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いわゆるデートとか言うやつ
手を繋ぐのはなしねっ?
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俺がここまで言って初めて、音芽は俺が〝性的な意味で〟悶々として一夜を明かしたのだと気が付いたらしい。
ハッとした顔をしてからまるでアレコレを思い返しているかのような百面相。
そうして
「ごっ、ごめん……なさい……」
しゅんとして謝ってくる。
(可愛すぎか!)
俺はそんな音芽の様子に内心満足しつつ、「――今夜、今日の分も含めて取り戻させてもらうから。覚悟しとけよ」って言ってやった。
バカ音芽め!
今日は一日中、俺との夜に思いを馳せてソワソワすればいい。
***
音芽と、今日も昨日みたいに一緒に出勤して、ほんの少しだけタイムラグを作って別々に職員室に行こうという話になった。
昨日は俺が先だったから、今日は俺を車内に残して音芽が一足先に車を降りる。
そのまま数メートル歩いた音芽が、何かを思い出したようにふと立ち止まった。
(何だ?)
まるで森から迷い出た子リスのようなその姿に、クッソ可愛いな、などと思いつつ俺はハンドルにもたれ掛かってポーカーフェイスを心掛ける。
と、
立ち止まって何事かを思案していた様子の音芽がクルリと向きを変えるから。
俺は慌ててハンドルに突っ伏して〝お前のことなんて見てねぇからな⁉︎〟という体裁を取り繕った。
そんな俺に窓越し、控えめなコンコン……と窓ガラスを叩く音が投げ掛けられる。
――ちょっ、待っ! 何しに戻って来た!?
(っちゅーか、そんな可愛い顔で小首をかしげるなよ、バカ! 抱きしめたくなんだろーが!)
などと内心騒ぎまくりの心を無にしようと思ったら、胡乱げな表情になってしまった。
好きで好きで堪らない音芽を見上げながら、努めて無表情を装って窓を開けると、
「何だ、忘れ物か?」
俺はわざとらしくあくびを噛み殺す真似をしながらそう告げた。
そんな俺に、音芽はゆるゆると首を振ると「ね、一緒に行こう?」と恐る恐ると言った具合に問いかけて来る。
「わ、私たちが隣同士に住んでいるのは周知の沙汰だし、その、い、一緒に出勤しても変じゃない……と思う、の」
どこか照れくさそうにしどろもどろでそんな説明をしてくる音芽に、俺はほぅっと溜め息をついた。
(ちょっと待て、ちょっと待て! それはつまり……そんな理由を持ち出してまで俺と一緒に行きたいってことだよな? やべぇ、めちゃ健気じゃねぇか!)
吐息と一緒に「ひゃっほぅ!」と叫び出したい気持ちを懸命に抑えつつ。
「――それもそうだな。音芽のくせに冴えてるじゃん」
ニヤリと意地悪に微笑んで音芽を見上げたら、音芽が瞳を見開いて照れたように頬を染めるから。
(なんだ、この可愛い生き物はぁー! くそぉ! 思いっ切り抱きしめてぇ!)
なんて思ってしまったのも仕方ないことだよな?
なのに――。
まるでそんな俺の心を見透かしたみたいに音芽が言うんだ。
「で、でもね……手を繋ぐのは……なしねっ?」
って。
照れ隠しだろうか。
俺からほんの少し離れて矢継ぎ早にそう告げる音芽が可愛くて、俺は思わず背後からギュッと彼女の細い腰を抱かずにはいられなくて。
「じゃあこれは?」
「ひゃ!」
そのままわざと耳元で低くささやけば、音芽が身体をビクッと跳ねさせて、慌てたように抗議するんだ。
「……ひゃっ、ヒャメに決まってるっ」
真っ赤になりながら上擦りまくりの声を誤魔化すようにダメだと吐き捨てる音芽が愛しすぎて、無意識に笑いが漏れてしまった。
「温和の意地悪っ」
そんな俺の様子に揶揄われたと思ったんだろう。
プンスカした様子で俺の腕を振り解いて早足で歩き始めた音芽から離れたくなくて、すぐさま彼女へ追いつくと、横に並ぶ。
そのことにもムッとしたんだろう。
大きな瞳で俺をキッ!と睨みつけてくるのまで可愛すぎるとか、反則だろ?
