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第6話:ヒロイン・アリスの受難と、聖女の膝枕
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学園生活二日目。 私の安眠ライフは、劇的な進化を遂げていた。
「……ふかふかだ」
私は、学園の中庭にある樹齢数百年の大樹の下で、至福の吐息を漏らした。 背中と頭を預けているのは、昨日「枕係」に任命したアリス・ミドルフォードが調整してくれた、マイ枕である。
これが、凄かった。
アリスの実家はパン屋だと言っていたが、彼女の指先には魔法がかかっているに違いない。 中の羽毛が、まるで焼き立てのパン生地のように空気を含み、絶妙な弾力を生み出している。 硬すぎず、柔らかすぎず。 頭を乗せた瞬間、スッと沈み込み、そこでピタリと止まる。 首への負担はゼロ。 まるで雲の上に浮いているような浮遊感。
「すごいわ、アリス。あなた、天才ね」
私は思わず称賛の言葉を口にした。 過去6回の人生で、様々な枕を試してきた。 王室御用達の最高級品から、魔獣の毛皮を使った特注品まで。 だが、この「アリス調整版」は、それら全てを凌駕していた。
「えへへ……! ありがとうございます、リリアーナ様!」
私の傍らに控えていたアリスが、花が咲いたような笑顔を見せる。 彼女の手には、予備のカバーと、湿度調整用のハーブが入ったバスケットが握られている。
「パンの発酵具合を見極める要領で、羽毛の空気量を調整してみました! リリアーナ様の頭の形と重さを計算して、ベストな配合にしてあります!」
「……職人芸ね」
「はい! リリアーナ様の『お昼寝』は、国を守るためのエネルギー充填だと伺いましたから! その一助になれるなんて、光栄です!」
誰に聞いたんだ、そんな設定。 十中八九、私の足元で番犬のように周囲を睨みつけている、あの金髪縦ロールのせいだろう。
「当然よ! リリアーナ様の頭脳は、睡眠中にこそ真価を発揮するの。その枕は、いわば『賢者の石』を置く台座のようなもの。心してメンテナンスなさい!」
ベルタが偉そうに指示を出す。 アリスは「はいっ! 命にかえても!」と敬礼している。
やれやれ。 変な部下が二人もできてしまった。 でもまあ、この枕の心地よさに免じて許してあげよう。
私は木漏れ日の中で目を閉じた。 風が気持ちいい。 草の匂い。 遠くから聞こえる生徒たちの話し声も、この距離なら心地よいBGMだ。
(……平和だなぁ)
私は深く息を吸い込み、意識を手放そうとした。
だが。 私の「平穏感知センサー」が、微かなノイズを拾った。
「……うっ……」
すぐ隣から、鼻をすするような音が聞こえたのだ。 続いて、衣擦れの音と、押し殺したような嗚咽。
(……ん?)
私は薄目を開けた。 視線の先には、アリスがいる。 彼女は笑顔を貼り付けているつもりなのだろうが、その瞳は潤み、鼻先が赤くなっている。 そして、彼女が隠そうとしている制服のスカートに、泥のような汚れがついているのが見えた。
「……アリス?」
私が声をかけると、アリスはビクッと肩を震わせた。
「は、はい! 何でしょうか、リリアーナ様! 枕の高さ、変えますか!?」
「その服、どうしたの?」
「え? あ、これは……その……転んじゃって!」
アリスは慌ててスカートを払う。 しかし、その汚れ方は不自然だ。 転んでついた泥ではない。 誰かに、意図的に汚水をかけられたような跡だ。
「……転んだ?」
「はい! 私、ドジなので! あはは……」
嘘だ。 彼女の笑顔は引きつっている。
私はチラリとベルタを見た。 ベルタも気づいていたようで、扇子を持つ手が怒りで震えている。
「……アリス。正直に言いなさい。誰にやられたの?」
ベルタが低い声で問いただす。
「い、いえ、本当に違うんです……!」
「嘘をおっしゃい! 平民であるあなたが特待生として入学したことを、快く思っていない連中がいるのは知っているわ。C組の『派手好きグループ』でしょ? さっき、食堂であなたに絡んでいるのを見たわよ」
アリスは俯いた。 どうやら図星らしい。
正ヒロインであるアリスは、平民出身でありながら強力な光魔法の素質を持つ「聖女候補」だ。 その才能を見込まれて特待生として入学したが、身分社会であるこの学園では、貴族の子女たちから嫉妬と差別の対象になりやすい。 いわゆる、ヒロイン試練イベントだ。
