8 / 36
第8話 最強のバディ
しおりを挟む
島の中心部に近い森の中で、一組の参加者がゾンビの襲撃を退けていた。
「こんな場所に異動願を出した覚えはないぞ。まったく」
長い鉄パイプでゾンビの頭部を粉砕した直後、箙光誠は複雑な感情を処理しきれずに短髪を掻き乱した。体系は中肉中背で、服装は袖をまくったワイシャツとスラックス。顔には隈と無精髭が目立つ。
現在の部署での仕事に限界を感じていたことと、家庭の事情が重なり、別の部署への異動を希望。それが認められ、新たな部署で心機一転頑張ろうと張り切っていた矢先、突然謎の組織に拉致され、気がつけばゾンビが蠢く島でのデスゲームに強制参加させられてしまった。冗談でも言わないとやってられない。
「笑えない冗談だけど私も同感。ゾンビ退治なんて異業種にも程があるっての」
デスゲームの中で箙と出会い、共同戦線を結んだセミロングの黒髪の女性、四方手嘉音が大仰に肩を竦めた。白いブラウスとスキニーのデニムパンツを身に着けているが、ゾンビとの戦闘で返り血が飛び、ブラウスはランダムなドット柄のデザインへと変わっている。装備する得物は狩猟用のナイフで切れ味は抜群だが、リーチが短くゾンビ相手の武器としては使い勝手はあまり良くはない。
「ひとまず、窮地は脱したか」
「この島にいる限り、どこまでいっても窮地でしょう」
「リアリストだな。鏡を見ている気分だ」
ゾンビの襲撃を退けたことで、皮肉を交わす程度には余裕が生まれた。木の幹に背中を預けて休息を取る。
「ゾンビの襲撃で切り出すタイミングが無かったけど、デモンストレーションで殺された小太りの男って、連続殺人の容疑がかかっていた鐙允信よね? さっきアナウンスのあった高紐慧蔵と中黒梓の悪名にも聞き覚えがある。もしかしてここに集められているのって、ろくでなしばかり?」
「自虐か? それとも俺に対する誹謗中傷?」
「口説き文句よ。箙さんの人となりを知っておきたいという、私なりのアプローチ」
「過激だな。死線を越えて多少は信頼を得たのだと、前向きに捉えておくか」
遠回しだが、そろそろお互いの素性について腹を割って話しておきたいと嘉音は考えたのだろう。お互いのことはまだ名前しか知らないが、些細な発言やデスゲームに対する姿勢で、箙もある程度は彼女の正体を察し、少なくとも自身と敵対する可能性のある人間でないことは確信している。このデスゲームを生き残るためには信頼出来る味方の存在は不可欠だ。彼女の言うように、お互いを知るには良い機会なのかもしれない。
「俺は元警視庁捜査一課所属の刑事だ」
「警察関係者だというのは察しがついていたけど、まさか捜査一課の刑事とはね」
「元刑事だ。異動願を出して、それが通った途端にこの有様だ」
「きたるポストアポカリプスに備えて、警視庁には対ゾンビ課でも新設されたの?」
「だったら異動願なんて出さず、犯人を追ってる方がまだマシだったな」
危機的状況だからこそ、嘉音の軽口がありがたかった。孤独なら苦笑いを浮かべる余裕すらなかっただろう。
「逃亡中の被疑者や未解決事件の話題に詳しいようだし、そういう君も同業じゃないのか? 記者の類かとも思ったが、戦闘の心得もあるようだしな」
共闘しながらとはいえ、嘉音はリーチの短い狩猟用ナイフでここまで生き延びてるし、身のこなしにも隙がない。自身と同じ警察関係者ではないかと箙は睨んでいた。
「残念だけどハズレ。私は四方手探偵事務所の所長兼探偵よ。普段は弁護士事務所の依頼で証拠集めに動く機会が多くてね。事件の話題には敏感なの」
「なるほど。警察とはまた違う形で事件の捜査に関わる機会があるわけか。しかし、その戦闘能力は一介の探偵の域は越えているように見えるが?」
「守秘義務があるし詳しくは言えないけど、時には危ない橋を渡ることもあってね。自衛のためにも鍛えておかないと。命がいくつあっても足りない」
「危ない橋か。気にはなるが、もう刑事じゃないし、余計な詮索は止めておくか」
裏を返せば、嘉音は並の探偵以上に修羅場を潜り抜けてきているということだ。このいかれた環境の中で、戦いの術を持ち、かつ常識的な人間と最初に出会えたことは、箙にとっては幸いだった。
「元刑事って話だけど、どうして異動を? 違法捜査でもバレた?」
「こっちは詮索しないのに、そっちは詮索してくるのかよ。あと、違法捜査前提なの止めろ」
「詮索出来る時にしておかないと損じゃない? もちろん早々死ぬつもりはないけど、こんな状況じゃ、五分後にどうなってるか分からないもの」
冗談めかした物言いとは裏腹に、真っ直ぐ箙を見据える嘉音の瞳は真剣そのものだった。ひょっとしたらこれは、人生最後の一期一会になるかもしれない。初対面だからと遠慮するつもりはなかった。
「一理ある。別に隠すようなことではないから素直に言うが……妻に癌が見つかって、治療に専念することになってな。妻をサポートするために、定時で帰れる部署への異動を希望したんだよ」
「そっか。それで現場を……奥さんのためにも、絶対に生きて帰らないといけないね」
「ああ。こんなとこで死んでいられない」
静かな頷きだが、力強い決意が込められていた。感情を共有するように、嘉音も頷きを返した。
「そういう君だって、帰らなといけない理由の一つや二つあるだろ」
「あれ。私に触発された?」
「関係者全員に聞いている形式的な質問だ」
「刑事が関係者にアリバイを尋ねる時みたいな物言いね」
冗談めかした箙の物言いに嘉音は相好を崩すと、過去に思いを馳せて一度、目を閉じた。昨日まで存在していた当たり前の日常が、もう遥か昔の出来事のように感じられる。
「独身だし、早くに両親を亡くして家族もいないけど、心残りがあるとすれば、現在進行形で取り掛かってる案件かな。突然拉致されたものだから、連携している弁護士事務所にまだ報告出来てない情報とかもあってね。裁判中の事案に関する内容だから、ひょっとしたらこの情報が依頼人の今後の人生を左右することになるかもしれない。そのことを思うと、こんなところで死んでいられないわ。戻って私の職務を果たさないと」
「身内や依頼人。誰かのために生きて戻らないといけないのはお互いに同じということだな」
好奇心に従って良かったと箙は感じた。お互いの信念を理解した。だからこそ最後まで生存を諦めない覚悟を感じ取れた。こういう人間とならきっと最後まで生き残ることが出来ると確信出来た。刑事の勘と言い換えてもいい。
「警察官と探偵か。私たち、最強のバディになれそうじゃない?」
「バディか。悪くない響きだ」
「二十四時間生き残って、このふざけたデスゲームの運営もとっ捕まえてやりましょう」
「そうだな。それぐらいの気概がないと生き残れるような気がしない」
新たな決意を胸に、バディの結成を祝ってお互いに握手を交わした。
現役の警察官や犯罪者を拉致し、デスゲームへと強制参加させる。運営はかなりの力を持つ組織であることは想像に難くない。警察官と探偵で結成した即席のバディがデスゲームを運営する謎の組織を追い詰める。最初の目標としては申し分ない。
※※※
「警察官と探偵か。これまた面白い組み合わせだ。配置は完全にランダムだったはずだが、運命は何とも面白い人材同士を引き合わせてくれる」
箙と嘉音のやり取りをモニターしていた面繋は、改めて二人のプロフィールへと目を通していた。
箙光誠。三十九歳。
警視庁捜査一課の刑事として長年、凶悪犯罪の捜査に従事。妻が癌を患い入院したことをきっかけに、妻をサポートするために、定時での退勤が可能な部署への異動を希望している。上記の理由に加え、急増する凶悪犯罪と後手に回る捜査とのギャップに、刑事としてのモチベーションを失っていたことも、異動を決意した一因となっている。捜査一課きっての武闘派としても知られ、大立ち回りの末に犯人を確保した逸話は数知れず。
四方手嘉音。三十二歳。
