小さな町の不思議・怖い話

みつか

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風呂場

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とある施設の浴室には『人』ではない者が居るようだった。

ある日、入居しているお年寄りが大きなお風呂を嫌がる。

時々入浴を拒否する人は居たのだが、異常な程嫌がるのである。

そのお風呂場は大浴場で10人ほど入れるお風呂。浴室はとても大きく銭湯のような作りだった。

そのお年寄りは、大きなお風呂場を極端に嫌がり別の場所にある小さな浴室ならスムーズに入浴するのである。

そんな事が続いたある日、仲良くなった職員へそのお年寄りが言う。

「あのお風呂場には怖いのが居る!絶対に行かない!!恐ろしい!連れて行かれる!」

そんな風に訴えるのである。
その人以外は言う人はいなくて職員の間では

「ただあのお風呂場に行きたくないだけじゃない?遠いから……」

「認知があるから、変なのが居るように見えてるんじゃない?」

「……あの人元ユタ神様だから本当かもよ?」

そんな風に言う人も居て

「えーっ!怖い話辞めて!!私明日お風呂担当なのよ!」

数人は信じる人も居て施設内の噂になった。

お年寄りの中では広がらなかったので、拒否する人はそのお年寄り1人だった。

数年が経ち、そのお年寄りは違う施設へと移動していった。

それ以降、お風呂場に『怖いのが居る』と言う人も居なくなり、職員もすっかりその事を忘れていった。

代わりに

「厨房に夜中に出る」
「ボイラー室に骸骨が埋まってる」
「この施設は元墓地だった」

等の怖い話が度々持ち上がっていた。

だが『出る』と言われる場所はどこもあの『怖いのが居る』と言われたお風呂場に極めて近い場所なのである。

お年寄りの居る施設。まぁ、病院等よくある?話。「出る」噂は付き物。

数年経ち、初期の職員メンバーは居なくなる。諸理由で辞めたり定年だったり……

初期に近いメンバーで残ったのは私だけ……

たまに変な噂話はあがるのだが、実際に見た人は居ない。

長く勤めている分不思議と「見えたり」「どこに出る」というのが大体分かるようになる。

分かる分出来るだけ近づかない様にしたり、見て見ぬふりをする様にしていた。見えていても知らんぷりした。

時には、お年寄りより先に亡くなった子供が夜勤中に自分の親に挨拶にフラリと来ることも……

(そっと手を合わせる)

夜勤明け時の申し送りで

「〇〇さんのお子さんが亡くなったけど本人にはお葬式迄言わないで」

と、お達しがある事も……

それから更に数年。

ある事に気づいた。

だいたい4年周期で職員が再起不能な程の病気になるのである。事故だったり、病気だったり……そろそろその周期。

気をつけないとな!と思いながら仕事に励む日々。

運転中の事故や急病で辞める人が出てしまった……本当にたまたまなのだろうか?

その数年後、諸事情で私自身もその施設を辞める事にした。

辞めると決めたその時から数日、あの例のお風呂場で仕事中体調不良で再起不能になる程の病気になる人が出た。

たまたまなのだろうか?……その人は若く元気な職員だった。

とても元気であった職員が、仕事中に突然血圧が上がりお風呂場で倒れる。

今まで高血圧になった事がない、病気もあまりした事がない若い子がである……いつ復帰出来るか分からないほどの病だった。

そんなおり、久々にお風呂当番になった私……

お風呂の準備にお風呂場へと赴くと、浴室の電気をつけても暗く感じ、お湯が張ってあるにもかかわらずヒンヤリとした空気、ゾクゾクと寒気を感じるのである。
時期は7月。暑い日なのに……

(こんなに暗く重苦しい場所じゃなかったはず……)

そう思いつつ、直感が働く。

「浴槽を見てはイケナイ」

異様な雰囲気。タラリと冷や汗が落ちる。

他の職員が準備に来る。その職員は平気な様子で浴室に入って行く。

その職員を目線だけで追いかける。

目の端に浴槽に両手を広げ、気持ちよさそうに入浴している大きな黒い人影を見る……

到底人の大きさではない大きな人?が「だはーっ!」と言いそうな様子で気持ちよさそうに湯船に浸かっているのである。
二度見するが

「見ちゃだめ見ちゃだめ!!」

本能が叫ぶ。
スッと目線を反らし、脱衣所の準備をする。

終始ゾクゾクする風呂場。

明るい昼間。
いつもは陽の光が入る明るい浴室なのに、お風呂の湯気以外に薄く黒い霧の様なモヤがかかった様に見える薄暗い浴室。

なんとか無事にお風呂当番を終えた。

その数日後、少し年のいった職員がお風呂場で介助後体調不良に陥る。

早退したのだが、次の日には脳の病気が発覚し、本人は戻るつもりであったが仕事復帰は不可能となりそのまま退職する。

欠員が出た為、お風呂当番が回ってくる。

(嫌だなぁ……またアレ居るのかなぁ……)

そんな風に思いながら風呂場へ準備に行く。

不思議な事に前回と違いスッキリとした空気が漂う。陽の光も入り重苦しい雰囲気とは打って変わってとても明るいのである。
普段通りの浴室だった。

言い方は悪いが、生け贄になった職員が2人居たので数年は大人しくしているつもりなのだろうか?と思いながら仕事を終える。

あまりに怖い出来事だった為、誰にも言えなかった。(信じてもらえる自信がなかった)

その数日後その職場を辞めた。

……もし、あの時まじまじと見て、あちら側が私に気づいてあの『黒い大きな何か』のお気に入りになってしまったら私が引き込まれて再起不能になっていたかもしれません。

施設を辞めて数年経つが未だにあの黒い人影は思い出すたび鳥肌が立ち恐怖が蘇る……
そろそろあの周期だ。


アレは一体なんだったのだろうか……


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