【R18】温和はオトメをもっと上手に愛したい

鷹槻れん

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目障りな男

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 視線の先、音芽おとめ鶴見つるみにフルフルと首を横に振るのが見える。

(お、音芽、偉いじゃねぇか)

 鶴見に、まるで「これ以上は深追いするな」と線引きをするように軽く会釈えしゃくをした音芽が、自分の席までの間に並ぶ、机や棚などを頼りに歩き始める。

 俺はそれを、一見何食わぬ顔で見つめていたわけだが、本音を言うとすぐにでも手を貸してやりたくて。

 けど――。

 鶴見の申し出を断った音芽が、俺の手助けなら受け入れてくれるはずだという希望的観測と。
 いや……でも、もしかしたら同じように断られるかもしれないという躊躇ためらいがない交ぜになって、俺を席に貼り付ける。

 そんな俺を横目に、よろよろと歩く音芽の後ろを鶴見が金魚のフンみたいに付き従って歩いているのが見えて、心ばかりどんどんささくれる。

(何で追い払わねぇんだよ、バカ音芽。睨むとか邪険にするとか……いくらでも出来んだろ)

 実際には俺が「音芽が嫌がってんだろ、離れろよ」と言えたらいいだけなんだが、それが出来ないもどかしさで、怒りの矛先が音芽に向いてしまう。

 段々彼女を見る目が険しくなって――気が付いたら睨むような鋭い目つきになっていた。

 と、そこで戸惑った様子の音芽と一瞬目が合う。が、俺の視線に驚いたようにすぐに逸らされて。

(ああ、ホント、俺はバカだ)

 音芽の今の視線、上手く受け止めたら助けに行く口実に出来たはずなのに。


 ややして席までたどり着いた音芽おとめが、
「あ、あのっ……荷物、有難う。……ございましたっ」
 俺が無造作に音芽の机に置いておいたカバンを引き出しに仕舞いながら、恐る恐る礼を言ってくる。

 完全にビビらせてるじゃねぇか、俺の馬鹿。

 本当はものすごくお前のこと心配してるし、本音言うと今日は休ませたかったくらいなんだよ。
 音芽の性格からして自分のクラスの子らを放置して休むとか。そういうのはできないと思ったから連れてきたけど……。
 非現実的な願望を言わせてもらえばな。何なら俺も一緒に休んで付きっきりで面倒見たかったくらいだ。

「……鳥飼とりかい先生、今日は極力歩かないように過ごしてください。困った時は声かけてもらったら、俺がすぐサポートしに行きますので、遠慮なく言うように。朝礼で怪我のことと一緒にその旨話しますが、異論はないですね?」

 諸々の思いが先走った結果、半ば命令するような口調になってしまった。
 俺はつくづく口下手だと思う。

 そんな俺に「はい」と従順に首肯しゅこうする音芽。
 おい音芽、少しは俺に盾ついたって構わねぇんだぞ?
 とか思っていたら、突然鶴見つるみがガタッという音を立てて立ち上がって、俺は何事かと思わされる。

「あ、あのっ。それだったら僕のことも遠慮なく頼ってください! すぐ駆け付けますのでっ!」

 俺の提案に乗っかる形で、自分も!と名乗りを上げやがった鶴見に、俺は内心やられた、と思った。

 奴のクラスも俺のクラスも、音芽の受け持ちクラスの教室を挟む形で両隣に位置している。
 確かに条件的には俺と変わらないのだから、そう主張したくなるのもわかる。

 分かるが――。

 ふと音芽を見ると、俺が手伝いを持ちかけた時より嬉しそうに見えて。

 それどころか。

「あ、あのっ、すごく助かりま――……」
 にっこり笑って俺よりも明らかに鶴見寄りに礼を言おうとしやがった。

 なぁ、バカ音芽。お前がどういう気持ちだろうと、さすがにコレ、許すわけにはいかねぇから。

 公私混同だって承知で……学年主任権限発動させてもらうわ。
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