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野薔薇怪異談集全100話
82話「青白い少年」
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あの日、私は、いつもと同じように帰り道の公園を通りかかった。
夏が近いというのに風は妙に冷たく、太陽も雲に隠れたままだった。
時計を見ると、午後四時半。子どもたちの遊ぶ声が聞こえる時間帯。
なのに、その公園には、子どもがひとりしかいなかった。
ブランコのそば、立ったまま動かない子。
男の子だった。
でも、その姿には違和感しかなかった。
⸻
服は真夏なのに長袖。
袖口から出た手は、血の気を失ったように白い。
顔も同じく、まるで薄い膜をかぶせたような青白さだった。
ぼうっと立ち尽くしている彼に、別の少年たちが近づいた。
3人いた。彼を囲むようにして、声をかけていた。
「なにしてんだよ、おまえ」「声出せよ」「気味悪ぃなあ」
――いじめ、というほどの悪意は感じなかった。
無遠慮に“からかっている”ような雰囲気だった。
私は躊躇いながらも、声をかけた。
「やめなさい。そういうの、よくないわよ」
すると、青白い少年が私の方を振り向いた。
⸻
そして、まるで私の言葉が聞こえていなかったかのように、
静かに、そして首を傾げながら、こう言ったのだ。
「……お姉ちゃん、誰と話してるの?」
⸻
その瞬間、背筋が凍った。
さっきまで彼の肩を掴んでいた少年たちが――
一人残らず、跡形もなく消えていた。
まるで最初からいなかったかのように。
地面にあったはずの足跡さえ、見当たらなかった。
彼だけが、ぼんやりとそこに立っている。
私は訳も分からず頭を下げて、その場を立ち去った。
怖くて、なぜか振り返れなかった。
⸻
それからというもの、私はあの少年を見るようになった。
通勤途中の電車の窓に、家の玄関先に、鏡の奥に。
ふとしたときに、視界の端で――彼がこちらを見ている。
彼の顔は、相変わらず青白くて、表情はない。
ただ、最近になって気づいた。
私の手の色も、日に日に青白くなっている。
血の気が引くような感覚。
夜、眠っていても、どこか冷たい指先で触られているような感触がある。
⸻
もしかして、あのとき――
私が「見てしまった」から、今度は私の番なのかもしれない。
⸻
どうか、これを読んでいるあなた。
もし公園で青白い子どもを見かけても、声をかけてはいけない。
気づかれたら、終わりです。
⸻
青白い少年
完
夏が近いというのに風は妙に冷たく、太陽も雲に隠れたままだった。
時計を見ると、午後四時半。子どもたちの遊ぶ声が聞こえる時間帯。
なのに、その公園には、子どもがひとりしかいなかった。
ブランコのそば、立ったまま動かない子。
男の子だった。
でも、その姿には違和感しかなかった。
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服は真夏なのに長袖。
袖口から出た手は、血の気を失ったように白い。
顔も同じく、まるで薄い膜をかぶせたような青白さだった。
ぼうっと立ち尽くしている彼に、別の少年たちが近づいた。
3人いた。彼を囲むようにして、声をかけていた。
「なにしてんだよ、おまえ」「声出せよ」「気味悪ぃなあ」
――いじめ、というほどの悪意は感じなかった。
無遠慮に“からかっている”ような雰囲気だった。
私は躊躇いながらも、声をかけた。
「やめなさい。そういうの、よくないわよ」
すると、青白い少年が私の方を振り向いた。
⸻
そして、まるで私の言葉が聞こえていなかったかのように、
静かに、そして首を傾げながら、こう言ったのだ。
「……お姉ちゃん、誰と話してるの?」
⸻
その瞬間、背筋が凍った。
さっきまで彼の肩を掴んでいた少年たちが――
一人残らず、跡形もなく消えていた。
まるで最初からいなかったかのように。
地面にあったはずの足跡さえ、見当たらなかった。
彼だけが、ぼんやりとそこに立っている。
私は訳も分からず頭を下げて、その場を立ち去った。
怖くて、なぜか振り返れなかった。
⸻
それからというもの、私はあの少年を見るようになった。
通勤途中の電車の窓に、家の玄関先に、鏡の奥に。
ふとしたときに、視界の端で――彼がこちらを見ている。
彼の顔は、相変わらず青白くて、表情はない。
ただ、最近になって気づいた。
私の手の色も、日に日に青白くなっている。
血の気が引くような感覚。
夜、眠っていても、どこか冷たい指先で触られているような感触がある。
⸻
もしかして、あのとき――
私が「見てしまった」から、今度は私の番なのかもしれない。
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どうか、これを読んでいるあなた。
もし公園で青白い子どもを見かけても、声をかけてはいけない。
気づかれたら、終わりです。
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青白い少年
完
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