173 / 198
川越筑紫
鶴見先生の代わり
しおりを挟む
職員室に入って時計を見ると、今日はいつもよりゆとりがあって。
「霧島先生、コーヒー飲まれますか?」
それでだろうか。
音芽が、自分が淹れるついでに俺のも淹れようか?と誘ってくれた。その雰囲気がいかにもカレカノという感じがしたから。
「ん? ああ、頼……お願いします」
俺はボォーッとする余り、危うく家でするみたいに「頼む」と言いそうになって、慌てて訂正する羽目になる。
どうも最近、俺は浮かれポンチな余り、音芽よりもそういう〝うっかりミス〟が増えている気がするんだ。
音芽に突っ込まれる前になんとかしねぇと。
そう思った矢先、音芽が俺から隠れるようにほくそ笑んだのに気付いた俺は、バツが悪い思いを隠したいみたいに彼女を軽く睨んで牽制した。
途端ビクッとして悔しそうに唇をとんがらせるのが見えて、俺は分かりやすい音芽の様子に心の中でひとりニヤリとしてしまう。
本当俺の彼女は隠し事が出来なくて、最高に可愛い!
***
俺はブラックコーヒー派。
対して、音芽はミルクをたっぷり入れないとコーヒー自体が飲めないお子様口だ。
もっというと、どちらかと言えばコーヒーよりミルクティー派で。
『それ、どう見てもコーヒーフレーバーや紅茶フレーバーの牛乳だよな!?』というものを美味しそうに飲むところも、甘い雰囲気を身にまとう音芽にピッタリに思えて好もしいな?とか思っていたりするのだけれど、悔しいから本人には内緒だ。
「どうぞ」
机上へ置かれた紙片にスッカリ気を持って行かれていた俺は、コーヒーを持ってきてくれた音芽が、俺の机へカップを置いてくれた気配に驚いて肩を震わせた。
いつもならさりげなく音芽の指先に触れて「ありがとう」と揶揄いまじりに彼女の愛らしい反応をうかがうところだが、今日の俺はそれどころではなくて。
小さく礼の言葉をつぶやくなり、不吉な内容が書かれた紙片に視線を戻した。
きっと、音芽も俺の態度に違和感を覚えたんだろう。
しばし物問いたげに俺の様子を見つめていたけれど、諦めたように自分のデスクへ戻ると、書類トレイに入れられたお知らせプリントを手に取った。
そうしながらも、チラチラとこちらへ向けられる視線で、手にしたそれが、俺が今見ているのと同じやつかどうか探られているのが分かる。
まぁ、それしか入ってねぇんだからそうだと言うのはバレバレなんだが。
うちの学校では、毎朝知らせたいことのある先生方が各々小さなメモ紙に連絡事項を書いて、取りまとめ役の教務へ渡すことになっている。
教務は、それを日付と一緒に一枚の紙にランダムに貼り付けて印刷してから、朝の職員会議に間に合わせるよう各自の机に配っておいてくれるのだけれど。
俺と音芽がいま手にしているのも、そうやってできた職朝会議用のお知らせメモ一覧だ。
これに書かれたメモに沿って話が進むというのが毎朝の流れで。
今日は養護の逢地先生からの給食の食器の返し方への改善してもらいたい点と、図書室からの利用時間変更の知らせ、事務方からのパソコン入れ替え工事の日時の知らせ、それから校長からの臨時職員受入れに関する項目がトピックの全てだ。
逢地先生のは子供たちが給食の食器を返す際に指導しないといけないので、必要があればメモを取っておかねばなるまい。
図書室と事務方のお知らせは職員室内の月間行事予定のホワイトボードにもメモ書きがしてあるので、敢えてメモを取らなくても大丈夫だろう。
俺が問題視しているのは、校長先生からの、鶴見先生の代わりに入る予定の川越先生紹介の項目だ。
「霧島先生、コーヒー飲まれますか?」
それでだろうか。
音芽が、自分が淹れるついでに俺のも淹れようか?と誘ってくれた。その雰囲気がいかにもカレカノという感じがしたから。
「ん? ああ、頼……お願いします」
俺はボォーッとする余り、危うく家でするみたいに「頼む」と言いそうになって、慌てて訂正する羽目になる。
どうも最近、俺は浮かれポンチな余り、音芽よりもそういう〝うっかりミス〟が増えている気がするんだ。
音芽に突っ込まれる前になんとかしねぇと。
そう思った矢先、音芽が俺から隠れるようにほくそ笑んだのに気付いた俺は、バツが悪い思いを隠したいみたいに彼女を軽く睨んで牽制した。
途端ビクッとして悔しそうに唇をとんがらせるのが見えて、俺は分かりやすい音芽の様子に心の中でひとりニヤリとしてしまう。
本当俺の彼女は隠し事が出来なくて、最高に可愛い!
