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音芽と撫子
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俺はそこで立ち止まると、
「――なぁ、あの男のために落ち込んだり泣いたりするなよ。お前が他の男のために心を割いてるとか……。考えただけで俺がどうしようもなくムカつくんだっていい加減気付けよ、バカ音芽」
ここが教室からも廊下からも死角になっているのを知っていて、俺は荷物を手にしていない右腕で小さな音芽の身体をギュッと抱きしめた。
途端、ふわりと香る音芽の甘い香りに包まれて、ここが職場だと言うことも忘れて、そのまま腕を緩めたくない衝動に駆られる。
「ちょっ、温和っ」
音芽がそわそわと身じろいで、手にしていたチョークケースを落としてくれなかったら、マジで歯止めがきかなくなってヤバかった気がした。
カツンッという乾いた音とともに、ケースの蓋が開いて中身が足元に散らばって。
音芽が俺の腕からすり抜けるようにしてしゃがみ込むと、ばらまかれたチョークを拾い集め始める。
その顔がほんのりと紅潮しているのに気がついた俺は、思わずそれに当てられそうになって慌てて顔を背けた。
「――わかったな?」
チョークを拾い集めて立ち上がった音芽の耳元に、至極冷静なふりをして唇を寄せると、半ば自分にも言い聞かせるみたいにそう念押しをした。
音芽が「はい」と小声で答えるのを聞きながら、顔に出さないよう気を付けながら「ホントいちいち反応が可愛すぎてムカつくんだよ、バカ音芽」と、心の中で悪態をついた。
「――なぁ、あの男のために落ち込んだり泣いたりするなよ。お前が他の男のために心を割いてるとか……。考えただけで俺がどうしようもなくムカつくんだっていい加減気付けよ、バカ音芽」
ここが教室からも廊下からも死角になっているのを知っていて、俺は荷物を手にしていない右腕で小さな音芽の身体をギュッと抱きしめた。
途端、ふわりと香る音芽の甘い香りに包まれて、ここが職場だと言うことも忘れて、そのまま腕を緩めたくない衝動に駆られる。
「ちょっ、温和っ」
音芽がそわそわと身じろいで、手にしていたチョークケースを落としてくれなかったら、マジで歯止めがきかなくなってヤバかった気がした。
カツンッという乾いた音とともに、ケースの蓋が開いて中身が足元に散らばって。
音芽が俺の腕からすり抜けるようにしてしゃがみ込むと、ばらまかれたチョークを拾い集め始める。
その顔がほんのりと紅潮しているのに気がついた俺は、思わずそれに当てられそうになって慌てて顔を背けた。
「――わかったな?」
チョークを拾い集めて立ち上がった音芽の耳元に、至極冷静なふりをして唇を寄せると、半ば自分にも言い聞かせるみたいにそう念押しをした。
音芽が「はい」と小声で答えるのを聞きながら、顔に出さないよう気を付けながら「ホントいちいち反応が可愛すぎてムカつくんだよ、バカ音芽」と、心の中で悪態をついた。
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