【R18】温和はオトメをもっと上手に愛したい

鷹槻れん

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川越筑紫

鶴見先生の代わり

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 職員室に入って時計を見ると、今日はいつもよりゆとりがあって。

霧島きりしま先生、コーヒー飲まれますか?」

 それでだろうか。
 音芽おとめが、自分が淹れるついでに俺のも淹れようか?と誘ってくれた。その雰囲気がいかにもカレカノという感じがしたから。

「ん? ああ、たの……お願いします」

 俺はボォーッとする余り、危うく家でするみたいに「頼む」と言いそうになって、慌てて訂正する羽目になる。

 どうも最近、俺は浮かれポンチな余り、音芽よりもそういう〝うっかりミス〟が増えている気がするんだ。

 音芽に突っ込まれる前になんとかしねぇと。

 そう思った矢先、音芽が俺から隠れるようにほくそ笑んだのに気付いた俺は、バツが悪い思いを隠したいみたいに彼女を軽く睨んで牽制けんせいした。

 途端ビクッとして悔しそうに唇をとんがらせるのが見えて、俺は分かりやすい音芽の様子に心の中でひとりニヤリとしてしまう。

 本当俺の彼女は隠し事が出来なくて、最高に可愛い!


***


 俺はブラックコーヒー派。
 対して、音芽はミルクをたっぷり入れないとコーヒー自体が飲めないお子様口だ。
 もっというと、どちらかと言えばコーヒーよりミルクティー派で。
 『それ、どう見てもコーヒーフレーバーや紅茶フレーバーのだよな!?』というものを美味しそうに飲むところも、甘い雰囲気を身にまとう音芽にピッタリに思えて好もしいな?とか思っていたりするのだけれど、悔しいから本人には内緒だ。

「どうぞ」

 机上へ置かれた紙片にスッカリ気を持って行かれていた俺は、コーヒーを持ってきてくれた音芽おとめが、俺の机へカップを置いてくれた気配に驚いて肩を震わせた。

 いつもならさりげなく音芽の指先に触れて「ありがとう」と揶揄からかいまじりに彼女の愛らしい反応をうかがうところだが、今日の俺はそれどころではなくて。
 小さく礼の言葉をつぶやくなり、不吉な内容が書かれた紙片に視線を戻した。

 きっと、音芽も俺の態度に違和感を覚えたんだろう。
 しばし物問いたげに俺の様子を見つめていたけれど、諦めたように自分のデスクへ戻ると、書類トレイに入れられたお知らせプリントを手に取った。

 そうしながらも、チラチラとこちらへ向けられる視線で、手にしたそれが、俺が今見ているのと同じやつかどうか探られているのが分かる。

 まぁ、それしか入ってねぇんだからそうだと言うのはバレバレなんだが。

 うちの学校では、毎朝知らせたいことのある先生方が各々小さなメモ紙に連絡事項を書いて、取りまとめ役の教務へ渡すことになっている。
 教務は、それを日付と一緒に一枚の紙にランダムに貼り付けて印刷してから、朝の職員会議に間に合わせるよう各自の机に配っておいてくれるのだけれど。

 俺と音芽がいま手にしているのも、そうやってできた職朝会議用のお知らせメモ一覧だ。

 これに書かれたメモに沿って話が進むというのが毎朝の流れで。

 今日は養護の逢地おおち先生からの給食の食器の返し方への改善してもらいたい点と、図書室からの利用時間変更の知らせ、事務方からのパソコン入れ替え工事の日時の知らせ、それから校長からの臨時職員受入れに関する項目がトピックの全てだ。

 逢地おおち先生のは子供たちが給食の食器を返す際に指導しないといけないので、必要があればメモを取っておかねばなるまい。

 図書室と事務方のお知らせは職員室内の月間行事予定のホワイトボードにもメモ書きがしてあるので、敢えてメモを取らなくても大丈夫だろう。

 俺が問題視しているのは、校長先生からの、鶴見つるみ先生の代わりに入る予定の川越かわごえ先生紹介の項目だ。
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