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大誤算
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リビングで、音芽に貸したものと対になったズボンと、適当に引っ張り出したTシャツに身を包んだ俺は、ソワソワした気持ちで音芽がやってくるのを待つ。
ややして、脱衣所の扉が開く音がして……。
歩けないようなら助けに行くべきかと思ったが、声がかからないところをみると何とか自力で歩いているんだろうか。
ズザザ、ズザザ……と壁をするような音が近づいてくるので、壁にすがりながらヨロヨロと前進しているのかもしれない。
その音に時折ガサガサとビニールが擦れる音もするので、手にはちゃんと濡れた服を入れた袋も持っているようだ。
それにしても――。
(あのバカ。何で俺に助け求めないんだよ)
思うと、何だかモヤモヤしてしまう。
でも、助けを求められても正直何食わぬ顔で音芽を抱き上げてやれる自信もない俺は、結局彼女のことを気にしながらもリビングから動けずにいた。
心中は決して穏やかじゃないくせに、とりあえず余裕あるふりをしてソファで足を組むと、腕組みをして扉をじっと睨みつける。
ややして音芽がリビングの扉を開けて入ってきて……俺はさも今気付いた、と言わんばかりの態度でおもむろに立ち上がって彼女に手を貸した。
「あ、ありがとう」
言いながらも何故か俺から距離を取ろうとする音芽に違和感を覚える。
その態度にまさかとは思うが思わず確認せずにはいられない。
「下着、上下とも取ったのか」
俺はブラが濡れている可能性は考えていたけれど、もしパンツのほうも濡れてしまっていたんだとしたら、その可能性は十分にあるわけで。
だとしたら、ズボンを渡してねぇの、マズ過ぎるだろ。
出来れば、「バカなんじゃないのっ。そんなことあるわけないでしょ! エッチ!」とか否定して欲しかったんだが――。
「や、やだっ。バカ温和《はるまさ》! そういうのは気付いてても言わないのが礼儀でしょう!?」
音芽はそう言って、俺を突き飛ばすようにして身体を離すと、こちらを睨み付けてきた。
ちょっと待て、お前っ! それ、――マジか。
想像しなくてもいいのに、何も身につけていない音芽が、俺の服を素肌にじかに着てすぐそこにいると思うと、結構くるものがあって――。
ヤバい。めちゃくちゃ興奮してきた。
っていうかさすがにこれは、照れるだろっ。
俺は自分の顔が明らかに赤くなっているのを火照りから感じて、慌てて彼女から視線を逸らす。
そうしながら苦し紛れに
「お、お前こそ、そこはうまく誤魔化すのが礼儀だろ……っ」
って言ったら、腹を立てた音芽が俺からさらに距離を取ろうと後ずさって、バランスを崩して――。
「ひゃっ」
ノーブラはともかくノーパンで……!
しかも借り物の丈の短い服で転ぶとか……!
有り得ねぇからっ!
どんだけ俺の理性を試す気なんだ、この女!
そう思ったら無性に腹が立って、俺は音芽を抱きとめながら思わず本音を駄々漏らしてしまう。
「お前、本当バカなのかっ!? 男に向かって下着つけてないの公言した挙げ句、そいつの目の前で転びそうになるとかっ、女としての自覚なさすぎだろっ! それともあれか――。そんなん出来るぐらい、俺はお前にとって兄貴でしかないのかよ……っ!」
かろうじて最後の一文だけは声を小さく低めてみたものの、音芽が瞳を見開いたのを見て、絶対聞かれた、と思った。
詰んだ――。
リビングで、音芽に貸したものと対になったズボンと、適当に引っ張り出したTシャツに身を包んだ俺は、ソワソワした気持ちで音芽がやってくるのを待つ。
ややして、脱衣所の扉が開く音がして……。
歩けないようなら助けに行くべきかと思ったが、声がかからないところをみると何とか自力で歩いているんだろうか。
ズザザ、ズザザ……と壁をするような音が近づいてくるので、壁にすがりながらヨロヨロと前進しているのかもしれない。
その音に時折ガサガサとビニールが擦れる音もするので、手にはちゃんと濡れた服を入れた袋も持っているようだ。
それにしても――。
(あのバカ。何で俺に助け求めないんだよ)
思うと、何だかモヤモヤしてしまう。
でも、助けを求められても正直何食わぬ顔で音芽を抱き上げてやれる自信もない俺は、結局彼女のことを気にしながらもリビングから動けずにいた。
心中は決して穏やかじゃないくせに、とりあえず余裕あるふりをしてソファで足を組むと、腕組みをして扉をじっと睨みつける。
ややして音芽がリビングの扉を開けて入ってきて……俺はさも今気付いた、と言わんばかりの態度でおもむろに立ち上がって彼女に手を貸した。
「あ、ありがとう」
言いながらも何故か俺から距離を取ろうとする音芽に違和感を覚える。
その態度にまさかとは思うが思わず確認せずにはいられない。
「下着、上下とも取ったのか」
俺はブラが濡れている可能性は考えていたけれど、もしパンツのほうも濡れてしまっていたんだとしたら、その可能性は十分にあるわけで。
だとしたら、ズボンを渡してねぇの、マズ過ぎるだろ。
出来れば、「バカなんじゃないのっ。そんなことあるわけないでしょ! エッチ!」とか否定して欲しかったんだが――。
「や、やだっ。バカ温和《はるまさ》! そういうのは気付いてても言わないのが礼儀でしょう!?」
音芽はそう言って、俺を突き飛ばすようにして身体を離すと、こちらを睨み付けてきた。
ちょっと待て、お前っ! それ、――マジか。
想像しなくてもいいのに、何も身につけていない音芽が、俺の服を素肌にじかに着てすぐそこにいると思うと、結構くるものがあって――。
ヤバい。めちゃくちゃ興奮してきた。
っていうかさすがにこれは、照れるだろっ。
俺は自分の顔が明らかに赤くなっているのを火照りから感じて、慌てて彼女から視線を逸らす。
そうしながら苦し紛れに
「お、お前こそ、そこはうまく誤魔化すのが礼儀だろ……っ」
って言ったら、腹を立てた音芽が俺からさらに距離を取ろうと後ずさって、バランスを崩して――。
「ひゃっ」
ノーブラはともかくノーパンで……!
しかも借り物の丈の短い服で転ぶとか……!
有り得ねぇからっ!
どんだけ俺の理性を試す気なんだ、この女!
そう思ったら無性に腹が立って、俺は音芽を抱きとめながら思わず本音を駄々漏らしてしまう。
「お前、本当バカなのかっ!? 男に向かって下着つけてないの公言した挙げ句、そいつの目の前で転びそうになるとかっ、女としての自覚なさすぎだろっ! それともあれか――。そんなん出来るぐらい、俺はお前にとって兄貴でしかないのかよ……っ!」
かろうじて最後の一文だけは声を小さく低めてみたものの、音芽が瞳を見開いたのを見て、絶対聞かれた、と思った。
詰んだ――。
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