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住処
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***
音芽は車の免許は持っていたけれど、どうにもテンパるところのあるやつで、なかなか一人で運転することができないタイプだった。
親御さんもそれが心配だったみたいで、音芽にはマイカーを持たせたくないんだ、と俺にもよくこぼした。
「できたら温和くんがあの子のこと、気にかけてもらえたら嬉しいんだけど」
奏芽はあてにならないから、と溜め息混じりに言われた時、俺は心の中で、頼まれなくてもそのつもりですって思ったりしたんだ。けど、実際親公認となると動きやすくて有難くもあるわけで。
俺は「もちろん、そのつもりですよ」と答えながら、「彼女、仕事を始めたら実家から通わせるんですか?」と探りを入れてみた。
「通えない距離ではないと思いますけど、家から5駅分は離れているし、マイカー通勤のできない音芽ちゃんは公共の交通機関しか利用できませんよね? ラッシュ時ともなると小さな彼女は揉みくちゃにされそうで心配です」
何の裏心もない風にそんな風に付け加えたら、音芽のお母さんが「それ、私も心配してるの」と話に乗ってくれて、内心「しめた!」と思ったりしたんだ。
「お父さんがね、奏芽の傍でなら一人暮らし、認めるんだけどってうるさくて。なのに奏芽ったらあの性格でしょう? 絶対うんって言わない気がして……困ってるの。――そうだ。ねえ、温和くんのアパートに空き部屋とかない? 貴方がそばにいるなら多分お父さんも納得すると思うのよ」
ほら、あの人、音芽を溺愛してるでしょう?
俺が音芽のお母さんとそんな話をしたのは、音芽の内定が決まった年の暮れの頃だった。
俺は、とりあえず奏芽に打診してみることにした。
***
「なあ奏芽、音芽の一人暮らしの条件の話、聞いたか?」
聞けば『ああ、なんか親父が一緒に住んでやれってうるせぇんだわ』と電話口から溜め息混じりの声がする。
『身内が近くにいたらさ、親に色々チクられそうで絶対お断りって感じなんだよね。まぁ、だからさ、ここだけの話、俺、高いところに住もうと思って準備中なんだよ。音芽じゃ家賃払えそうにねぇようなところ。それなら俺は拒否してねぇけど音芽が首を縦に振らないんだから仕方ないだろ?って俺、言えるじゃん?』
とか……。
よくまぁそんなこと思いつくよ、お前。
そもそも奏芽のやつ、チクられて困ることをしているんだろうか?と思いつつ。
そこで、学生時代に奏芽から聞かされた色んな武勇伝?を思い出して、そういうことが出来なくなるからか、と妙に納得してしまう。
でも、だったら逆に好都合だ。
「じゃあ、音芽は俺が引き取るんで文句ないな?」
聞けば、喉の奥で押し殺したような笑い声を立てられた。
『どうぞどうぞ。っていうかハル、お前も難儀な性格だよな。俺だったらもっと欲望に忠実にいくけどなぁ~』
って余計なお世話だ。
音芽は車の免許は持っていたけれど、どうにもテンパるところのあるやつで、なかなか一人で運転することができないタイプだった。
親御さんもそれが心配だったみたいで、音芽にはマイカーを持たせたくないんだ、と俺にもよくこぼした。
「できたら温和くんがあの子のこと、気にかけてもらえたら嬉しいんだけど」
奏芽はあてにならないから、と溜め息混じりに言われた時、俺は心の中で、頼まれなくてもそのつもりですって思ったりしたんだ。けど、実際親公認となると動きやすくて有難くもあるわけで。
俺は「もちろん、そのつもりですよ」と答えながら、「彼女、仕事を始めたら実家から通わせるんですか?」と探りを入れてみた。
「通えない距離ではないと思いますけど、家から5駅分は離れているし、マイカー通勤のできない音芽ちゃんは公共の交通機関しか利用できませんよね? ラッシュ時ともなると小さな彼女は揉みくちゃにされそうで心配です」
何の裏心もない風にそんな風に付け加えたら、音芽のお母さんが「それ、私も心配してるの」と話に乗ってくれて、内心「しめた!」と思ったりしたんだ。
「お父さんがね、奏芽の傍でなら一人暮らし、認めるんだけどってうるさくて。なのに奏芽ったらあの性格でしょう? 絶対うんって言わない気がして……困ってるの。――そうだ。ねえ、温和くんのアパートに空き部屋とかない? 貴方がそばにいるなら多分お父さんも納得すると思うのよ」
ほら、あの人、音芽を溺愛してるでしょう?
俺が音芽のお母さんとそんな話をしたのは、音芽の内定が決まった年の暮れの頃だった。
俺は、とりあえず奏芽に打診してみることにした。
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「なあ奏芽、音芽の一人暮らしの条件の話、聞いたか?」
聞けば『ああ、なんか親父が一緒に住んでやれってうるせぇんだわ』と電話口から溜め息混じりの声がする。
『身内が近くにいたらさ、親に色々チクられそうで絶対お断りって感じなんだよね。まぁ、だからさ、ここだけの話、俺、高いところに住もうと思って準備中なんだよ。音芽じゃ家賃払えそうにねぇようなところ。それなら俺は拒否してねぇけど音芽が首を縦に振らないんだから仕方ないだろ?って俺、言えるじゃん?』
とか……。
よくまぁそんなこと思いつくよ、お前。
そもそも奏芽のやつ、チクられて困ることをしているんだろうか?と思いつつ。
そこで、学生時代に奏芽から聞かされた色んな武勇伝?を思い出して、そういうことが出来なくなるからか、と妙に納得してしまう。
でも、だったら逆に好都合だ。
「じゃあ、音芽は俺が引き取るんで文句ないな?」
聞けば、喉の奥で押し殺したような笑い声を立てられた。
『どうぞどうぞ。っていうかハル、お前も難儀な性格だよな。俺だったらもっと欲望に忠実にいくけどなぁ~』
って余計なお世話だ。
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