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川越筑紫
要らんこと、思い出すなよ?
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(音芽、大丈夫だぞ? お前は俺が守ってやるからな?)
学生の頃のように奏芽や音芽の同級生の朝日さんはいない。
(俺がしっかりしねぇと!)
そう決意した俺の横で、マグカップを手にした音芽が「んっ」とつぶやいて眉根を寄せた。
恐らく口にしたコーヒーが苦すぎたんだろう。
子供の頃から、ただのコーヒーフレーバー牛乳かよ!と思ってしまうくらい、音芽はコーヒーにミルクをたっぷり入れないと飲めない女だった。
(可愛いな、ホント)
そう言うところも含めて愛しくて仕方がないと思いつつ……俺はいつも通り――。
音芽が運んできてくれたブラックコーヒーを口に含んだ。
ビターで香り高い液体が喉を通過していくのを感じながら、(今日はいつもより苦めだな?)と思った。
目一杯平気なふりを装ってはみたものの、案外俺の不安な気持ちを代弁しているのかも知れない――。
***
そうこうしているうちに職員会議が始まって……俺は出来れば一生会いたくなかった女――川越筑紫と対面した。
「川越筑紫と申します。短い期間になるとは思いますが、精一杯頑張りますのでよろしくお願いします」
川越が皆の前で挨拶をして頭を下げたと同時、さらりと流れた髪の毛が顔を隠して表情が窺い知れなくなる。
そのことに、俺は妙に落ち着かなくなった。
髪の長さは音芽よりほんの少し短いショートボブ。
光が当たると赤みがかかって見える髪色は、音芽と同じぐらいのトーンだろうか。
俺の愛する音芽を模しているようにすら感じられるその雰囲気に、背中を嫌な汗が伝う。
ふと音芽を見れば、音芽もそんな川越に釘付けのようで。
あの女の顔を見た途端、音芽に変化が現れるんじゃないかと気が気じゃなかった俺だが、どうやらその心配はなさそうで、そこだけはホッとする。
そればかりか、音芽は挨拶を終えて姿勢を正した川越の様子に、どこか羨望の眼差しさえ送っているように見えた。
大方、〝すごい美人〟とでも思って見惚れているんだろう。
音芽の考えていることは表情だけで大体分かる。
(分かりやす過ぎてホント危なっかしいんだよ、お前は!)
だからこそ、川越とのことを音芽に思い出させるわえにはいかない、と心の中で強く決意した。
そのために必要なら、俺は音芽に恨まれても構わねぇとすら思う。
音芽に川越のことを思い出されるくらいなら、その方が何億倍もマシだからな。
校長の横に立っている感じからして、川越は俺が奴のことを知っている高校時代より、少し身長が伸びた印象だ。
おそらく俺の音芽より5センチぐらい高いくらいだろうか。
(男好きしそうな、嫌味なくらい官能的な身体つきは変わってねぇな)
川越に強い視線を浴びせながら、俺はこれからのことに頭を悩ませて一人小さく嘆息した。
ふと横を見ると、音芽が川越を見つめたまま小首を傾げていて――。
(要らんこと、思い出すなよ?)
それを見て、俺がそう不安を感じたのは致し方のないことだと思う。
俺たちの関係は、音芽には絶対に思い出させたくないのだから――。
学生の頃のように奏芽や音芽の同級生の朝日さんはいない。
(俺がしっかりしねぇと!)
そう決意した俺の横で、マグカップを手にした音芽が「んっ」とつぶやいて眉根を寄せた。
恐らく口にしたコーヒーが苦すぎたんだろう。
子供の頃から、ただのコーヒーフレーバー牛乳かよ!と思ってしまうくらい、音芽はコーヒーにミルクをたっぷり入れないと飲めない女だった。
(可愛いな、ホント)
そう言うところも含めて愛しくて仕方がないと思いつつ……俺はいつも通り――。
音芽が運んできてくれたブラックコーヒーを口に含んだ。
ビターで香り高い液体が喉を通過していくのを感じながら、(今日はいつもより苦めだな?)と思った。
目一杯平気なふりを装ってはみたものの、案外俺の不安な気持ちを代弁しているのかも知れない――。
***
そうこうしているうちに職員会議が始まって……俺は出来れば一生会いたくなかった女――川越筑紫と対面した。
「川越筑紫と申します。短い期間になるとは思いますが、精一杯頑張りますのでよろしくお願いします」
川越が皆の前で挨拶をして頭を下げたと同時、さらりと流れた髪の毛が顔を隠して表情が窺い知れなくなる。
そのことに、俺は妙に落ち着かなくなった。
髪の長さは音芽よりほんの少し短いショートボブ。
光が当たると赤みがかかって見える髪色は、音芽と同じぐらいのトーンだろうか。
俺の愛する音芽を模しているようにすら感じられるその雰囲気に、背中を嫌な汗が伝う。
ふと音芽を見れば、音芽もそんな川越に釘付けのようで。
あの女の顔を見た途端、音芽に変化が現れるんじゃないかと気が気じゃなかった俺だが、どうやらその心配はなさそうで、そこだけはホッとする。
そればかりか、音芽は挨拶を終えて姿勢を正した川越の様子に、どこか羨望の眼差しさえ送っているように見えた。
大方、〝すごい美人〟とでも思って見惚れているんだろう。
音芽の考えていることは表情だけで大体分かる。
(分かりやす過ぎてホント危なっかしいんだよ、お前は!)
だからこそ、川越とのことを音芽に思い出させるわえにはいかない、と心の中で強く決意した。
そのために必要なら、俺は音芽に恨まれても構わねぇとすら思う。
音芽に川越のことを思い出されるくらいなら、その方が何億倍もマシだからな。
校長の横に立っている感じからして、川越は俺が奴のことを知っている高校時代より、少し身長が伸びた印象だ。
おそらく俺の音芽より5センチぐらい高いくらいだろうか。
(男好きしそうな、嫌味なくらい官能的な身体つきは変わってねぇな)
川越に強い視線を浴びせながら、俺はこれからのことに頭を悩ませて一人小さく嘆息した。
ふと横を見ると、音芽が川越を見つめたまま小首を傾げていて――。
(要らんこと、思い出すなよ?)
それを見て、俺がそう不安を感じたのは致し方のないことだと思う。
俺たちの関係は、音芽には絶対に思い出させたくないのだから――。
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