悪役令嬢はモブ化した

F.conoe

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寂れたダンジョン

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頬杖ついてぐだぐだしていた受付のお嬢さんが数秒固まりました。それからしゃきっと立ち上がり、扉をあけてこちらに出てきます。

「こ、これはご無礼をいたしました。ささ、臭くて申し訳ありませんけど、椅子でもどうぞ。お茶、お飲みになります? あ、そちらのお付きの方達も」

「気になさらないで。それで、あなたに聞きたいのですけれど」

「はい!」

ピシッと立った。

「あなたがもし一流冒険者になったとして、この町のダンジョン目当てにしばらく定住してもいいかなと思います?」

「えーっと、それは、本音と建て前どちらをお望みです?」

「本音で!」

「では。絶対嫌です!」

「なぜ?」

「まず、よく来ることになるギルドが臭いとか嫌です!」

「そうね」

「でも儲かるなら我慢しますけど、第6階層で出てくるアンデッド系モンスター対策には神官を連れて行かなくてはいけないんですが、神官は殺生が嫌いとか言って戦場では役立たずなやつばっかりなんです。だからそこから先に進むのが困難なんですよ! 
運良くいい神官を仲間にしたとしても、アンデッドなんて早々出てこないうえに、神官の回復魔法は治癒魔導師の回復魔法に速度で劣りますから、ほかの冒険では役立たずです。
なので一時的な仲間にするのがセオリーなんですけど、そんな不確実な仕事やる神官いませんて。普通に町で治療に明け暮れてるほうが安定してもうかりますし。ダンジョンとか危険だし。で、まともな神官ほど参加してくれないんですよ。
なのでこのせいで7階層以降に行けない。しかし通常ダンジョン換算64階層にあたる7階層からやっとトップ冒険者の戦場になるのにそこへ行けないとなると、うまみがないです。あと町もさびれてて宿屋もちょっとランクが低いです」

「ふんふん。すっごく貴重な意見ね。ありがとう。あとは何かあるかしら?」

「でももし、もしアンデッドゾーンをクリアできたなら、通常128階層にあたるハイレベルなアイテムや魔物素材がたった8階層進むだけで手に入るとか、美味しいと思います!」

「なるほどなるほど。つまり問題は、臭いと、神官ね」

「あと、現状期待されていなさすぎるのでダンジョン内の依頼が一個もありません! 近所の魔物討伐とかそんなんばっかりで、全然ダンジョンシティっぽくないです!」

「なるほど。ちなみにダンジョンには何が?」

「数少ない6階層突破パーティの情報によれば、7階層で目立ったものといえば武器防具に大活躍のミスリルでできたミスリルゴーレムに、アダマンタイトタートル、8階層にはエリクサーの実、虹色の果実、夢の砂でしょうか」

ミスリル、アダマンタイト、は武器防具として優秀な素材です。
一流ほどこの素材の武器防具を持っているものであるが、得るにはその二種の魔物を見つけなきゃいけないんだけど、これがなかなかいない。生息地がないの。ダンジョンの深い階層でたまに出るねーって感じのレアものよ。

エリクサーの実はそのままエリクサーの素材として重要な実。
四肢欠損ししけっそん、脳障害、神経障害、記憶障害、シミ、シワ、ソバカス、視力、筋力、成長力、気力、あらゆる病と老化現象を治してくれるので需要じゅようはあるが、実がないの。

不老長寿のエルフたちだけがその生息地を知っているというが、エルフの森は人間不可侵。
入れば殺されても文句が言えないのである。何度かそれで戦争あったけど人間のぼろ負け。そりゃそうよね。見えてる負け戦だったわ。よくやるわ。
またエリクサーは飲み続けないと意味がないので、一回飲んだだけでは寿命もさほど伸びはしない。ただ若返ったり回復したりするだけかな。

虹色の果実は、すっごい美味しいのはそうなんだけれど、本領はそこじゃないの。
その果汁を薄めた水を大地にまくと、10年は連続して作物栽培しても手間いらずな栄養豊富な大地になるのよ。なお濃度が高いほど年数も伸びる。あと味もとても美味しくなるそうよ。
干ばつがあっても育ったおかげで飢えずにすんだといわれているわ。水もいらないのね。

夢の砂は、この砂を身にふりかけると、その人が会いたい人の姿を目の前に作り出してくれるらしい。触れることはできないけどね。
運命の人に出会いたいと願えば、あったことがなくてもその姿が
亡くなった人に出会いたいと願えばその生きた姿が見られるの。しかも生前の記憶を持った状態なので会話もできる。
運命の人のパターンでは、あなたはどこにいるのか?とか、そういった話もできるし
亡くなった人のパターンでは、死んだという自覚はなく、願った人が一番「この人らしい」と思う暮らしをしていた時の姿で現れる。
もしくはこの砂で育てた植物は花びらがキラキラと輝いてとても美しいらしい。この花を枕元に飾っているといい夢を見られるそうよ。

どれもこれも人の欲望に火をつける品物。
我が家も虹色の果実は三つくらい欲しいわ。あれ腐らないらしいし。

「あらあら、永遠に需要のありつづける高価格商品じゃない?」

「そうなんですよ! 行ければ! 行けさえずれば! そのほかにも魔力の種とか、時空のカケラとか、高価買取商品の宝庫なのに!」

魔力の種は、自力不可能と言われる魔力を増やすことができる種よ。
元の魔力量の1,5倍にするこの種。食べ続ければ世界最強も夢じゃない!

時空のカケラは、小さなバッグなのに中身は大容量! という夢のバッグを作るための材料。に、なると目算されているもの。
まだ実現されていないのよね。世界に3個だけしかなくって、いずれも国宝として守られているので、錬金術への使用拒否されている。そのうちの一つが我が公爵領から産出した。まさにこのダンジョンからね。

通常、ダンジョンの100階層より上は強さ比べというより根性比べといわれているわ。
もちろん敵は階層ごとに強さをあげていくのですけど、それ以上に、
だだっ広い階層を、どこにあるか分からない階段探してさまようのが一番厳しいと聞いていますの。
広いからアイテム探しも大変だし。しかも100以降は階層につき1組のパーティしか入れない。入り直したら入り直したで、内部地図が変わっている。
だから進むのがきついのですって。
そんなめんどい100以降階層を三段飛ばしのようにたった8階層だけでいけるとなれば、このダンジョンも盛況するでしょう。
9階層目に挑戦して死んじゃう人もいそうですけどねぇ。

「なるほど。初期投資が必要ね。ありがとう。なんとかしてみるわ」

「本当ですかお嬢さま!」

「うふふ。まっかせなさーい!」

「よろしくお願いしまっす!」

カクッと90度に腰を曲げる受付のお嬢さん。とりあえずは、女の子をこの臭い空間においておくのはかわいそうなので、臭い対策からしましょうか。
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