「音芽、機嫌直せよ」
むぅーっと口をへの字にしたまま歩く音芽に、俺は降参して謝った。
そんな俺の様子に、嬉しさを隠せないみたいに見上げて来た音芽が、何故か少しだけ不安そうに瞳を揺らせたことに、俺は不覚にも気づけなかったんだ。
ハッとした顔をしてからまるでアレコレを思い返しているかのような百面相。
そうして
「ごっ、ごめん……なさい……」
しゅんとして謝ってくる。
(可愛すぎか!)
俺はそんな音芽の様子に内心満足しつつ、「――今夜、今日の分も含めて取り戻させてもらうから。覚悟しとけよ」って言ってやった。
バカ音芽め!
今日は一日中、俺との夜に思いを馳せてソワソワすればいい。
***
音芽と、今日も昨日みたいに一緒に出勤して、ほんの少しだけタイムラグを作って別々に職員室に行こうという話になった。
昨日は俺が先だったから、今日は俺を車内に残して音芽が一足先に車を降りる。
そのまま数メートル歩いた音芽が、何かを思い出したようにふと立ち止まった。
(何だ?)
まるで森から迷い出た子リスのようなその姿に、クッソ可愛いな、などと思いつつ俺はハンドルにもたれ掛かってポーカーフェイスを心掛ける。
と、
立ち止まって何事かを思案していた様子の音芽がクルリと向きを変えるから。
俺は慌ててハンドルに突っ伏して〝お前のことなんて見てねぇからな⁉︎〟という体裁を取り繕った。
そんな俺に窓越し、控えめなコンコン……と窓ガラスを叩く音が投げ掛けられる。
――ちょっ、待っ! 何しに戻って来た!?
(っちゅーか、そんな可愛い顔で小首をかしげるなよ、バカ! 抱きしめたくなんだろーが!)
などと内心騒ぎまくりの心を無にしようと思ったら、胡乱げな表情になってしまった。
好きで好きで堪らない音芽を見上げながら、努めて無表情を装って窓を開けると、
「何だ、忘れ物か?」
俺はわざとらしくあくびを噛み殺す真似をしながらそう告げた。
そんな俺に、音芽はゆるゆると首を振ると「ね、一緒に行こう?」と恐る恐ると言った具合に問いかけて来る。
「わ、私たちが隣同士に住んでいるのは周知の沙汰だし、その、い、一緒に出勤しても変じゃない……と思う、の」
どこか照れくさそうにしどろもどろでそんな説明をしてくる音芽に、俺はほぅっと溜め息をついた。
(ちょっと待て、ちょっと待て! それはつまり……そんな理由を持ち出してまで俺と一緒に行きたいってことだよな? やべぇ、めちゃ健気じゃねぇか!)
吐息と一緒に「ひゃっほぅ!」と叫び出したい気持ちを懸命に抑えつつ。
「――それもそうだな。音芽のくせに冴えてるじゃん」
ニヤリと意地悪に微笑んで音芽を見上げたら、音芽が瞳を見開いて照れたように頬を染めるから。
(なんだ、この可愛い生き物はぁー! くそぉ! 思いっ切り抱きしめてぇ!)
なんて思ってしまったのも仕方ないことだよな?
なのに――。
まるでそんな俺の心を見透かしたみたいに音芽が言うんだ。
「で、でもね……手を繋ぐのは……なしねっ?」
って。
照れ隠しだろうか。
俺からほんの少し離れて矢継ぎ早にそう告げる音芽が可愛くて、俺は思わず背後からギュッと彼女の細い腰を抱かずにはいられなくて。
「じゃあこれは?」
「ひゃ!」
そのままわざと耳元で低くささやけば、音芽が身体をビクッと跳ねさせて、慌てたように抗議するんだ。
「……ひゃっ、ヒャメに決まってるっ」
真っ赤になりながら上擦りまくりの声を誤魔化すようにダメだと吐き捨てる音芽が愛しすぎて、無意識に笑いが漏れてしまった。
「温和の意地悪っ」
そんな俺の様子に揶揄われたと思ったんだろう。
プンスカした様子で俺の腕を振り解いて早足で歩き始めた音芽から離れたくなくて、すぐさま彼女へ追いつくと、横に並ぶ。
そのことにもムッとしたんだろう。
大きな瞳で俺をキッ!と睨みつけてくるのまで可愛すぎるとか、反則だろ?
「音芽、機嫌直せよ」
むぅーっと口をへの字にしたまま歩く音芽に、俺は降参して謝った。
そんな俺の様子に、嬉しさを隠せないみたいに見上げて来た音芽が、何故か少しだけ不安そうに瞳を揺らせたことに、俺は不覚にも気づけなかったんだ。
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