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第十一章
第254話 ストーンヘンジ
しおりを挟むアーガスらが《ジャガー町》を訪れ、北条との模擬戦をしてから幾日かが経過した。
目的を果たしたアーガスらはすでに《鉱山都市グリーク》へと帰還し、エスティルーナもダンジョンに本格的に潜る事なく、アーガス同様にゴールドルの元へと戻っている。
一方信也達『プラネットアース』は、アーガスが拠点を訪れた次の日には全員無事に帰ってきていた。
そして北条が張り切って魔改造した拠点を前に、一同は仰天する。
いつの間に周囲の空堀には水が張られ始め、拠点の内部には水を生み出す謎の巨大オブジェと、そこから通じる小川のようなものが拠点内に張り巡らされていたのだ。
とりわけ、最初の壁を作っていた段階を知らないロベルト兄妹の驚きようは尋常ではなかった。
拠点を北条らが魔法で築いたというのは聞いていたのだが、こんな短期間に巨大な建造物を作れるとは思っていなかったようだ。
なので巨大な噴水オブジェを見て、「え、これ何なんッスか?」、「何でこんな高く作ったんッスか?」などと、ロベルトが北条を質問攻めしていた。
どうやらロベルトは無駄に規模の大きいこの巨大オブジェ――『ウェディングウォーター』と名づけられたオブジェが気に入ったらしい。
『サムライトラベラーズ』の由里香を除く、他の面々にはイマイチ通じていなかったロマン建築に興奮しているロベルトを見て、北条も満足げな顔をしている。
カタリナの方は規模の大きさに驚いてはいるものの、巨大構造物に対して魅力は感じないらしく、陽子らと同じような冷めた反応をしている。
このウェディングウォーターを見て興奮しているのは、北条の他には由里香、ロベルト、龍之介くらいだ。
それから休日を挟み、再びレイドパーティーを組んでレイドエリアに行くことが決定した。
『プラネットアース』は、北条らがグリーク辺境伯の予定に合わせて拠点に待機している間に、無事に鉱山エリアの二十層まで到達していた。
そしてその先にある迷宮碑に拠点登録も既にしてある。
アーガスとの謁見……という感じとはまた少し違っていたが。とにかく、そちらの用件も片付いたので、再び全員でのレベル上げやドロップ収集の為に、一行はサルカディアへと向かう。
前回の探索中、エリアの切り替わった十八層で登録をしてあるので、今回は一気にそこから探索が可能だ。
今回は最初の頃に決めていた、「一週間ほど探索したら、切り上げて一度戻る」という方針を崩すことにした。
フィールドタイプのダンジョンとなると、一層ごとの広さも相当なもので、短期間での探索ではなかなか先へと進めない。
迷宮タイプのダンジョンの場合でも、この先いつか訪れるであろう難度の高いエリアともなれば、進むのに時間のかかる場所も出てくる事もある。
そのため休日はしっかりと取るが、ダンジョン探索の日程は今後は不定期にしていく事が話し合いで決定されていた。
そうしてじっくり腰を据えてのレイドエリア探索は大いに進んだ。
どうやらこのエリアでは、主にゴブリン系と属性ウルフ系。それからアーミーアント系の三種の魔物がよく出てくるようで、時折巨大イノシシの魔物「ビッグボア」や、馬の魔物である「トライバルホース」などが出てくるようだ。
魔物のランクとしてはF~Dランクといった所か。
十八層などの、エリア最初の階層ではDランクの魔物の割合は少な目で、比較的F~Eの魔物が多い。
そして、階層を下るにつれて魔物のランクの平均は高くなっていく。
ただそれでもCランクの魔物の姿は見えないので、今の所この草原と森の広がるエリアでは、そこまで苦戦する事なく先へと進むことが出来ていた。
「お! またあったぜ!」
そう言って龍之介が草原に生えていた樹を指さす。
そこにはリンゴのような形状の実が幾つもなっている樹が、幾つか伸びていた。
まだ実は赤くなっておらず緑っぽい色をしているが、この状態が一番美味しく食べられる頃合いらしい。
味はリンゴがベースではあるが、中は水分が多くてナシのような歯ごたえをしていて、味も少しそれっぽい。
この世界でリンゴといったらこれが普通なので、ロベルトらは何も疑問に思ってはいない様子だ。
このリンゴに限らず、フィールドエリアでは様々な自然の恵みを得られる。
植物だけに限らず、鳥や動物。魚なども存在するので、火山エリアだとか氷山エリアなどでない限り、食べ物などを現地調達する事も可能だ。