四方手探偵事務所所長。一般向けの人探しや内偵調査の他、連携する靭法律事務所からの依頼を受け、弁護依頼に関連した調査を行っている。過去に調査中に暴漢による襲撃を受けたことがあるが、持ち前の戦闘能力と危機回避能力によって事なきを得ている。
警察官と探偵。異なる立場だがそれぞれが多くの事件と向き合い、その過程で数多の修羅場を潜り抜けている。豊富な経験値と真実を明らかにせんとする正義感を持ち合わせた二人の出会い。全参加者の中で最も実直なバディの誕生であった。
「我々を捕まえる気満々のようですが、大丈夫でしょうか?」
研究員の総角が面繋の顔色を伺う。今回の壮大な実験に際して入念な準備が進められ、参加者の拉致等も一切の証拠を残さず適切に処理されている。足がつくことは考えにくいし、組織は警察関係者にも顔が利く。デスゲームの参加者たちに何が起ころうとも、彼らはあくまでも通常の行方不明者と同じ扱いになる。
しかし、そうだとは分かっていても、本気で組織の根幹に辿り着くのではと思わせるだけの熱量と実績が二人には備わっていた。例え正攻法ではなくとも、このデスゲームこと壮大な実験を白日の元に晒すのではないか? 総角は一抹の不安を覚えずにはいられなかった。
「その時はその時だ。彼らが生き延びた末に我々を告発してみせたなら、それもまた運命というものだよ」
「主任。本気で言っていますか?」
「私はいつだって本気だよ。この先、何が起きるかなんて誰にも分からない。彼らはもちろん。私や君だってね」
面繋いつだって冗談めかした口調であり、職場での雑談も実験で残酷な光景をモニターしている最中であっても、その飄々とした様子は変わらない。総角が面繋と一緒にプロジェクトに関わることになって三年になるが、一度だって彼の本心を垣間見たことはない。本気という枕詞には一切の説得力は感じられなかった。
「こんな場所に異動願を出した覚えはないぞ。まったく」
長い鉄パイプでゾンビの頭部を粉砕した直後、箙光誠は複雑な感情を処理しきれずに短髪を掻き乱した。体系は中肉中背で、服装は袖をまくったワイシャツとスラックス。顔には隈と無精髭が目立つ。
現在の部署での仕事に限界を感じていたことと、家庭の事情が重なり、別の部署への異動を希望。それが認められ、新たな部署で心機一転頑張ろうと張り切っていた矢先、突然謎の組織に拉致され、気がつけばゾンビが蠢く島でのデスゲームに強制参加させられてしまった。冗談でも言わないとやってられない。
「笑えない冗談だけど私も同感。ゾンビ退治なんて異業種にも程があるっての」
デスゲームの中で箙と出会い、共同戦線を結んだセミロングの黒髪の女性、四方手嘉音が大仰に肩を竦めた。白いブラウスとスキニーのデニムパンツを身に着けているが、ゾンビとの戦闘で返り血が飛び、ブラウスはランダムなドット柄のデザインへと変わっている。装備する得物は狩猟用のナイフで切れ味は抜群だが、リーチが短くゾンビ相手の武器としては使い勝手はあまり良くはない。
「ひとまず、窮地は脱したか」
「この島にいる限り、どこまでいっても窮地でしょう」
「リアリストだな。鏡を見ている気分だ」
ゾンビの襲撃を退けたことで、皮肉を交わす程度には余裕が生まれた。木の幹に背中を預けて休息を取る。
「ゾンビの襲撃で切り出すタイミングが無かったけど、デモンストレーションで殺された小太りの男って、連続殺人の容疑がかかっていた鐙允信よね? さっきアナウンスのあった高紐慧蔵と中黒梓の悪名にも聞き覚えがある。もしかしてここに集められているのって、ろくでなしばかり?」
「自虐か? それとも俺に対する誹謗中傷?」
「口説き文句よ。箙さんの人となりを知っておきたいという、私なりのアプローチ」
「過激だな。死線を越えて多少は信頼を得たのだと、前向きに捉えておくか」
遠回しだが、そろそろお互いの素性について腹を割って話しておきたいと嘉音は考えたのだろう。お互いのことはまだ名前しか知らないが、些細な発言やデスゲームに対する姿勢で、箙もある程度は彼女の正体を察し、少なくとも自身と敵対する可能性のある人間でないことは確信している。このデスゲームを生き残るためには信頼出来る味方の存在は不可欠だ。彼女の言うように、お互いを知るには良い機会なのかもしれない。
