小さな町の不思議・怖い話

みつか

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家の近くに建て替えた橋がある。

昔からの言い伝えがあるのだが、それを守らなかったせいか時々人以外の「ナニか」が立つ事がある。

『昔からの言い伝え』とは
新しく橋を建てるとき、橋が出来上がったら開通祝い?的な行事をするのが習わしと聴いていた。

集落の最年長者が※祝詞(のりと)を述べ先頭を歩き、その後ろを集落の人々が通る。
『橋渡し』の行事。

(※《祝詞》祝の言葉。神様への感謝、言霊を込めて読み上げる)

元々あった橋を壊して「作り替えた」というのもあってか、面倒くさがったのかは分からないが、その時の区長は『橋渡し』の行事を省いたのである。

手すりもボロボロに錆びていた古い橋からピカピカの綺麗な橋に無事建て替えられたのだが、橋自体は新しいのになんともいえない雰囲気が漂っている。

「新しい」筈なのに……漂う雰囲気はなんだか前の橋より陰湿な空気を纏って(まとって)いる。

集落の人で感が鋭い人は「あの行事」しなかったからだろうね。
何も起こらないと良いけどね。

などと、陰で話す者、避ける人、普通に通る人とに分かれた。

前の橋は時期になると、ツバメが飛んできて橋の下のくぼみ部分に巣を作るのが恒例だったのだが、新しい橋の下にも同じくぼみがあるが全然作らなくなった。鳥類も何かを感じ取っているかの様だった。

そんな事もあって、元々『橋渡し』の行事をしていないからなのかなんだかその橋の雰囲気が嫌で橋を通る気がせずにいつも遠回りをしていた。
そんなある日の夕暮れ時。
川側の道路を歩いて帰宅。
玄関ではなく、勝手口のような入り口から家に入ろうとした時、橋の入り口付近に黒く人影が見える。川上(かわかみ)の方を見つめている後ろ姿だった。

(はて?もう日が暮れるのにまだ夕涼みしてる人がいる。誰だろう?)

話しかける事はしなかった(人見知りの為)集落の人にしてはなんだか見かけたことがない体型。
(同じ集落の人なら何となく〇〇兄(あにぃ)、〇〇姉(ねぇ)だな~と分かる。)

自分自身、日が暮れる前に家に入りたかった。電灯を持っていなかったし、夜はムン(妖怪)の住む世界に代わるという迷信を少し信じているから。

入り口の段差で靴を脱ぎ、※式台(しきだい)に片足を乗せた瞬間、橋の方角から視線を感じる。ゾワリと鳥肌が立つ。(※式台∶玄関の土間と床の段差が大きい時に設置される板の事。)

(……コレは見てはいけない!知らない振りして家に上がらなきゃ!!)

「よっこらしょ!」

右目の端に黒い人影が映る。
すぐ真横でじっと見つめているのを感じるが見えないふりをしつつ、わざと声を出し家に上がる。

戸を開け、素早く家に入るとすぐに戸を閉めて鍵も掛け入り口から速攻で離れる。心臓がバクバクと早鐘を打っている。

家の中、入り口から距離を取って暗くなった外を見る。もう、居ないようだった。

数日後、隣の集落の男性が不慮の事故で山道の道路で亡くなっていたらしく噂になっているのを耳にする。

あの日、橋の入り口で立っていたのは帰り道が分からなくなってしまった男性だったのかもしれない……。憶測だが。

その後も、うっかり夕暮れ時に帰宅するとたまに見かける。

亡くなった集落のおじさんが立っていたり……橋を通れなくて困っているのか、帰れなくて留まっているのかは私には分からない。
自分の家の方角に向かって、只々日が暮れる前まで立っている。夜が更けると夜の闇に消えていく……。

ある時は、急死された橋向かいの母の友達が橋を渡ってこちらへ歩いて来ようとする事もあった。急だった為、亡くなった事が分からないらしい。心のなかで

(何もしてあげられない、どうか安らかにお休み下さい。今までありがとうございます。居るべき場所へお帰り下さい。)

と、言いながら急いで家に駆ける入る事もある。
その後、橋の入り口で寂しそうにする後ろ姿を最後に母の友達を見かける事は無くなった。

夕暮れ時に、たまに橋の入り口に佇む(たたずむ)人を見かけるが、関わらない様にしている。
怖い目に遭うのはごめんだ。

あの橋は、あの世とこの世の橋渡しの役割をしているのかもしれないなと思いつつ。
今日も知らない誰かが橋を渡っていく。








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