断罪される未来を知る悪役令嬢ですが、冷徹なはずの婚約者に勘違いされて溺愛ルートに入りました

六角

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第34話:二人で壊す、心の壁

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私の、心の奥底に、そびえ立つ、黒い氷の壁。
それは、ロシュフォール宰相が、私の記憶を奪うためにかけた、強力な、忘却の封印。

ゼノン様が、その魔力で、壁を破壊しようと試みるも、封印は、あまりにも、強固だった。
それどころか、彼の魔力を、吸収し、反撃してくる。

――くっ…! このままでは、俺の魔力が…!――

ゼノン様の、焦りの声が、私の心に、響く。
ダメだ。
このままでは、彼が、危ない。
彼に、守られてばかりの、私では、いけない。

『わたくしも、戦います…!』

私は、心の底から、強く、強く、願った。
失われた記憶を、取り戻したい、と。
あの日、何があったのか、この目で、確かめたい、と。

すると、私の、心の中心から、白く、柔らかな光が、生まれた。
それは、魔力とは違う、もっと、根源的な、魂の光。
私の、「思い出したい」という、純粋な、意志の力だった。

その光は、黒い壁に、苦戦する、ゼノン様の、青い光の槍へと、向かっていく。
そして、寄り添うように、その光を、包み込んだ。

――! イザベラ…! この光は…お前の、意志か!――

驚く、ゼノン様の声。

「そうですわ、ゼノン様! わたくしも、戦います! これは、わたくしの、心なのですから!」

――ああ…! 感じる…! お前の力が、俺の魔力を、増幅させてくれる…!――

私の、魂の光と、彼の、強大な魔力。
二つの力が、一つに、溶け合っていく。
青と、白の光が、螺旋を描きながら、混ざり合い、これまでとは、比べ物にならないほどの、眩い輝きを、放ち始めた。

――よし…! これなら、いける!――

ゼノン様の声に、力が、戻る。

――イザベラ! 俺に、合わせろ! 二人で、この忌々しい壁を、打ち破るぞ!――

「はい!」

私たちは、心を、一つにした。
想いを、一つにした。
そして、すべての力を、込めて、黒い氷の壁へと、ぶつけた。

「「はあああああああっ!!」」

二人の、魂の叫びが、私の、精神世界に、木霊する。
光の奔流が、黒い壁に、激突した。

ミシッ…!

これまで、びくともしなかった壁に、初めて、亀裂が、入った。

ミシミシッ…! ピシィッ!

その亀裂は、蜘蛛の巣のように、壁全体へと、広がっていく。

――あと、一押しだ…!――

「ええ…!」

私たちは、最後の一滴まで、力を、振り絞る。
黒い壁も、最後の抵抗とばかりに、禍々しい、闇のオーラを、放ってくる。

光と、闇。
記憶を、取り戻そうとする力と、忘れさせようとする力。
二つの力が、激しく、ぶつかり合う。

そして。

パリンッ…!

ガラスが、砕けるような、澄んだ音が、響いた。

次の瞬間。

ドゴオオオオオオオオオオン!!

黒い氷の壁は、凄まじい音を立てて、木っ端みじんに、砕け散った。
壁の破片は、光の中に、溶けて、消えていく。

「…やった…」

壁が、なくなった、その向こう側。
そこには、まばゆい光に包まれた、一つの、扉が、あった。
真実の、記憶へと、続く、扉だ。

――よく、やったな、イザベラ…!――

ゼノン様の、安堵した声が、聞こえる。
疲労困憊のはずなのに、その声は、どこまでも、優しかった。

「あなたこそ。…ありがとうございました、ゼノン様」

「礼を言うのは、まだ、早い。さあ、行くぞ。俺たちの、失われた、過去を、取り戻しに」

「はい!」

私たちは、手を取り合って、光の扉へと、向かう。
扉の向こうに、何が、待っているのか。
それは、きっと、辛く、悲しい、真実だろう。

でも、もう、怖くはない。
一人じゃないから。
彼と、一緒だから。

私たちは、覚悟を、決めて、光の扉を、押し開けた。
そして、ついに、10年前の、あの日の、真実の記憶が、私たちの前に、その姿を、現すのだった。
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