(……面倒くさいことになった)
私は心の中で溜息をついた。 本来なら、ここで王子様が登場して「彼女に何をするんだ!」と助けに入り、愛が芽生えるはずなのだ。 私の出番ではない。
「……私、平民だから……仕方ないんです」
アリスがぽつりと呟いた。
「生意気だとか、身の程知らずとか言われるのは、慣れてます。だから、リリアーナ様にご迷惑はおかけしません。着替えてきますから、気にしないで寝ててください」
彼女は無理に笑って、立ち去ろうとした。 その目から、ポロリと一粒の涙がこぼれ落ちる。
(あー……)
私は、その涙を見てしまった。 そして、考えてしまった。
アリスが泣いている。 ↓ 精神的に不安定になる。 ↓ 手元が狂う。 ↓ 明日の枕の調整が雑になる。 ↓ 私の安眠が損なわれる。
(それは困る)
私の思考回路は、瞬時に結論を導き出した。 アリスの精神安定は、私の睡眠の質に直結する重要事項だ。 彼女がいじめられてメソメソしている状態は、私の安眠ライフに対する重大な脅威である。
「……待ちたまえ」
私は、のっそりと上半身を起こした。
「リリアーナ様?」
「その汚れ、臭うわ」
私はわざと冷たく言った。
「ドブの水? それとも雑巾の絞り汁かしら? とにかく臭い。そんな格好で私の枕に触らないでくれる?」
アリスの顔が青ざめる。 憧れのリリアーナ様に「臭い」と言われたショックは大きかったようだ。
「も、申し訳ありません……! すぐに洗って……!」
「いいえ。洗っても匂いは残るわ」
私は立ち上がった。 そして、ベルタに向かってアゴをしゃくった。
「行くわよ」
「は? どちらへ?」
「元を断ちに行かないと。……私の枕職人のメンタルケアのために」
ベルタがハッと息を呑む。 彼女は私の言葉を、即座に脳内変換したらしい。 『我が愛すべき部下を傷つけた愚か者たちに、鉄槌を下しに行く』と。
「……御意!」
ベルタが満面の笑みを浮かべ、扇子をバッと開いた。
「アリス、案内しなさい。その泥水をかけた連中がどこにいるのか」
「え、ええっ!? でも……!」
「いいから。リリアーナ様が『動く』と仰っているのよ。これは天変地異の前触れよ。さあ、行きましょう!」
私たちは移動を開始した。 先頭に、不機嫌オーラ全開の私(眠いだけ)。 右後ろに、殺る気満々のベルタ。 左後ろに、オロオロするアリス。 なんとも奇妙な行進だ。
◇
場所は、学園の食堂テラス。 そこには、色とりどりのドレスを着崩した令嬢たちのグループがいた。 カースト中位くらいの、一番タチの悪い連中だ。
「あはは! 見た? さっきの平民の顔!」 「汚い雑巾水がお似合いよねー」 「特待生だからって調子に乗ってるのよ」
高笑いが聞こえてくる。 うるさい。 本当に、耳障りだ。 私の鼓膜は、小鳥のさえずりと風の音専用にチューニングされているというのに。
私は無言で彼女たちのテーブルに近づいた。
「あら? 誰か来たわよ」 「あれは……ヴェルデ公爵令嬢?」 「うそ、あのアリスと一緒にいる……?」
彼女たちが気づき、ざわめき始める。 私はテーブルの横に立つと、リーダー格らしき赤髪の令嬢を見下ろした。 半眼で。
「……ねえ」
「な、何ですか? リリアーナ様」
彼女は少し怯んでいた。 私の後ろに控えるベルタが、鬼の形相で睨んでいるからかもしれない。
「アリスに水をかけたの、あなたたち?」
単刀直入に聞いた。
「み、水? なんのことでしょう? あら、その子は転んだんじゃないんですか? 平民は足元が不注意だから」
しらばっくれる気だ。 まあ、証拠はない。 普通の学園ドラマなら、ここで論破合戦になるのだろう。
でも、私はそんな面倒なことはしない。
「……そう」
私は小さく息を吐いた。 そして、彼女たちのテーブルに置かれている、なみなみと注がれた紅茶のポットに視線をやった。
(……あれ、熱そうだな)
もし、あれがこぼれたら。 大変なことになるだろうな。 火傷するかもしれないし、ドレスがシミになるかもしれない。
「気をつけてね」
私はボソリと言った。
「え?」
「足元が不注意なのは、どっちかしら」
その瞬間。 私は、テーブルの脚に、ほんの少しだけ「重力操作」の魔法をかけた。 5回目の人生で覚えた闇魔法の応用だ。 一点にだけ重力を集中させ、バランスを崩させる。
ガタンッ!