***
俺はブラックコーヒー派。
対して、音芽はミルクをたっぷり入れないとコーヒー自体が飲めないお子様口だ。
もっというと、どちらかと言えばコーヒーよりミルクティー派で。
『それ、どう見てもコーヒーフレーバーや紅茶フレーバーの牛乳だよな!?』というものを美味しそうに飲むところも、甘い雰囲気を身にまとう音芽にピッタリに思えて好もしいな?とか思っていたりするのだけれど、悔しいから本人には内緒だ。
「どうぞ」
机上へ置かれた紙片にスッカリ気を持って行かれていた俺は、コーヒーを持ってきてくれた音芽が、俺の机へカップを置いてくれた気配に驚いて肩を震わせた。
いつもならさりげなく音芽の指先に触れて「ありがとう」と揶揄いまじりに彼女の愛らしい反応をうかがうところだが、今日の俺はそれどころではなくて。
小さく礼の言葉をつぶやくなり、不吉な内容が書かれた紙片に視線を戻した。
きっと、音芽も俺の態度に違和感を覚えたんだろう。
しばし物問いたげに俺の様子を見つめていたけれど、諦めたように自分のデスクへ戻ると、書類トレイに入れられたお知らせプリントを手に取った。
そうしながらも、チラチラとこちらへ向けられる視線で、手にしたそれが、俺が今見ているのと同じやつかどうか探られているのが分かる。
まぁ、それしか入ってねぇんだからそうだと言うのはバレバレなんだが。
うちの学校では、毎朝知らせたいことのある先生方が各々小さなメモ紙に連絡事項を書いて、取りまとめ役の教務へ渡すことになっている。
教務は、それを日付と一緒に一枚の紙にランダムに貼り付けて印刷してから、朝の職員会議に間に合わせるよう各自の机に配っておいてくれるのだけれど。
俺と音芽がいま手にしているのも、そうやってできた職朝会議用のお知らせメモ一覧だ。
これに書かれたメモに沿って話が進むというのが毎朝の流れで。
今日は養護の逢地先生からの給食の食器の返し方への改善してもらいたい点と、図書室からの利用時間変更の知らせ、事務方からのパソコン入れ替え工事の日時の知らせ、それから校長からの臨時職員受入れに関する項目がトピックの全てだ。
逢地先生のは子供たちが給食の食器を返す際に指導しないといけないので、必要があればメモを取っておかねばなるまい。
図書室と事務方のお知らせは職員室内の月間行事予定のホワイトボードにもメモ書きがしてあるので、敢えてメモを取らなくても大丈夫だろう。
俺が問題視しているのは、校長先生からの、鶴見先生の代わりに入る予定の川越先生紹介の項目だ。
10
あなたにおすすめの小説
17歳男子高生と32歳主婦の境界線
MisakiNonagase
恋愛
32歳主婦のカレンはインスタグラムで20歳大学生の晴人と知り合う。親密な関係となった3度目のデートのときに、晴人が実は17歳の高校2年生だと知る。
カレンと晴人はその後、どうなる?
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
中1でEカップって巨乳だから熱く甘く生きたいと思う真理(マリー)と小説家を目指す男子、光(みつ)のラブな日常物語
jun( ̄▽ ̄)ノ
大衆娯楽
中1でバスト92cmのブラはEカップというマリーと小説家を目指す男子、光の日常ラブ
★作品はマリーの語り、一人称で進行します。
熟女愛好家ユウスケの青春(熟女漁り)
MisakiNonagase
恋愛
高校まで勉強一筋で大学デビューをしたユウスケは家庭教師の教え子の母親と不倫交際するが、彼にとって彼女とが初の男女交際。そこでユウスケは自分が熟女好きだと自覚する。それからユウスケは戦略と実戦を重ねて、清潔感と聞き上手を武器にたくさんの熟女と付き合うことになるストーリーです。
ちょっと大人な物語はこちらです
神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な短編物語集です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる