の先を見たが、重なり合う樹林があるばかり。先ほどとなんら変わった様子は見られない――だが。
ガサリと音が聞こえた。思わずフェイバリットは立ち上がって、音のする方に目を凝らす。耳を澄ますと、ガサリガサリとはっきりと音が近づいてくる。今か今かと待っていると、灌木の向こうに人の姿が見えた。たまらずフェイバリットは駆け出した。
足音軽く駆け寄ってくる音に人影が顔をあげる。それがフェイバリットだと気づくと、心持ち顔色を悪くしたランドが、ほっとしたように口もとを綻ばせた。肩に担いだ鹿をどさりと地面に下ろすと、怒りんぼが機嫌よさそうに出迎えた。
「おう。帰ったか。お疲れさん」
『二頭目だ。あと一頭は山の中に残してきた。任せてもいいのか?』
「いいって言ったろ?」
怒りんぼが「おい」と声をかけると、怖がりは小さく頷いて、のそりと立ち上がる。そのまま木立に向かってゆっくり歩き出した。大男の後ろ姿を見送りながら、怒りんぼは言った。
「三頭目を確認したら交渉成立だ。それまでまあゆっくり休んで待ってな」
怖がりの戻りを待つ間、ランドは二頭目の鹿を木に吊り下げ、そこから休みなく最初の鹿の解体作業に移る。
「少し休んだらいいのに……」
ランドのそばに張りつきながらフェイバリットが小さくぼやくと、それを聞いたランドが目元を和ませて、小さい子供相手に諭すように言った。
「山から分けていただいた命だからな。粗末に扱うことは出来ない」
そう言うと休むことなく手を動かす。獣の解体作業は、内蔵を取り出し、皮を剝ぎ、四肢をばらす、この三つの工程だ。慣れてしまえばそう難しいことではないとランドはいともたやすく言う。
鹿の体に刃を入れて、ランドは手際よく捌いていく。心臓を取り出すと、祈りの言葉を口にしながら刃先で十文字に切り込みを入れ、そこから丁寧に12等分に切り分ける。
木の枝で串を3本作ると、先ほどの肉片をそれぞれの串に分けて刺し、最後に改めて感謝の言葉を唱える――山の神への感謝の儀礼だとランドは言った。
それが済むと獣の皮を剥ぎ、肉を部位ごとにどんどん切り分けていく。ランドの手にかかると大きな獣の体が、見る見るうちに肉の塊になっていくのをフェイバリットは感心しながら見守った。
「すごいな――」と思わず口に出すと、ランドが嬉しそうに笑う。
「父さんから鍛えられた」
時に優しく、時に厳しく叱られながら、何度も解体のやり方を教わったのだと、珍しく饒舌にランドが語る。
昔は不器用で切り口が汚かったこと。胃の部分を誤って切ってしまい、肉を台無しにしてしまったことなど――話の中のランドはフェイバリットが初めて知る里の男の子だった。
それでも――どれほど疲れていても山の恩恵に感謝しながら、こうして獲物を捌いてきたのだろう。「粗末に扱うことはできない」と、きっとそう言って。
そんな姿が容易に想像できた。頑ななまでに真面目でまっすぐなランド。いつまでもそんなランドのまま、変わらずにいて欲しい。ふとフェイバリットはそんな風に思った――そんなランドが好きだから。
「好き…」
気がつくと、そんなことを口走っていた。
「―――――は?」
「え?」
我に返って今、自分が何を言ったのか改めて思い返す。ぶわりと顔が真っ赤になるのが分かった。目の前のランドも耳まで真っ赤になっている。これはしっかり聞こえたということだ。
どうしよう? 誤魔化そうかと考えかけて、いやとフェイバリットは思い直す――そう思った自分の気持ちを嘘だとは言いたくない。フェイバリットは唇を湿らせると、おずっと口を開いた。
「尾白鷲のそういうところ、好きだなって…っ、思ったら口に出ちゃってた」
口に出してみると、思った以上に恥ずかしい。こんなの告白みたいだ。フェイバリットの心は千々に乱れていた。恐ろしい速さで鼓動が打ち始める。頬が上気して熱い。
「……。……。…そういうところって…?」
顔を赤く染めながら、ランドがちらりと目だけこちらに向けて問いかける。
(そ、それ聞く―――??)
「え、えーと、真面目なところとか? まっすぐなところとか…男らしいとこ…とか…」
恥ずかしさのあまり、どんどん声が小さくなっていく。ちらりとランドを見ると、こちらも顔を押さえて息も絶え絶えに身悶えている。
(そんな恥ずかしがるくらいなら、なんで聞いたの?!)
そう問い質したいところだったが、これ以上この会話を続けるのは色々とまずい気がする。何より心臓がこれ以上もたない。なのでフェイバリットは撤退を試みることにした。
「ええと、お花摘みに? 行ってくるね?」
お花摘みに行く――つまり用を足しに行く。我ながらなんて恥じらいのない言い逃れだ。けれど正直これくらいしか思う浮かばない。
「遠くに行くなよ」というランドの声を背中に受けて、逃げるようにフェイバリットはその場を離れた。
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