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逢地先生と2人きり
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逢地先生と別れた後、押っ取り刀で帰宅してみたら、見慣れない車――鶴見のプレマシー――がアパート近くの路上に停められていた。
はやる気持ちを抑えながらソワソワと中を確認したが、車内にふたりの姿はなくて。
音芽。お前、まさか鶴見を部屋に上げたのか?
思うと吐き気がしそうなぐらい心臓がバクバクした。
いつも通りの作業のはずなのに、車を自分の駐車スペースに停めるのでさえもどかしく感じられて。
それでも何とか停車してふとアパートを見上げたら、音芽の部屋の前にふたりがいるのが目に入った。
自室のドアを背にして、音芽がなにやら困っているように見えて。
――もしかして鶴見に迫られてるのか?
一度そう思ったら、もう、そうとしか見えなくて、車に施錠するのももどかしく感じてしまう。
駆け上がるようにアパートの階段を昇り切って、二階の通路に立って前方を見つめたら――。
音芽が鶴見に抱きしめられて泣きそうな顔をしているのが目に入った。
ちょっと待て鶴見! お前、音芽が足、痛そうにしてるの分かんねぇのか!?
何でそんなことも配慮してやれねぇんだよ、お前!
そんな馬鹿に、俺の大事な音芽に触れる資格はない!
思って、大股で近付いて行った俺の耳に、音芽が震える声で「た、大我、さんっ? わ、悪ふざけは……」と言っているのが聞こえてきて。
大我さん?
は?
バカ音芽、お前、いつの間にそいつのこと、下の名で呼ぶようになったんだよ!
はっきり言って腸が煮えくり返りそうなほど怒り心頭な俺だったが、せめてもの救いはヤツの腕の中の音芽がすごく嫌そうな顔をしていることで――。
それを見た俺は、一度深呼吸をしてほんの少し気持ちを落ち着けることが出来た。
そうしていても、結局口をついて出たのはいつもより随分低めで不機嫌さを隠しきれない声だった。
「通路でイチャつくの、やめてもらえますか?」
言いながら鶴見の腕をグイッと引っ張って、音芽から引き剥がす。
そうしておいて、俺は当然のようにふたりを睨みつけた。
俺が鶴見の腕から解放した途端、音芽がその場へヘナヘナと座り込んでしまう。
すぐにでもそんな音芽を抱き上げたいと思ったけれど、一歩前に踏み出してきた鶴見が、そんな俺を牽制するように真っ直ぐにこちらを見つめてきて――。
悪いけど、少しそのままおとなしくしていろよ、音芽。座ってれば、足も痛くないはずだろ?
「お帰りなさい、霧島先生。――いえ、音芽さんのお兄さん、とお呼びすべきですか?」
言って、わざとらしいぐらいの笑みを浮かべてくる。
何なんだよ、その不遜な態度! 滅茶苦茶イラつくんだけど!
身長がほぼ互角の俺たちは、目の高さが揃っているからか、鶴見の面相の変化が嫌になるぐらいよく見えた。
ヤツの表情が気に食わないというのもさることながら、語られた内容に多分に苛立った俺は、視線を落として足元の音芽を見る。
彼女は俺の心配も知らぬげに、オロオロと俺たちを見比べていて。
「――音芽」
この状況だ。
声に不機嫌さがにじみ出ちまっても、仕方ないよな?
俺の呼びかけに、音芽が座り込んだままビクッと身体を震わせる。
ついで、先ほどの反抗的な態度は幻だったのではないかと思うぐらい従順な声音で「は、はいっ」と答えるんだ。
そのことに幾分安堵した俺は、それでも音芽を追跡する言葉を緩めてやる気になれない。
逢地先生と別れた後、押っ取り刀で帰宅してみたら、見慣れない車――鶴見のプレマシー――がアパート近くの路上に停められていた。
はやる気持ちを抑えながらソワソワと中を確認したが、車内にふたりの姿はなくて。
音芽。お前、まさか鶴見を部屋に上げたのか?
思うと吐き気がしそうなぐらい心臓がバクバクした。
いつも通りの作業のはずなのに、車を自分の駐車スペースに停めるのでさえもどかしく感じられて。
それでも何とか停車してふとアパートを見上げたら、音芽の部屋の前にふたりがいるのが目に入った。
自室のドアを背にして、音芽がなにやら困っているように見えて。
――もしかして鶴見に迫られてるのか?
一度そう思ったら、もう、そうとしか見えなくて、車に施錠するのももどかしく感じてしまう。
駆け上がるようにアパートの階段を昇り切って、二階の通路に立って前方を見つめたら――。
音芽が鶴見に抱きしめられて泣きそうな顔をしているのが目に入った。
ちょっと待て鶴見! お前、音芽が足、痛そうにしてるの分かんねぇのか!?
何でそんなことも配慮してやれねぇんだよ、お前!
そんな馬鹿に、俺の大事な音芽に触れる資格はない!
思って、大股で近付いて行った俺の耳に、音芽が震える声で「た、大我、さんっ? わ、悪ふざけは……」と言っているのが聞こえてきて。
大我さん?
は?
バカ音芽、お前、いつの間にそいつのこと、下の名で呼ぶようになったんだよ!
はっきり言って腸が煮えくり返りそうなほど怒り心頭な俺だったが、せめてもの救いはヤツの腕の中の音芽がすごく嫌そうな顔をしていることで――。
それを見た俺は、一度深呼吸をしてほんの少し気持ちを落ち着けることが出来た。
そうしていても、結局口をついて出たのはいつもより随分低めで不機嫌さを隠しきれない声だった。
「通路でイチャつくの、やめてもらえますか?」
言いながら鶴見の腕をグイッと引っ張って、音芽から引き剥がす。
そうしておいて、俺は当然のようにふたりを睨みつけた。
俺が鶴見の腕から解放した途端、音芽がその場へヘナヘナと座り込んでしまう。
すぐにでもそんな音芽を抱き上げたいと思ったけれど、一歩前に踏み出してきた鶴見が、そんな俺を牽制するように真っ直ぐにこちらを見つめてきて――。
悪いけど、少しそのままおとなしくしていろよ、音芽。座ってれば、足も痛くないはずだろ?
「お帰りなさい、霧島先生。――いえ、音芽さんのお兄さん、とお呼びすべきですか?」
言って、わざとらしいぐらいの笑みを浮かべてくる。
何なんだよ、その不遜な態度! 滅茶苦茶イラつくんだけど!
身長がほぼ互角の俺たちは、目の高さが揃っているからか、鶴見の面相の変化が嫌になるぐらいよく見えた。
ヤツの表情が気に食わないというのもさることながら、語られた内容に多分に苛立った俺は、視線を落として足元の音芽を見る。
彼女は俺の心配も知らぬげに、オロオロと俺たちを見比べていて。
「――音芽」
この状況だ。
声に不機嫌さがにじみ出ちまっても、仕方ないよな?
俺の呼びかけに、音芽が座り込んだままビクッと身体を震わせる。
ついで、先ほどの反抗的な態度は幻だったのではないかと思うぐらい従順な声音で「は、はいっ」と答えるんだ。
そのことに幾分安堵した俺は、それでも音芽を追跡する言葉を緩めてやる気になれない。
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