133 / 198
俺の立ち位置
2
しおりを挟む
奏芽の、妹へのひねくれた溺愛のお陰で音芽は自分のことを不細工だと信じている節がある。
幼い頃に奏芽が音芽に意地悪で言った、「音芽は不細工だから誰のお嫁さんにもなれない」って言葉は、恐らく今も音芽を縛り続けている。
奏芽的には「だからずっと兄ちゃんたちのそばに居ればいい」の裏返しみたいな言葉だったと思うんだけど、俺はそれを知っていてあえて奏芽の真意を音芽に教えなかった。
ばかりか、奏芽の言葉に傷ついて泣きじゃくる音芽に、「音芽は大きくなったら俺のお嫁さんになるんだろう? だったら奏芽の言うことなんて気にする必要ないじゃないか」って付け入って、その愛らしい唇にやんわり触れた。
子供だったからその約束をどう形にしたらいいのかよく分からなくて、そこら辺に咲いていた花で指輪もどきを作って音芽の小さな指にはめて、「約束の指輪だよ」って言葉で音芽を縛った。
幼い頃から誰が何と言おうと、音芽は俺の嫁にするんだって心に決めていたし、その座は実兄の奏芽にだって譲る気はなかった。
大きくなって、実の兄妹は結婚出来ないのだと知った時の安堵感と、奏芽には越えることのできない「俺だけの特権」という自負。
音芽は、幼い頃すぐに萎れて枯れてしまう指輪とともに交わしたあの稚拙な〝約束〟を覚えているだろうか?
ま、覚えてなかったとしても俺、絶対に音芽を離すつもりはねぇし関係ないけどな。
そんな昔のことをふと思い出していたら、音芽がそわそわした様子で俺に声をかけてきた。
「あ、あの……温和」
お前何だってそんな不安そうな顔してんだよ? 俺までザワザワしてくんだろ。
そう思いながらも、素直に心配する声が投げかけられないひねくれ者の俺は、ハンドルを握る手に少しだけ力を込めながら「なんだ?」と前方を見つめたまま素っ気なく返す。
声に極力抑揚をつけなかったのは、音芽の一挙手一投足に右往左往してしまいそうになる情けない俺を、彼女に気取られたくなかったからだ。
「もしかして……小さい頃に私をお嫁さんにしてくれるって言ったの、覚えていたり……する?」
そんな虚栄心の塊みたいな俺が、今まさにそれ思い出して浸ってましただなんて、バカ正直に言えるはずがない。
「んな昔のこと覚えてるわけねぇだろ」
全くもってその通りのくせに、一蹴するみたいにそう即答したら、音芽がホッとした様な顔をしやがる。
何だよ。
そんな昔の約束に縛られている様な、女々しい男は嫌か?
幼い頃に奏芽が音芽に意地悪で言った、「音芽は不細工だから誰のお嫁さんにもなれない」って言葉は、恐らく今も音芽を縛り続けている。
奏芽的には「だからずっと兄ちゃんたちのそばに居ればいい」の裏返しみたいな言葉だったと思うんだけど、俺はそれを知っていてあえて奏芽の真意を音芽に教えなかった。
ばかりか、奏芽の言葉に傷ついて泣きじゃくる音芽に、「音芽は大きくなったら俺のお嫁さんになるんだろう? だったら奏芽の言うことなんて気にする必要ないじゃないか」って付け入って、その愛らしい唇にやんわり触れた。
子供だったからその約束をどう形にしたらいいのかよく分からなくて、そこら辺に咲いていた花で指輪もどきを作って音芽の小さな指にはめて、「約束の指輪だよ」って言葉で音芽を縛った。
幼い頃から誰が何と言おうと、音芽は俺の嫁にするんだって心に決めていたし、その座は実兄の奏芽にだって譲る気はなかった。
大きくなって、実の兄妹は結婚出来ないのだと知った時の安堵感と、奏芽には越えることのできない「俺だけの特権」という自負。
音芽は、幼い頃すぐに萎れて枯れてしまう指輪とともに交わしたあの稚拙な〝約束〟を覚えているだろうか?
ま、覚えてなかったとしても俺、絶対に音芽を離すつもりはねぇし関係ないけどな。
そんな昔のことをふと思い出していたら、音芽がそわそわした様子で俺に声をかけてきた。
「あ、あの……温和」
お前何だってそんな不安そうな顔してんだよ? 俺までザワザワしてくんだろ。
そう思いながらも、素直に心配する声が投げかけられないひねくれ者の俺は、ハンドルを握る手に少しだけ力を込めながら「なんだ?」と前方を見つめたまま素っ気なく返す。
声に極力抑揚をつけなかったのは、音芽の一挙手一投足に右往左往してしまいそうになる情けない俺を、彼女に気取られたくなかったからだ。
「もしかして……小さい頃に私をお嫁さんにしてくれるって言ったの、覚えていたり……する?」
そんな虚栄心の塊みたいな俺が、今まさにそれ思い出して浸ってましただなんて、バカ正直に言えるはずがない。
「んな昔のこと覚えてるわけねぇだろ」
全くもってその通りのくせに、一蹴するみたいにそう即答したら、音芽がホッとした様な顔をしやがる。
何だよ。
そんな昔の約束に縛られている様な、女々しい男は嫌か?
0
あなたにおすすめの小説
17歳男子高生と32歳主婦の境界線
MisakiNonagase
恋愛
32歳主婦のカレンはインスタグラムで20歳大学生の晴人と知り合う。親密な関係となった3度目のデートのときに、晴人が実は17歳の高校2年生だと知る。
カレンと晴人はその後、どうなる?
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
中1でEカップって巨乳だから熱く甘く生きたいと思う真理(マリー)と小説家を目指す男子、光(みつ)のラブな日常物語
jun( ̄▽ ̄)ノ
大衆娯楽
中1でバスト92cmのブラはEカップというマリーと小説家を目指す男子、光の日常ラブ
★作品はマリーの語り、一人称で進行します。
熟女愛好家ユウスケの青春(熟女漁り)
MisakiNonagase
恋愛
高校まで勉強一筋で大学デビューをしたユウスケは家庭教師の教え子の母親と不倫交際するが、彼にとって彼女とが初の男女交際。そこでユウスケは自分が熟女好きだと自覚する。それからユウスケは戦略と実戦を重ねて、清潔感と聞き上手を武器にたくさんの熟女と付き合うことになるストーリーです。
ちょっと大人な物語はこちらです
神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な短編物語集です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる