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住処
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***
梅雨に入った初夏の夕暮れ時。
そろそろ陽が落ちようかという時分になって、音芽が部屋を出る気配がした。
(女の子がこんな時間にどこ行くんだよ。危ねぇだろ)
とは思ったけれど、さすがにそこまで干渉する権限は俺にはない。
音芽が階段を降りていく足音が遠ざかっていくのを感じながら、俺はどうにも落ち着かなくて。
部屋のなかを右に行ったり左に行ったりして散々迷った挙句、どうにも堪えきれなくなって、取るものも取りあえず家を飛び出した。
(音芽のやつ、どこ行った?)
下まで降りて立ち止まってから、考えを巡らせる。
こんなことなら、音芽が鍵を掛けている最中に、たまたまを装って俺も外に出て、「どこ行くんだ?」とか話しかければよかった。そうすれば、音芽の答えに臨機応変に対応する形で、「俺もそっちのほうに用があるから」とか言えたのに。
まぁ、実際出来ないから苦労するわけだけどな。
恐らく音芽のことだからコンビニかスーパーに向かったはずだ。
ここは、立地的に小学校にも近いが、それらの店舗とも割と近いところにある。
***
散々走り回って、俺は結局、曲がり角を曲がった途端、出会い頭に音芽とぶつかる羽目になってしまった。
しかもあのバカ、一度体勢を持ち直した後で、再度よろめいて転ぶとか……逆に器用すぎて有り得ねぇだろ!
シフォン素材のスカートが、音芽が転んだと同時にめくれ上がって、下着が見えたときにはどうしようかと思った。
音芽ぐらいの年齢の女性らしく、レースのショーツかと思いきや、パンチの効いた可愛いパンダ柄とか、逆にびっくりして余計ドキドキしちまったじゃねぇか。
音芽の可愛いヒップラインに釘付けになってしまった俺を咎めるように、彼女の尻から俺を見上げてくる、ポップな絵柄のパンダの視線に、俺は戸惑った。
こう、予想の斜め上から攻められると、どうしていいか分からなくなるもので。
「オトメとかお前、ホント名前負けだよな? 24にもなって、もっと色気のあるパンツ履けねぇのかよ」
……って、そうじゃねぇだろっ、俺。
そこのパンダよ、不躾にもジロジロ見てしまって悪かったな、許せ、と言うのがその時の本音で。
けど、当たり前だけどそんなこと言えるはずもなくて。
そもそも、前方不注意でぶつかってしまったことを謝りたかったし、路上にへたり込んだままの音芽をすぐにでも抱き起こしてやりたかったくせに、好きな女の下着を見てしまった動揺と、素直でない性格が災いして、あろうことか思ってもいないことを口走ってしまっていた。
「温和のバカっ! サイテー!」
と、真っ赤な顔をして音芽が怒ったのも無理はないのだ。
それなのに、彼女がその愛らしい手を振り上げた途端、その攻撃を甘んじて受けることも出来たはずなのに……俺は彼女のその手に触れたい衝動にかられて思わず握ってしまった。――結果、余計に怒らせてしまう。
なのに俺は怒りに震える音芽の小さな手を、やっぱり離したくなくて。
結局、彼女の手首を掴んだまま、グイッと音芽をすぐ傍に引き寄せると「俺の綺麗な顔に傷つけたらお前、明日から職員室で針の筵の上に座ることになるぜ? 覚悟は出来てんのか」とか言ってしまっていた。
おい、バカ。どの口がほざくんだよ。照れ隠しにもほどがあんだろ。
俺の心裏腹な挑発に、音芽が目に涙を浮かべて睨みつけてきた。
ヤバイ。
涙目の強い視線。――凶悪に可愛い……。
梅雨に入った初夏の夕暮れ時。
そろそろ陽が落ちようかという時分になって、音芽が部屋を出る気配がした。
(女の子がこんな時間にどこ行くんだよ。危ねぇだろ)
とは思ったけれど、さすがにそこまで干渉する権限は俺にはない。
音芽が階段を降りていく足音が遠ざかっていくのを感じながら、俺はどうにも落ち着かなくて。
部屋のなかを右に行ったり左に行ったりして散々迷った挙句、どうにも堪えきれなくなって、取るものも取りあえず家を飛び出した。
(音芽のやつ、どこ行った?)
下まで降りて立ち止まってから、考えを巡らせる。
こんなことなら、音芽が鍵を掛けている最中に、たまたまを装って俺も外に出て、「どこ行くんだ?」とか話しかければよかった。そうすれば、音芽の答えに臨機応変に対応する形で、「俺もそっちのほうに用があるから」とか言えたのに。
まぁ、実際出来ないから苦労するわけだけどな。
恐らく音芽のことだからコンビニかスーパーに向かったはずだ。
ここは、立地的に小学校にも近いが、それらの店舗とも割と近いところにある。
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散々走り回って、俺は結局、曲がり角を曲がった途端、出会い頭に音芽とぶつかる羽目になってしまった。
しかもあのバカ、一度体勢を持ち直した後で、再度よろめいて転ぶとか……逆に器用すぎて有り得ねぇだろ!
シフォン素材のスカートが、音芽が転んだと同時にめくれ上がって、下着が見えたときにはどうしようかと思った。
音芽ぐらいの年齢の女性らしく、レースのショーツかと思いきや、パンチの効いた可愛いパンダ柄とか、逆にびっくりして余計ドキドキしちまったじゃねぇか。
音芽の可愛いヒップラインに釘付けになってしまった俺を咎めるように、彼女の尻から俺を見上げてくる、ポップな絵柄のパンダの視線に、俺は戸惑った。
こう、予想の斜め上から攻められると、どうしていいか分からなくなるもので。
「オトメとかお前、ホント名前負けだよな? 24にもなって、もっと色気のあるパンツ履けねぇのかよ」
……って、そうじゃねぇだろっ、俺。
そこのパンダよ、不躾にもジロジロ見てしまって悪かったな、許せ、と言うのがその時の本音で。
けど、当たり前だけどそんなこと言えるはずもなくて。
そもそも、前方不注意でぶつかってしまったことを謝りたかったし、路上にへたり込んだままの音芽をすぐにでも抱き起こしてやりたかったくせに、好きな女の下着を見てしまった動揺と、素直でない性格が災いして、あろうことか思ってもいないことを口走ってしまっていた。
「温和のバカっ! サイテー!」
と、真っ赤な顔をして音芽が怒ったのも無理はないのだ。
それなのに、彼女がその愛らしい手を振り上げた途端、その攻撃を甘んじて受けることも出来たはずなのに……俺は彼女のその手に触れたい衝動にかられて思わず握ってしまった。――結果、余計に怒らせてしまう。
なのに俺は怒りに震える音芽の小さな手を、やっぱり離したくなくて。
結局、彼女の手首を掴んだまま、グイッと音芽をすぐ傍に引き寄せると「俺の綺麗な顔に傷つけたらお前、明日から職員室で針の筵の上に座ることになるぜ? 覚悟は出来てんのか」とか言ってしまっていた。
おい、バカ。どの口がほざくんだよ。照れ隠しにもほどがあんだろ。
俺の心裏腹な挑発に、音芽が目に涙を浮かべて睨みつけてきた。
ヤバイ。
涙目の強い視線。――凶悪に可愛い……。
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