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音芽と撫子
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冷蔵庫から飲むヨーグルトを取り出すなり腰に手を当てて一気に煽ってから「くぅーっ! 生き返るぅー!」とか……。
オッサンかよ!
けどそんな言動ですら可愛い!って思っちまう俺も大概だよな。
あんな無防備で幸せそうな声を聞かされたら、こっちまで顔が緩んじまいそうだ。
ふぅ、っと恍惚の溜め息を落とす音芽に、俺は我慢できなくなって「オッサンかよ」って声をかけた。
ちょっとでも気を抜いたらニヤけちまいそうで、わざと揶揄うように意地の悪い笑みを含ませた声音で言ったら、音芽のやつ、ビクッと身体を跳ねさせやがんの。
その様が、ホントちっこい生き物みたいでキュン、とさせられる。
弾かれたようにこちらを振り返った顔を見たら、上唇の周りに白いのを付けていて、
「バカ音芽。くち……」
つぶやくなり、俺は我慢出来ずに手を伸ばしていた。
上唇をなぞるように軽く親指の腹でヨーグルトを拭ってやったら、そこでやっと
「はっ、温和っ!?」
とか。
おーい、音芽。
〝霧島先生〟じゃなくなってますよ?
無意識に俺の名を叫んじまったらしい音芽が、慌てたように口に手を当てて、
「きっ、霧島先生……何かご用ですか?」
って……今更だし、声も上ずってますよ?
――マジで可愛過ぎんだろ!
職場でなきゃ恐らくヨーグルト味の、あの魅惑の唇を奥の方まで味わい尽くすんだけどな。
「別に用はねぇけど――お前、今から逢地先生んトコ、行くんだろ?」
用はないと言いながらしっかり〝音芽を揶揄う〟という目的はあんだけど、それはまぁこの際どうでもいい。
けど、俺にやましいことがあると決めつけているらしい音芽は、俺の煮え切らない態度が気に入らなかったみたいで、小さく溜め息を落とすと、
「知られてマズイことがあるんなら今のうちに弁解どうぞ? 過去のことだし、先に話してくれるなら……私、水に流してあげてもいいですよ?」
と、珍しく強気な発言で俺を挑発してくるんだ。
何だこいつ。
朝挨拶をした時に揶揄った仕返しのつもりか?
もぉ、ホント可愛いやつだな。
そう思ったら、悪いと思いながらも自然と笑いが込み上げてきてしまった。
「鳥飼先生。残念ながら俺にはそんなの、1つもありませんから」
――清廉潔白です。
自信満々に学年主任モードで言い切ってやったら、音芽が明らかにムッとして。
不機嫌に小さく唇がとんがるの、すっげぇそそられるんだけど。
――ヤベェな。めちゃくちゃキスしてぇ。
どうせアレコレ勝手に思いを巡らせて有り得ない杞憂を募らせてるんだろうけど、俺としてはお前に妬かれるの、悪くねぇんだと気付けないのかな?
「何にもやましいことがないんなら、私が逢地先生のところに行くの、なぜ気にしてくるんですか?」
言って、まるで「チェックメイトよ!」と言わんばかりに俺を見上げる音芽を抱きしめたくて堪らないんだけど、とりあえず今は我慢だ。
逢地先生のところから戻ってきた時の、誤解がすっかり解けた音芽を想像して、俺はひとりほくそ笑む。
そう言う諸々を表に出さないよう極力何でもない風を装うと、俺は後ろ暗いところなんて何1つないのだという恋人の顔をして、
「ああ、そうそうそれなんだけどな。俺、お前の用が終わるまで職員室で仕事しながら待っててやるから……。帰り、一緒に飯食いに行こうぜ?」
そう言ってニヤリとした。
オッサンかよ!
けどそんな言動ですら可愛い!って思っちまう俺も大概だよな。
あんな無防備で幸せそうな声を聞かされたら、こっちまで顔が緩んじまいそうだ。
ふぅ、っと恍惚の溜め息を落とす音芽に、俺は我慢できなくなって「オッサンかよ」って声をかけた。
ちょっとでも気を抜いたらニヤけちまいそうで、わざと揶揄うように意地の悪い笑みを含ませた声音で言ったら、音芽のやつ、ビクッと身体を跳ねさせやがんの。
その様が、ホントちっこい生き物みたいでキュン、とさせられる。
弾かれたようにこちらを振り返った顔を見たら、上唇の周りに白いのを付けていて、
「バカ音芽。くち……」
つぶやくなり、俺は我慢出来ずに手を伸ばしていた。
上唇をなぞるように軽く親指の腹でヨーグルトを拭ってやったら、そこでやっと
「はっ、温和っ!?」
とか。
おーい、音芽。
〝霧島先生〟じゃなくなってますよ?
無意識に俺の名を叫んじまったらしい音芽が、慌てたように口に手を当てて、
「きっ、霧島先生……何かご用ですか?」
って……今更だし、声も上ずってますよ?
――マジで可愛過ぎんだろ!
職場でなきゃ恐らくヨーグルト味の、あの魅惑の唇を奥の方まで味わい尽くすんだけどな。
「別に用はねぇけど――お前、今から逢地先生んトコ、行くんだろ?」
用はないと言いながらしっかり〝音芽を揶揄う〟という目的はあんだけど、それはまぁこの際どうでもいい。
けど、俺にやましいことがあると決めつけているらしい音芽は、俺の煮え切らない態度が気に入らなかったみたいで、小さく溜め息を落とすと、
「知られてマズイことがあるんなら今のうちに弁解どうぞ? 過去のことだし、先に話してくれるなら……私、水に流してあげてもいいですよ?」
と、珍しく強気な発言で俺を挑発してくるんだ。
何だこいつ。
朝挨拶をした時に揶揄った仕返しのつもりか?
もぉ、ホント可愛いやつだな。
そう思ったら、悪いと思いながらも自然と笑いが込み上げてきてしまった。
「鳥飼先生。残念ながら俺にはそんなの、1つもありませんから」
――清廉潔白です。
自信満々に学年主任モードで言い切ってやったら、音芽が明らかにムッとして。
不機嫌に小さく唇がとんがるの、すっげぇそそられるんだけど。
――ヤベェな。めちゃくちゃキスしてぇ。
どうせアレコレ勝手に思いを巡らせて有り得ない杞憂を募らせてるんだろうけど、俺としてはお前に妬かれるの、悪くねぇんだと気付けないのかな?
「何にもやましいことがないんなら、私が逢地先生のところに行くの、なぜ気にしてくるんですか?」
言って、まるで「チェックメイトよ!」と言わんばかりに俺を見上げる音芽を抱きしめたくて堪らないんだけど、とりあえず今は我慢だ。
逢地先生のところから戻ってきた時の、誤解がすっかり解けた音芽を想像して、俺はひとりほくそ笑む。
そう言う諸々を表に出さないよう極力何でもない風を装うと、俺は後ろ暗いところなんて何1つないのだという恋人の顔をして、
「ああ、そうそうそれなんだけどな。俺、お前の用が終わるまで職員室で仕事しながら待っててやるから……。帰り、一緒に飯食いに行こうぜ?」
そう言ってニヤリとした。
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