突然、テーブルが傾いた。 物理法則を無視したような角度で。
「きゃあっ!?」
悲鳴と共に、テーブルの上の食器が滑り落ちる。 そして、熱々の紅茶が入ったポットが、美しい弧を描いて――赤髪の令嬢の膝元へ向かって落下した。
「い、いやぁぁぁ!」
彼女が顔を覆う。
――バシャッ!
液体が弾ける音がした。 しかし、悲鳴は上がらなかった。
「……え?」
赤髪の令嬢がおそるおそる目を開ける。 彼女のドレスは、濡れていなかった。 ポットの中身は空だった。 いや、違う。 ポットから飛び出したはずの紅茶が、空中で静止し、球体となって漂っていたのだ。
そのコントロールをしているのは、もちろん私だ。 火傷させたら後味が悪いし、先生に呼ばれて事情聴取されるのも面倒だから。 寸前で、水魔法による制御を行ったのだ。
「……あぶないじゃない」
私は指先をくるりと回した。 空中の紅茶の球体が、シュルシュルと音を立ててポットの中に戻っていく。 一滴残らず。
「紅茶は飲むものよ。人にかけるものじゃないわ」
私は静かに言った。 それは、彼女たちがアリスにやったことへの、明確な意趣返しだった。 「お前たちがやったことなど、私にはいつでも倍にして返せる」という無言の警告。
赤髪の令嬢は、腰を抜かして震えていた。 周囲の取り巻きたちも、顔面蒼白だ。
「ま、魔法……? 詠唱もなしに……?」 「あんな精密な操作……宮廷魔導師レベルじゃ……」
恐怖。 圧倒的な実力差を見せつけられた恐怖が、彼女たちを支配する。
私は、もう興味を失っていた。 これ以上関わると眠気が覚めてしまう。
「……アリス、行くわよ」
私は踵を返した。
「は、はい!」
「ベルタ、後は任せた」
「御意! 姉御の慈悲深き制裁、しかと見届けました! 残りの掃除(説教)は私が引き受けます!」
ベルタが腕まくりをして、令嬢たちに詰め寄っていく。 「あなたたち! リリアーナ様の『無言の教育』が分からなかったの!? 命拾いしたわね!」
後ろで始まる修羅場をBGMに、私はアリスを連れて中庭に戻った。
◇
中庭のベンチ。 アリスは、まだ放心状態だった。
「……リリアーナ様」
「何?」
私は再び、お気に入りの定位置(木陰の芝生)に寝転がっていた。 枕はもちろん、アリス製だ。
「助けて……くれたんですか?」
「別に」
私はあくびをした。
「騒がしかったから、静かにさせただけ。それに、あなたが汚れたままだと、私の枕にダニが湧きそうで嫌だったの」
「……」
アリスは黙っていた。 私の素っ気ない、自己中心的な言葉。 それをどう解釈したのか。
突然、彼女がポロポロと涙を流し始めた。
「……う、うぅ……」
「……また泣くの?」
私は眉を寄せた。 泣き声は安眠の敵だと言ったはずだ。
「だって……だってぇ……」
アリスはしゃくり上げながら言った。
「私、嬉しくて……。平民だからって、みんなに馬鹿にされて……誰も助けてくれなくて……。でも、リリアーナ様だけは……」
彼女は、私の言葉の裏(と彼女が信じるもの)を読み取ったらしい。 『騒がしかったから』=『あなたを傷つける言葉が許せなかったから』 『ダニが湧きそうで嫌』=『あなたが汚されるのが耐えられなかった』
なんと都合の良い脳内変換だろう。 でも、今は訂正する気力もない。
「うあぁぁぁん! リリアーナ様ぁぁ!」
アリスが本格的に泣き出した。 声が大きい。 これでは昼寝どころではない。
「……うるさい」
私は体を起こした。 どうすれば泣き止むか。 口を塞ぐ? 魔法で眠らせる? いや、もっと手っ取り早い方法がある。
私は自分の太ももをポンポンと叩いた。
「……ここ」
「え?」
「膝枕。してあげるから」
「ええっ!?」
「泣いてると呼吸が乱れるでしょ。横になって深呼吸しなさい。そうすれば泣き止むわ」
これは、私が過去の人生で学んだ「子供を黙らせるテクニック」の一つだ。 泣いている相手を横にさせ、背中や頭を一定のリズムで叩くと、副交感神経が優位になって落ち着くのだ。 決して、優しさではない。 早く静かにさせて寝たいがための、合理的措置だ。
「そ、そんな……公爵令嬢の膝に、平民の私が……! 不敬です!」
「いいから。命令よ」
私は強引にアリスの手を引き、私の太ももの上に彼女の頭を乗せた。
「……あ」
アリスが固まる。 私の太ももの感触と、上から見下ろす私の顔。
「口を閉じて。目を閉じて。……静かにして」
私は、アリスの茶色の髪を、そっと撫でた。 ペットを撫でる要領だ。 よしよし、静かになれ。 いい子だ、黙ってくれ。
その手つきは、自分でも驚くほど手慣れていた。 そういえば、3回目の人生で孤児院の院長をやっていたこともあったっけ。 あの時も、泣く子供たちをこうやって寝かしつけていた。
アリスの呼吸が、次第に落ち着いてくる。 しゃくり上げる音が消え、穏やかな寝息へと変わっていく。
「……ふふ」
アリスが、涙で濡れた睫毛を震わせながら、幸せそうに微笑んだ。
「いい匂い……。リリアーナ様、お日様の匂いがします……」
「……それは、あなたが干した枕の匂いでしょ」
「あたたかい……。お母さんみたい……」
「誰がお母さんよ。私は12歳よ」
ツッコミを入れるが、アリスはもう夢の中へ落ちかけていた。 単純な子だ。 でも、静かになったのでよしとしよう。
私はそのまま、アリスを膝枕した状態で、自分も幹に寄りかかって目を閉じた。 少し重いけれど、湯たんぽ代わりになって悪くない。
◇
そして。 この光景が、またしても伝説となる。
昼休み。 食堂から戻ってきた生徒たちが、中庭を通る。 そこで彼らが目撃したのは、神々しいまでの「聖母子像」のような光景だった。
木漏れ日の中。 銀髪の美少女が、平民の少女を慈愛に満ちた表情(実は眠いだけ)で見下ろし、優しく髪を撫でている。 膝枕をされている少女は、安らかな顔で眠っている。
「あれは……リリアーナ様?」 「膝に乗せているのは、さっきいじめられていた特待生の子だ」 「なんてことだ……。公爵令嬢が、平民に膝を貸すなんて……」 「身分差を超えた友愛……いや、慈愛か」 「聖女だ……。本物の聖女様がいらっしゃる……」
生徒たちは足を止め、合掌し始めた。 誰かがスケッチブックを取り出し、この尊い光景を写生し始める。
さらに、そこに王子ジークフリートが現れる。 彼は、いじめの噂を聞きつけて駆けつけたのだが、一足遅かった。 そして、目の前の光景に言葉を失った。
「……リリアーナ」
彼は、木陰に佇む私を見つめた。
「君は……どこまで高潔なんだ」
彼の胸に、熱いものが込み上げてくる。 自分は「いじめを解決して、いいところを見せよう」などという浅ましい考えでここに来た。 だが、リリアーナは違った。 彼女は、傷ついた少女を誰よりも早く保護し、自らの膝を差し出して慰めている。 言葉ではなく、行動で「全ての民は平等である」と示しているのだ。
「敵わないな……」
ジークフリートは苦笑した。
「君のその優しさは、海のように深い。僕はまた一つ、君の魅力を知ってしまったよ」
彼は、私の寝顔(とアリスの寝顔)をしばらく見守った後、 「誰も邪魔をするな。この時間は、彼女たちの聖域だ」 と周囲の生徒たちに命じ、静かに去っていった。
◇
数十分後。 私が目を覚ますと、膝の上でアリスが爆睡していた。 涎を垂らしている。 私の制服のスカートに、シミができている。
「……」
(汚い……)
私は顔をしかめたが、振り払うのも面倒なので、そのままにしておいた。 まあ、今日の枕の出来が良かったから、これくらいのサービス料は払ってあげてもいいか。
「……むにゃ。リリアーナ様……大好きです……一生ついていきます……」
アリスが寝言を呟く。
「……はいはい」
私は適当に相槌を打った。
こうして。 私の「安眠親衛隊」に、 「狂犬の戦闘員(ベルタ)」に加え、 「絶対服従の信者(アリス)」が正式に加入した。
ベルタの武力と、アリスの枕技術。 そして私の怠惰。 この三つが揃えば、無敵の引きこもり要塞が完成する日も近い……はずだった。
しかし、運命はそう簡単には私を寝かせてくれない。 次なるトラブルは、学園の外からやってくる。 私の「悪役令嬢」としての過去(の評判)を知る、やっかいな男たちが。
「……ふかふかだ」
