197 / 198
記憶の扉
兄二人のガード
しおりを挟む
「わた、しっ、学生の頃とは……違い、ますっ!」
俺にしがみついてやっとの状態で立っているくせに、音芽が川越に楯突くみたいに声を張り上げて、俺は正直驚いた。
***
高校時代のあの日、俺が覚えている音芽は、首筋に望まない〝キスマーク〟を付けられて、窓際に倒れていた痛々しい姿だ。
放課後。校庭で部活に勤しんでいた俺たちの二つ下の後輩の三岳一路を、「一路、どうしよう! 音芽がっ!」と泣きそうになりながら、血相を変えて呼びにきたのは、音芽の同級生で親友の朝日佳乃花さんだった。
音芽という名に、俺と奏芽も即座に反応して、焦るあまり要領を得ない朝日さんからなんとか話を聞き出して――。
慌ててみんなで連れ立って、朝日さんに案内されるまま、教室の片隅で倒れている音芽を見つけたのだ。
倒れている人間を、無闇に動かしてはいけない。
普段なら冷静に判断出来るはずのそんな簡単なことが、意識を失った音芽を前にした途端、全て頭から吹き飛んだ。
俺がどんなに呼びかけてもなかなか目を覚まさない音芽に、俺がどれだけ心配したことか。
あの当時、俺は音芽を異性として意識し過ぎるあまり、彼女のことを避けていた時期だった。いわゆる〝好き避け〟というやつだ。
俺は音芽のことを女として見ているのに、音芽は俺のことを幼い頃と変わらず実兄・奏芽を『カナ兄』と呼ぶのと同様、『ハル兄』と呼んで、〝妹の顔〟をして懐いてくるのが辛かったというのもある。
そんな音芽につらく当たって遠ざけながら……だけど、愛しい音芽に悪い虫がつかないよう、遠巻きながらも彼女のことを奏芽と一緒に守っていた。
正直惚れた弱みとかではなく、音芽は本当に可愛かったし、実際俺たちと同級の男どもにも人気があった。
音芽と同学年や、俺たちの一個下の男たちも入れたらライバルはそこかしこにいただろう。
音芽はちっこくて華奢くせに、胸だけはやたら大きかったし、鈍感天然娘なところがあるからはっきり言ってガードがかなり甘い。
よく廊下なんかで『鳥飼妹、ワンチャンいけそうじゃね?』とかバカどもが話しているのを聞くことも多々あったし、その度に俺や奏芽がそういう不埒な輩を蹴散らしてきたのだ。
そうしていつしか兄と幼なじみが鬱陶しくて手出しが出来ない高嶺の花として、音芽が男たちから敬遠されるようになるくらい、俺と奏芽は音芽を徹底的に悪い虫から守った。
俺にしがみついてやっとの状態で立っているくせに、音芽が川越に楯突くみたいに声を張り上げて、俺は正直驚いた。
***
高校時代のあの日、俺が覚えている音芽は、首筋に望まない〝キスマーク〟を付けられて、窓際に倒れていた痛々しい姿だ。
放課後。校庭で部活に勤しんでいた俺たちの二つ下の後輩の三岳一路を、「一路、どうしよう! 音芽がっ!」と泣きそうになりながら、血相を変えて呼びにきたのは、音芽の同級生で親友の朝日佳乃花さんだった。
音芽という名に、俺と奏芽も即座に反応して、焦るあまり要領を得ない朝日さんからなんとか話を聞き出して――。
慌ててみんなで連れ立って、朝日さんに案内されるまま、教室の片隅で倒れている音芽を見つけたのだ。
倒れている人間を、無闇に動かしてはいけない。
普段なら冷静に判断出来るはずのそんな簡単なことが、意識を失った音芽を前にした途端、全て頭から吹き飛んだ。
俺がどんなに呼びかけてもなかなか目を覚まさない音芽に、俺がどれだけ心配したことか。
あの当時、俺は音芽を異性として意識し過ぎるあまり、彼女のことを避けていた時期だった。いわゆる〝好き避け〟というやつだ。
俺は音芽のことを女として見ているのに、音芽は俺のことを幼い頃と変わらず実兄・奏芽を『カナ兄』と呼ぶのと同様、『ハル兄』と呼んで、〝妹の顔〟をして懐いてくるのが辛かったというのもある。
そんな音芽につらく当たって遠ざけながら……だけど、愛しい音芽に悪い虫がつかないよう、遠巻きながらも彼女のことを奏芽と一緒に守っていた。
正直惚れた弱みとかではなく、音芽は本当に可愛かったし、実際俺たちと同級の男どもにも人気があった。
音芽と同学年や、俺たちの一個下の男たちも入れたらライバルはそこかしこにいただろう。
音芽はちっこくて華奢くせに、胸だけはやたら大きかったし、鈍感天然娘なところがあるからはっきり言ってガードがかなり甘い。
よく廊下なんかで『鳥飼妹、ワンチャンいけそうじゃね?』とかバカどもが話しているのを聞くことも多々あったし、その度に俺や奏芽がそういう不埒な輩を蹴散らしてきたのだ。
そうしていつしか兄と幼なじみが鬱陶しくて手出しが出来ない高嶺の花として、音芽が男たちから敬遠されるようになるくらい、俺と奏芽は音芽を徹底的に悪い虫から守った。
0
あなたにおすすめの小説
17歳男子高生と32歳主婦の境界線
MisakiNonagase
恋愛
32歳主婦のカレンはインスタグラムで20歳大学生の晴人と知り合う。親密な関係となった3度目のデートのときに、晴人が実は17歳の高校2年生だと知る。
カレンと晴人はその後、どうなる?
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
中1でEカップって巨乳だから熱く甘く生きたいと思う真理(マリー)と小説家を目指す男子、光(みつ)のラブな日常物語
jun( ̄▽ ̄)ノ
大衆娯楽
中1でバスト92cmのブラはEカップというマリーと小説家を目指す男子、光の日常ラブ
★作品はマリーの語り、一人称で進行します。
熟女愛好家ユウスケの青春(熟女漁り)
MisakiNonagase
恋愛
高校まで勉強一筋で大学デビューをしたユウスケは家庭教師の教え子の母親と不倫交際するが、彼にとって彼女とが初の男女交際。そこでユウスケは自分が熟女好きだと自覚する。それからユウスケは戦略と実戦を重ねて、清潔感と聞き上手を武器にたくさんの熟女と付き合うことになるストーリーです。
ちょっと大人な物語はこちらです
神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な短編物語集です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる