断罪される未来を知る悪役令嬢ですが、冷徹なはずの婚約者に勘違いされて溺愛ルートに入りました

六角

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第42話:悪女と聖女の、ティータイム

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宰相の城――王宮の一角に、与えられた、私の部屋は、皮肉なほどに、豪華だった。
天蓋付きのベッド、上等な、調度品の数々。
しかし、扉の外には、常に、二人の、見張りが立ち、窓は、魔法で、固く、閉ざされている。
美しい、鳥かご。
ただ、飼い主が、ゼノン様から、宰相に、変わっただけのことだ。

この城での、私の生活は、ひと言で、言って、退屈だった。
宰相は、私に、何も、命じない。
ただ、生かさず、殺さず、泳がせているだけ。
私が、ボロを出すのを、待っているのだろう。

そして、その、退屈な、日々に、彩り(という名のストレス)を、加えてくれるのが、リリアナの、存在だった。
彼女は、毎日、必ず、私の部屋へ、やってくる。
もちろん、仲良く、おしゃべりをするため、ではない。

「ごきげんよう、イザベラさん。今日も、息をしているようですわね」

今日も、今日とて、彼女は、嫌味を、言うためだけに、やってきた。
手には、高級な、ティーセット。
これから、二人だけの、優雅な、ティータイムの、始まりだ。

「ええ、おかげさまで。あなたこそ、まだ、お父様の、操り人形で、いらっしゃるのね。お可哀そうに」

「なんですって!?」

私は、扇子で、口元を、仰ぎながら、優雅に、言い返す。
悪役令嬢の、スキルが、こんなところで、役に立つとは。

リリアナは、悔しそうに、顔を、歪めたが、すぐに、いつもの、聖女の微笑みを、貼り付けた。

「あら、操り人形ですって? 心外ですわ。わたくしは、お父様の、大いなる、理想を、実現するための、大切な、パートナーですもの。あなたのように、誰からも、見捨てられた、負け犬とは、違いますわ」

「負け犬…?」

「ええ。だって、そうでしょう? あれほど、愛していると、思っていた、ゼノン様にも、あっさり、捨てられて。その、ゼノン様は、今頃、新しい、婚約者でも、探しているのでは、ありませんこと?」

彼女の言葉が、チクリ、と、胸に刺さる。
もちろん、ゼノン様が、そんなことをするはずがないと、頭では、わかっている。
でも、そうやって、不安を、煽ってくるのだ。
彼女の、得意な、やり方で。

「…そうかもしれませんわね」

私は、あえて、彼女の言葉に、乗ってみせた。
悲しそうに、瞳を、伏せてみる。

「でも、わたくし、もう、決めたのです。男に、媚びて、生きるのは、もう、おしまい。これからは、自分の、力だけで、生きていく、と。そのために、宰相閣下の、お力を、お借りしているのですわ」

「ふん、その、宰相閣下も、あなたのことなど、信用しては、おりませんけれど」

「ええ、存じておりますわ。ですが、いずれ、わたくしの、有能さを、認めてくださるはず。あなたのように、ただ、父親の、威光を、笠に着ているだけの、お飾りとは、違いますから」

「なっ…! この、負け犬風情が…!」

ついに、リリアナの、化けの皮が、剥がれた。
彼女は、ティーカップを、ガシャン!と、乱暴に、ソーサーに、置くと、ヒステリックに、叫んだ。

「いい気にならないでちょうだい! あなたなんて、お父様の手のひらの上で、転がされているだけなのよ! いつでも、潰せる、虫けら同然だということを、忘れないことね!」

「あら、怖い。聖女様が、そんな、お言葉遣いを、なさるなんて。神様が、お嘆きになりますわよ?」

「う、うるさい! うるさい、うるさい!」

彼女は、子供のように、駄々をこねると、そのまま、部屋を、出て行ってしまった。
後に残されたのは、冷めきった、紅茶だけ。

「…ふぅ」

私は、一人になると、大きく、息を、吐いた。
疲れる。
毎日、毎日、この、不毛な、舌戦を、繰り広げるのは、精神的に、かなり、疲弊する。

でも、これも、作戦の、一環だ。
リリアナを、苛立たせ、油断させる。
そうすれば、いずれ、彼女が、何か、重要な情報を、ポロリと、漏らすかもしれない。

『負けないわ…』

私は、冷めた紅茶を、一気に、飲み干した。
悪役令嬢の、プライドにかけて。
あの、偽りの聖女に、負けるわけには、いかないのだ。
この、心理戦、必ず、私が、制してみせる。

そう、固く、心に、誓うのだった。
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