私は、学園の中庭にある樹齢数百年の大樹の下で、至福の吐息を漏らした。 背中と頭を預けているのは、昨日「枕係」に任命したアリス・ミドルフォードが調整してくれた、マイ枕である。
これが、凄かった。
アリスの実家はパン屋だと言っていたが、彼女の指先には魔法がかかっているに違いない。 中の羽毛が、まるで焼き立てのパン生地のように空気を含み、絶妙な弾力を生み出している。 硬すぎず、柔らかすぎず。 頭を乗せた瞬間、スッと沈み込み、そこでピタリと止まる。 首への負担はゼロ。 まるで雲の上に浮いているような浮遊感。
「すごいわ、アリス。あなた、天才ね」
私は思わず称賛の言葉を口にした。 過去6回の人生で、様々な枕を試してきた。 王室御用達の最高級品から、魔獣の毛皮を使った特注品まで。 だが、この「アリス調整版」は、それら全てを凌駕していた。
「えへへ……! ありがとうございます、リリアーナ様!」
私の傍らに控えていたアリスが、花が咲いたような笑顔を見せる。 彼女の手には、予備のカバーと、湿度調整用のハーブが入ったバスケットが握られている。
「パンの発酵具合を見極める要領で、羽毛の空気量を調整してみました! リリアーナ様の頭の形と重さを計算して、ベストな配合にしてあります!」
「……職人芸ね」
「はい! リリアーナ様の『お昼寝』は、国を守るためのエネルギー充填だと伺いましたから! その一助になれるなんて、光栄です!」
誰に聞いたんだ、そんな設定。 十中八九、私の足元で番犬のように周囲を睨みつけている、あの金髪縦ロールのせいだろう。
「当然よ! リリアーナ様の頭脳は、睡眠中にこそ真価を発揮するの。その枕は、いわば『賢者の石』を置く台座のようなもの。心してメンテナンスなさい!」
ベルタが偉そうに指示を出す。 アリスは「はいっ! 命にかえても!」と敬礼している。
やれやれ。 変な部下が二人もできてしまった。 でもまあ、この枕の心地よさに免じて許してあげよう。
私は木漏れ日の中で目を閉じた。 風が気持ちいい。 草の匂い。 遠くから聞こえる生徒たちの話し声も、この距離なら心地よいBGMだ。
(……平和だなぁ)
私は深く息を吸い込み、意識を手放そうとした。
だが。 私の「平穏感知センサー」が、微かなノイズを拾った。
「……うっ……」
すぐ隣から、鼻をすするような音が聞こえたのだ。 続いて、衣擦れの音と、押し殺したような嗚咽。
(……ん?)
私は薄目を開けた。 視線の先には、アリスがいる。 彼女は笑顔を貼り付けているつもりなのだろうが、その瞳は潤み、鼻先が赤くなっている。 そして、彼女が隠そうとしている制服のスカートに、泥のような汚れがついているのが見えた。
「……アリス?」
私が声をかけると、アリスはビクッと肩を震わせた。
「は、はい! 何でしょうか、リリアーナ様! 枕の高さ、変えますか!?」
「その服、どうしたの?」
「え? あ、これは……その……転んじゃって!」
アリスは慌ててスカートを払う。 しかし、その汚れ方は不自然だ。 転んでついた泥ではない。 誰かに、意図的に汚水をかけられたような跡だ。
「……転んだ?」
「はい! 私、ドジなので! あはは……」
嘘だ。 彼女の笑顔は引きつっている。
私はチラリとベルタを見た。 ベルタも気づいていたようで、扇子を持つ手が怒りで震えている。
「……アリス。正直に言いなさい。誰にやられたの?」
ベルタが低い声で問いただす。
「い、いえ、本当に違うんです……!」
「嘘をおっしゃい! 平民であるあなたが特待生として入学したことを、快く思っていない連中がいるのは知っているわ。C組の『派手好きグループ』でしょ? さっき、食堂であなたに絡んでいるのを見たわよ」
アリスは俯いた。 どうやら図星らしい。
正ヒロインであるアリスは、平民出身でありながら強力な光魔法の素質を持つ「聖女候補」だ。 その才能を見込まれて特待生として入学したが、身分社会であるこの学園では、貴族の子女たちから嫉妬と差別の対象になりやすい。 いわゆる、ヒロイン試練イベントだ。
(……面倒くさいことになった)
私は心の中で溜息をついた。 本来なら、ここで王子様が登場して「彼女に何をするんだ!」と助けに入り、愛が芽生えるはずなのだ。 私の出番ではない。
「……私、平民だから……仕方ないんです」
アリスがぽつりと呟いた。
「生意気だとか、身の程知らずとか言われるのは、慣れてます。だから、リリアーナ様にご迷惑はおかけしません。着替えてきますから、気にしないで寝ててください」
彼女は無理に笑って、立ち去ろうとした。 その目から、ポロリと一粒の涙がこぼれ落ちる。
(あー……)
私は、その涙を見てしまった。 そして、考えてしまった。
アリスが泣いている。 ↓ 精神的に不安定になる。 ↓ 手元が狂う。 ↓ 明日の枕の調整が雑になる。 ↓ 私の安眠が損なわれる。
(それは困る)
私の思考回路は、瞬時に結論を導き出した。 アリスの精神安定は、私の睡眠の質に直結する重要事項だ。 彼女がいじめられてメソメソしている状態は、私の安眠ライフに対する重大な脅威である。
「……待ちたまえ」
私は、のっそりと上半身を起こした。
「リリアーナ様?」
「その汚れ、臭うわ」
私はわざと冷たく言った。
「ドブの水? それとも雑巾の絞り汁かしら? とにかく臭い。そんな格好で私の枕に触らないでくれる?」
アリスの顔が青ざめる。 憧れのリリアーナ様に「臭い」と言われたショックは大きかったようだ。
「も、申し訳ありません……! すぐに洗って……!」
「いいえ。洗っても匂いは残るわ」
私は立ち上がった。 そして、ベルタに向かってアゴをしゃくった。
「行くわよ」
「は? どちらへ?」
「元を断ちに行かないと。……私の枕職人のメンタルケアのために」
ベルタがハッと息を呑む。 彼女は私の言葉を、即座に脳内変換したらしい。 『我が愛すべき部下を傷つけた愚か者たちに、鉄槌を下しに行く』と。
「……御意!」
ベルタが満面の笑みを浮かべ、扇子をバッと開いた。
「アリス、案内しなさい。その泥水をかけた連中がどこにいるのか」
「え、ええっ!? でも……!」
「いいから。リリアーナ様が『動く』と仰っているのよ。これは天変地異の前触れよ。さあ、行きましょう!」
私たちは移動を開始した。 先頭に、不機嫌オーラ全開の私(眠いだけ)。 右後ろに、殺る気満々のベルタ。 左後ろに、オロオロするアリス。 なんとも奇妙な行進だ。
◇
場所は、学園の食堂テラス。 そこには、色とりどりのドレスを着崩した令嬢たちのグループがいた。 カースト中位くらいの、一番タチの悪い連中だ。
「あはは! 見た? さっきの平民の顔!」 「汚い雑巾水がお似合いよねー」 「特待生だからって調子に乗ってるのよ」
高笑いが聞こえてくる。 うるさい。 本当に、耳障りだ。 私の鼓膜は、小鳥のさえずりと風の音専用にチューニングされているというのに。
私は無言で彼女たちのテーブルに近づいた。
「あら? 誰か来たわよ」 「あれは……ヴェルデ公爵令嬢?」 「うそ、あのアリスと一緒にいる……?」
彼女たちが気づき、ざわめき始める。 私はテーブルの横に立つと、リーダー格らしき赤髪の令嬢を見下ろした。 半眼で。
「……ねえ」
「な、何ですか? リリアーナ様」
彼女は少し怯んでいた。 私の後ろに控えるベルタが、鬼の形相で睨んでいるからかもしれない。
「アリスに水をかけたの、あなたたち?」
単刀直入に聞いた。
「み、水? なんのことでしょう? あら、その子は転んだんじゃないんですか? 平民は足元が不注意だから」
しらばっくれる気だ。 まあ、証拠はない。 普通の学園ドラマなら、ここで論破合戦になるのだろう。
でも、私はそんな面倒なことはしない。
「……そう」
私は小さく息を吐いた。 そして、彼女たちのテーブルに置かれている、なみなみと注がれた紅茶のポットに視線をやった。
(……あれ、熱そうだな)
もし、あれがこぼれたら。 大変なことになるだろうな。 火傷するかもしれないし、ドレスがシミになるかもしれない。
「気をつけてね」
私はボソリと言った。
「え?」
「足元が不注意なのは、どっちかしら」
その瞬間。 私は、テーブルの脚に、ほんの少しだけ「重力操作」の魔法をかけた。 5回目の人生で覚えた闇魔法の応用だ。 一点にだけ重力を集中させ、バランスを崩させる。
ガタンッ!
突然、テーブルが傾いた。 物理法則を無視したような角度で。
「きゃあっ!?」
悲鳴と共に、テーブルの上の食器が滑り落ちる。 そして、熱々の紅茶が入ったポットが、美しい弧を描いて――赤髪の令嬢の膝元へ向かって落下した。
「い、いやぁぁぁ!」
彼女が顔を覆う。
――バシャッ!
液体が弾ける音がした。 しかし、悲鳴は上がらなかった。
「……え?」
赤髪の令嬢がおそるおそる目を開ける。 彼女のドレスは、濡れていなかった。 ポットの中身は空だった。 いや、違う。 ポットから飛び出したはずの紅茶が、空中で静止し、球体となって漂っていたのだ。
そのコントロールをしているのは、もちろん私だ。 火傷させたら後味が悪いし、先生に呼ばれて事情聴取されるのも面倒だから。 寸前で、水魔法による制御を行ったのだ。
「……あぶないじゃない」
私は指先をくるりと回した。 空中の紅茶の球体が、シュルシュルと音を立ててポットの中に戻っていく。 一滴残らず。
「紅茶は飲むものよ。人にかけるものじゃないわ」
私は静かに言った。 それは、彼女たちがアリスにやったことへの、明確な意趣返しだった。 「お前たちがやったことなど、私にはいつでも倍にして返せる」という無言の警告。
赤髪の令嬢は、腰を抜かして震えていた。 周囲の取り巻きたちも、顔面蒼白だ。
「ま、魔法……? 詠唱もなしに……?」 「あんな精密な操作……宮廷魔導師レベルじゃ……」
恐怖。 圧倒的な実力差を見せつけられた恐怖が、彼女たちを支配する。
私は、もう興味を失っていた。 これ以上関わると眠気が覚めてしまう。
「……アリス、行くわよ」
私は踵を返した。
「は、はい!」
「ベルタ、後は任せた」
「御意! 姉御の慈悲深き制裁、しかと見届けました! 残りの掃除(説教)は私が引き受けます!」
ベルタが腕まくりをして、令嬢たちに詰め寄っていく。 「あなたたち! リリアーナ様の『無言の教育』が分からなかったの!? 命拾いしたわね!」
後ろで始まる修羅場をBGMに、私はアリスを連れて中庭に戻った。
◇
中庭のベンチ。 アリスは、まだ放心状態だった。
「……リリアーナ様」
「何?」
私は再び、お気に入りの定位置(木陰の芝生)に寝転がっていた。 枕はもちろん、アリス製だ。
「助けて……くれたんですか?」
「別に」
私はあくびをした。
「騒がしかったから、静かにさせただけ。それに、あなたが汚れたままだと、私の枕にダニが湧きそうで嫌だったの」
「……」
アリスは黙っていた。 私の素っ気ない、自己中心的な言葉。 それをどう解釈したのか。
突然、彼女がポロポロと涙を流し始めた。
「……う、うぅ……」
「……また泣くの?」
私は眉を寄せた。 泣き声は安眠の敵だと言ったはずだ。
「だって……だってぇ……」
アリスはしゃくり上げながら言った。
「私、嬉しくて……。平民だからって、みんなに馬鹿にされて……誰も助けてくれなくて……。でも、リリアーナ様だけは……」
彼女は、私の言葉の裏(と彼女が信じるもの)を読み取ったらしい。 『騒がしかったから』=『あなたを傷つける言葉が許せなかったから』 『ダニが湧きそうで嫌』=『あなたが汚されるのが耐えられなかった』
なんと都合の良い脳内変換だろう。 でも、今は訂正する気力もない。
「うあぁぁぁん! リリアーナ様ぁぁ!」
アリスが本格的に泣き出した。 声が大きい。 これでは昼寝どころではない。
「……うるさい」
私は体を起こした。 どうすれば泣き止むか。 口を塞ぐ? 魔法で眠らせる? いや、もっと手っ取り早い方法がある。
私は自分の太ももをポンポンと叩いた。
「……ここ」
「え?」
「膝枕。してあげるから」
「ええっ!?」
「泣いてると呼吸が乱れるでしょ。横になって深呼吸しなさい。そうすれば泣き止むわ」
これは、私が過去の人生で学んだ「子供を黙らせるテクニック」の一つだ。 泣いている相手を横にさせ、背中や頭を一定のリズムで叩くと、副交感神経が優位になって落ち着くのだ。 決して、優しさではない。 早く静かにさせて寝たいがための、合理的措置だ。