ダンジョンの魔物はフィールドの魔物とは違い、どうやら食事を取る事もないようなので、こうした動植物が捕食される心配もない。
すでに北条たち『サムライトラベラーズ』は、鉱山エリアの分岐先にある大森林エリアにおいて、コショウの木やコーヒーの木などを発見している。
これらはまだ少量を試しに加工した段階で、採取したものの大半は陽子の"アイテムボックス"に入ったままだ。
これに関しては、そのうち拠点内に加工する場所を用意したいと、全員の意見が一致している。
この採取活動も、今回の目的のひとつだった。
何せ、陽子だけでなく北条も"アイテムボックス"を使用できるのだ。
ロベルト兄妹以外の面子だって、中に入れたモノの時間が停止する〈魔法の小袋〉を持っている。
普通の冒険者であれば、持ち運べる荷物の限界のせいで、そうした自然物はその場で消化する程度しか採取しない。
しかし彼らは心置きなく採取に励むことが出来る。
道中では北条が"解析"スキルを常に色々なものに対して使用しており、それによって食べられるものや有用なものなどを判定する事が出来る。
おかげで北条の"植物知識"のスキルはぐんぐんと成長を見せていった。
▽△▽△
「ん、あれは何ッスかね?」
先頭を歩いていたロベルトが、視界の奥に捕らえたものを見て言った。
あれから十日近くかけて探索を続けていた一行は、他の冒険者たちの最深記録とされる二十一層を超え、二十二層に達していた。
ここも相変わらずこれまでと同じようなフィールドのエリアで、全体的に見ると草原と森が半々くらいの割合で存在している感じだった。
……のだが、ここにきてこれまでとは違うナニカをロベルトは発見したらしい。
「どれどれ……」
龍之介を筆頭に、他のメンバーも先へと進む。
現在いる所は草原地帯で、所々に木が生えているなだらかな地形の場所だ。
だが若干は起伏も存在していて、ロベルトの発見したナニカは少し窪んだ盆地状になっている場所にででんと存在を主張していた。
「人工物……のようだけど」
それを見た陽子がそう発言するが、本人もそれが実際に人の手によって作られたものだとは思ってはいなかった。
「ぐるりと周囲を囲っているようだが、中に特に何かある訳でも……いや、中央に何かあるな」
そういった信也の視線の先。
そこにはまるでストーンヘンジのような、石の柱が円状にぐるりと取り囲む構造物があった。
それぞれの柱の上部は石の梁で繋がれており、柱と柱の間をくぐって中に入れるような作りになっている。
屋根などはなく、まるで古代の天文的装置のような趣がある。
そうして柱の間をくぐった先。円状に柱が囲まれたその中心点には、何やら円状の石床で出来た、舞台のようなものが見えた。
といってもまだ距離が離れているので、微かにそこだけ草が生えていないのが分かる程度だ。
特に立体的なオブジェもないのだが、何かあるとしたらここが一番怪しいだろう。
「北条さん、どうするんですか?」
「なるほどなぁ、こうなっていた訳かぁ」
咲良が端的に尋ねる。
すると北条は納得したといった感じで言った。
「どういう事ッスか?」
「どうも一か所だけ、魔物が寄り付かない場所があるのを、前々から感知していたんだがぁ」
そう言って北条は周囲を見渡した。
「……今もこの近くには魔物がいないらしい。ダンジョンでは所々に番人が宝箱や特定の場所を守っている事があるらしいがぁ、あれは恐らく領域守護者と戦う場所だろう」
「領域守護者、ね。確かに番人の守る場所には他の魔物が寄って来る事もあるけど、領域守護者となると他の魔物が寄り付かない……もしくは、周辺の魔物を弾くような仕掛けがあるものね」
冒険者として先輩であるカタリナも、北条の説明に納得したようだ。
二人の話を聞いて、龍之介が水を得た魚のように言う。
「おっしゃ! 初レイドボス戦かっ! やっぱめちゃタフなのか!?」
元々他のメンバーにはさほど好戦的な性格の人はおらず、新しく加入したロベルト兄妹も戦いたがりという訳ではない。
という訳でひとりはしゃぐ龍之介であるが、確かにこの先へ進むならここは通らねばならないのだろう。
だがその前にするべき事があった。盛り上がっている龍之介に、信也がその事を告げる。
「領域守護者に挑むにしても、まずは昼食を取って、少し休憩を入れてからだな」
そういう事になった。
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