33 / 198
目障りな男
2
しおりを挟む
視線の先、音芽が鶴見にフルフルと首を横に振るのが見える。
(お、音芽、偉いじゃねぇか)
鶴見に、まるで「これ以上は深追いするな」と線引きをするように軽く会釈をした音芽が、自分の席までの間に並ぶ、机や棚などを頼りに歩き始める。
俺はそれを、一見何食わぬ顔で見つめていたわけだが、本音を言うとすぐにでも手を貸してやりたくて。
けど――。
鶴見の申し出を断った音芽が、俺の手助けなら受け入れてくれるはずだという希望的観測と。
いや……でも、もしかしたら同じように断られるかもしれないという躊躇いがない交ぜになって、俺を席に貼り付ける。
そんな俺を横目に、よろよろと歩く音芽の後ろを鶴見が金魚のフンみたいに付き従って歩いているのが見えて、心ばかりどんどんささくれる。
(何で追い払わねぇんだよ、バカ音芽。睨むとか邪険にするとか……いくらでも出来んだろ)
実際には俺が「音芽が嫌がってんだろ、離れろよ」と言えたらいいだけなんだが、それが出来ないもどかしさで、怒りの矛先が音芽に向いてしまう。
段々彼女を見る目が険しくなって――気が付いたら睨むような鋭い目つきになっていた。
と、そこで戸惑った様子の音芽と一瞬目が合う。が、俺の視線に驚いたようにすぐに逸らされて。
(ああ、ホント、俺はバカだ)
音芽の今の視線、上手く受け止めたら助けに行く口実に出来たはずなのに。
ややして席までたどり着いた音芽が、
「あ、あのっ……荷物、有難う。……ございましたっ」
俺が無造作に音芽の机に置いておいたカバンを引き出しに仕舞いながら、恐る恐る礼を言ってくる。
完全にビビらせてるじゃねぇか、俺の馬鹿。
本当はものすごくお前のこと心配してるし、本音言うと今日は休ませたかったくらいなんだよ。
音芽の性格からして自分のクラスの子らを放置して休むとか。そういうのはできないと思ったから連れてきたけど……。
非現実的な願望を言わせてもらえばな。何なら俺も一緒に休んで付きっきりで面倒見たかったくらいだ。
「……鳥飼先生、今日は極力歩かないように過ごしてください。困った時は声かけてもらったら、俺がすぐサポートしに行きますので、遠慮なく言うように。朝礼で怪我のことと一緒にその旨話しますが、異論はないですね?」
諸々の思いが先走った結果、半ば命令するような口調になってしまった。
俺はつくづく口下手だと思う。
そんな俺に「はい」と従順に首肯する音芽。
おい音芽、少しは俺に盾ついたって構わねぇんだぞ?
とか思っていたら、突然鶴見がガタッという音を立てて立ち上がって、俺は何事かと思わされる。
「あ、あのっ。それだったら僕のことも遠慮なく頼ってください! すぐ駆け付けますのでっ!」
俺の提案に乗っかる形で、自分も!と名乗りを上げやがった鶴見に、俺は内心やられた、と思った。
奴のクラスも俺のクラスも、音芽の受け持ちクラスの教室を挟む形で両隣に位置している。
確かに条件的には俺と変わらないのだから、そう主張したくなるのもわかる。
分かるが――。
ふと音芽を見ると、俺が手伝いを持ちかけた時より嬉しそうに見えて。
それどころか。
「あ、あのっ、すごく助かりま――……」
にっこり笑って俺よりも明らかに鶴見寄りに礼を言おうとしやがった。
なぁ、バカ音芽。お前がどういう気持ちだろうと、さすがにコレ、許すわけにはいかねぇから。
公私混同だって承知で……学年主任権限発動させてもらうわ。
(お、音芽、偉いじゃねぇか)
鶴見に、まるで「これ以上は深追いするな」と線引きをするように軽く会釈をした音芽が、自分の席までの間に並ぶ、机や棚などを頼りに歩き始める。
俺はそれを、一見何食わぬ顔で見つめていたわけだが、本音を言うとすぐにでも手を貸してやりたくて。
けど――。
鶴見の申し出を断った音芽が、俺の手助けなら受け入れてくれるはずだという希望的観測と。
いや……でも、もしかしたら同じように断られるかもしれないという躊躇いがない交ぜになって、俺を席に貼り付ける。
そんな俺を横目に、よろよろと歩く音芽の後ろを鶴見が金魚のフンみたいに付き従って歩いているのが見えて、心ばかりどんどんささくれる。
(何で追い払わねぇんだよ、バカ音芽。睨むとか邪険にするとか……いくらでも出来んだろ)
実際には俺が「音芽が嫌がってんだろ、離れろよ」と言えたらいいだけなんだが、それが出来ないもどかしさで、怒りの矛先が音芽に向いてしまう。
段々彼女を見る目が険しくなって――気が付いたら睨むような鋭い目つきになっていた。
と、そこで戸惑った様子の音芽と一瞬目が合う。が、俺の視線に驚いたようにすぐに逸らされて。
(ああ、ホント、俺はバカだ)
音芽の今の視線、上手く受け止めたら助けに行く口実に出来たはずなのに。
ややして席までたどり着いた音芽が、
「あ、あのっ……荷物、有難う。……ございましたっ」
俺が無造作に音芽の机に置いておいたカバンを引き出しに仕舞いながら、恐る恐る礼を言ってくる。
完全にビビらせてるじゃねぇか、俺の馬鹿。
本当はものすごくお前のこと心配してるし、本音言うと今日は休ませたかったくらいなんだよ。
音芽の性格からして自分のクラスの子らを放置して休むとか。そういうのはできないと思ったから連れてきたけど……。
非現実的な願望を言わせてもらえばな。何なら俺も一緒に休んで付きっきりで面倒見たかったくらいだ。
「……鳥飼先生、今日は極力歩かないように過ごしてください。困った時は声かけてもらったら、俺がすぐサポートしに行きますので、遠慮なく言うように。朝礼で怪我のことと一緒にその旨話しますが、異論はないですね?」
諸々の思いが先走った結果、半ば命令するような口調になってしまった。
俺はつくづく口下手だと思う。
そんな俺に「はい」と従順に首肯する音芽。
おい音芽、少しは俺に盾ついたって構わねぇんだぞ?
とか思っていたら、突然鶴見がガタッという音を立てて立ち上がって、俺は何事かと思わされる。
「あ、あのっ。それだったら僕のことも遠慮なく頼ってください! すぐ駆け付けますのでっ!」
俺の提案に乗っかる形で、自分も!と名乗りを上げやがった鶴見に、俺は内心やられた、と思った。
奴のクラスも俺のクラスも、音芽の受け持ちクラスの教室を挟む形で両隣に位置している。
確かに条件的には俺と変わらないのだから、そう主張したくなるのもわかる。
分かるが――。
ふと音芽を見ると、俺が手伝いを持ちかけた時より嬉しそうに見えて。
それどころか。
「あ、あのっ、すごく助かりま――……」
にっこり笑って俺よりも明らかに鶴見寄りに礼を言おうとしやがった。
なぁ、バカ音芽。お前がどういう気持ちだろうと、さすがにコレ、許すわけにはいかねぇから。
公私混同だって承知で……学年主任権限発動させてもらうわ。
0
あなたにおすすめの小説
17歳男子高生と32歳主婦の境界線
MisakiNonagase
恋愛
32歳主婦のカレンはインスタグラムで20歳大学生の晴人と知り合う。親密な関係となった3度目のデートのときに、晴人が実は17歳の高校2年生だと知る。
カレンと晴人はその後、どうなる?
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
中1でEカップって巨乳だから熱く甘く生きたいと思う真理(マリー)と小説家を目指す男子、光(みつ)のラブな日常物語
jun( ̄▽ ̄)ノ
大衆娯楽
中1でバスト92cmのブラはEカップというマリーと小説家を目指す男子、光の日常ラブ
★作品はマリーの語り、一人称で進行します。
熟女愛好家ユウスケの青春(熟女漁り)
MisakiNonagase
恋愛
高校まで勉強一筋で大学デビューをしたユウスケは家庭教師の教え子の母親と不倫交際するが、彼にとって彼女とが初の男女交際。そこでユウスケは自分が熟女好きだと自覚する。それからユウスケは戦略と実戦を重ねて、清潔感と聞き上手を武器にたくさんの熟女と付き合うことになるストーリーです。
ちょっと大人な物語はこちらです
神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な短編物語集です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる