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川越筑紫
邪魔な女
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「川越先生、こちらです」
職員会議が終わってすぐ、校長先生に連れられて川越が俺たちの方へやってきた。
逢地先生は職員会議が終わると同時に「今日は出張があるので」と既に席を空けていて、実質この一角には今、音芽と俺しかいない。
鶴見の机が、川越の仮の席になるのは前もって校長から聞かされて知っていた。
「川越先生、霧島先生、鳥飼先生、急な就労要請になってしまってお互い大変だと思いますが、助け合ってこの難局を何とか乗り切ってくださいね」
校長にそう言われて会釈をしつつ、各々うなずいた。
校長がいなくなったと同時に、川越がそそくさと俺のそばへ近付いてくる。
音芽以外の女に近付かれるのは元々あまり好きではないが、こいつに対しては別の理由から余計に嫌悪感が募った。
「学年主任は霧島先生の方でしたよね? どうぞよろしくお願いします」
だが、仕事は仕事だ。私情を混ぜるべきではない。
「はい、よろしくお願いします。とりあえず一時間目のスタートまでに余り時間もありませんし、歩きながら話しましょう」
仕事モード。なるべく感情を顔に出さないまま答えた俺だったが、川越にニコッと微笑みかけられて、ハッキリ言って不愉快極まりない。
だってこの女は――。
そこまで考えて、川越に微笑み返さないままふと音芽に視線を流せば、俺の可愛い彼女がソワソワと視線を揺らせて不安そうにしているではないか。
川越のやつが、わざとらしく音芽を無視して俺にばかり話しかけるから気にしているんだろう。
(バーカ。お前以外の女なんて、みんなミジンコ以下だ)
心でそう思っていても、言葉にしなきゃ伝わらない。
だが、川越が音芽を無視してくれるならむしろ好都合だとも思って――。
正直な話、俺はこの女を出来るだけ音芽に近付かせたくないのだ。
かと言って、これ以上音芽を疎外して、彼女を傷付けたいわけでもない。
「鳥飼先生も一緒に行きますよ?」
俺の呼びかけに、泣きそうな顔をして佇んでいた音芽が、弾かれたようにこちらを見る。
「あ、……は、はいっ!」
良い返事とともに川越に軽く頭を下げると、そそくさと荷物を両手に抱えて「準備OKですっ!」と俺を見上げてくる音芽が、小動物みたいで可愛くてたまらない。
川越がそんな音芽を見てクスクス笑うから、お前にはこの可愛さの欠片も出せねぇだろ!と思った。
(クソッ! 職員室でなけりゃあ……頭撫で回して『お前のそういう素直なトコ、すげぇいいと思うぞ?』って褒めてやって、思いっきり甘やかしてやるのに!)
顔に出したつもりはないが、川越に探るような視線を向けられているのに気付いた俺は、思わず心の中で舌打ちをした。
――ホント、邪魔な女だ。
対して、音芽の方は川越に笑われて恥ずかしかったんだろう。
いたたまれないみたいに、オロオロと所在なげに視線をさまよわせるから。
俺は軽くうなずいて、気にすることはないと示唆してやった。
「とりあえず笑ってないで川越先生も支度してください。……教書なんかは鶴見先生のがあると思うのでそれを使ってもらって……」
ついでに俺の大事な音芽を笑ったことにも釘を刺しちまったのは、さすがにやり過ぎかとも思ったが、音芽を傷付けるやつは俺にとっても敵なんだから仕方ねぇだろ?
職員会議が終わってすぐ、校長先生に連れられて川越が俺たちの方へやってきた。
逢地先生は職員会議が終わると同時に「今日は出張があるので」と既に席を空けていて、実質この一角には今、音芽と俺しかいない。
鶴見の机が、川越の仮の席になるのは前もって校長から聞かされて知っていた。
「川越先生、霧島先生、鳥飼先生、急な就労要請になってしまってお互い大変だと思いますが、助け合ってこの難局を何とか乗り切ってくださいね」
校長にそう言われて会釈をしつつ、各々うなずいた。
校長がいなくなったと同時に、川越がそそくさと俺のそばへ近付いてくる。
音芽以外の女に近付かれるのは元々あまり好きではないが、こいつに対しては別の理由から余計に嫌悪感が募った。
「学年主任は霧島先生の方でしたよね? どうぞよろしくお願いします」
だが、仕事は仕事だ。私情を混ぜるべきではない。
「はい、よろしくお願いします。とりあえず一時間目のスタートまでに余り時間もありませんし、歩きながら話しましょう」
仕事モード。なるべく感情を顔に出さないまま答えた俺だったが、川越にニコッと微笑みかけられて、ハッキリ言って不愉快極まりない。
だってこの女は――。
そこまで考えて、川越に微笑み返さないままふと音芽に視線を流せば、俺の可愛い彼女がソワソワと視線を揺らせて不安そうにしているではないか。
川越のやつが、わざとらしく音芽を無視して俺にばかり話しかけるから気にしているんだろう。
(バーカ。お前以外の女なんて、みんなミジンコ以下だ)
心でそう思っていても、言葉にしなきゃ伝わらない。
だが、川越が音芽を無視してくれるならむしろ好都合だとも思って――。
正直な話、俺はこの女を出来るだけ音芽に近付かせたくないのだ。
かと言って、これ以上音芽を疎外して、彼女を傷付けたいわけでもない。
「鳥飼先生も一緒に行きますよ?」
俺の呼びかけに、泣きそうな顔をして佇んでいた音芽が、弾かれたようにこちらを見る。
「あ、……は、はいっ!」
良い返事とともに川越に軽く頭を下げると、そそくさと荷物を両手に抱えて「準備OKですっ!」と俺を見上げてくる音芽が、小動物みたいで可愛くてたまらない。
川越がそんな音芽を見てクスクス笑うから、お前にはこの可愛さの欠片も出せねぇだろ!と思った。
(クソッ! 職員室でなけりゃあ……頭撫で回して『お前のそういう素直なトコ、すげぇいいと思うぞ?』って褒めてやって、思いっきり甘やかしてやるのに!)
顔に出したつもりはないが、川越に探るような視線を向けられているのに気付いた俺は、思わず心の中で舌打ちをした。
――ホント、邪魔な女だ。
対して、音芽の方は川越に笑われて恥ずかしかったんだろう。
いたたまれないみたいに、オロオロと所在なげに視線をさまよわせるから。
俺は軽くうなずいて、気にすることはないと示唆してやった。
「とりあえず笑ってないで川越先生も支度してください。……教書なんかは鶴見先生のがあると思うのでそれを使ってもらって……」
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