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逢地先生と2人きり
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音芽は俺の不機嫌な表情に気圧されたのか、慌てたように鶴見の腕を引っ張っていて。
あまつさえ「かっ、帰りましょうっ、鶴見先生っ」とか聞かされたら怒り心頭だろ?
何で俺がほんのちょっと目を離しただけでそうなるんだよ。
そこまで考えて、離席の際に音芽に「連れて帰ってやるからそのつもりでいろ」と言えなかったことを思い出した俺は、自分のバカさ加減に嫌気がさす。
だがな、音芽。
どんな理由があろうとも、お前を鶴見と帰らせるわけには行かねぇんだよ。
大股で歩み寄ってはいるけれど、本音を言うと全速力で走って音芽の腕を掴みたい。
でもそんなのカッコ悪くて出来るか。
あとちょっとで音芽に手が届くという段になって、鶴見から離れて下駄箱に寄り掛かった音芽がよろめくのが見えて。
鶴見が「危ないっ」と音芽に腕を伸ばしたのが腹立たしくて、俺は二人の間に割り込む形で音芽を抱きとめた。
ギュッと抱きしめた瞬間に、音芽の甘い香りに混ざって、ふわりと鶴見のコロンの香りがして、イラッとしてしまう。
何、俺に無断で他の男にマーキングされてんだよ、バカ音芽!
その苛立ちのままに、音芽を睨みつけて低い声で
「鳥飼先生。俺、今日は不用意に歩き回ったりせず、安静にしてるようにって言いませんでしたか?」
淡々とそう問い詰めてみたけれど、音芽は俺の方を見ようとしなくて……。
それがまた、俺を一層モヤモヤさせた。
「――聞いて、ますか?」
思わず音芽を支える手指に力が入る。
いつもならすぐ「ごめんなさい」ってしゅんとするはずの音芽が、ギュッと唇を引き結んで、俺の方を見ようともしない。
「……聞きたく、ないですっ」
ばかりか、ややして怒気をにじませた声で音芽から言われた言葉に、俺は一瞬意味が分からなくて息を飲んだ。
「は……?」
何言ってんだよ、お前。
心臓がバクバク言って、喉の奥がひりつくような違和感を覚える。
「終業後に私がどう動こうと、霧島先生には関係ないはずです。――助けていただいて有難うございました。あの、私達もう帰りますので……腕、離していただけますか?」
とどめのようにキッ!と睨まれてそう重ねられて、音芽が俺の手を振り解いた。
こんな音芽、俺は知らない。
茫然自失の俺を尻目に、鶴見に視線を移した音芽が、
「すみません、鶴見先生。お待たせしました。――帰りましょう?」
言って、ヤツに手を伸ばして――。
鶴見も俺を気にしつつも、差し出された音芽の手を取りやがった。
俺が睨んでること、気付いてるくせにホント食えない男だ。
「じゃあ、お先に失礼します。――逢地先生にもよろしくお伝えください」
音芽は俺の方を向かずに、後方で固まったままの逢地先生をチラリと見て会釈すると、そう言って鶴見とともに俺の前から遠ざかっていってしまう。
俺は今すぐにでも2人を止めないと!と思うのに、頭と身体がなかなかリンクしてくれなくて、音芽を抱きとめたときのポーズを崩すことさえ出来ずにその場に立ち尽くしていた。
ヤバイ。
早く……2人を追わねぇと――。
そう思ってはいるんだけど。
あまつさえ「かっ、帰りましょうっ、鶴見先生っ」とか聞かされたら怒り心頭だろ?
何で俺がほんのちょっと目を離しただけでそうなるんだよ。
そこまで考えて、離席の際に音芽に「連れて帰ってやるからそのつもりでいろ」と言えなかったことを思い出した俺は、自分のバカさ加減に嫌気がさす。
だがな、音芽。
どんな理由があろうとも、お前を鶴見と帰らせるわけには行かねぇんだよ。
大股で歩み寄ってはいるけれど、本音を言うと全速力で走って音芽の腕を掴みたい。
でもそんなのカッコ悪くて出来るか。
あとちょっとで音芽に手が届くという段になって、鶴見から離れて下駄箱に寄り掛かった音芽がよろめくのが見えて。
鶴見が「危ないっ」と音芽に腕を伸ばしたのが腹立たしくて、俺は二人の間に割り込む形で音芽を抱きとめた。
ギュッと抱きしめた瞬間に、音芽の甘い香りに混ざって、ふわりと鶴見のコロンの香りがして、イラッとしてしまう。
何、俺に無断で他の男にマーキングされてんだよ、バカ音芽!
その苛立ちのままに、音芽を睨みつけて低い声で
「鳥飼先生。俺、今日は不用意に歩き回ったりせず、安静にしてるようにって言いませんでしたか?」
淡々とそう問い詰めてみたけれど、音芽は俺の方を見ようとしなくて……。
それがまた、俺を一層モヤモヤさせた。
「――聞いて、ますか?」
思わず音芽を支える手指に力が入る。
いつもならすぐ「ごめんなさい」ってしゅんとするはずの音芽が、ギュッと唇を引き結んで、俺の方を見ようともしない。
「……聞きたく、ないですっ」
ばかりか、ややして怒気をにじませた声で音芽から言われた言葉に、俺は一瞬意味が分からなくて息を飲んだ。
「は……?」
何言ってんだよ、お前。
心臓がバクバク言って、喉の奥がひりつくような違和感を覚える。
「終業後に私がどう動こうと、霧島先生には関係ないはずです。――助けていただいて有難うございました。あの、私達もう帰りますので……腕、離していただけますか?」
とどめのようにキッ!と睨まれてそう重ねられて、音芽が俺の手を振り解いた。
こんな音芽、俺は知らない。
茫然自失の俺を尻目に、鶴見に視線を移した音芽が、
「すみません、鶴見先生。お待たせしました。――帰りましょう?」
言って、ヤツに手を伸ばして――。
鶴見も俺を気にしつつも、差し出された音芽の手を取りやがった。
俺が睨んでること、気付いてるくせにホント食えない男だ。
「じゃあ、お先に失礼します。――逢地先生にもよろしくお伝えください」
音芽は俺の方を向かずに、後方で固まったままの逢地先生をチラリと見て会釈すると、そう言って鶴見とともに俺の前から遠ざかっていってしまう。
俺は今すぐにでも2人を止めないと!と思うのに、頭と身体がなかなかリンクしてくれなくて、音芽を抱きとめたときのポーズを崩すことさえ出来ずにその場に立ち尽くしていた。
ヤバイ。
早く……2人を追わねぇと――。
そう思ってはいるんだけど。
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