「そ、そんな……公爵令嬢の膝に、平民の私が……! 不敬です!」
「いいから。命令よ」
私は強引にアリスの手を引き、私の太ももの上に彼女の頭を乗せた。
「……あ」
アリスが固まる。 私の太ももの感触と、上から見下ろす私の顔。
「口を閉じて。目を閉じて。……静かにして」
私は、アリスの茶色の髪を、そっと撫でた。 ペットを撫でる要領だ。 よしよし、静かになれ。 いい子だ、黙ってくれ。
その手つきは、自分でも驚くほど手慣れていた。 そういえば、3回目の人生で孤児院の院長をやっていたこともあったっけ。 あの時も、泣く子供たちをこうやって寝かしつけていた。
アリスの呼吸が、次第に落ち着いてくる。 しゃくり上げる音が消え、穏やかな寝息へと変わっていく。
「……ふふ」
アリスが、涙で濡れた睫毛を震わせながら、幸せそうに微笑んだ。
「いい匂い……。リリアーナ様、お日様の匂いがします……」
「……それは、あなたが干した枕の匂いでしょ」
「あたたかい……。お母さんみたい……」
「誰がお母さんよ。私は12歳よ」
ツッコミを入れるが、アリスはもう夢の中へ落ちかけていた。 単純な子だ。 でも、静かになったのでよしとしよう。
私はそのまま、アリスを膝枕した状態で、自分も幹に寄りかかって目を閉じた。 少し重いけれど、湯たんぽ代わりになって悪くない。
◇
そして。 この光景が、またしても伝説となる。
昼休み。 食堂から戻ってきた生徒たちが、中庭を通る。 そこで彼らが目撃したのは、神々しいまでの「聖母子像」のような光景だった。
木漏れ日の中。 銀髪の美少女が、平民の少女を慈愛に満ちた表情(実は眠いだけ)で見下ろし、優しく髪を撫でている。 膝枕をされている少女は、安らかな顔で眠っている。
「あれは……リリアーナ様?」 「膝に乗せているのは、さっきいじめられていた特待生の子だ」 「なんてことだ……。公爵令嬢が、平民に膝を貸すなんて……」 「身分差を超えた友愛……いや、慈愛か」 「聖女だ……。本物の聖女様がいらっしゃる……」
生徒たちは足を止め、合掌し始めた。 誰かがスケッチブックを取り出し、この尊い光景を写生し始める。
さらに、そこに王子ジークフリートが現れる。 彼は、いじめの噂を聞きつけて駆けつけたのだが、一足遅かった。 そして、目の前の光景に言葉を失った。
「……リリアーナ」
彼は、木陰に佇む私を見つめた。
「君は……どこまで高潔なんだ」
彼の胸に、熱いものが込み上げてくる。 自分は「いじめを解決して、いいところを見せよう」などという浅ましい考えでここに来た。 だが、リリアーナは違った。 彼女は、傷ついた少女を誰よりも早く保護し、自らの膝を差し出して慰めている。 言葉ではなく、行動で「全ての民は平等である」と示しているのだ。
「敵わないな……」
ジークフリートは苦笑した。
「君のその優しさは、海のように深い。僕はまた一つ、君の魅力を知ってしまったよ」
彼は、私の寝顔(とアリスの寝顔)をしばらく見守った後、 「誰も邪魔をするな。この時間は、彼女たちの聖域だ」 と周囲の生徒たちに命じ、静かに去っていった。
◇
数十分後。 私が目を覚ますと、膝の上でアリスが爆睡していた。 涎を垂らしている。 私の制服のスカートに、シミができている。
「……」
(汚い……)
私は顔をしかめたが、振り払うのも面倒なので、そのままにしておいた。 まあ、今日の枕の出来が良かったから、これくらいのサービス料は払ってあげてもいいか。
「……むにゃ。リリアーナ様……大好きです……一生ついていきます……」
アリスが寝言を呟く。
「……はいはい」
私は適当に相槌を打った。
こうして。 私の「安眠親衛隊」に、 「狂犬の戦闘員(ベルタ)」に加え、 「絶対服従の信者(アリス)」が正式に加入した。
ベルタの武力と、アリスの枕技術。 そして私の怠惰。 この三つが揃えば、無敵の引きこもり要塞が完成する日も近い……はずだった。
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