「俺は元警視庁捜査一課所属の刑事だ」
「警察関係者だというのは察しがついていたけど、まさか捜査一課の刑事とはね」
「元刑事だ。異動願を出して、それが通った途端にこの有様だ」
「きたるポストアポカリプスに備えて、警視庁には対ゾンビ課でも新設されたの?」
「だったら異動願なんて出さず、犯人を追ってる方がまだマシだったな」
危機的状況だからこそ、嘉音の軽口がありがたかった。孤独なら苦笑いを浮かべる余裕すらなかっただろう。
「逃亡中の被疑者や未解決事件の話題に詳しいようだし、そういう君も同業じゃないのか? 記者の類かとも思ったが、戦闘の心得もあるようだしな」
共闘しながらとはいえ、嘉音はリーチの短い狩猟用ナイフでここまで生き延びてるし、身のこなしにも隙がない。自身と同じ警察関係者ではないかと箙は睨んでいた。
「残念だけどハズレ。私は四方手探偵事務所の所長兼探偵よ。普段は弁護士事務所の依頼で証拠集めに動く機会が多くてね。事件の話題には敏感なの」
「なるほど。警察とはまた違う形で事件の捜査に関わる機会があるわけか。しかし、その戦闘能力は一介の探偵の域は越えているように見えるが?」
「守秘義務があるし詳しくは言えないけど、時には危ない橋を渡ることもあってね。自衛のためにも鍛えておかないと。命がいくつあっても足りない」
「危ない橋か。気にはなるが、もう刑事じゃないし、余計な詮索は止めておくか」
裏を返せば、嘉音は並の探偵以上に修羅場を潜り抜けてきているということだ。このいかれた環境の中で、戦いの術を持ち、かつ常識的な人間と最初に出会えたことは、箙にとっては幸いだった。
「元刑事って話だけど、どうして異動を? 違法捜査でもバレた?」
「こっちは詮索しないのに、そっちは詮索してくるのかよ。あと、違法捜査前提なの止めろ」
「詮索出来る時にしておかないと損じゃない? もちろん早々死ぬつもりはないけど、こんな状況じゃ、五分後にどうなってるか分からないもの」
冗談めかした物言いとは裏腹に、真っ直ぐ箙を見据える嘉音の瞳は真剣そのものだった。ひょっとしたらこれは、人生最後の一期一会になるかもしれない。初対面だからと遠慮するつもりはなかった。
「一理ある。別に隠すようなことではないから素直に言うが……妻に癌が見つかって、治療に専念することになってな。妻をサポートするために、定時で帰れる部署への異動を希望したんだよ」
「そっか。それで現場を……奥さんのためにも、絶対に生きて帰らないといけないね」
「ああ。こんなとこで死んでいられない」
静かな頷きだが、力強い決意が込められていた。感情を共有するように、嘉音も頷きを返した。
「そういう君だって、帰らなといけない理由の一つや二つあるだろ」
「あれ。私に触発された?」
「関係者全員に聞いている形式的な質問だ」
「刑事が関係者にアリバイを尋ねる時みたいな物言いね」
冗談めかした箙の物言いに嘉音は相好を崩すと、過去に思いを馳せて一度、目を閉じた。昨日まで存在していた当たり前の日常が、もう遥か昔の出来事のように感じられる。
「独身だし、早くに両親を亡くして家族もいないけど、心残りがあるとすれば、現在進行形で取り掛かってる案件かな。突然拉致されたものだから、連携している弁護士事務所にまだ報告出来てない情報とかもあってね。裁判中の事案に関する内容だから、ひょっとしたらこの情報が依頼人の今後の人生を左右することになるかもしれない。そのことを思うと、こんなところで死んでいられないわ。戻って私の職務を果たさないと」
「身内や依頼人。誰かのために生きて戻らないといけないのはお互いに同じということだな」
好奇心に従って良かったと箙は感じた。お互いの信念を理解した。だからこそ最後まで生存を諦めない覚悟を感じ取れた。こういう人間とならきっと最後まで生き残ることが出来ると確信出来た。刑事の勘と言い換えてもいい。
「警察官と探偵か。私たち、最強のバディになれそうじゃない?」
「バディか。悪くない響きだ」
「二十四時間生き残って、このふざけたデスゲームの運営もとっ捕まえてやりましょう」
「そうだな。それぐらいの気概がないと生き残れるような気がしない」
新たな決意を胸に、バディの結成を祝ってお互いに握手を交わした。
現役の警察官や犯罪者を拉致し、デスゲームへと強制参加させる。運営はかなりの力を持つ組織であることは想像に難くない。警察官と探偵で結成した即席のバディがデスゲームを運営する謎の組織を追い詰める。最初の目標としては申し分ない。
※※※
「警察官と探偵か。これまた面白い組み合わせだ。配置は完全にランダムだったはずだが、運命は何とも面白い人材同士を引き合わせてくれる」
箙と嘉音のやり取りをモニターしていた面繋は、改めて二人のプロフィールへと目を通していた。
箙光誠。三十九歳。
警視庁捜査一課の刑事として長年、凶悪犯罪の捜査に従事。妻が癌を患い入院したことをきっかけに、妻をサポートするために、定時での退勤が可能な部署への異動を希望している。上記の理由に加え、急増する凶悪犯罪と後手に回る捜査とのギャップに、刑事としてのモチベーションを失っていたことも、異動を決意した一因となっている。捜査一課きっての武闘派としても知られ、大立ち回りの末に犯人を確保した逸話は数知れず。
四方手嘉音。三十二歳。
四方手探偵事務所所長。一般向けの人探しや内偵調査の他、連携する靭法律事務所からの依頼を受け、弁護依頼に関連した調査を行っている。過去に調査中に暴漢による襲撃を受けたことがあるが、持ち前の戦闘能力と危機回避能力によって事なきを得ている。
警察官と探偵。異なる立場だがそれぞれが多くの事件と向き合い、その過程で数多の修羅場を潜り抜けている。豊富な経験値と真実を明らかにせんとする正義感を持ち合わせた二人の出会い。全参加者の中で最も実直なバディの誕生であった。
「我々を捕まえる気満々のようですが、大丈夫でしょうか?」
研究員の総角が面繋の顔色を伺う。今回の壮大な実験に際して入念な準備が進められ、参加者の拉致等も一切の証拠を残さず適切に処理されている。足がつくことは考えにくいし、組織は警察関係者にも顔が利く。デスゲームの参加者たちに何が起ころうとも、彼らはあくまでも通常の行方不明者と同じ扱いになる。
しかし、そうだとは分かっていても、本気で組織の根幹に辿り着くのではと思わせるだけの熱量と実績が二人には備わっていた。例え正攻法ではなくとも、このデスゲームこと壮大な実験を白日の元に晒すのではないか? 総角は一抹の不安を覚えずにはいられなかった。
「その時はその時だ。彼らが生き延びた末に我々を告発してみせたなら、それもまた運命というものだよ」
「主任。本気で言っていますか?」
「私はいつだって本気だよ。この先、何が起きるかなんて誰にも分からない。彼らはもちろん。私や君だってね」
面繋いつだって冗談めかした口調であり、職場での雑談も実験で残酷な光景をモニターしている最中であっても、その飄々とした様子は変わらない。総角が面繋と一緒にプロジェクトに関わることになって三年になるが、一度だって彼の本心を垣間見たことはない。本気という枕詞には一切の説得力は感じられなかった。
0
あなたにおすすめの小説
終焉列島:ゾンビに沈む国
ねむたん
ホラー
2025年。ネット上で「死体が動いた」という噂が広まり始めた。
最初はフェイクニュースだと思われていたが、世界各地で「死亡したはずの人間が動き出し、人を襲う」事例が報告され、SNSには異常な映像が拡散されていく。
会社帰り、三浦拓真は同僚の藤木とラーメン屋でその話題になる。冗談めかしていた二人だったが、テレビのニュースで「都内の病院で死亡した患者が看護師を襲った」と報じられ、店内の空気が一変する。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
視える私と視えない君と
赤羽こうじ
ホラー
前作の海の家の事件から数週間後、叶は自室で引越しの準備を進めていた。
「そろそろ連絡ぐらいしないとな」
そう思い、仕事の依頼を受けていた陸奥方志保に連絡を入れる。
「少しは落ち着いたんで」
そう言って叶は斗弥陀《とみだ》グループが買ったいわく付きの廃病院の調査を引き受ける事となった。
しかし「俺達も同行させてもらうから」そう言って叶の調査に斗弥陀の御曹司達も加わり、廃病院の調査は肝試しのような様相を呈してくる。
廃病院の怪異を軽く考える御曹司達に頭を抱える叶だったが、廃病院の怪異は容赦なくその牙を剥く。
一方、恋人である叶から連絡が途絶えた幸太はいても立ってもいられなくなり廃病院のある京都へと向かった。
そこで幸太は陸奥方志穂と出会い、共に叶の捜索に向かう事となる。
やがて叶や幸太達は斗弥陀家で渦巻く不可解な事件へと巻き込まれていく。
前作、『夏の日の出会いと別れ』より今回は美しき霊能者、鬼龍叶を主人公に迎えた作品です。
もちろん前作未読でもお楽しみ頂けます。
※この作品は他にエブリスタ、小説家になろう、でも公開しています。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
本能寺からの決死の脱出 ~尾張の大うつけ 織田信長 天下を統一す~
bekichi
歴史・時代
戦国時代の日本を背景に、織田信長の若き日の物語を語る。荒れ狂う風が尾張の大地を駆け巡る中、夜空の星々はこれから繰り広げられる壮絶な戦いの予兆のように輝いている。この混沌とした時代において、信長はまだ無名であったが、彼の野望はやがて天下を揺るがすことになる。信長は、父・信秀の治世に疑問を持ちながらも、独自の力を蓄え、異なる理想を追求し、反逆者とみなされることもあれば期待の星と讃えられることもあった。彼の目標は、乱世を統一し平和な時代を創ることにあった。物語は信長の足跡を追い、若き日の友情、父との確執、大名との駆け引きを描く。信長の人生は、斎藤道三、明智光秀、羽柴秀吉、徳川家康、伊達政宗といった時代の英傑たちとの交流とともに、一つの大きな物語を形成する。この物語は、信長の未知なる野望の軌跡を描くものである。
セーラー服美人女子高生 ライバル同士の一騎討ち
ヒロワークス
ライト文芸
女子高の2年生まで校内一の美女でスポーツも万能だった立花美帆。しかし、3年生になってすぐ、同じ学年に、美帆と並ぶほどの美女でスポーツも万能な逢沢真凛が転校してきた。
クラスは、隣りだったが、春のスポーツ大会と夏の水泳大会でライバル関係が芽生える。
それに加えて、美帆と真凛は、隣りの男子校の俊介に恋をし、どちらが俊介と付き合えるかを競う恋敵でもあった。
そして、秋の体育祭では、美帆と真凛が走り高跳びや100メートル走、騎馬戦で対決!
その結果、放課後の体育館で一騎討ちをすることに。
【完結】年収三百万円台のアラサー社畜と総資産三億円以上の仮想通貨「億り人」JKが湾岸タワーマンションで同棲したら
瀬々良木 清
ライト文芸
主人公・宮本剛は、都内で働くごく普通の営業系サラリーマン。いわゆる社畜。
タワーマンションの聖地・豊洲にあるオフィスへ通勤しながらも、自分の給料では絶対に買えない高級マンションたちを見上げながら、夢のない毎日を送っていた。
しかしある日、会社の近所で苦しそうにうずくまる女子高生・常磐理瀬と出会う。理瀬は女子高生ながら仮想通貨への投資で『億り人』となった天才少女だった。
剛の何百倍もの資産を持ち、しかし心はまだ未完成な女子高生である理瀬と、日に日に心が枯れてゆくと感じるアラサー社畜剛が織りなす、ちぐはぐなラブコメディ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる