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記憶の扉
変わっていない香りと、変わりすぎた外見
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奏芽には、『どうせ音芽はハルが嫁にするんだろ?』とよく揶揄われたものだ。
俺は奏芽にだけは自分の本心を話していたからまぁ仕方なかったのだが、音芽にだけは絶対バラすなと釘を刺すのは忘れなかった。
なのに、そんな俺たちの目を掻い潜って、誰が音芽の身体に触れたんだろう?
ただ一つ分かったのは、倒れている音芽とともに残っていた香りが、奏芽が当時付き合っていた喜多里筑紫のものだということで――。
その香りが、数年ぶりに川越筑紫として俺たちの前に姿を現しても変わっていなかったことに、俺は意図的なものを感じてしまった。
何故ならば、そもそも高校生の頃の喜多里筑紫という女は、漆黒に近い、長い黒髪をたたえた真面目そうな女だったはずなのに、再会した川越は、まるで高校生の頃の音芽を忠実になぞったような髪型に一新されていたからだ。
赤みがかって見えるコーラルピンクラテに染められた髪色も、ショートボブという髪型も……女子高生の頃の音芽をコピーしているようにしか、俺には見えなかった。
変わっていない香りと、変わりすぎた外見。
それらは音芽に、『高校生の頃を思い出して?』とアピールしているようにしか俺には感じられなくて、川越と再会するなり、危機感と嫌悪感を抱かずにはいられなかったのを覚えている。
幸い生来鈍感なところのある音芽は、俺が直接的に川越からちょっかいを掛けられるのを防いだ甲斐があってか、川越からのアピールには気づいていなさそうでホッとしたのだ。
だが――。
川越との間に立ち塞がるように立つ俺に「温和……」と静かな声音で呼びかけて、俺の前――川越の真正面――に進み出た音芽の横顔からは、そういうのにも全て気が付いたよ? と書かれているように見えて……。
言い知れぬ不安に苛まれた俺は、思わず「音芽……」と彼女を呼び止めずにはいられない。
そうしながら、俺の頭の中には教室で意識を失っていた高校生の頃の音芽の姿が、嫌になるくらいはっきりと思い出されていた。
俺は奏芽にだけは自分の本心を話していたからまぁ仕方なかったのだが、音芽にだけは絶対バラすなと釘を刺すのは忘れなかった。
なのに、そんな俺たちの目を掻い潜って、誰が音芽の身体に触れたんだろう?
ただ一つ分かったのは、倒れている音芽とともに残っていた香りが、奏芽が当時付き合っていた喜多里筑紫のものだということで――。
その香りが、数年ぶりに川越筑紫として俺たちの前に姿を現しても変わっていなかったことに、俺は意図的なものを感じてしまった。
何故ならば、そもそも高校生の頃の喜多里筑紫という女は、漆黒に近い、長い黒髪をたたえた真面目そうな女だったはずなのに、再会した川越は、まるで高校生の頃の音芽を忠実になぞったような髪型に一新されていたからだ。
赤みがかって見えるコーラルピンクラテに染められた髪色も、ショートボブという髪型も……女子高生の頃の音芽をコピーしているようにしか、俺には見えなかった。
変わっていない香りと、変わりすぎた外見。
それらは音芽に、『高校生の頃を思い出して?』とアピールしているようにしか俺には感じられなくて、川越と再会するなり、危機感と嫌悪感を抱かずにはいられなかったのを覚えている。
幸い生来鈍感なところのある音芽は、俺が直接的に川越からちょっかいを掛けられるのを防いだ甲斐があってか、川越からのアピールには気づいていなさそうでホッとしたのだ。
だが――。
川越との間に立ち塞がるように立つ俺に「温和……」と静かな声音で呼びかけて、俺の前――川越の真正面――に進み出た音芽の横顔からは、そういうのにも全て気が付いたよ? と書かれているように見えて……。
言い知れぬ不安に苛まれた俺は、思わず「音芽……」と彼女を呼び止めずにはいられない。
そうしながら、俺の頭の中には教室で意識を失っていた高校生の頃の音芽の姿が、嫌になるくらいはっきりと思い出されていた。
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大家になって仮抑えしたくせにツンツンした態度を音芽ちゃんにとる温和をニヤニヤ見守りたい......
素敵な感想を有難うございます٩(ˊᗜˋ*)و
思わずクスッと笑ってしまいました♥
素直じゃない腹黒策士の様子をぜひニヤニヤしながら見守ってやってください♥